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管理人 金沢へ行く
~ 金沢体験 (ゴールド・エクスペリエンス) ~





その⑬


<2022年 5月1日(日)>
今日は天気予報通り、朝から雨。聞くところによれば、金沢って雨が多い土地柄なんですってね。でも幸い、おととい程のヤバい勢いではなさそう。
まず向かう先は、21世紀美術館です。何故かって?そりゃあもちろん「ジョジョ展」ですよ!10時からのチケットを購入済みなので。……しかし、雨降りだからチャリは避けたい。というワケで、バスに乗る事に決定。駅の東口にある6番乗り場に着くと、ちょうどバスがやって来ました。バスは1回200円。主要な場所をグルグル循環しているので、かなり重宝しそうです。



雨降り


バスに乗る


バスに揺られる



15分ほどで美術館前に到着。バス停のすぐそばには、石浦神社があります。なんでも、ここは金沢で最も古い神社らしい。
ちょっと覗いてみると、お祭りでもあるのか、ベビーカステラやりんごあめの出店が並んでいました。奥へ奥へと続く無数の小さな鳥居も、非日常の異世界へと誘ってくれているかのよう。



美術館前


石浦神社


祭りの気配


鳥居だらけ



まだ時間もある事だし、美術館にまっすぐ行ってもつまらないので、今日も「しいのき迎賓館」の「ジョジョウィンドウ」に寄ってみました。
雨の朝というシチュエーションもまたイイ。人がおらず、雨音だけが響く、この静かな空間を独り占め。心が穏やかに満たされ、清められたところで、改めて美術館へと足を進めるのでした。



ちょっと寄り道


雨とジョジョ


静謐


清閑


しいのき迎賓館


大きなシイノキ


ぼちぼち向かう


美術館到着




その⑭


天気に関係なく、今日も「ジョジョ展」は大賑わい。
待ってる間、一緒に並んでいる多くの同志達の様子を観察しているだけで楽しいもんです。生まれも育ちも何もかも違う人達が、「ジョジョ」が好きというただ一点で、同じ時、同じ場所にこうやって集まったんですから。「好き」の表れ方もそれぞれに異なるので、見てるだけでも個性があって面白い。

3回目の「ジョジョ展」では、展示されている実物の原画と、図録「ジョジョニクル」を見比べてみる事にしました。ジャッジが厳しい金沢展の場合、それすらも注意を受けてしまうんじゃないかとヒヤヒヤでしたが、そんな事はなかったぜ!
では……、以下、感想になります。


印刷物と比較すれば毎度実感させられますが、やはり印象が全然違いますね。印刷だと色が濃く出て、繊細な色合いや風味が損なわれてしまいます。特にピンク系はドギツくなりがち。
別に印刷にケチつけてるワケじゃなく、それほどに原画というものは唯一無二って事です。この世でたった1つだけの「本物」なんですからね。


ある意味、比較して最もビックリしたのが「ジョジョリオン」の手旗信号の絵
背景のグレーとホワイトのエリア分けが、印刷と原画とで真逆になっていたんです。「ジョジョニクル」やコミックス等は、左上から右下にかけて境界線が引かれ、この絵の上辺に面する色はグレーになっています。一方、原画を見るとその逆で、右上から左下にかけて境界線が引かれ、上辺に面する色はホワイト。
これってけっこうデカい変更だと思うんですが、どういう理由でそうしたんだろう?気になっちゃうな~。



UJ1月号(2020年)
カバーイラスト



「ジョジョニクル」
120ページ1



JC22巻
カバーイラスト



「ジョジョニクル」
120ページ2




「宿命の星 因縁の血」でのディアボロの原画。リゾット戦ラストの『キング・クリムゾン』発動シーン。
『エアロスミス』や弾丸なんかにはトーンらしき物が貼られてる感じなんですが、それに茶色っぽい色が着いていました。意図的に塗ったものなのか、それとも単なる経年劣化によるものなのか。コミックスを見返してみても、その部分に色が着いているワケでもないんだよなぁ。本の日焼けみたいな、劣化した黄ばみなのかな?あるいは、色を白黒反転させるために必要な処置だったりするんだろうか?



