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飛呂彦の夏。原画展
~ ジョジョファンの青い珊瑚礁 ~





その①


昨年2017年は「ジョジョ」連載30周年のアニバーサリー・イヤーで、M県S市にて「ジョジョフェス in S市杜王町」という超特大イベントが催されました。原画展「ジョジョ展 in S市杜王町 2017」も大いに盛り上がり、多くのジョジョファンが忘れ得ぬ輝かしき想い出を胸に刻んだのでした。(レポートはこちら
正直、大々的なイベントは当分なさそうだなぁ……と、すっかり油断し切っていました。ところが、同年12月、突然のニュースが飛び込んで来たのです。それが「荒木飛呂彦原画展 JOJO - 冒険の波紋 -」の告知ッ!なんと2018年に、連載30周年の集大成となる史上空前の祭典が開催決定したのです!まさかの2年連続の原画展!この予想外の事態に、多くのファン達が沸き立ちました。
さらにその半年後、2018年6月には詳細がついに判明。この原画展 ―― 正式名称じゃないけど、以下「ジョジョ展」と呼びます ―― は、東京と大阪の2ヶ所で行われるらしい。東京展は2018年8月24日(金)~10月1日(月)の期間、東京は六本木の「国立新美術館」にて開催。国立美術館での漫画家の個展としては、手塚治虫先生以来、28年ぶり2人目との事。大阪展は2018年11月25日(日)~2019年1月14日(月)の期間、大阪文化館・天保山にて開催。大阪では初めての「ジョジョ展」となります。東京と大阪とでは、展示内容に一部入れ替えがあるようです。……となれば、両方行かない手はありません。

初めは東京展!正式な開催日よりも前にプレビューデーというものもあり、私としてはそっちにも行きたかったんですが、残念ながらチケットがゲットできず。しかし、初日・初回のチケットをどうにか押さえる事が出来ました。そして、無事に行って参りましたよ!今回もやっぱり一人旅。まぁ、趣味や生き甲斐なんてもんは孤独で良いのです。


なお、この企画の詳細については、荒木先生の公式サイトと「ジョジョ展」の公式HPをご覧になってください。




その②


<2018年 8月23日(木)>
朝から電車に揺られ、お昼前には東京に到着。まずは、本屋で「SPUR」10月号を買いました。荒木先生のインタビューが載っているというのだから、買わないワケにはいきません。
そして、明日の「ジョジョ展」の前哨戦・前夜祭とばかりに、「週刊少年ジャンプ展 VOL.3」に参戦!会場はお馴染み、六本木ヒルズです。しかし、会場に着くまでも見どころはたっぷり。六本木周辺は今、様々な趣向を凝らして「ジョジョ展」を盛り上げてくれているのです。街を歩いてすぐに目に付くのが、「六本木ストリートフラッグ」。歴代主人公のフラッグが、六本木のストリートを鮮やかに染め上げていました。これは正に壮観。アガるなぁ~~。



ジョナサン


ジョセフ


承太郎


仗助


ジョルノ


徐倫


ジョニィ


定助


KV承太郎



さらには、六本木ヒルズに程近い「ローソン」が「オーソン」になっちゃいました。S市以外の場所では初の出店です。店内はジョジョファンで賑わっており、外でも写真を撮る人がけっこういました。「ジョジョ」をまったく知らない通りすがりの人も、「あれっ?ローソンじゃない!」って驚いてましたよ(笑)。
ここだけで買える限定商品も目白押し。「ジョジョ」のアクリルスタンドにタオル&ケース、オーソンTシャツやSPW財団のコンテナBOXまであります。私はそんなにグッズに興味がある人間じゃないので、記念に8部「ジョジョリオン」のアクリルスタンドを買うだけにしときました。バイクにまたがる康穂&定助。この絵が大好きなので、これだけでも十分満足!特に、ロックないでたちの康穂がカッコ可愛いんです。



