彼がどこへ向かうのか?
二人で追跡しましょう
●今月のウルジャンも「ジョジョリオン」が表紙!パッと見の印象だと、先月号と「対」になったデザインですね。全面がシルバーに輝く先月号に対し、暗闇の中でゴールドに光る今月号。定助にしても、先月号はしゃがんでポーズを取り、ファッションはパープル中心の寒色系。一方、今月号は立ってポーズを決め、ファッションもイエロー中心の暖色系です。これもまた、1つの連作と受け取っても良いのかな?
こちらを真っ直ぐに見つめ、ビシッと指を指す定助のイラスト。これまたカッコイイなあ。セーラー服のはためきが、彼の全身を打つ風をも感じさせます。向かい風の中、それでも怯まずに己の道を選択して進む。そんな定助の強さと気高さが表れているかのよう。この服のシワシワ具合、そしてキュッと鋭く絞られた裾……、絶対に荒木先生も楽しんで描いてますね(笑)。
さらに、背景にも要注目ッ!ラフなタッチで描かれた、「ジョジョリオン」を象徴する数々のスケッチ。「ジョジョ」24巻の表紙テイストです。『ソフト&ウェット』、康穂に『ペイズリー・パーク』、憲助さん(っぽい)に『キング・ナッシング』、常敏、鳩ねーちゃん、常秀、大弥ちゃん、つるぎちゃん、岩助といったメインキャラ達はもちろん、ランボルギーニにクワガタ、謎の「果実(フルーツ)」、ネコちゃん、町の家々、雨や虹といったものまで。「J」と「O」を前後に重ね合わせたようなシンボル・マークや、矢に射抜かれる「JOHSUKE」「YASUHO」と書かれたハート、鉢の中から出て来る芽とか、ジャンケンの手、意味ありげなものも色々あります。特に、月と水兵帽と短剣とメッセージ・ボトルが気になる。「漂流」「遭難」をイメージした、定助の象徴的アイテムなのかもしれませんが、今後どこかでストーリーに絡んでくる要素もあったりして?
●今回のトビラ絵は、康穂&つるぎちゃんのバスト・アップ。2人の背後には、それぞれ『ペイズリー・パーク』と、『ペーパー・ムーン・キング』の折りガエルも。
つるぎちゃんは相変わらずのエロガキっぷりで、ちゃっかり康穂にピッタリ寄り添い、肩にもたれ掛かってやがります。まぁ、でも……、最初はガチでロクでもなかったつるぎちゃんも、今ではすっかり康穂とコンビを組むまでになったんですね。ポジション的にはエンポリオに近い。ゆくゆくは6代目憲助になる男でもありますし、つるぎちゃんの精神的成長も今後に期待したいところです。
あと、表紙イラストの背景にもあった「J」と「O」を重ね合わせたシンボル・マーク、トビラ絵にも登場しました。荒木先生、ちょっと気に入っちゃったんでしょうか?(笑)
●康穂とつるぎちゃんはあの後、定助に会う事もなく、例の「鉢植えの男」についてすぐさま調べ始めたようです。その結果、様々な情報をゲット!情報収集に関しては、『ペイズリー・パーク』の右に出る者などそうそういませんぜ。
彼の名は「大年寺山 愛唱(だいねんじやま あいしょう)」。年齢は29歳。住所は杜王町846の6。独身で、職業はプロ野球チーム「晴天バーディーズ」の本拠地「杜王スタジアム」の職員。防犯カメラの記録によると、彼はほぼ毎日、16時50分にあの交差点に現れているらしい。肝心の「常敏との接点」は何も見付からなかったようですが……、震災の被害を受けた「杜王スタジアム」の修復・設計をした人間が、あの八木山夜露である事が判明!常敏と愛唱には、夜露という共通項があった。そして夜露は定助を執拗に狙っていた。すべては、「震災」と「定助」と「フルーツ」を中心に始まっている。
ずいぶんと変わった名前ですけど、「大年寺山」もやっぱり仙台の地名です。3本のTV塔が建っている山みたい。夜露の苗字も「八木山」なので、「山」繋がりですね。私は今のところ、夜露もこの愛唱も「岩人間」だと思っています。もしそうであれば、「岩人間」の苗字にはみんな「山」が付くのかな?「岩」が集まって「山」になる、ってなイメージで。名前にしても、「夜露」に「愛唱」と、なんかロマンティックで文学的な響きが共通してる感じ。……ただ、夜露とは違い、愛唱はちゃんと住所が明確になっております。仮に「岩人間」であっても、社会に対する姿勢や目的は夜露とは異なりそうです。
●愛唱は今日も16時50分頃、いつもの交差点に現れました。近くのビル(1Fが薬屋のホテル)の屋上から、こっそり望遠鏡で覗く2人。愛唱の手には、やはり「フルーツ」が2個も実る鉢植えッ!
