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ここに書いているのは、スタンドの個人的な解釈に過ぎません。
原作の設定・描写をベースに、
勝手に考察・妄想しただけのものです。
正確な公式データが欲しいという方には何の役にも立ちませんので悪しからず。




ゴールド・エクスペリエンス (黄金体験) / 本体: ジョルノ・ジョバァーナ
                      (本名: 汐華 初流乃)
< 「生命」を司る能力 >





<特徴>
1980年代後半、本体:ジョルノ・ジョバァーナが2~3歳の頃に、ジョースターの血の繋がりゆえ目醒めたスタンド能力。
ジョナサン・ジョースターの肉体を持つDIOにスタンドが発現した影響を受ける事で、DIOの息子である(血縁的にはジョナサンの息子でもある)彼もまたスタンドを発現させた。
ちなみに、母親は日本人であり、彼の名前も汐華 初流乃(しおばな はるの)が本名。彼が4歳の時に母親がイタリア人男性と結婚したため、以後、彼もイタリア人となった。「ジョルノ・ジョバァーナ」というイタリア人のような名は、本名の「汐華 初流乃」をもじったニックネーム的な名称なのである。


空条ホリィや東方仗助のような「スタンド病」に侵された様子はなく、ジョルノ自身も気付かぬうちに自然とスタンドが目醒めていた。
幼い頃から無意識的にスタンドを使っていたが、2000年の末頃~2001年の初め頃の時期、ついにスタンドを認識し、自分自身の意志でコントロールできるようになったようだ。この時期に、髪の毛などの体毛の色も、黒から金色に突然変化したらしい。この出来事は正に、彼の体に流れる「DIOの血」の覚醒の証しであり、彼の運命に吹き始める「黄金の風」の兆しであった。


「天使」をイメージさせる人型のヴィジョンを持つ、近距離パワー型スタンド。
全身は神々しい黄金色の輝きを湛え、両肩には翼のアクセサリーが飾られている。その瞳や表情はどこか謎めいていて、人間味を感じさせない。
また、体のあちこちに「てんとう虫」のシンボルが配置されている。「てんとう虫」は、何かに止まれば一番上を目指して登って行き、太陽に向かって飛び立つ習性がある。そんな「太陽の虫」であり「生命の象徴」である「てんとう虫」を、ジョルノは「幸運のお護り」として好んでおり、それがスタンド・ヴィジョンにも反映されたようだ。


射程距離は2m。だが、パワーは他の近距離パワー型スタンドと比べると、決して強くはない。しかし、スピードはかなりのもの。
そして、何より特筆すべきは成長性である。スタンドを認識して間もない事もあり、短期間のうちに凄まじい勢いで成長を遂げていった。「基本スペック」の向上もさる事ながら、「能力」も次々と新たな領域を切り拓いていった。


得意技は、両拳から放たれるパンチのラッシュ。その掛け声は、父譲りの「無駄無駄」


ジャン・ピエール・ポルナレフがかつてエジプトで入手したと言う『矢』の力によって、スタンドを超えた存在『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』へと進化を遂げる事となる。




<能力>
「生命」を司る能力



本体:ジョルノ・ジョバァーナの父親DIOは、「人」の道を大きく外れ、吸血の「鬼」として生きる事を選んだ男である。DIOは邪悪な欲望の赴くまま、多くの人々の生命を奪い取り、自らのエネルギーとしていった。そんな男の血を色濃く受け継いだジョルノは、生まれながらにして、人並み外れた力強い生命溢れる才能を持ち、あまりにも強すぎる宿命引力を秘めている。そして同時に、父の「罪」「業」「穢れ」をも運命的に背負わされている。
そのため『ゴールド・エクスペリエンス』は、父の代わりに贖罪するかのように、ジョルノ自身の「生命」を他の物質や生物に分け与える能力を宿した。
単なる「生命エネルギー」「生命力」(生命から湧き上がるエネルギー)ではなく、「生命」そのものを分け与える。つまり、『ゴールド・エクスペリエンス』の能力を使うたび、ジョルノの「生命」は少しずつ失われていくという事である。身を削るに等しいこの能力を使い過ぎれば、死の危険さえあるだろう。