オーソン



ここもしっかり


超カッケー




その③


あまりの暑さに加え、足の疲れや空腹もあり、近くのお店で昼食。しっかり栄養と休息を取った上で、「ジャンプ展」に臨みます。毎度のように、52階の「森アーツセンターギャラリー」へ。平日って事もあってか、お客さんはそんなに多くなく、すんなり入場できました。麦わらの一味が出迎えてくれた後は、いよいよ原画の大海原へと出航です。
今回のVOL.3は、2000年代以降の名作や現在連載中の作品が展示されています。う~ん、どれも作者の本気と熱気が込められていて良いものです。中でもやはり時代を作った作品は、原画のパワーもとりわけスゴい。「ONE PIECE」のワクワク感も、「NARUTO」の和風スチームパンクな空気も、「HUNTER × HUNTER」のシンプルながら奥深い線も、「BLEACH」の黒と白の圧も、「ヒカルの碁」「DEATH NOTE」の繊細さ・美麗さも、誠にファンタスティックでございます。最近はデジタル作画の作品も増えているようですが、私はやっぱりアナログが好き。荒木先生もおっしゃっていたように、「実物」が、「本物」が、ここにある、という感覚が特別なんですよね。



ヒルズ


入場




麦わらの一味が


お出迎え





そして、ついに来ました。我らが荒木飛呂彦先生!「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン」!ただ、ぶっちゃけ期待していた程のボリュームではなく……、「ジャンプ」の表紙にたまにある、連載作品の主人公達が集合してるイラスト用の徐倫の小さいカットが数点のみ。とは言え、これはこれでかつての原画展でもお目に掛かった事のない原画なので、非常に貴重です。
荒木先生からは、「6部から月刊にしたかった」的なコメントもありました。それは非常に納得の行く言葉で、6部はとにかく絵的なこだわりやインパクトが図抜けていましたからね。さぞや先生にとっては誌面が窮屈に感じられ、19ページという制限がことさら辛くなってきていた時期だったのでしょう。
なお、平日だと原画もガンガン撮影OKみたいなので、私も遠慮なく撮らせていただきました。



全体


弁財天徐倫


黒和服徐倫




宇宙服徐倫




男前徐倫


荒木先生より



最後は、先生方からの直筆メッセージ!荒木先生は「B面的な徐倫のイラストが展示されて嬉しい」といった内容。なるほど、「B面」とはうまく言ったものです。トビラ絵とかコミックスのカバーとかじゃない、ちょっとしたカットですもんね。ならば明日の「ジョジョ展」は、A面揃いのベスト盤ってワケですな!
物販では、今回のパンフと図録を購入。そうして会場を後にし、休憩がてら冷たいスイーツを食べ、ホテルでゆっくり休んだのでした。



メッセージ・ボード


荒木先生より





<8月24日(金)>
「ジョジョ展」開幕ッ!とうとうこの日がやって参りました。夏祭りや甲子園が終わっても、我々ジョジョファン・荒木ファンの「平成」最後の熱き夏はこれから始まるのです!
気合いを入れて早起きし、身だしなみを整えます。本当ならスーツにネクタイでも決めていきたいところなんですが、あいにく暑さに弱いんで、熱中症にでもなったらヤバい。でも、「敬意」を忘れずに、心のネクタイはキッチリ締めて行きました。
地下鉄を乗り継いで乃木坂駅へ。この駅は国立新美術館に直結しており、今日は雨風が強いけれど、外に出る必要なく会場に入れるってワケです。多くの同士達と共に列を作って並び、開場の時を待ちました。……やがて警備員に誘導され、美術館内へ進行。会場は企画展示室2E、2階です。そのままエスカレーターを上り、正門側の待機列と合流。この天気なのに外で待ってた人もいたのかと、ちょっとビックリ。乃木坂駅組が2列、正門組が2列の合計4列になって並びます。

そして、ついに入場!初日の初回ではありますが、何事もなく普通に始まりました。マスコミもいなけりゃ、セレモニー的なイベントも無し。そーゆーのは内覧会で済ませちゃったみたいだし、世間のテンションはプレビューデーが最高潮だったっぽい。どうにも盛り上がりに欠けるスタートではあるものの、まぁ、そんなのは枝葉末節。荒木先生の絵さえ拝めれば、その他はどうでもいいっちゃどうでもいいのです。
私はグッズ付きチケットを買っていたので、入場の際、オリジナルグッズ「JOJO's Sketch Stickers」を頂戴しました。単なる歴代ジョジョのステッカーなんですけど……、その古びて煤けた感じがまるで、果てしない時空を超えて届いたジョジョ達からの贈り物のよう。グッと来るものがありました。さらに、たった550円で荒木先生自らの音声ガイドを借りる事も出来ます。無論、私も迷わずゲット!



乃木坂駅にて


国立新美術館へ


開場の時!


