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あの「定助」を利用する
オレたちが勝つ為にな


#073 プアー・トムとオゾン・ベイビー その②





●2ヶ月ぶりの「ジョジョリオン」!今回のトビラ絵は、頭の後ろに両腕を回してセルフ腕枕っぽいポーズを取った定助です。表情も穏やかなので、草原かどっかでのんきに寝そべってそうな風にも見えなくもないけど、アオリは「ただ待つことは許されない ―― 」と気合い満々。果たして、今回の定助はどう動くのか?


●これまでのあらすじ&現在の状況をモノローグで説明してくれたのは、いつもの定助ではなく、珍しく常敏。この事からも、プアー・トム戦は常敏が主役のエピソードである事が窺えますね。「新ロカカカ」を誰にも渡さないために、定助と礼さんを始末する。そうプアー・トムに言われて彼のスタンドを発動させたのに、なんと自分自身も息子:つるぎちゃんまでも攻撃対象に含まれていた。まさかの失態、まさかの危機!
東方家のガレージにて。プアー・トムのスタンド『オゾン・ベイビー』にやられ、つるぎちゃんと岩助が血まみれで倒れます。岩助に至っては、目玉が外に飛び出てしまってる始末。これはヤベー!東方邸とガレージを繋ぐ通用口兼倉庫部屋から、常敏も姿を現します。彼の体にも、つるぎちゃん達と同様の異変が発生。みんなマトモに動く事さえ叶いません。ここでようやく常敏は悟りました。『オゾン・ベイビー』の狙いに、本命も区別も何も無い。プアー・トムは最初から、果樹園に近付く者を皆殺しにし、後でゆっくり「新ロカカカ」を探すつもりだった。
プアー・トム視点で語られているワケではないので、本当の狙いがどこにあるのかは確かじゃありませんが……、少なくとも、常敏が騙されて、いいように使われちゃった事は事実。優秀で頭もイイのに、やっぱどこか少年というか純粋というか。


●満身創痍ではあるものの、岩助はズルズルと体を引きずりながら犬小屋へ避難。常敏もつるぎちゃん救出に向かいますが、部屋から出た途端、謎の症状はさらに悪化!鼻・耳・口のみならず、目からも出血し、あっさりブッ倒れてしまいました。どうやら頭痛も起こっているようです。しかし、常敏の感覚からすると、これは病気や毒物とかの攻撃ではない模様。
一度閉じた倉庫部屋の扉。つるぎちゃんが岩助を外に出したらこうなった。倉庫部屋を見ると、さっきまでベゴンベゴンに潰れていたポリ容器の形状が元に戻ってきている。―― 恐らく、あの「扉」から外へ出たから、この異常事態が進行した。自分は部屋の中に残っていたから、症状が少し軽かった。常敏はそう推理し、つるぎちゃんを倉庫部屋の中に戻そうとします。ところが、症状はどんどん悪化し、ますます動けない!
常敏は『スピード・キング』を発動ッ!ガレージに停めてる車を「加熱」する事によって、エンジンを点火したのです。そのまま『スピード・キング』がハンドルを動かし、常敏はその車に掴まって強引に移動。吹っ飛ばされるような形で、つるぎちゃんと共に倉庫部屋へと戻ったのでした。実に巧いスタンド利用法。そして、すかさず扉を閉めると、再びポリ容器がヘコみ始めます。
『オゾン・ベイビー』の能力。それは空気の「加圧」「扉」で閉じられた空間内の空気がゆっくりと「加圧」され、「扉」を開けると「気圧」はゆっくり元に戻っていく。(外の気圧は変化しない。) だが、「加圧」された部屋からすぐに外に出てしまうと、内外の気圧差により「減圧症」に罹ってしまう。急激な減圧は、身体血管内の空気を気泡にし、膨張させ、血管を詰まらせてしまう。……どうやら、こんな感じの能力っぽい。単純に「気圧」を上げるというだけじゃなく、「扉」という境界・結界(物理的な条件・制限)を設ける事で、「気圧差」というシチュエーションを作り出すあたりが荒木先生チックですな。個人的にかなり好みの能力です。