康穂は改めて、その「フルーツ」がつるぎちゃんの探している物なのかどうか、冷静に確認します。つるぎちゃんは興奮気味にそれを肯定。この杜王町のどこかで、「フルーツ」が栽培されている。その場所を突き止めなければ!
愛唱は常敏を待って、毎日あの交差点に立っているのかと思いきや……、突然、1人で公園の方へと歩き出しました。それを見て、つるぎちゃんは後を追おうとします。しかし、康穂はそんなつるぎちゃんを引き止める。常敏の息子である以上、きっと愛唱はつるぎちゃんの顔を知っているはず。さらに、愛唱は恐らくスタンド使い。自分達の追跡が少しでも悟られたら、全てが終わってしまうかもしれない。かと言って、このままではヤツを見失ってしまう。
そこで康穂は、つるぎちゃんに提案。『ペイズリー・パーク』を潜ませた康穂のスマホを、『ペーパー・ムーン・キング』で「折り紙」にする。そして、作られた折りガエル!愛唱に気付かれぬよう追跡するだけでなく、そのカメラは康穂が持つパソコンへと映像を送ります。2人の持つ能力を最大限に活かした、完璧な作戦です。康穂はもうすっかりスタンド使いですな。この頼もしさ、康一くん以上だぜ。
●折りガエルは公園の奥へ進む愛唱の姿を捉えます。ところが、折りガエルがアスファルトにジャンプした途端、いきなりガラガラドガンと騒音が鳴りまくる。大慌ての2人。こんなんじゃ追跡がバレちゃうんで、距離は一定に保ちつつ、アスファルト上は避けて芝の上を進む事に。
しかし、よくよく見ると、いつの間にか愛唱が持っていたはずの鉢が消えているッ!?周囲を見渡したところ、倒れた車椅子と、砕けた鉢を発見。せっかくの「フルーツ」の木もヘシ折れちゃってます。どうやらさっきの騒音は、その音だったようです。そりゃあ、スマホ製のカエルがジャンプしたくらいであんな音は出ないよね。……しかも、あの「フルーツ」の食べかけがそばに捨てられていました。今、追跡すべきなのは愛唱の方ではない。康穂が映像を巻き戻して再確認し、その車椅子に座っていた老人を探す!
老人は右脚を失っており、鼻水やヨダレを垂れ流す、目も虚ろなジイさん。なんかもう、今にも死んじゃいそう。ところが、そのジイさんは芝の上を這って動いていました。なんと、失っていたはずの右脚が徐々に生えてきている!どことなく、6部の植物化してウネッてる小男を思い出すなあ。ジイさんはあの「フルーツ」を2個とも貪り食っており、やがてジイさんの脚は完全に再生。ついさっきまでの弱々しい姿がウソのように、元気に走ってます。当のジイさんは、そんな自分に感動して嬉し泣き!気持ちは分かるけど、スゲー不気味。いよいよあの「フルーツ」の効能が明かされつつあります。
●ジイさんは車内に飛び込み、奥さんと泣いて喜び合います。奥さんは「手術で失った左脚も」とか言ってますけど、どう見返しても右脚ですよね(笑)。
それはともかく……、ここからがヤバい。ジイさんの両眼が石のように堅くなり、やがてボロボロと崩れていったのです。これは「等価交換」。「失った右脚」を取り戻す代わりに、「両眼」を失う。ジイさん本人もそれを認識した上で、あえて「交換」した様子。自由に走り回れる肉体を得られるのなら、いくら支払っても、どんなものと「交換」しても構わない。この「両眼」も、またあの「フルーツ」を食って、違う何かと「交換」すれば良い。
ジイさんは眼が見えなくなった事も意に介さず、奥さんに欲情ッ!「若い時のように君とヤりまくりたい」「君とやる方が重要じゃああ」と言って、マジで車内でヤリ始めちゃったのです。ぐあ〜、エグい!老夫婦の情事なんて、是が非でも見たくねえーッ!それを思いっきり目撃しちゃったのが康穂とつるぎちゃん。抱き合って悲鳴を上げてます。こんなん、つるぎちゃんもトラウマなるわ(汗)。いくらエロを描く「ジョジョリオン」と言えど、さすがに意表を突かれました。