贈り物



展示はまず、CHAPTER1「ジョジョクロニクル」から。荒木先生からのごあいさつに始まり、各部の概要説明といった、いかにもオープニングらしい内容。せっかくですので、荒木先生からのごあいさつを書き写しておきましょうか。喜ばしくも、気持ちが引き締まる思いですね。


ごあいさつ

荒木飛呂彦です。本日はお越しいただきありがとうございます。
『ジョジョの奇妙な冒険』誕生30周年の集大成を、このような名誉ある場所で披露させていただけることは、誠に光栄であります。
”JOJO”が目指して描くものは、この世のあらゆる現象、そして善と悪の闘いを通して主人公が「自分の力で何かを切り開いていく」という精神の成長です。ひと言で表すなら、ジャンプコミックス第1巻にもコメントを残しておりますが、「人間讃歌を描く」ということに尽きると思っています。
善だろうと悪だろうと一人一人のキャラクター、その生き方に愛情を注いで描くという漫画の内容や人物描写だけでなく、絵そのものからもこの精神が伝わるようにと思って描いています。時代によって物の考え方も変わったりはしますが、私にとって「人間讃歌」というテーマは普遍であり、いつも繰り返し考えながら机に向かっています。
漫画というのは印刷されて評価される表現だとは思いますが、原画にはそれとは違う魅力が宿っていると思いますので、それをこの展覧会を通して体験していただけたら幸せです。

荒木飛呂彦



角を曲がると、いよいよ原画展示ゾーン!テーマごと各エリアに区切られているんですが、そこを突っ切るようにメイン・ストリートが走っています。そのストリートの壁面には、なんと2012年の「ジョジョ展」で描き下ろされた「ジョジョ日本八景」シリーズ、2013年の「フィレンツェ展」と昨年の「ジョジョ展」のキー・ビジュアル、「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」のカバーイラスト、そして今回の東京展のキー・ビジュアル……、計12点の巨大パネルが飾られていました!うおおっ、なんて豪華なメンツ!これを眺めるだけで色々想い出すよ……。



ジョジョストリート



酒樽とジョナサン



こけしとジョセフ・
ジョースター



七夕の仗助



はやぶさと
ジョルノ一行



桜と徐倫



東京タワーと
ジャイロ&ジョニィ



松島の定助



富士とたんぽぽ



七夕の定助



フィレンツェの徐倫、
ブチャラティ


岸辺露伴
ルーヴルへ行く




振り返ってみる


東京展KV



このストリートのパネルだけは写真撮影が許されていました。みんなが撮影しまくりなもんだから、メイン・ストリートなのにマトモに通行できんかったけど(笑)。でもせめて、これで会場の雰囲気を少しでも感じ取ってください。




その⑤


さて、結果から言ってしまうと、もちろん今回の「ジョジョ展」もやっぱり最高でした!!全体のボリューム自体は過去の「ジョジョ展」より少なめだったかもしれませんが、明確にテーマ分けした事により、今までとはまったく異なる展示内容で楽しませてくれます。そして、この国立新美術館というシチュエーション、ロケーションも申し分無し。格調高く広大な空間は、開放感と清涼感に溢れ、原画をゆったりと心静かに鑑賞させてくれました。大満足です。これは行かなきゃ損!
それでは毎度の如く、以下、箇条書きで細かな感想や出来事をつらつらと書き綴っていきましょう。



今回の原画展は、完全に「ジョジョ」のみの展示でした。「ビーティー」や「バオー」などの過去作も、著名人とのコラボでの描き下ろし作品なんかも一切なく、潔いほどに「ジョジョ」です。「岸辺露伴は動かない」と、GUCCIとのコラボの時に描かれたオールカラー作品2作(「岸辺露伴 グッチへ行く」、「徐倫、GUCCIで飛ぶ」)だけは例外ですが、これも結局「ジョジョ」のスピンオフ的な作品ですしね。
もっと言うと、「ジョジョ」は「ジョジョ」でもあくまで原作特化。ゲームや小説などの他ジャンルのために描かれた作品はありませんでした。せいぜい「ジョジョの奇妙な名言集」のカバーイラスト、あとは「ミラクルジャンプ」用に描いた仗助&康一くんの絵くらいのもんです。そういう意味では、実に骨太で真っ向勝負な展示と言えるでしょう。


