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心から…
本当にあんたに ありがとうと感謝したい。


#057 ミラグロマン その2





●今回のトビラ絵は、肖像画チックな常秀&『ナット・キング・コール』。この常秀、なんかブン殴りたくなるツラしてやがります(笑)。よくコイツにあんなカッコいいスタンドが発現したな!でも、そんな常秀が好きだぜ。


●使っても使っても持ち金が増え続けるという、謎の現象に囚われてしまった常秀。自販機でジュースを買うだけでも、代金以上にお釣りが返って来る始末です。何回試しても結果は同じ。事ここに至って、やっとこさ常秀も違和感を覚えたらしく、お金を改めて調べてみる事に。しかし、見た目も感触も匂いも別段おかしい点はなく、確かに本物の現金である模様。
そんな事をしてる間に、競艇の舟券をオンラインで買ってみたところ、これまたあっさり的中!300万以上も儲けちゃいました。「んな場合じゃねーだろ」と言いたくもなりますが、ここでさらに奇妙な事態へと発展。さっきまでピッタリ札束が収まっていたはずのバッグから、お金が溢れ出してきたのです。無理にしまおうとしたらバッグが破れてしまい、慌ててコインロッカーに収納しようとします。
この時、常秀は偶然にも気付いたのでした。全ての紙幣の番号の末尾「13R」になっている事に……。恐らく、『ミラグロマン』と呼ばれる現象に関わった紙幣には、その共通のナンバーが刻み込まれてしまうんでしょうね。時計屋のおっちゃんやキャバのオーナー達も、そこで見抜く事は可能だったってワケか。


●ギュウギュウ詰めにしながらも、なんとかお金をロッカーに収納。しかし、コインロッカーも言わば自販機の一種。いきなりロッカーが壊れ、貯め込まれていた小銭がジャラジャラと出て来て、収納したお金まで溢れ出して来ます。風に吹かれ、万札が10枚ほど飛ばされてしまいました。
それを拾った警官が常秀に迫って来るもんだから、常秀はビックビク。持ち金の額も額なら、そもそもの始まりも盗んだお金ですしね〜。ところが、警官も通行人達も、飛ばされた万札を拾って、親切に常秀に返してくれました。それも、さりげなく枚数が増えて(笑)。バッグ1つに入っていたはずのお金は、もはや大増殖!自前のリュックや拾った「笹かまぼこ」の紙袋にも満杯に詰まって、その重さで歩く事すらままなりません。
常秀はタクシーを拾い、帰路に就こうとします。もう仕事終わりで帰るだけだった運ちゃんを、5万円で買収してまで。しかし、残念ながら「萩の橋」は工事で夜間通行止め。他の橋はかなり遠回りで、今日は奥さんの誕生日だから早く帰りたいと言う運ちゃんは、ここで常秀を下ろします。で、目的地まで送り届けられなかったからと、さっきの5万も返してきました。チップとして受け取ってほしい常秀と、筋が通らないからと受け取り拒否の運ちゃん。その攻防の末、常秀が運ちゃんの胸ポケットにお金を無理矢理突っ込んだら、なんと入れてあったライターが点火!火は万札に燃え移ります。
すると、燃えている万札そのものが、まるで自分の領域をどんどん広げていくように、文字通りどんどん増殖。みるみるうちに万札は増えまくり、常秀はお札の海に飲み込まれてしまうのでした。――気が付くと、常秀は自宅にいました。時刻は朝の5時。美木良介を観ながら体操しようとリビングに来た憲助さんが、ソファで爆睡してる常秀を見付けて起こしたようです。あの出来事は夢だったのか?釈然としないまま自室のドアを開けると……、自室はすでに万札の海!またもやカネの波が押し寄せるッ!これは一体、何なのでしょうか!?