『ゴールド・エクスペリエンス』の「手」で触れたり「拳」で殴ったりする事によって、「生命」を与える。
「手」で触れる事で能力を発揮するタイプのスタンドにとって、「手」は能力の「核」である。切断される等して「手」を封じられると、能力を使う事も出来なくなってしまうのだ。逆に、「手」さえ無事なら、「足」や「末端部」でも能力を使う事が可能なスタンドも存在する。この『ゴールド・エクスペリエンス』もそんなスタンドの1つだ。
ちなみに、あらかじめ発動していた能力は、たとえ「手」を失った後でもそのまま持続される。強制的に能力が解除・消滅するような事はない。


ざっくり言ってしまうと、この能力の発動には3つの段階がある。
第1段階は「生命の付与」。『ゴールド・エクスペリエンス』が触れた物質に「生命」を与える。直接触れた物質はもちろん、その周囲数十cm程度のごく狭い範囲ならば「生命」を伝導させて、範囲内の物質にまで「生命」を与える事も出来る。また、ジョルノ自身の「生命」であるため、ジョルノは物質に分け与えた「生命」の位置を感じ取れる。
第2段階は「生物の誕生」。「生命」を与えた物質が、具体的な動植物となって生まれ出る。元となる物質の大きさや重さなどは関係ない。大きなバッグを小さいカエルにする事も出来るし、小さな弾丸を巨木にする事も出来る。同時に複数の生物を生み出す事も容易い。また、ジョルノ自身の肉体の限られた部位(歯や流れ出た血液など)だけは、生物に変える事が出来るようだ。そして、この第2段階の発動のタイミングは、「生命」を与えた時点で設定可能。ジョルノの意志ですぐさま誕生させても良いし、時間の経過でも良いし、何かしらの合図やキッカケに応じてでも良い。
第3段階は「生物の行動」。誕生した生物がアクションを起こす。時には彼ら自身が持つ「本能」「習性」のままに行動したり、時にはジョルノから与えられた単純な命令方向性に従って行動したりする。


「生命」を与えられた物質は、ジョルノの知識とイメージに呼応し、ごくわずかな時間で「生物進化」の道筋を一気に辿る。そして、その時その時、ジョルノが望んだ動植物にまで「進化」を遂げると、この世に生まれ出る。
その「生物進化」の道筋は、ジョルノの「生命」が覚えて知っている。人間の胎児は、母親の胎内でほんの10ヶ月のうちに約9億年もの「生物進化」の過程を経て、変態し、「人間」になる。当然、ジョルノの遺伝子=肉体も、その内に宿る「生命」も、これを記憶している。『ゴールド・エクスペリエンス』の能力は、その「進化」の記憶を刺激し引き出す事で、ジョルノの知識とイメージを具体的な姿形として実在化させるのだ。こうして、多種多様な動植物を生み出すワケである。(その姿に「元の物質」を一部残したまま生み出すケースもある。)


上記を言い換えると、この地球上での「生物進化」の中に一度も現れた事のない生物を創り出す事は出来ない。また、ジョルノの知識が浅い生物や、イメージがしにくい生物を生み出す事も出来ない。要するに、ジョルノがちゃんと知っている生物しか生み出せないのである。そのため、遠い昔に絶滅した生物(恐竜やアンモナイトなど)や、実在しない空想上の生物(ペガサスやフェニックスなど)、あるいはジョルノが知らない生物(猫草やロッズなど)を生み出す事は不可能。
また、負担があまりに大き過ぎるのか、大型の動物を生み出す事もしていない。作中においても、カエルやハエ、ヘビ、クラゲ、魚、クワガタ、モグラ、アリなど、虫や小さな動物ばかり生み出していた。