CHAPTER2「宿命の星 因縁の血」では、各部の主人公ラスボス(ここでは「ライバル」と表現)の原画が展示。「ジョジョリオン」にはラスボスが登場していないため、「岩人間」という括りでダモカンと夜露がメインを張ってる状況ですが(笑)。
部屋の中央で、主人公とラスボスそれぞれの顔やセリフが印刷された白と黒の巨大垂れ幕が交差。それを挟んで、各部の主人公とラスボスのカラー原画とモノクロ原稿が真っ直ぐに対峙しているという、なんとも燃える構成になっています。どの絵も良いんだけど、個人的には7部「SBR」のディエゴと『THE WORLD』のモノクロ原稿が好き。画面全体が白い分、ディエゴの顔に掛かる「手の影」の黒が鮮明で、単品で絵画のような美しさがあります。
「ジョジョの奇妙な名言集」のカバーイラストも展示されていたんですが、よく見ると、プッチの周囲にやたらと修正跡が残っていました。プッチの立ち位置やポージングに悩まれたのか、それとも『ホワイトスネイク』でも描こうとしていたのか。原画のライブ感に触れ、当時の荒木先生の思案に想いを馳せる。それもまた、原画鑑賞の醍醐味の1つです。



陰影が良き



1巻のカバーイラストは、「ジョジョ」連載スタートの「ジャンプ」の表紙も飾った、まさに「始まり」の1枚。改めて観ると、ジョナサンとディオの「光」と「影」の対比が際立っているし、ジョナサンの服の模様も手描きで凝ってます。
これを描かれていた頃の荒木先生は、31年後の今を想像もしていなかっただろうなぁ。自分がまだ漫画家でいる事も、「ジョジョ」を描き続けている事も、こんなにも多くのファンを獲得している事も、美術館で個展を開いている事も……。でも、この「今」だって、いきなりこうなったワケじゃなく、日々の積み重ねと繋がりで辿り着いた場所ですからね。今、ここで、この「始まり」の1枚を観ていると、色々と考えて感極まっちゃうものがあります。



全ての始まり



CHAPTER3「スタンド使いはひかれ合う」では、その名の通り、スタンド使い達とそのスタンドが集結。さすがに全員の原画は観られませんけど、特製のパネルはちゃんと全員分あって、このお祭りにみんな大集合してくれたって感じ。
私としては、生イケメン(マウンテン・ティムの事です)を拝めた事が特に嬉しいですね。しかも、カラーとモノクロ両方ってんだから最高!私はガチでイケメンが大好きでして、たぶんジョルノに次いで2番目に好きなキャラかもしれない。あのCOOL&ワイルドなヴィジュアルはもちろん、熱くて紳士な生き様も、儚い「男」の散り様も、心から憧れています。彼の原画を鑑賞できる機会は滅多に無いので、ありがたく観させていただきました。やっぱイケメンはイケてるぜ。
それと、「岸辺露伴は動かない」2巻のカバーイラストも原画で初めて観る事が出来ました。露伴の顔に絵筆で塗られた絵の具の質感が好きです。「富豪村」のカラー扉絵もあったけど、この絵もイイな~。これ、今まで展示されてた事あったっけ?



イケメンバトル




イケメンカラー



今回の「ジョジョ展」では、気鋭のアーティスト達とのコラボも実現されました。CHAPTER3には、美術家・彫刻家の小谷元彦氏の彫刻作品が展示。作品名は「Morph(モルフ)」
単体の作品ではなく、何体もの彫刻が連なって1つの作品となっています。そのどれもが奇妙に変形しており、まさしくスタンドを発現する瞬間を形にしたかのよう。「これは吉良か~」「11人の男達?」「あれは何だろ?」といった具合に、「ジョジョ」と重ねながら意味を探るのも楽しい。あまりにもド直球に「ジョジョ」そのまんまってワケではなく、あくまでモチーフ程度に抑えてくれているのも、個人的には好印象でした。


