TOP  <<#073 戻る #075>>



オレは今!
「正しい道」を進んでいると信じている
だから 必ず勝てる!


#074 プアー・トムとオゾン・ベイビー その③





●今回のトビラ絵は、定助・礼さん・常敏・つるぎちゃんの4人。ほぼ無表情&棒立ちという、ぶっちゃけ面白みに欠けるし、これと言ってコメントするような事もない絵です(汗)。
あえて言えば、常敏が持っているバッグ。トランプのキングの柄になってるのが東方家らしいな、って感じ。


●プアー・トムのスタンド『オゾン・ベイビー』に攻撃された東方家。危惧していた通り、攻撃対象は東方家全体であり、鳩ねーちゃん大弥ちゃんまで血を流して倒れています。つい先刻、車庫から大きな音がしたから様子を見に来たところ、ドアを開けてしまったせいで「気圧」にやられてしまった模様。
とは言え2人とも、ドアは開けても、今までいた「閉鎖空間」の「外」に出たワケじゃなさそう。恐らく、「加圧」された空間の「扉」が開かれた後、その空間内の「気圧」が元の1気圧にまで「減圧」される時間は常に一定という事なのでしょう。10気圧だろうが5気圧だろうが、1気圧に戻るまでの時間は同じ。つまり、より「加圧」された空間ほど、開放された時の「減圧」のスピードもより速くなるという事。常敏とつるぎちゃんがいた倉庫部屋は一度「扉」を開け閉めしたけど、鳩ねーちゃんと大弥ちゃんがいた邸宅内の空間は一度も開放されずにいた。その分、より「加圧」されており、「扉」を開けた後の「減圧症」の症状も重くなっちゃった、と。
この敵本体と仲間だったのかと、父親を問い質すつるぎちゃん。しかし常敏は、迷いの無い眼差しで息子を見つめ、巻き込んですまないし自分がどう思われても構わないとしながらも、「オレはおまえの事を想っている…」「それは信じるか?」と問い返す。それにつるぎちゃんが頷き、東方父子コンビがここに結成ッ!やっぱりつるぎちゃん、何だかんだ言っても、結局はパパが大好きなのです。


●スケベだけど、根は強くて優しいつるぎちゃん。自分の事より、巻き込まれた家族のみんなの身を案じています。つるぎちゃんが叔母シスターズを「鳩ちゃん」「大弥ちゃん」と呼んでいる事が判明しましたが、常秀はいつの間にやら「常秀おじちゃん」から「常秀」呼ばわりにランク・ダウンしてました(笑)。まあ、あいつは軽蔑はされても尊敬はされないだろうしなぁ。家族にカウントされてるだけマシとしましょう。
常敏曰く、マッコウクジラは水深2,000mまで潜水できるが、人間の素潜りでの最深記録は214m。訓練された人間でさえ21気圧が限界。この「閉鎖空間」内はほんの数分程度で、その気圧にまで「加圧」されてしまう。しかも当然、常人は21気圧まではもたない。加えて、「外」に出たとしても「気圧差」でやられてしまう。行き場のない、抜き差しならぬ絶体絶命の窮地と言えます。ところが常敏は「この場所からプアー・トムを仕留める」と宣言!遠隔自動操縦タイプのスタンドなら、本体がこの近くにいるはずがありません。しかし、常敏には何かしらの策というか、心当たりがある様子。
……ちなみに、つるぎちゃんの一人称が「あたし」から「ボク」に変わってますね。女の子を演じず、1人の少年に戻ってる。父親と一緒だからなのか、そんな余裕もない状況だからなのか、はたまた精神的成長を遂げつつあるって事なのか?この戦いで、東方家は多くの事が変わりそうな予感がします。