生み出した生物に、独特な「帰巣本能」「防衛本能」を持たせる事が出来る。
「帰巣本能」とは、その生物の元となる物質があった場所に帰ろうとする本能である。例えば、折れた歯や落とした靴をハエに変えれば、そのハエは歯や靴の持ち主の元へと飛んでいく。実体化型スタンドの残骸をヘビに変えれば、そのヘビは本体の元へ向かって行く。バラバラに砕け散った物のカケラを動物に変えれば、その動物は他のカケラも集めて来る。ジョルノにとっては、追跡や情報収集などに大いに役立つだろう。
「防衛本能」とは、その生物が外敵から自分の身を守ろうとする本能である。これは『ゴールド・エクスペリエンス』が未成熟だった頃に見られたもので、生み出した生物に対するジョルノの支配力が弱かったために備わった本能と言える。ジョルノに忠実ではない生物は、自分の意志で好き勝手に動き回ろうとする。それは即ち、ジョルノの意志・命令に背き、非効率的で無駄な行動を取る事で、外敵やトラブルに遭遇する危険を意味する。だが、何よりも「無駄」を嫌悪するジョルノの「生命」を与えられた生物は、外敵やトラブルから身を守る、思いも寄らぬ手段を手に入れた。それこそが、外から加えられたエネルギーをそっくりそのまま相手に返してしまうという、なんとも効率的な「攻撃反射」能力である。
……ただし、『ゴールド・エクスペリエンス』の成長に伴って、ジョルノの支配力も強まっていくと、次第に「防衛本能」の方は薄れていってしまったようだ。


物質に「細胞」を植え付けて「生命」を与えれば、その「細胞」の持ち主のクローンを生み出す事が可能。スタンド使いの「細胞」なら、同じスタンドを持ったクローンが生まれるようだ。「細胞」という物質的な足掛かりがあれば、「生物進化」の道筋をより明確にピンポイントに辿れる。そうして、「細胞」の持ち主にまで辿り着き、クローン生成が実現できるのだ。
作中では、亀のココ・ジャンボの「細胞」をブローチに植え付け、ミニサイズのクローン亀を生み出していた。なお、ココ・ジャンボのスタンド『ミスター・プレジデント』は訓練で使いこなせるようになったものであり、生まれたばかりのクローン亀は自身のスタンドを制御できていなかった。甲羅に「鍵」をはめ込む事なく、体内空間の「部屋」にディアボロを吸い込んだのはそのためである。無論、ジョルノはそれをあえて狙ったのだが。
同じ理屈で人間のクローンを生み出す事も、恐らくは不可能ではない。ただし、人間の心はあまりにも複雑・深遠で「個性」が強すぎる。本人とまったく同じ精神性・人格を再現する事までは出来ず、あくまで見た目が瓜二つなだけの「別人」になってしまうだろう。と言うよりも、自我の無い機械のような人間か、意識の無い植物人間にしかならないのかもしれない。


生物を生み出すには、その生物に適した環境が必要となる。生物が活動可能・生存可能な条件が整った環境でなくては、生物を生み出す事自体が不可能なのだ。
逆に言うと、その環境に適した生物ならば生み出せるという事である。極低温の環境下で生み出した植物は、ツンドラの地面のように短い草となった。また、『パープル・ヘイズ』の「殺人ウイルス」が蔓延した場所のレンガから生み出したヘビは、「殺人ウイルス」の免疫を持って生まれて来た。


能力を解除すれば、当然の事だが、生物は元の物質に戻る。生物であった時にダメージを受けていれば、元の物質も同じだけ破損している。
能力解除のタイミングは、基本、ジョルノの意志次第である。ジョルノが眠ったり気絶したりしても、解除される事はない。ただし、生み出した生物が死んでしまうと、能力は強制解除され、元の物質へと戻っていってしまう。
また、生み出した生物にあらかじめ命令しておけば、能力解除の合図やキッカケを設定する事が可能。例えば、ポルポを暗殺した際は、拳銃から生み出したバナナに「皮を剥かれたら戻り始めろ」「囓られたら完全に拳銃に戻れ」と命令していた。だからこそ、ポルポは知らず知らずのうちに、バナナの皮を剥く動作で自ら撃鉄を起こし、バナナを噛む動作で引き金が引かれた拳銃の銃口を咥えた形になり、自殺のように殺害されてしまったワケである。
能力射程は、最低でも数km以上はある。どこにいるかも分からないメローネを始末するため『ベイビィ・フェイス』を毒ヘビに変えた行動からは、ジョルノに相当な自信があった事が窺える。どこにいようが確実に殺せる、という絶対の自信が。であれば、数十~数百kmはあってもおかしくないし、もしかすると能力射程の概念自体ないのかもしれない。