●場面は変わって、とあるアパート。1人の男が買い物から帰って来ました。すると、彼の名を呼ぶ者が現れます。それは常秀!男の名は「苦竹 財平 (にがたけ ざいへい)」。常秀は、昨日盗んで捨てたキャッシュカードを回収し、その名前から住所を突き止めたのです。そう……、彼は昨日のサイフの持ち主の男!(ちなみに、「苦竹」も仙台の地名ですね。)
全ては、あのサイフを盗んだ時から始まった。全ては、この財平の仕業に違いない。そう確信し、常秀は(自分の事は棚上げして)怒りに燃え、襲撃します。財平は買い物袋を落とし、品物も散乱。しかし、それでも静かに常秀に礼を言い、『ミラグロマン』のルールを語り始めるのでした。これから「呪い」に縛られる事になる常秀のために。
財平もあくまで『ミラグロマン』の犠牲者であり、元々は2年前、旅行先のドイツ:ハンブルクでホームレスの空きカンからお札を1枚くすねた事がキッカケだったらしい。そのお札こそが、『ミラグロマン』の呪われし紙幣。末尾のナンバーはやっぱり「13」。その「13紙幣」を持つ者は、いくらお金を使っても、必ず増えて戻って来る。そのお金は他人にあげる事も、交換する事も、捨てる事も出来ない。逃れるためには、「13紙幣」を元の持ち主に返さなければならない、との事。
しかし、「13紙幣」を破いたり燃やしたりして破壊すると、『ミラグロマン』の「呪い」は完全に自分に移る。こうなってしまうと、無限に増え続けるお金に恐怖と絶望を抱くのか、買い物をする気も、食欲も失せていく様子。心が壊れてしまう前に、他の誰かに「13紙幣」を自分から盗ませ、破壊させなければならない。「呪い」を他人に押し付けなければならない。ただし、これらの事実は、警官や政治家、裏社会の者達、その辺の住民達に至るまでけっこう広く知られており、そうそう盗んでもくれない模様。実際、財平も常秀が盗んでくれるまで2年間待ち続けていた。財平がお札をくすねたホームレスも、実はホームレスのフリをしているだけの男だったみたい。


●財平はさらに、『ミラグロマン』の起源をも語ってくれました。都市伝説として語り継がれているようです。
……名前も国も時代も謎だが、ものすごく優秀な武器を作って売り、世界中の戦争で大富豪になった武器商人がいた。子孫もその仕事を受け継いだ。しかし、ある時、商人は裁判に負けた事によって、500億ドルもの賠償金を支払う事になってしまう。商人の心はすでに壊れており、家族を殺すと、自分の体にも火を放って自殺した。その焼死体のそばには、1枚の焼け焦げた紙幣が残されていて、それが『ミラグロマン』の最初の「13紙幣」となったらしい。この「呪い」はどの国に逃げても追って来て、紙幣の姿を変えて現れると言う。
なるほど。そのどこかの武器商人の「カネへの執着」や「人々への憎悪」が、死後も残り続け、一人歩きするスタンドとして発現したのでしょう。『スーパーフライ』や『アヌビス神』、『ノトーリアス・B・I・G』なんかを彷彿とさせるスタンドです。スタンドそのもののヴィジョンも描かれていますけど、顔や手にポッカリ穴が空いていて、ちょっぴりハワイアンなブラックホール(「キン肉マン」の)って感じ?なかなかイカしてます。能力的にヴィジョンはあんま必要なさげな気もしますが、コイツが「13紙幣」に取り憑いていたりするんですかね?