●時を同じくして、果樹園地下の定助&礼さん。当然、彼らにも異変が起き始めていました。地下室の「加圧」により、2人とも耳鳴りや頭痛、鼻血などの症状に見舞われています。すぐに地下室を脱出しようとしていますが、これが逆にマズイんだよなぁ。こんな状況に陥ったら、誰だってその場から急いで離れようとするでしょう。しかし『オゾン・ベイビー』は、その心理さえも逆手に取ってしまう、最高にいやらしい能力なのです!
果樹園に近付く者どころか……、東方家全体が射程内であり、「枝」の存在を知る者全員がターゲット。その上、自動操縦タイプのスタンドだから、プアー・トム自身はリスクがゼロ。想像を絶する最悪な事態に、常敏は怒りと屈辱の叫びを上げます。そんな彼の背後に現れたのが、『オゾン・ベイビー』のヴィジョン!「SPEEEEEEYYYYYY (スピイイイイイイ) ――――」という咆哮と共に放たれる『スピード・キング』のラッシュ!ところが、拳は虚しく空を切るだけ。どうやらこのヴィジョンはただのイメージに過ぎず、コイツに直接攻撃する事もされる事もないみたい。
スタンドそのものは「ミニチュアハウス」で、このヴィジョンはターゲットとしてロック・オンされた者にだけ見える像って事なんでしょうかね。ひょっとすると、通常は近距離パワー型で、このヴィジョンを直接操作できるんだけど、別の物質に憑依して埋まれば自動操縦に切り替わり、能力射程も広大になる……なんて特徴を持つスタンドだったりするのかも。だとしても、いちいちヴィジョンを見せ付けて来られては地味にうっとうしいな。つくづく、プアー・トムの精神性はろくでもないようです(笑)。


●倉庫内にて常敏は、漂白剤とミネラルウォーターとチューブをゲット!チューブの両端を漂白剤と水の容器にブッ刺すと、漂白剤を『スピード・キング』で「加熱」。すると、漂白剤に使われている塩素酸ナトリウム(NaClO3)が熱分解され、酸素が発生ッ!この高濃度酸素はチューブを通り、水に溶けます。つまり、ミネラルウォーターのペットボトルが即席の酸素ボンベになったのです。「減圧症」に効果があるのは、高濃度酸素の吸入ですからね。こういう身近な物を駆使する知恵と機転は、これぞ荒木マンガという感じ。
酸素ボンベのおかげで、ようやく症状が少し収まってきたつるぎちゃん。父:常敏を改めて問い質します。これほどまでに息子を巻き込み、色々とバレてしまった手前、常敏もいよいよ観念したのか……、恐らく本音であろう言葉を返して来ました。要するに、憲助さんとは考え方は違うけれど、自分も東方家のために行動している、という事です。憲助さんがどんな綺麗事を言おうと、強いヤツが残り、弱いヤツは消える。どんな犠牲や代償を支払おうとも、東方家の「呪い」を、つるぎちゃんの「病」を必ず治す。悪い事をしているんじゃなく、敗北こそが「悪い事」。「新ロカカカ」を独占し、プアー・トムは殺す。そして、今、近くにいるはずの定助を探し、勝つために利用する。そう宣言しました。
この独善的な向上心・上昇志向・ハングリー精神、すんごいカッコイイぜ。DIOに通じるものがあるよね。倫理的・人間的な「正義」とは程遠いけど、自然界の「掟」としては真っ当だし。ただ、そういう思想は「ジョジョ」ではデンジャラスすぎます。つるぎちゃんにも良からぬ影響を与えかねません。この調子だとやっぱ、近い将来、常敏は死んじゃいそうだよな~。


★今月は31ページ!ページ数は少ないものの、常敏の魅力が詰まった回で満足でした。面白かった!『オゾン・ベイビー』を通して、プアー・トムのヤバさも伝わってきました。恐らく、最初から外に居続けていれば効果ゼロ、能力を喰らってしまっても「扉」を上手く開け閉めして「気圧」調整できれば攻略可能な能力のはずなので、発動のタイミングを見計らったり攻略の邪魔をしたりするために、プアー・トムもすぐ近くにいるものと思います。直接対決が待ち遠しい。
作者コメントは「冬の金沢旅行に行ってきました。色々とおいしいものあるね~。」との事。以前は岐阜旅行もされていましたね。荒木先生はプライベートだと中部地方に行かれる事が多いのかな?私は今までほぼ行った事がないので、ぜひ行ってみたいもんです。
さて、先月は休載だったワケですが、どうやらそれは「岸辺露伴は動かない」の新作執筆のためだった様子。2月26日(月)発売の「週刊少年ジャンプ」13号に、「エピソード10 ザ・ラン」が掲載ッ!そして、とうとうコミックス2巻も発売決定!こちらは7月19日(木)発売予定です。しかも、なんと特典として「六壁坂」のOVAも製作されるというんだからビックリ!2ヶ月待った甲斐があるビッグ・サプライズでした。




(2018年2月19日)




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