以上は、命なき物質に「生命」を与えた場合の効果である。しかし、すでに命を持った生物にも「生命」を与える事が出来る。
植物に「生命」を与えると、その生長を促進させる。草は伸び、花は咲き、芽は育って木となる。そして、木はさらに生長を続け、立派な樹木となる。なおも生長させ続けると、植物はその一生を終え、最終的には枯れ朽ちてしまう。
人間などの動物(スタンドも含む)に「生命」を与えると、その感覚を暴走させる。過剰な「生命」は、精神(魂)に強いエネルギーを漲らせ、意識だけを異常に鋭敏にしてしまう。すると、肉体が意識に追い付かず、意識だけが肉体を離れて飛び出たような奇妙な状態に陥る。その意識の中では時間はゆっくりと流れ、全てがスローモーションに感じられるだろう。だが実際は、肉体はまったく身動き出来ておらず、「痛み」などのあらゆる感覚はスローに鋭く伝わってくるのだ。殴られただけで拷問の如き生き地獄を味わい、ヘタをするとショック死する危険すらある。対策としては、とにかく意識を落ち着かせて肉体と感覚を同調させ、ゆっくりゆっくりと動く以外にない。ちなみに、この感覚暴走の能力射程はほんの数mである。
他者の感覚を暴走させると、ジョルノ自身の感覚まで一緒に暴走してしまう事がある。これは、同じ「ジョルノの生命」を共有する者同士の魂の共鳴とも言うべき現象である。物質は「誕生」に、植物は「生長」に、それぞれ「生命」を効率良く無駄なく使い切れるのに対し、動物はせっかく与えられた「生命」を持て余してしまう。「生命」が溢れ返って行き場を失ったがゆえに、ジョルノへの共鳴をも誘発してしまったのだ。つまり、与える「生命」の量が多いほど溢れる「生命」も多くなり、共鳴は起こりやすくなる。当然、ジョルノ自身もスローでスムーズさを欠いた動作しか出来なくなってしまう。ジョルノにとってあまり利点がある能力ではなく、『ブラック・サバス』戦以降はめっきり使われなくなった。


『ベイビィ・フェイス』の能力をヒントに、ジョルノは『ゴールド・エクスペリエンス』のさらなる可能性を切り拓いた。それは、人体を個々の「部品」「パーツ」の集まりとして捉える、という発想である。物質に「生命」を与えて、負傷・欠損した肉体の「部品」として創り出す。それをパズルのように肉体に埋め込めば、「部品」はどんどん肉体と馴染んで融合し、負傷・欠損を治療する事が出来るのだ。えぐり取られた「目」や「ノド」、切断された「腕」や「舌」、果ては流失した「血液」に至るまで創り出せた。
しかし、治療そのものを専門能力とする『クレイジー・ダイヤモンド』とは異なり、『ゴールド・エクスペリエンス』のそれは本来の能力の応用技に過ぎない。したがって、治療には少々時間が掛かるし、「痛み」もしばらくはそのまま残る。その代わり、ジョルノ本体の治療も可能である。
なお、物質から創り出した「部品」を使うのではなく、元々の本人の肉体であれば治療はもっと簡単になる。「生命」ではなく「生命エネルギー」を与えてやるだけで自然治癒力は向上し、ある程度の負傷は回復するのだ。それに、切り裂かれた傷口に「生命エネルギー」を流し込めば、その傷はすぐにくっ付く。切断された腕を断面にあてがって「生命エネルギー」を流せば、腕はあっさりと元通りに接合される。


人体を個々の「部品」「パーツ」の集まりとして捉える、という発想は、『ゴールド・エクスペリエンス』自体にまで適用された。『ゴールド・エクスペリエンス』のヴィジョンの一部分を切り離し、それに「生命」を与え、別の生物に生まれ変わらせるのだ。作中では、「右手」を切り離し、「ピラニア」に変えていた。元がスタンドであるため、当然、スタンドにも干渉・攻撃が可能である。
そして逆に、物質に「生命」を与え、『ゴールド・エクスペリエンス』の一部分として生み出す事も出来る。作中では、バイクを「右手」に変えていた。元はただの物質ではあるが、恐らく実体化スタンドのような存在になっており、物質にもスタンドにも干渉・攻撃が可能と思われる。これらは、エネルギーの塊であり、生死の概念自体ない、ある意味「曖昧」な存在のスタンドだからこそ可能な芸当と言えよう。
ちなみに、切り離した『ゴールド・エクスペリエンス』の一部分も、ある程度は遠隔操作できる。実際、ジョルノは切り離した「右手」を操作し、バイクに「生命」を与えていた。この遠隔操作が可能な範囲は、せいぜい数mといったところだろう。