CHAPTER4「JOJO's Design」では、「ジョジョ」のアート的な要素にスポットを当て、色彩豊かなカラー原画が並びます。ここで特筆すべきは、「ジョジョリオン」16巻のカバーイラストでしょうか。これも初展示の原画です。この絵みたいに、肌の色までもしっかりと濃く塗られている絵はディ・モールト私好み。
そして、上記でも触れましたが、「岸辺露伴 グッチへ行く」「徐倫、GUCCIで飛ぶ」の絵があった事が本当に嬉しかった。特に「徐倫」なんて、2013年のフィレンツェでしか観れなかったし、その時以来の再会ですからね。日本じゃ初展示なので、喜びもひとしお。ぜひ多くの人に観てほしい。とにかく繊細で清らかで、夢に溢れてて、なんか観てるだけで泣けてくるような魅力があるんですよ。今回も、他の絵以上にじっくりと堪能させていただきました。



この2点が


特に好き



アーティスト達とのコラボCHAPTER4にもあり、ファッションブランド「ANREALAGE」デザイナーの森永邦彦氏による衣裳+マネキンの作品が展示されています。作品名は「WEAR THE POSING, WEAR THE STAND」
仗助・露伴・承太郎・DIO・徐倫の5人の象徴的ポージングを取った真っ白なマネキンが立ち並んでいます。マネキンが着ている衣裳は、そのポージングの形に作られているため、着ようとすると服の造形の方に人体を合わせないといけないらしい。さらに特殊なプリントも施されており、紫外線が照射されると、初めてプリントの模様が肉眼でもハッキリ確認できるようになります。プリントには、それぞれのスタンドの画像を使用。まさに、ポージングを着て、スタンドを着たマネキン達!パッと見は味気ない等身大フィギュアみたいなもんなのに、そこに秘められたアイディアと技術が面白いですね。


CHAPTER5「ハイ・ヴォルテージ」では、1~7部までのラストバトルの生原稿がズラリと登場。こうやって順番に観ていくと、やはり先生が若かった頃の原画は熱さや勢いが強烈です。荒々しく生々しいエネルギーが迸ってます。ジョナサンの最期のシーンや、止まった時の中での承太郎のモノローグあたりは、マジに胸に迫るものがありました。そんなエネルギッシュさは年齢を重ねるごとに落ち着き、だんだんと絵も雰囲気も洗練されていきます。6部や7部の原稿なんて、もはや芸術作品そのものっていうか、宗教画でも観ている気分でしたよ。
生原稿を観て改めて思いましたが、ラストバトルの気合いの入り具合は凄まじいですね。先生の気持ちが筆にノッているのがよ~く伝わります。とりわけ、3部のラストバトルは修正がやたらと多く、もう原稿をはみ出して溢れちゃうほどの熱量がこもっていたんだなぁ~と。また、1部のジョナサンがエリナに「でも君は生きなくてはならない」と語るコマでは、赤ちゃん(幼いリサリサ)を指差す彼の右手が下描きされていた事が分かりました。でも確かに右手が無い方が、ジョナサンの表情や感情がストレートに感じ取れますもんね。


ここにもカラー原画が展示されていましたが、最も目を引くのは何と言ってもキー・ビジュアル2点でしょう。東京展の承太郎と大阪展のDIOが揃い踏みッ!
人物から構図から背景からカラーリングから、もう何から何まで対極的・対照的な2点。「動」と「静」、「角」と「円」、「昼」と「夜」、「善」と「悪」、「生」と「死」。正反対でありながら、切っても切り離せぬ表裏一体。「人間讃歌」そのものであり、「生きること」そのものです。「風神」と「雷神」からも着想を得たらしいですが、これは紛れもなく「ジョジョ展」の守り神この2枚の作品は、2枚で1組なのです。
ようやく目の前で拝めました。どちらも鮮やかで美しく、本当にキラキラしてました。パワー漲るこの2枚が守護してくれる限り、「ジョジョ展」の成功は約束されたも同然でしょう。


CHAPTER6「映像展示 AURA〈アウラ〉」は、アーティスト達とのコラボの1つ。ビジュアルデザインスタジオ「WOW」による、フルCGの映像作品が展示されています。カーテンで仕切られた大部屋に入り、巨大スクリーンで鑑賞。その後、もう一方の出口から出て、次なるエリアへ……という流れ。事実上、このCHAPTER6は「ジョジョ展」を大きく二分する境界線にもなっていて、ここを越えてしまえば、もはや前のエリアへの逆流は不可能となります。そんな重要な地点。
映像作品は、「生命の源泉」から主人公のスタンドが生み出されていく様子を描いたもの。微細な筋繊維が、ダイヤモンドが、黄金のてんとう虫が、糸が、黄金長方形が、泡が、どんどん集まって固まって、次第に「あのスタンド」の姿を力強く形作っていく。もし魂の奥底を映せるカメラがあったなら、スタンドが発現する一瞬の間に、本当にこんな光景が撮れちゃうのかもしれません。