「ジョジョニクル」
89ページ




当たり前の話ですが……、ここにある原画は全部、元は真っ白な用紙だったんだよな。荒木先生自らペンを入れ、色を塗り、今の形になった。そう改めて考えると、不思議な気持ちになります。
原稿に書き込まれた具体的指示を見る限り、先生には最初からすでに完成形が視えているのでしょう。自分が表現したいものがあり、それを実現するための手段を知っている。そのためには、多くの事柄を学び、身に付けていないといけない。まさにプロフェッショナルであり、マエストロです。崇拝しかありません。


コミックス48巻カバーイラストのジョルノが、昔からずっと大好き。ゴールド一色のジョルノがあまりにもまばゆくって。
この絵を見るたび……、かれこれ25年ほど前、大雨の中、チャリを漕いでコミックスを買いに行った日の事を思い出します。で、本屋に並んだこのジョルノの絢爛たる姿に衝撃を受け、めっちゃテンション上がったんですよ。しかし、原画の美しさは想像を超えています。ゴールド一色と言えど、色の濃淡や凹凸、筆の流れ等を直に受け取れるので、全てが立体・実体として迫って来るんです。たまらんて。



JC48巻
カバーイラスト




2枚1組の長崎展・金沢展キー・ビジュアル、その力強い存在感は特筆に値します。
なんたって、そもそも大きさがケタ違い。さすがに「裏切り者は常にいる」は別格としても、それ以外で考えれば最大級のサイズですから。そこに描かれる個性豊かな面々と、生命力溢れるカラーリング、平面的な背景と立体的なキャラ配置、大胆な余白が生むリズム感。どれを取っても素晴らしく、心に深く刻まれます。



金沢展KV


長崎展KV



大型原画「裏切り者は常にいる」は、もう異次元のパワーを放ってます。あの場の空間だけ、世界の境界が歪み、溶け合っているのを実感できますから。
改めてまじまじと観ると、構図も色合いも「奥行き」を相当意識しているのが分かる。遠くから全体を眺めてみると、ちゃんとその奥行きがリアルに感じられるんです。それだけに、12枚の絵を離さず、東京展のようにピッタリくっ付けて展示してほしいんですよねぇ~。この絵は絶対、そうした方が良いよ。




その⑮


今日も荒木先生の原画のおかげで心はホクホク。でも、お腹はペコペコ。美術館そばのファーストホテル1Fにあるレストランでランチを食べようと思ったんですが、残念ながら満員でした。
同じ通り沿いの喫茶店「TOMO」に入ってみると、席が空いてた。いい感じにレトロっつーか、庶民的な雰囲気のお店です。味噌カツ丼を注文。熱々で濃厚で美味しかったです。



TOMO


味噌カツ丼



さて、今日はもう特に予定はありません。雨もさっきから降ったり止んだりという程度。となれば、行ってみたかった茶屋街に行ってみよう!
まずは、ここから比較的近い「にし茶屋街」を目指して歩きます。夜はさぞかし華やかであろう片町という繁華街を抜け、犀川に架かる大橋を渡り、角を曲がった坂を下り、辿り着きました。
「にし茶屋街」は、通り1本分の小さなエリアのようです。その通りの両サイドに、歴史を感じさせる古風な家々が軒を連ねています。それらは甘味処であったり、料亭であったり、居酒屋やバーであったり、あるいは博物館的なものであったりと様々。どうせなら甘い物でも食べていきたい気持ちもあったんですが、思ってた以上にすぐ着いちゃったので、まだお腹も減ってない。まぁ、「ひがし茶屋街」でのお楽しみって事にして、ここは雰囲気を味わうだけにしときました。



新手のスタンド!?


片町周辺


犀川大橋へ


犀川


坂を下りる


着いた


にし茶屋街


しっとり情緒



バスに乗って、一旦、近江町市場へ。と言うのも、次に向かう「ひがし茶屋街」に程近い場所だから。あと、せっかく金沢に来たワケだし、食べはしないまでも見物くらいはしておこうかなと。
当然ですが、市場の中は大勢の人がひしめいていました。どのお店も美味しそうな物ばかりで目移りしちゃいますね。でも、どこも長~い行列。ゴールデン・ウィークじゃなければ、もう少しマシだったのかもしれませんけど、こんな活気が今は嬉しかったりもします。



可愛いバス


近江町市場


ちょっと見物


活気溢れる


人だらけ



市場のある通りをひたすら真っ直ぐ歩き、突き当たりを左に曲がると、川と橋が現れます。浅野川と浅野川大橋です。この橋を渡ると「ひがし茶屋街」に着きますが、橋の手前、浅野川沿いにももう1つ茶屋街があるのです。それが「主計町(かずえまち)茶屋街」
川沿いというロケーションが風情たっぷりだし、細い路地も裏の世界に迷い込んだ感があって、なんだかワクワクしちゃいます。ここは夜が最高に映えそうだなぁ~。



市場を直進


橋の手前


路地裏浪漫


ん?