●そういったワケで、財平は常秀のおかげで「呪い」から解放されたのでした。昨日まで彼の部屋は紙幣で溢れ、楽しい出来事など何もなかったようです。所詮、人生ってのは無い物ねだりの連続に過ぎないのか……、お金が無い時は「カネが欲しい」「あれが欲しい」と物欲が湧き出てくるものの、いざ何でも買えるだけの大金を得てしまうと、徐々に物欲は薄れて「前の自分に戻りたい」なんて思ったりするのかもしれません。人間は刺激と平穏を交互に求めるものなのかもしれません。
お金を手放せた財平は、ようやく「欲しい」という気持ちを取り戻し、それを「買う」という行為に幸せを感じられたのでしょう。食欲もなくなって餓死寸前だったのに、今はリンゴを美味そうに頬張っていますし。なんとも皮肉な能力です。
そして財平は、買って来たペットボトル飲料を拾い上げ、キャップを開けつつ、常秀へのアドバイスを終了。改めて常秀に礼を言います。しかし、その口元はニヤニヤといやらしく歪み、常秀のマヌケさ・欲深さを見下してほくそ笑んでいるかのよう。常秀も常秀だけど、コイツも大概だな。ところが、当の常秀は余裕綽々な表情。すでに『ナット・キング・コール』を発現させ、罠を仕掛けていたのでした。「ネジ」によって、ペットボトルと「13紙幣」を合体させており、キャップを開けた行為で同時に「13紙幣」をも破らせていたのです。あの「ネジ」は、単純に「接着」「固定」させるだけじゃなく、割とフリーダムに「合体」させる事も可能なんですね。


●見事、財平自身に「13紙幣」を拾わせ、破壊させた常秀。『ミラグロマン』の「呪い」は再び財平の元へ!最後はキッチリ財平を殴ってブチのめし、大量の紙幣に埋もれる悲痛の叫びをシカトして、完全勝利ッ!……しかし、その帰り道、しょーもない音楽で成功してるらしいバンド「STADIUMS」の宣伝トラックを横目に、なんか物寂しい空気になってます。
「でもオレには…? そんな才能さえ無いよなあ……」「ほんのちょっぴりだって…」「オレには「何が」あるっていうんだ?」「…あいつらはオレと… 同い年…」
いつも他人を羨ましがってばかり。ワガママを言ってばかり。チョーシこいてばかり。そんな常秀のひねくれた性格は、劣等感と言うか、自信の無さ「居場所」の無さゆえだったのかも。なんだかんだ言ってても、常秀だって定助や康穂と同様、自分が何者なのか、どこへ向かえばいいのか分からない人間なのかも。あんだけ好き放題やっときながら、最後はしんみり切なく締めるとは予想外(笑)。


★今月は49ページ!『ミラグロマン』、思った以上にエグいスタンドでした。「カネが増えて何が困るの?」って思っちゃいそうですが、何かする度に延々増えまくるのは単純に怖いよなぁ。ドラえもんの「バイバイン」もそうだけど、何かが底無しに増え続けるのって、人の手には負えない恐ろしさを感じます。
何よりも、この『ミラグロマン』編は、意外にも「ジョジョリオン」という物語のテーマを象徴するかの如きエピソードだったと思いました。「呪い」を解く物語。「遺体」や「壁の目」、「ロカカカ」に共通する「等価交換」という力。……言ってみれば、この『ミラグロマン』は「等価交換」を無視した存在です。買い物にしても物々交換にしても、人間社会の基盤は「等価交換」で成り立っているし、人間関係だって「ギブ・アンド・テイク」が基本なワケで。その前提・均衡をブッ壊して、一方的に奪われ続けるのも与えられ続けるのも、普通の人間には耐えられない地獄なのかもしれません。何事もバランス。過ぎたるは及ばざるが如し、ですね。
そういう意味では……、己の欲望にド素直で、お金も愛情も求めるだけ・与えられるだけの常秀が、『ミラグロマン』と出遭ったのは必然とも言えそう。結局、自分自身の力で得たものなど何も無い常秀。今回の一件で、そんな何も持たない自分を自覚できたのは大きい経験だったかも。ひたすら一方的だった今までの常秀は、『ミラグロマン』と大差ない存在。他人も自分も不幸にしか出来ない存在なのです。このまんま憎めないクズでいてほしい気持ちもあるんだけど、意外にも成長の兆しを感じ、ちょっと将来に期待が抱けますね。常秀が誰かに何かを「与える」姿が見られたら、すごいグッと来そうです。
作者コメントは「今年からはエアコンは28℃で24時間フル回転にした。」との事。付けたり消したりするよか、そっちの方が省エネって言われたりしてますしね。室温が一定に保たれていれば、体調も崩しにくそう。みなさんも夏バテとかには気を付けてください。




(2016年8月18日)




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