さあ、ついにここまでやって来ました!CHAPTER7「裏切り者は常にいる」です!これぞ「ジョジョ展」最大の目玉、完全新作の巨大原画12枚セット!なんと縦2.0m×横1.2mほどの大型アートボードに、12人のキャラクターと12体のスタンドが描かれるという、荒木先生にとっても初の試みとなる超大作なのです。先生は、この絵を観た人達がキャラクターと同じ空間にいるような気持ちになってほしいと願い、制作されたとの事。
描かれたキャラクター達は、徐倫康穂ブチャラティジャイロDIO承太郎イギー吉良(4部)ウェザー定助由花子さんカーズの12人(11人と1匹)。スタンドは、『ストーン・フリー』『ザ・ワールド』『ペイズリー・パーク』『スター・プラチナ』『キラークイーン』『ハイエロファント・グリーン』『ザ・フール』『ハーヴェスト』『ウェザー・リポート』『D4C』『スティッキィ・フィンガーズ』『ソフト&ウェット』の12体。彼らが思い思いの表情で佇む絵が、コミックスの背表紙のように繋がって1つの長大な作品になっています。しかも、単純に横に並べられているのではなく……、より空間性を高めるため、壁1面どころかその両壁にまで及び、「コの字」型で我々をグルリと囲んでくれました。
恐ろしい事にこの絵に限っては、額縁にすら収まっていない、正真正銘「ナマ」の絵です。何にも隔てられていない、そのままの絵が我々を間近で迎えてくれるのです。だからこそ、なおさらキャラクター達がリアルでフレッシュな存在感を持ち得るのです。これがどれだけ贅沢な事か、しっかり認識した上で鑑賞した方が良いと思いますよ。


この「裏切り者は常にいる」、本当に想像力が刺激される、ドラマティックで楽しい作品でした。レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」もモチーフになっているらしく、「ユダ=裏切り者がどこかに潜んでいるかもしれない」「裏切り者は誰なのか?」といった、不穏でサスペンスフルな気配も漂っているワケです。その表情や立ち位置からも、各々の関係性や思惑を想像させてくれる、「謎」に満ちた絵に仕上がっています。
もっと細かい部分を観ていきますと……、まず、とにかく徐倫がカワイイ!小顔な美人さんだぜ。もちろん、ブチャラティやジャイロもカッコイイし、承太郎とDIOの風格はハンパない。でも、何故かDIOは最近「股間遊び」にハマッちゃったらしく、大阪展キー・ビジュアルではてんとう虫を、こちらでは石仮面を股間に装着!何かの拍子に血が付いて、うっかりファゴォーしちゃったらヤバいでしょ!また、ウェザーは懐かしさすら覚える再会で、由花子さんはかなり4部の頃に近いイメージで描かれていました。定助は超ドアップで、今の主役に相応しい自己アピールっぷり。スタンドも『ハーヴェスト』がちっこくてキュートだし、『D4C』と『ウェザー・リポート』がウェザーのスタンドの座を巡って争ってる風にも見えて笑えちゃったり。12人と12体ですから、バラエティー豊かでいくらでも夢想して遊べます。
色の塗りにしても構図にしても、光と影筋肉と骨、それらの存在や流れが確かに伝わってきました。なんていうか、人物に広がりと奥行きがあります。キャラクターがリアルに作り込まれている一方で、背景はかなり抽象的でのっぺりとした印象。空と大地だけが、単色で塗られて区切られています。地面にはキャラクター達の「影」も描かれておらず、その辺はファンタジー性を強く感じました。また、地平線は我々の目線の高さに合わせ、およそ160cmほどの位置になっているようです。
リアリティとファンタジーが融合し、「現実世界」と「作品世界」さえも融合させてしまうこの大作。これだけは絶対に、直に鑑賞し体感しなくては味わえない感動です。