風情ありすぎィ!


川沿いに出た


主計町茶屋街


中の橋


浅野川大橋


橋から見る茶屋街




その⑯


浅野川大橋を渡り、いよいよ「ひがし茶屋街」へ。
ここは3つの茶屋街の中で最も賑わっていました。と言うか、規模も人気もダントツ。観光客はみんな、ここを目指して来てるんでしょうね。それも納得の素晴らしい家並み。このどっかの家に住んで、2階の窓から街を見下ろし、四季の移ろいや行き交う人々をぼんやり眺めて暮らせたら乙だろうなぁ。



大盛況


千客万来


ひがし茶屋街



「茶ゆ」という甘味処で、スイーツをいただく事に。店頭のメニュー紹介を見て、「黄金アイスもなか」に決定。「ジョジョニクル」にも掲載されているって書いてあるので、選択肢は他にありませんでした。
でも、こんな目立つスイーツ載ってたっけ?全然記憶にねぇな~。後で見直してみたところ、「将来発売予定」くらいの記述しかなかった。なるほど、この2年の間に発売したって事ね。こんな所にも延期の余波が。
この「黄金もなかアイス」は、「ひがし茶屋街」創建200周年記念の特別品です。お好きなフレーバーを金箔に包み、もなかで挟んだという逸品。私はフレッシュミルクを選びました。見た目もゴージャスですが、お味の方も間違いないッ!冷たくて甘くて超おいしいッ!語彙が少なすぎますが、うまいものはうまい。「茶ゆ」はもともと、銭湯「東湯」のお客の休憩所として開業したらしく、もなかにも「東湯」の文字が書かれています。赤富士の絵も銭湯チック。



茶ゆ



全部うまそう



でもコレっしょ


黄金アイスもなか



もなかの文字と絵




「箔一」の支店(東山店)もあったので、入ってみました。徐倫のスタンディがお出迎え。店内を見て回ると、本店に無かった商品も置いてあり、おみやげとして購入。
金箔ソフトもまた食べたいけれど、今さっきアイス食ったばっかだしね。ちなみに、上階の飲食コーナーみたいな所には、金屏風を背にした承太郎のスタンディもあったそうです。



箔一


徐倫


JOJO掛け軸



バスで駅まで戻り、まだ早い時間ではあるもののホテルに帰還。もう足が限界よ。シャワーを浴びて、あとはグータラ休みます。旅先のホテルでダラダラするのも好きなんですよ。
……そして夜8時過ぎ、さすがにお腹が減ってきたので再び外出。今夜はラスト金沢ナイト。せめて今夜ぐらいは、多少並んでも金沢らしい物を食べようかなと思い立ち、駅に向かいました。しかし、ほとんどの店がすでに受付終了。マジか。休みすぎた……。結局、「加賀 白山そば」という立ち食いそば屋で、肉玉うどんを食べました。素朴な味が美味しくって安心する。でもまだ食べ足りず、「オーソン」で軽食を買ってホテルで食べました。



バスは便利


金沢駅に戻る


肉玉うどん


なじみの「オーソン」




その⑰


<5月2日(月)>
今日はとうとう金沢最終日。ホテルをチェックアウトし、駅のコインロッカーに重い荷物を預けます。そして、私が最後に向かうは21世紀美術館ッ!「ジョジョ展」ですッ!
バス停がえらい行列になっていたので、止む無くタクシーで行きました。仮にも平日なのに、街にも随分と人が多い。美術館に着いてもそれは同じで、特に、訪れる学生さん達の姿が目立ちました。修学旅行か校外学習なのかな?



今日は晴れ


駅のひゃくまんさん


学生多し



並ぶ時間までまだあったので、ほんの少しだけ館内を見てみました。日本的な柄の壁画が彩り鮮やかな休憩スペースからは、恒久展示作品「雲を測る男」が見えます。その姿……、孤独で、孤高で、自由で、奇妙で、なんかグッと来るものがある。「ジョジョ」にも通じる美しさと気高さがある気がする。
入場待機列に並びます。今日ももちろん満員御礼。気合い入ったドッピオ&ボスの概念コーデをした女の子がいて、明らかにみんなが注目していたのが伝わった(笑)。ピンクの電話の形をしたバッグがインパクト大でした。スゴく可愛くてカッコイイ。コスプレとはまた違う概念コーデ(バウンドコーデ)、奥が深いぜ。



