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岸辺露伴 ルーヴルへ行く





先日、フランス版の「Rohan au Louvre」をGETし、すでに全部読んでしまっている状態ですが、感想等を書いていきます。フランス語だと、さすがに詳細までは分かりませんから。日本語でちゃんと読むと、やっぱりますます面白い。荒木節は日本語じゃないと伝わらないですしね!もちろん、後編の内容には触れずに書いていきますので、「Rohan au Louvre」未読の方も心配無用ですよ。
それでは、さっそく本編に入っていきたいと思います。


(中  編)




見事なポージングでルーヴルへと舞い降りた露伴でしたが、その余韻に浸る間もなく、早くも館内に入っていきました。ガラスのピラミッドで受付を済ませた後、ピラミッド内のエスカレーターで地下に降りるワケです。(で、地下で入場チケットを買って、それぞれの棟へ入場していくシステム。)
すると、見るからにやんちゃそうな若者数名に囲まれちゃいました。どうやら彼ら、日本の観光客らしい。露伴の事も知ってて、サインをねだってきます。露伴は彼らのカジュアルすぎるファッションに難癖をつけ、「先人の作品が眠る場所なんだから敬意を払えと、どっかの鉄球使いみたいな事を言い出しました。彼が珍しくネクタイを締めてるのも、その敬意の表れのようです。
説教してる時、スッとペンを左右に振ってたんですが、なんと「六壁坂」に続いて今回もドリッピング画法でのサインをご披露ッ!若者達は大感激。なんだかんだでファンサービスも忘れない露伴先生でした。つーか、荒木先生もルーヴルでこんな出来事があったりしたのかな?


露伴は一般の観光客としてではなく、きっちり取材のアポを取ってから来た様子。ルーヴル美術館出版部職員で、日本語の通訳もしている野口さんという美人とも挨拶。露伴ってば、リンゴォ並みに礼儀正しいですね。てっきり『ヘブンズ・ドアー』を悪用して、勝手にズカズカ侵入していくものだとばっかり(笑)。これも先人達への敬意か。大人になったな……。小学生をジャンケンで負かしてバカ笑いしていた男とは思えない。
野口さんに山村仁左右衛門の話をし、彼の作品が本当にあるのか調べてもらうと……、あっさり「ありますね」との返答。作品名は「月下」。奈々瀬さんがかつて語った通り、20数年前に日本から購入しており、今は倉庫に保管されているとか。それなら絵を見せてほしいと頼むも、なかなか良い返事はもらえません。しかし、何故かこの絵に関するデータはまったく開かず。保管場所も、決してあり得ない場所「Z-13倉庫」になっているとの事。そこは、見捨てられた倉庫。地球温暖化によるセーヌ河の氾濫に備え、地下に位置する古い「Z-13倉庫」から、水害防火対策バッチリな最新の倉庫に作品は全て移されたらしい。つまり、本来なら作品が保管などされているはずのない場所。一体、どういう事なのか?それを調査・確認する意味も含め、ルーヴルの責任者達と同行する事になったのでした。おお、こいつはミステリアスな展開になってきましたね。
同行者は4名。ルーヴル美術館・東洋美術学芸部門の責任者であるゴーシェ氏。館内の警備を担当する消防士2名。そして、通訳の野口さん。作品の冒頭で明言されている通り、この4人はこれから行方不明になるワケですね。美術館で働く彼らの誰も知らない絵を探しに、あるはずのない場所へと向かう。不吉な旅の始まりです。



4人の後に付いて、露伴は館内を進みます。様々な絵画を通り過ごし、「サモトラケのニケ」像にも目もくれず。お客さんが1人も描かれてないけど、閉館後って事なんでしょうか?単に、あえて描かなかっただけ?とにかく、一行は一般人が入れぬエリアへ。エレベーター式になってる床から地下に降り、作品運搬のための極秘通路をカートで進み、鉄扉の先へと更に進んでいく。そこは、狭くて薄暗くて、ジメジメしてそうなエリア。石造りの螺旋階段を下りていくと……、ボロボロの木の扉が。ここが目的の「Z-13倉庫」。荒木先生が綿密に取材しただけあって、臨場感たっぷりに描かれ、不穏な空気までこちらに流れてくるかのようです。
板の目のスキ間から倉庫内を覗くと、そこには確かに1枚の絵画が残されていました。しかし、暗くてよく見えない。(余談ですが、ウルジャンの紙質だと黒が滲んじゃってますけど、カラーだとどんな絵かこの時点でも判別できますよ。)
すると、倉庫の奥で何かが動いたッ!錆びついている鍵をブッ壊し、強引に倉庫に入る皆の衆。ライトで照らしても、誰の姿もない。ネズミか何かという結論に落ち着きました。そして、仁左右衛門の絵を出そうと消防士が近付いた時、ついに物語は急展開ッ!飛び散る血、切断された顔面、こぼれる脳ミソ。いきなり消防士が何らかの攻撃を受け、殺されてしまったのです!彼の死体は天井に飛ばされ、そのまま天井に蠢く暗闇に飲み込まれて消えてしまいました。ワケも分からず、大パニックの一行。
畳み込むように、闇の中から人間らしきものが数体出現ッ!その異様な佇まいは、まるで幽霊かゾンビです。ゴーシェ氏が「なんだ、コイツら!警察を呼べ!」と叫ぶや否や、今度は彼の肉体が潰されていくではありませんか!クッキリとタイヤに轢かれた跡が残り、交通事故にでも遭ったかのよう。そして、「そんな……。あなたは……。あれは自動車の事故。」とのゴーシェ氏の言葉。つまり、自動車事故で死んだはずの知り合いの姿が、闇から出現した連中の中にあったという事。ゴーシェ氏が、その人物と同じ死に方をしたという事。




こんな気になるところで、続きは次号!しっとりと描き出された日本編とは打って変わって、中編からのルーヴル編は不気味で恐ろしい流れになってきました。この謎の現象は、仁左右衛門の呪いなのか?何者かのスタンド能力なのか?それとも別の何かなのか?全ての謎が(たぶん)明かされる後編、乞うご期待ですッ!
無論、前号に引き続き、本編の後のレポートも必見です。荒木先生のルーヴル取材の様子が語られ、とっても興味深い。ルーヴルの屋上やら地下やら、一般人じゃ生涯立ち入る事など出来ない場所を次々と回ったようです。地下へはどうやって行くのか?何メートルくらい歩くのか?電気のスイッチはどこにあるのか?埃や壁の材質は?……そんなところにまでこだわった取材の成果が作品にも存分に表れていますね。露伴の同行者4人にしてもそう。荒木先生に同行してくれたのも、美術館スタッフ2名と消防士2名だったそうです。それらがリアリティとなり、物語や描写に説得力を生むのでしょう。




(2010年4月18日)




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