「裏切り者は常にいる」のメイキング映像も上映されています。荒木先生が何を考え、何を感じ、何を願ってこの大作を制作したのか。それを本人自ら語ってくれる超お得な映像なので、目に、耳に、心に、ちゃんと焼き付けましょう。
この映像を観た人なら誰もが思った事でしょうけど、先生は心から楽しんで絵を描かれていますよね。こんな大型原画を12枚も描く事は先生にとっても初体験なんですが、苦労をしながらも、その苦労さえ喜び楽しんでいるのが伝わってきました。カーズの肌を塗ったら絵の具が垂れてきて、先生が「あっ!」って焦るシーンでは、思わず頬が緩み、他の皆さんも笑ってました。先生の人柄か、なんか癒やされるんだよなぁ。そして、自ら生み出し描き出したキャラクター達への、先生の慈愛がね……。私達が楽しみ愛している作品は、こんなにも作者が楽しんで愛してくれている作品なのです。一読者として、めちゃくちゃ幸せで誇らしい気持ちになれました。
この映像も、去年の「ジョジョ展」で流れてた「アラキ×アルキ」も、6年前の「ジョジョ展」で流れてた椛島さんとの対談映像も、全部まとめて円盤化して売ってほしいです。好きな時に何度でも観たい。そんな人、いっぱいいると思いますよ。どうっスか、集英社さん?


最後の展示は、CHAPTER8「ジョジョリロン」。荒木先生の創作の秘密に迫り、作品そのものではなく、作品が完成するまでの「過程」を展示しています。これもマジで物凄かったぁ~~……。
「裏切り者は常にいる」制作時に使用した道具(エプロンや様々な筆、パレットなどなど)、構想時のメモ書きやドローイング、下描きを使ってのカラー決定。これら1つ1つがあんな大作を作り上げたんだな~、と感嘆せざるを得ません。
そして、なんとなんと!「ジョジョリオン」最新エピソードより、密葉さんと羽先生(ドクター・ウー)の「身上調査書」が大公開ッ!前代未聞の大事件でしょ、これ!こんな超機密事項を公開してくださるなんて、先生も太っ腹というか、ずいぶん思い切ったなあ。その内容も、めっちゃ納得のものもあれば、フフッと笑えるものもあり、「えっ!!」ってな具合にブッ飛んじゃうようなものまであって、ここだけの情報盛りだくさん。第77話ラスト数ページのネームも展示されており、完成形と比較すると、やっぱりリズム重視で柔軟に見せ方を変えているのが分かりました。
ウルジャンも読んでる前提のストロング・スタイル、いっそ清々しい。先生や集英社からすりゃ、公式発売日を迎えた時点で世間に公表しているんだから、もはや「ネタバレ」ですら無いのです。公表されているのに読んでないってのは、単なる個人の都合であり勝手。合わせる必要も無ければ、合わせようも無いでしょう。そもそも30年の集大成となる「ジョジョ展」にしろ、「究極のジョジョ人間」を作るコンセプトの企画「ジョジョサピエンス」にしろ、そんなのに参加しようってんならネタバレとか気にする方が無粋です。たとえ全部読破していない人であっても、ネタバレなんていちいちこだわってるのはもったいない。このせっかくの稀有なチャンスを思いっ切り味わい尽くしてほしい。そう願います。



―― 圧巻でしたね。圧倒されましたね。原画達は30年もの歳月を経てもなお、(多少の劣化はあるとは言え)美しいままで今もここに存在してくれている。その事実が有り難いです。
それに、「ジョジョ展」 in 杜王町でお馴染みのベルト・コンベアー状態にもならずに済み、好きな所を好きなように自由に鑑賞できたのが最高でした。順番通りに観たい人が多くて、人が固まってる所は観るのに苦労しましたけど、そんな混雑・盛況っぷりも嬉しい事です。老若男女・国籍さえ問わず、みんなが「ジョジョ」が好きでこの場に集まった。今更ながら、素敵な事ですよね。

ただ……、あまりの情報量に脳が追い付かない……(笑)。映像展示以前の前半部分は、モノクロ原稿こそ充実しているものの、カラー原画はほとんど観た事がある作品。そういう意味では、後半部分の方がメインと言っても過言じゃなかったんですが、前半で体力と集中力を消耗し過ぎてしまった。荒木先生の音声ガイドも文句無しの素晴らしさの反面、内容が濃厚すぎて、これまた情報量が増大。こりゃあ1回だけじゃ無理です、私には。何回か行かないと、この原画展は飲み込んで消化し切る事など出来そうもありません。
というワケで私は、結果として合計3回、「ジョジョ展」に行く事になるのでありました。残りの2回については、続く後編にて!




(2018年9月5日)




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