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第1部 ジョナサン・ジョースター
―その青春―


「ファントム ブラッド」





「週刊少年ジャンプ」1987年1・2合併号〜46号まで連載されました。
一世紀以上に渡るジョースター家とDIOの因縁のプロローグにあたる第1部。全ての始まりは、1881年のイギリスから。「ジョジョ」全体を通しての正義の象徴:ジョナサン・ジョースター悪の象徴:ディオ・ブランドー、彼らの運命の出逢いと対立が描かれています。それだけにジョナサンの超善人っぷりと、ディオの極悪人っぷりの対比が1部最大の見所になっていると思います。生まれも育ちも生き方も、何もかもが正反対。互いが互いを引き立てており、そこから生まれる人間讃歌ドラマの重厚さにはただ息を呑むばかり。
異文明の結晶「石仮面」と東洋の神秘「波紋法」、吸血鬼と波紋使い。このアイディアがまた、華やかさの裏に怪しさも漂わせた、19世紀末のイギリスという舞台とも不思議とマッチしています。炎と氷の如くまったく逆の心と力を持ち、それをぶつけ合う2人。とことん熱いです。特異なセリフや擬音やポージングも、その熱さをさらに高めてくれるスパイスとなっています。それでいて、ラストは悲しく衝撃的。荘厳な雰囲気が流れる1部には、「勇気」と「誇り」が溢れています。だからこそ、長い「ジョジョ」の歴史の確かな礎となり、名作となり得たのでしょう。
両親から血統と魂を受け継ぎ、師から技術と命を受け継いだジョナサン。最後は、見ず知らずの赤ん坊を救う事を願い、妻・エリナの幸福を祈りながら散っていきました。そして、彼の遺した希望はエリナの胎内で結実していたのです。「受け継ぐ者」であったジョナサンが「託す者」になった時点で、彼の物語は完結しました。これぞまさしく、人間が人間らしく生きる姿。生きる事の素晴らしさ。わずか5巻の中に、「ジョジョ」の全てが凝縮されています。



<ストーリー>
荒木先生自身も明言していますけど、1部はストーリーが最初から最後まで良く練られています。ジョナサンとディオの少年時代から濃密に描写する事で、この2人の主人公の因縁や戦う動機を際立たせる事に成功しています。特に、少年時代のディオの陰険さは見ものでした。ジョースター家を乗っ取るために、ジョナサンから友人や恋人を奪い、愛犬・ダニーを殺害。さすがは後の悪の帝王です。
そうして7年の歳月が流れ、時は1888年。物語は青年時代へ。ジョサナンの秘められた爆発力に、ディオも計画を変更。ヘタに彼を追い詰めて成長させるのではなく、表面上だけの偽りの友情関係を築いています。しかし、ジョナサンのせいで次々と策が崩れ去ったディオは、ついに「石仮面」を被り、吸血鬼と化しました。人間だった頃は隠していた本性を欲望のままに解放。悪逆の限りを尽くします。ある意味、清々しいとさえ思える程に完璧な悪でした。ここまで徹底的に「悪」を貫き通した悪役も、なかなかいないのではないでしょうか。ディオの人気が高いのも頷けます。彼とは対照的に、甘えや未熟さのあったジョナサンは、真っ直ぐで勇気ある青年に成長。その気高い生き様は、まさしく真の紳士でした。
7年以上も兄弟として育てられた2人。人間の光と闇表と裏のような2人。互いにいがみ合いぶつかり合い、幾度もの激しい戦いを経て、最期の最期に奇妙な友情と尊敬で結ばれた2人。彼らの運命は1つになり、船の爆発で消えました(3部までは)。良い面も悪い面も全部ひっくるめて人間や生命を肯定しようと願う、荒木先生のメッセージがビンビン伝わってきます。読み終わった後には、人間として生まれてきた事への誇りさえ感じさせてくれるでしょう。ストーリーは私の中では、シリーズ中でも最高峰です。