●場面は一転。どっかのベッドの上に寝そべる若い女性。タバコをふかし、美容ローラーで腕をマッサージしてる、ちょい性格キツそうなタイプです。誰かと思ったら、なんと駐車場でプアー・トムを誘惑したベンツの女!あの時、彼女が落として行ったケータイ番号を、常敏は密かにメモっていたらしい。恐らく、プアー・トムのケータイに掛けても繋がらなかったのでしょう。彼女の方に電話を掛け、プアー・トムとコンタクトに成功。当のプアー・トムは、ベッドに潜って彼女の下半身をナメナメ中でした(笑)。
結局、プアー・トムは昨夜、予定通り彼女とデートして別れた後、そのままベンツの女と会い、一夜を共にした……ってなところだったのかな?コイツがモテモテなのも意味分からんけど、相手も真っ当な女性ではなさそうだな~。その辺のプアー・トムの行動を読み切って、見事に連絡を繋げた常敏の手腕には恐れ入りました。ここまで抜け目ない男なのに、あっさりプアー・トムに騙されて術中に嵌っちゃったのが不思議。まぁ、「新ロカカカ」が懸かってて必死だったろうし、取引相手は基本的に信用するスタンスなのかもしれません。
そして、取引という信用を裏切った者に対しては容赦の無い男でもあるのかもしれません。なんと常敏、東方家の果樹園に自ら火を放つッ!果樹園が燃え盛る画像を見せられたプアー・トムは、大慌てで東方家へ向かいます。(つーか、競馬新聞もタトゥーだったんか!) やはり、駐車場で常敏に語った言葉は嘘!「新ロカカカ」を見付けられないのなら、果樹園ごと「封鎖」して誰にも触れされない。そんな諦めの意志など無く、ハナっから「新ロカカカ」を手に入れる気満々だったワケです。これでプアー・トムをおびき出す事は出来た!


●炎上する果樹園。この光景を全員が見たら、「新ロカカカ」の枝がどうなるのか、予測が出来なくなる。まさしく炎のように激しく揺らぎ続ける戦況と可能性の中に、常敏は一筋の光明を見出そうとしているのです。そして、そのためには「覚悟」が必要だ、と。
常敏は、つるぎちゃんの『ペーパー・ムーン』の能力を借りる事に。紙を「消防車」の形に折ってもらい、灯油を掛けるといざ発車。「扉」を開けずして、「消防車」はごく狭いスキマから「外」に脱出。そして木々の近くまで移動したところで、『スピード・キング』で点火!このようにして果樹園に火を放ち、今また炎をさらに燃え上がらせました。もしこのまま「枝」が焼失してしまえば、全員が敗北となります。しかし、定助と「植物鑑定人」も絶対ここにいるはず。彼らは果たしてどう動くのか?そこに賭けているのです。「オレは今!「正しい道」を進んでいると信じている」 「だから 必ず勝てる!」。事ここに至って尚、決して揺らがぬ自信。常敏もやっぱり大したタマだな。
……でも常敏、いよいよもって、取り返しの付かないところ・引き返せないところにまで行っちゃった感がありますよ。何せ、東方家の財産であり、父:憲助さん自慢の果樹園に自ら火を点けちゃったんだから。本人は「正義」のつもりでも、過程も手段も選ばぬ常敏はやっぱ「悪」サイドだと思います。ますますこの戦いで死んじゃいそうな気がしてきた……。そうなると、大切な家族も財産も失う東方家が、あの大震災での「被災者の方々」のメタファーとして成り立つワケで、物語的・テーマ的には非常に重い意味を持つ事になります。デリケートな問題ゆえ直接的には描けないでしょうし、現に東方家は海沿いに建っているのに大震災での被害は皆無でしたからね。東方家がそんな絶望から立ち上がり、立ち向かう姿を見たい。そういう想いもある事は事実です。
ただなぁ~、常敏はかなり好きなキャラなので死んでほしくないのも事実。あれだけの事をしでかしたドロミテがボコられるだけで済んでる現状を見るに、善悪の境界は「SBR」以上に曖昧になっているとも思えます。それに、火を点けた本人が死ぬだけなら、ただの自業自得にも見えちゃうしね。だとすれば、常敏にもまだ生き残りの目はあるか……?カルマを背負いまくってる彼の運命が気になって仕方ない今日この頃でした。