休憩スペース


屋根に見えるは


雲を測る男


今日も満員



4回目の「ジョジョ展」は、私にとって最後の回。もう小難しい事は一切考えず、何も気負わず、心の赴くままに鑑賞しました。今までは絵に対し、何かしらの「情報」を見付けようと躍起になっていた部分がありましたが、今回ばかりは別。ただ観たい絵を観る。それだけです。荒木先生の描いた絵の、線を楽しみ、デザインを楽しみ、色を楽しむ。それだけです。
私の心はやっぱり、どうしようもなく、「ジョジョリオン」最終回のトビラ絵に惹かれてしまう。特に定助。この絵はひょっとしたら、あらゆる絵の中でも一番好きかもしれない。定助の安らかな表情とか、降臨した天使のようなポーズとか、ビビッドなピンクの色合いとか、定助の顔に射す光の感じとか、全てがホントに大好き。神々しいもん。何度も何度も何度も何度も原画を観返し、後ろ髪を引かれる思いで会場を後にする最後の一瞬まで、視線はこの絵に釘付けでした。またいつか、逢いたいな。



美の究極



嗚呼……、終わってしまった……。楽しかった……。幸福な時間と空間だった……。名残り惜しいけれど、でも満足しました。感謝しかありません。
というワケで、お昼を食べる時間。今日は美術館近くにある飲食店街に行き、「更科藤井」という蕎麦屋さんで鴨南ばんを食べました。そばはコシが強く、おつゆも鴨肉もダシが効いててめっちゃ美味しい。タケノコもホクホクで、山の味が薫ります。



ありがとう


さあ、お昼


飲食店街


更科藤井


鴨南ばん




その⑱


ついに帰りの時間。タクシーで駅まで戻り、小松空港へのリムジンバスに乗ります。もう金沢とはお別れか……。
羽田空港への飛行機の中で、不思議な光景を見ました。眼下に広がる雲海に小さな丸い虹が出来ていて、その虹に囲まれるように飛行機の影が映っていたんです。どういう現象なのかは分からないけど、幻想的で綺麗でした。金沢からの最後の贈り物……とでも思っておこう(笑)。

羽田から地元の空港への便を待っていたのですが、雷雲が空港の真上に発生しちゃったらしく、全ての飛行機がストップ。その影響で、帰りが1時間押し。まぁ、1時間で済んでラッキーなのかな。
そして、無事に地元に到着。羽田でパンだけ食べてたんだけど、もう腹ペコ。「すき家」に寄って牛丼を食べ、ようやく一息ついたのでした。



さらば金沢


パン食って待機


やっと帰れる


うめえ……




―― こうして、2年越しの私の金沢展は幕を下ろしたのでした。
相変わらず要領の悪い旅でしたが、それでもいいんです。嬉しかったし、楽しかったから。この2年、どこにも行けず何も出来ない封じられた状況だっただけに、直に「体験」するって事がいかに得難いものだったのかを思い出せた気がしますよ。まさしく、金沢体験できた4日間でした。そのうちまた行きたいですね。今回は無理だったけれど、「ジョジョニクル」で紹介されている場所にも是非行ってみたい。「忍者寺」こと妙立寺、尾山神社、鈴木大拙館、からくり記念館、金沢グルメの名店達……、未だ知らぬ金沢の魅力がいっぱい待ってる!


このレポートを書いてる間に、金沢展自体も堂々の閉幕。2018年8月に東京からスタートした「荒木飛呂彦原画展 JOJO - 冒険の波紋 -」は、2022年5月の金沢でついに感動のフィナーレを迎えました!一抹の寂しさと共に、心からの「お疲れ様でした」と「ありがとうございました」を捧げます。荒木先生もプレビューディの他に、5/16(月)や、最終日の5/28(土)にも、会場を訪れていた模様。原画を観に来たファンの楽しげな姿を見て、幸せな気持ちになってくれてたらいいな。
多くの厄災や凶事が続く今の世の中。それでも、コロナ禍で開催が延期されたからこそ、初めて出逢えた絵達もありました。こんな時代だからこそ感じ取れた事だってあったでしょう。人生、悪い事ばかりじゃないし、悪い事があったからこそ起こる良い事だってある。今回の金沢展は、私達にそんな福音を齎してくれました。どんな苦境に立たされようと、どんなジレンマに陥ろうと、不屈の魂で「ゴー・ビヨンド」!その強さは、私達の中に、間違いなく、在るんです。
さあ!お次は、タイミングを見計らって軽井沢に行こうッ!新たな想い出、作っちゃうぜ!未来に希望はたっぷり!



管理人 金沢へ行く

完




(2022年5月29日)




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