<キャラクター>
先にも書いたように、ジョナサンディオは最高のキャラでした。ジョナサンは、いつだって自分以外の誰かのために命を燃やしていた男。宿敵・ディオのために涙さえ流し、死の間際でもエリナの幸せを祈っていた彼の清い心は、後の世の子孫達にも脈々と受け継がれていくのです。ディオは、1部で最も好きなキャラ。「人間」をやめてまで、どこまでも「自分」であろうとした姿には、悪の美学すら感じます。そのくせ、何よりも生きる事に執着し、誰よりも人間くさかったのがディオの魅力。しかし、彼らを取り巻く名脇役達も忘れてはいけません。
どのキャラも捨て難いのですが、やはりスピードワゴンツェペリさん。ツェペリさんに腹を突かれ、インスタント波紋使いになって活躍するのかな〜なんて期待させられたスピードワゴンは結局、ムードメーカー兼解説役がほとんどでした。でも、一般人ながら「石仮面」の怪奇と戦う男気に溢れた漢だし、後々までジョースター一族の力となる大人物です。ツェペリさんは飄々としていながら、重い過去を背負って戦うダンディーな所がイカしてますね。孤独の中に厳しさと優しさを併せ持つ、ジョナサンの師に相応しい人格者でした。
ダイアーさんは別の意味で大好きです。もちろんネタ抜きでもカッコイイ男ではあります。ただ正直な所、チベットの3人が応援に現れなかった方が、ジョナサンの孤独な戦いを演出できて燃えたんじゃないかな〜とか思えます。彼らにもそれぞれの役割があるってのは承知の上ですけどね。

祖先・両親から受け継いだ誇り、その心の強さ・優しさで、自然と皆に信頼され、多くの「友」や「仲間」を得ていったジョナサン。実の父親や育ての親・ジョースター卿の命すら奪った邪悪な心と吸血鬼の能力によって、強引に「部下」「しもべ」を増やし続けていったディオ。
1部のキャラ達は、この2人を中心に引かれ集まり、「白」と「黒」に完璧に二分されていると言えます。半端なヤツは1人もいません。「白」はどこまでも誇り高く美しく、「黒」はどこまでも醜悪で汚れ切っています。それでも、誰もが必死に生き抜いていました。「正義」とは、「悪」とは何か?「人間」とは、「生きる」とは何か?それをごまかす事なく、真っ向から描き切ったのが1部なのだと思います。


<バトル>
他の部のバトルと比べると、見劣りしてしまうかもしれません。しかし、その熱さと迫力は、どの部にも決して引けは取らないはずです。1戦ごとに環境もガラリと変わり、自分や相手の能力、その場の環境のすべてを駆使して戦うという、荒木先生のバトルの真髄はこの頃からすでに発揮されています。「人間」である事を失った異形の怪物達との激闘の1つ1つを通じ、恐怖に立ち向かう「人間」の素晴らしさをも我々に教えてくれました。
「ジョジョ」の場合、お気に入りではないバトルを挙げる方が難しいのですが、特に好きなバトルを挙げてみます。

ブラフォード戦は、水中でのジョナサンの機転や、ブラフォードの髪を使ったトリッキーな攻撃などももちろん良いのですが、何と言っても最後のやり取りが感動的でした。人間としての高潔な魂を取り戻したブラフォードが、ジョナサンに剣を託して散っていくシーンは、涙無くして見れません。
タルカス戦は、ポコが勇気を振り絞るシーンやツェペリさんが命を落とすシーンと、これまた泣けるんです。荒木先生が少年漫画として気を使っているのが、「少年の成長」を描くという事らしいのですが、この戦いでジョナサンとポコの2人は大きく成長しました。ポコの名セリフ「あしたっていまさッ!」は、多くの読者に勇気を与えた事でしょう。
ジョナサンとディオの対決は、もはや語るまでも無いですね。因縁の宿敵とは、まさにこの2人を言うのでしょう。




(2004年2月10日)
(2006年10月2日:少し改訂)




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