●場面は、地下室の定助&礼さんに。「扉」を開けたばっかりに、鳩ねーちゃん達同様、「減圧症」でやられちゃってる模様。礼さんに言われて「扉」を閉める定助ですが、地下室内は再び「加圧」!ハッチの覗き穴から外を確認し、ようやく果樹園の炎上に気付きました。火が迫ってはいるけれど、まだ「枝」は無事らしい!
一方、常敏&つるぎちゃんがいる倉庫部屋の「気圧」は、相当ヤバイ事になっています。推定15気圧くらいで、洗剤等の容器はもうベゴベゴのペシャンコ。それだけに、背景に描かれている容器ももっとベッゴベゴにしてほしかったな。全然、変形してないじゃん。ここはマジでコミックスでの修正を願います。……それはともかく、つるぎちゃんは岩助を心配。さっき犬小屋に入って行ったから、きっと体を岩石化させて耐えているはず。常敏がそう言うと、つるぎちゃんもちょっと安心した風です。案外、「気圧」に耐えられる岩助の存在が勝敗を分けたりして?そして、常敏に頼まれて、今度は「鶴」を折り始めるのでした。
定助は『ソフト&ウェット』の巨大「しゃぼん玉」で全身を覆い、ハッチを開けて「外」に出ようと考えます。「しゃぼん玉」で覆われた空間も「閉鎖空間」。室内と同じく、「加圧」されていく。だから、このまま「外」に出れば、「減圧」の恐れはない。なるほど、確かに。しかし、「新ロカカカ」の枝を獲りに出て行ったら、「枝」の位置が敵にバレてしまう。それこそが「敵」(実際は常敏)の狙いと、定助は断言。位置を教え、奪うチャンスを与えてしまう。だとしても、このままおめおめと「枝」を消失させるワケにはいかないのです。


●秘密の地下通路は、一本松の下の海岸にも続いているようです。そっちから出て、この敵の射程外まで逃げるべきだと言う礼さんに対し、定助は確固たる決意を表明ッ!

「このロカカカを待っている女性がいる!」
「オレの消えた過去もとり戻すッ!」
「憲助さんなら ロカカカを手にすれば みんなが幸せになれる正しい道を切り開くだろう…」

「絶対にロカカカは敵に渡さないし焼かせたりもしないッ!」


―― おおお、熱いぜ!これぞ主人公だよッ!母のため、自分自身のため、そして、みんなの幸せのため。動機としてはパーフェクトです。正直、あの「新ロカカカ」にそこまでのパワーがあるのかは疑問ですし、等しい代償が必要である以上、どこかで誰かが何かを失う事になるんだけど、「理想」や「願い」を追うその姿勢や良し!
しかし、あくまで「現実」を冷淡に見つめるドライな男、豆銑礼。そんな定助の決意表明も「気に入らない!」と一蹴(笑)。身も蓋もねーな!この敵の能力は事実上、「外に出たら死ぬ」能力。「しゃぼん玉」が割れたら死ぬ。しかも、たとえそれほどの危険を冒して成功しても、敵のメリットが大き過ぎるのです。いくら憲助さんの頼みとは言え、礼さん本人にとっては「新ロカカカ」を命懸けでゲットする理由なんか無いもんね。
定助はハッチを開けるにあたって、「しゃぼん玉」で礼さんの体も包んで「減圧」からガード。さすがの礼さんも、何を言っても定助の決意は変わらないと観念したっぽい。「今の演説、他はどうでもいいが、憲助さんのくだりは気に入った」と、譲歩してくれました。あの「枝」は悪魔の植物で、乗りこなせる人間は憲助さん以外にはいない、と。礼さんからすると、それほど憲助さんの評価は高いらしい。2人の間に何があったんでしょうね?
憲助さんへの信頼。意見は正反対でも、このたった1つの想いは共通する定助と礼さん。なんと、礼さん自らハッチを開け、「外」に出てくれたじゃありませんか!しかも、単に情に流されたとかではなく、「虫」を殺さずに「枝」を回収するのは自分が適任と判断したがゆえ。どこまでもクールでプロフェッショナルな職人です。


●燃え盛る果樹園を進む、「しゃぼん玉」の中の男。そんな映像を常敏に送るのは、「鶴」に折られて空を舞うスマホ。とうとう定助&「植物鑑定人」を炙り出し、「枝」の在り処を掴むチャンスが訪れた!ここまでは、高圧を耐えて待ち続けた常敏の「覚悟」の勝利と言えましょう。
「枝」を回収しようとする礼さんですが、その動きが不意に止まる。そして、その視線もまったく違う方向に向いている。一体、何が!?「枝」に火が回り始め、焦る定助!……なんと、礼さんの視線の先にはプアー・トムがッ!ヤツはもう果樹園に到着し、常敏同様、事の成り行きを見守っていたのです。礼さんの不審な動きと草ムラの人影で、常敏もその事実に気付きました。「火をつけたのはわしじゃあないぞ」と、「ぢゃ」言葉も忘れて誤解を解こうとするプアー・トム(笑)。そんな釈明もシカトし、礼さんは素早く両腕をワイヤー化!右腕でプアー・トムを、左腕で「枝」をキャッチ!これでついに、この場にいる全員が「枝」を認識したのでした!
再び姿を現したプアー・トムが、常敏の埋めた物と同じミニチュアハウスを持って来てるのが気になります。恐らく、能力的に意味のある行為なんでしょう。例えば……、能力の効果をさらに高めるためとか、自動操縦じゃなく直接操作に切り替えるためとか。それとも単純に、埋めた方が掘り起こされて能力が解除されてもいいように、スペアとして持参したのかな。