常敏とは無関係のジイさんが「フルーツ」を食べていた。つまり、愛唱のターゲットは常敏だけではなかった。これは売買だったのです。愛唱は「フルーツ」の売人だったのです。毎日「フルーツ」を持って交差点に立っていた目的は、「フルーツ」を売りさばく事!いろんな衝撃を受けながらも、つるぎちゃんは「フルーツ」の破片を回収しようとします。……が、そこに愛唱現るッ!折りガエルの存在に気付かれ、踏み付けられてしまったのです。それは本体にフィードバックし、康穂もつるぎちゃんもダメージを受ける。大ピーンチ!と、今回はここで終わりです。
●先日、「ジョジョリオン」の謎と考察・予想をまとめてみました( ⇒ こちら )。そこに書いた内容を活かしつつ、さらに考察を進めたいと思います。
まず、夜露が持っていた「フルーツ」と、愛唱が鉢で栽培していた「フルーツ」は、厳密には別物です。『キング・ナッシング』が予測する樹木の形と、鉢植えの木の形がまるで違うのは、そもそも出どころが違うから。簡単に言っちゃうと、夜露が持っていた方が「天然モノ」、愛唱が持っている方が「養殖モノ」なのです。「天然モノ」から取り出した種を埋めて、人工的に育てたのが「養殖モノ」。
「天然モノ」は、食べた者にどんな病気やケガも治してしまう強い生命力と不老長寿を授けます。その代償として、普通の人間としての人生を失い、「岩人間」と化してしまうのです。それもまた「等価交換」。一方、「養殖モノ」はパワーそのものが弱い、出来損ないに過ぎません。食べた者自身の体内で「等価交換」が行なわれます。ジイさんが「眼」と引き替えに「右脚」を得たのは、つまりそーゆー事です。東方家に伝わる病気「石化病」(仮称)を治すのは、この「養殖モノ」ではかなり厳しいはず。もっとも、いくらパワーが弱いとは言え、ヨボヨボの老人を走れる程度に元気にするには充分。(逆に言えば、2個も食べてやっとその程度って事。)
ただし、出来損ないの「養殖モノ」には、「岩人間」を生み出すほどのパワーはありません。「等価交換」で失う部位を石化させるのが精一杯。さらに、石化して砕けてしまった部位は、「養殖モノ」をいくら食べたって取り戻せないのです。それでもジイさんは「両眼」を取り戻すために、また別の部位を代償にするでしょう。それを延々繰り返していけば、最終的には全身が石化し、砕け散ってしまう事に。
愛唱は、と言うか「岩人間」達は……、そんな「養殖モノ」を人の弱みにつけ込んで売りさばき、カネや欲しい物を得ているワケです。ただ、目標としては「天然モノ」と遜色ない「養殖モノ」を作り出したい。そのために、フルーツのプロフェッショナルである常敏と接触しているのです。常敏は、愛唱からゲットした「養殖モノ」を調べて研究し、「石化病」を副作用なしで治せるほどの「フルーツ」を品種改良で作り出したいと考えています。互いに利害はほぼ一致。即ち、常敏は夜露や愛唱と手を結び、「フルーツ」の栽培・改良について協力し合う関係なのでしょう。
★今月は31ページ!残念ながらページ数自体は少なかったものの、ストーリーが核心へとまた一歩近付いた展開だったので、なんか内容的にはボリュームたっぷりでした。直接的な戦闘力のない2人の追跡劇、ドキドキハラハラで面白かったッ!定助の孤独な戦いが多いせいか、定助以外の人物達がメインを張って戦う事自体、妙に新鮮さがありますね。ストーリーが進んだ事を実感するし、定助にも仲間が出来たんだなって感慨深くもなります。
作者コメントは「謹賀新年。去年は一度も乗らなかった飛行機に、今年はがんばって乗るぞ!」との事。う〜ん、別に頑張って乗らなきゃいけないものでもない気が(笑)。ともあれ、もし乗る時があったなら、荒木先生の旅の無事を祈ります。
さて……、今月号の巻頭には、ウルジャン20周年記念イヤーとして、「UJ@秋葉原キャンペーン」なるイベントについて掲載されていました。定助が次々と枠を超えながら、徐々に服を脱いで全裸になっていくイラストも描かれています。それは良いのですが、このキャンペーンの詳細がサッパリ分からない。1/19(月)から、描き下ろし定助がアキバに出現する、との事。でも、それってどこで観れるの?原画なの?何も書かれていない、なんとも不親切極まる記事でした。まあ、何にせよ行くけどさ〜。
(2015年1月18日)