ただ「生命」を与えるだけでなく、「生命」に関する事なら大抵の事は出来る。
生物の血液から「血清」を抽出し、それを他者の体内に注入する事も可能である。これにより、ジョルノは『パープル・ヘイズ』の「殺人ウイルス」の毒性を中和した。
また、手で触れれば、その周囲の「生命エネルギー」を感知する事も出来る。「生命」が発する脈動・振動・波動を敏感にキャッチできるのだろう。飛行機程度の範囲内ならゴキブリ1匹たりとも見逃さない。直接触れている物に対しては、精度がさらに増す。その応用として、ジョルノ本体や他者の肉体に触れれば、内臓や骨、細胞組織の状態を知る事が可能。加えて、そこに宿る「魂」の数まで把握できる。作中では、二重人格者(魂を2つ持つ者)のディアボロが潜む肉体を見付け出すために使用された。
このように、能力の幅がかなり広いため、『ゴールド・エクスペリエンス』の能力をここでは「生命」を司る能力と大雑把に表現している。


死者を蘇生させる事は出来ない。ただし作中では、「奇跡」とも言うべき例外中の例外の出来事が起こった。それがブローノ・ブチャラティの「ゾンビ化」である。(「ゾンビ」と言っても、吸血鬼によって生み出された「屍生人(ゾンビ)」とは別物。)
ジョルノは、ディアボロとの戦いで重傷を負ったブチャラティを治療。だが、彼はそのまま息絶えてしまう。ところが、ジョルノがブチャラティに与えた「生命」と「生命エネルギー」は偶発的に、死んでしまった彼の「肉体」と「魂」とを繋ぎ止める接着剤のような働きをしたのだ。そのため、ブチャラティの魂は自分の死体に留まり、ほんの数日の間だけ動く事が許された。生ける屍「ゾンビ」と化した彼に、「痛覚」はすでに無く、その他の感覚も次第次第に薄れていく。そしてついには、肉体の「視覚」や「聴覚」も完全に失われる。もはや、その体に宿る魂によって、「魂の形」を見、「魂のエネルギー」としての音を聞くのがやっとの状態であった。それでもブチャラティは、時間の限り戦い抜き、自分の役目を果たし、幸福を胸に抱いて昇天していったのだった。
……しかしながら、この現象は決して、『ゴールド・エクスペリエンス』の能力だけで実現できた事ではない。「死の運命」を表す『ローリング・ストーン(ズ)』の破壊・回避、ブチャラティ自身の強く気高い意志、これらの要因が重なり合い絡み合ってこそ起きた「奇跡」なのである。


『ゴールド・エクスペリエンス』は本来、悲しく忌まわしい血筋ゆえの呪われた能力とさえ言える。だが、ジョルノ自身はそうは捉えなかった。正しいと信じる「夢」を叶えるために、己の「正義」を貫くために、自分だけが持つ道具・武器として利用してやろうと前向きに捉えた。「呪縛」すらも「希望」に変えてしまった。かつて幼い頃、出逢った1人のギャングが、自らの宿命に押し潰されていたジョルノの暗く澱んだ心に爽やかな風を吹き込んでくれたからだ。
そんな、どこまでも高みを目指す爽やかで純粋な精神は、天空に輝く「太陽」の如き黄金の煌めきをスタンドに与えた。そして同時に、生命を育む「太陽」の光を強くその身に浴びると、スタンドパワーもより強まるという性質をも授けた。
ヴェネツィアでのギアッチョとの戦闘時、グイード・ミスタの額に撃ち込まれた弾丸を逆に利用して一瞬のうちに治療できたのも、凍らされる事なくギアッチョをガムシャラな力押しで蹴り殺せたのも……、まばゆいばかりの朝日で照らされ、『ゴールド・エクスペリエンス』がパワーアップしていたからなのである。「明けた白日」の名を持つジョルノに相応しい。




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