★今月は47ページ!これで役者は揃いました!このまま三つ巴の混戦へとなだれ込んで行くようです。ハッキリ言って、メッチャクチャ面白いッ!最ッ高にヤベーです。個人的には今、仗世文と吉良の過去編に匹敵しそうな勢いに盛り上がってますよ。三者三様の立場と視点で、5人それぞれの想いと能力がぶつかり合い、戦局は加熱の一途!読んでて本当にドキドキしました。早く次回が読みたいッ!
作者コメントは「スマホの通信制限で遅くなって追加料金要請されるのムカつく。耐えてやる。」との事。かつては「待ち時間がイヤだから」という理由で、パソコンを使わなかった荒木先生です。欲しい情報を快適に得られない状況は、さぞかし腹立たしいでしょうね……。でも、そんな庶民的なところも微笑ましい。そういや、ザ・ニュー「ジョジョスマホ」、3/23(金)発売に決定したようです。なんぼなんでもギリギリすぎね?どんな事情があるのか知らんけど、もっと快適に購入・使用できるように情報を開示してほしいもんだ。
さてさて、全宇宙・全次元のジョジョファンやアラキストが待ち望んでいる今夏開催の「荒木飛呂彦原画展 JOJO - 冒険の波紋 -」。ついに詳細情報が解禁!会期は8/24(金)~ 10/1(月)!チケットは完全日時指定制!さらには、8/22(水)・23(木)の両日がプレビューディ(たぶん抽選で当たった人だけ観られる)となっているようです。こっちの情報開示は早くて好感が持てますな。いよいよ具体的になってきて、テンションもアガッてきましたよ!



(追記)
●「新ロカカカ」について前からちょっと気になっている事を、ここに書いておきたいと思います。重大な布石かも分からないので。
現在、定助&憲助さんサイド・岩人間サイド・常敏サイドの3つの勢力が、「新ロカカカ」の枝を巡って争っている状況です。ここでさりげに疑問なんですが……、いつの間にやら「枝」は1本しか無いって扱いになってません?あの「枝」を失ったら、奪われたらおしまい……という感じに。でも実際のところ、仗世文と吉良が愛唱から盗んで「接ぎ木」し、「果実」がなっていた「枝」は2本なのです。
仗世文が吉良に「果実」を食べさせた時点では、2本の「枝」は隣接していました。しかし、その直後に起こった「壁の目」の隆起により、地形は変化。まだ近くにあるのかもしれないし、お互い全然違う場所に離れてしまった可能性もあります。いずれにせよ、片方の「枝」が折れたり枯れたりでもしていない限り、「枝」は2本存在しているはず。だから、極端な話、ここで「枝」が1本燃えてしまっても、最悪奪われてしまったとしても、まだ逆転の目はあるって事です。

「枝」が1本しか無いと明言していたのは、礼さんでした。でも、かつて2本あった事は紛れもない事実。それに、礼さんのその発言も、定助の事をまったく信用していない第65話の時点のもの。増して、謎の敵に追跡されている真っ最中です。素直に本当の事をベラベラ話すとは限りません。仮に自分達が敗北・失敗しても、憲助さんが「枝」をゲットできる可能性だけは残しておこうと考えても、ちっともおかしくない。要するに、「枝」が2本ある事を礼さんは隠しているかもしれないのです。
だとしたら、この三つ巴の混戦・乱戦の末、「枝」はプアー・トムの手柄で「岩人間」の手に渡る事になりそう。しかし、そこで礼さんが、もう1本の「枝」の存在を明かします。奪われた「枝」よりも生育状態が悪く、弱いけれど、大事に慎重に育てれば何とかなるかも……みたいな。こうして、「新ロカカカ」は「岩人間」と東方家に二分され、物語は新たな局面に向かうワケです。


―― なんて妄想もしてみました。とにかく、「枝」の本数に関する疑問は、頭の片隅に置いておいても良いんじゃないでしょうか。まぁ、特に何も触れぬまま、「1本」という事で押し通す可能性も充分ありますけどね。




(2018年3月19日)
(2018年3月21日:追記)




TOP  <<#073 戻る #075>>

inserted by FC2 system