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完全がいいです
どうしても 治してください


#077 等価交換と大学病院 その①





●今月は「ジョジョリオン」が表紙を飾ってくれました!今月号と同日発売のコミックス、「ジョジョリオン」18巻と「岸辺露伴は動かない」2巻。双方のカバーイラストの要素が1つになった、言わば融合連作となっています。これは非常に珍しい試みですが、結果として、実に素晴らしい絵がこの世に爆誕いたしました。
迫り来る無数の絵筆から逃れるかのように、後方を振り返りながら走る定助。そんな感じの絵です。定助のセーラー服のイエロー、背景の空のブルー、めっちゃ夏っぽい爽やかなカラーリング!さらに絵筆が、この絵をもっともっとカラフルにしてやろうと追撃!宙を漂う「しゃぼん玉」は、すでに色を塗られてしまっています。定助までも美しく染め上げられてしまうのか!?
……といった具合に、目にも楽しい珠玉の1枚です。いやぁ~、ワクワクするいい絵だな。これも是非、原画で観てみたい。その絶好のチャンスと言える原画展の開催も近付き、アゲアゲなサマーシーズンの到来が今、ここに告げられました。


●今回のトビラ絵は、燃え尽きた果樹園をバックに佇む定助・常敏・つるぎちゃんの3人。
この絵だけを見れば仲良さげな家族にも見えるんですが、今のところは事実上、定助の「敵」です。3つ巴の構図ゆえ、家の中にも敵がいるという油断ならぬ状況。内と外で敵に囲まれた定助は、果たして「新ロカカカ」を奪い返す事が出来るのでしょうか?


●まず冒頭は、「ロカカカ」「新ロカカカ」の効能についてのおさらい。でも、たまには「壁の目」の事も思い出してやってください……。同じ「等価交換」の力を持っているんだから、もうちょい注目されても良さそうなのにね。仗世文と吉良が「定助」になれたのだって、「新ロカカカ」だけじゃなく「壁の目」の力もあっての結果だと思うんだけどなぁ。
それはさておき、大事な果樹園を失った東方家の家族会議の時間です。定助と礼さんも混ざって、みんなで情報共有。「ロカカカ」や「岩人間」の存在もすでに大っぴらになっていました。そりゃあ、家族全員が攻撃されたのは、ダモカンに続いて2度目ですからね。当然と言えば当然。もはや誰もが無関係・無関心ではいられません。でも、いきなり現れた「植物鑑定人」に対し、常秀はえらく当たりが強い。放火犯と疑ってたくらいです。一応、「植物鑑定人」の存在自体は前から知らされていたけど……、今まで一度も会わせてもらえなかったのに、急にのこのこやって来たもんだから気に喰わないっぽい(笑)。
そして、救急車に乗って来た2人組の「岩人間」が「枝」を奪って行った事を、定助が告げました。実際は定助の勘違いなんですが、そう仕向けた当の常敏はスッとぼけてやがります。東方家に来る救急車は、大学病院の消防署の管轄。そんな有力情報も、常敏は定助に与えます。まあ、常敏としても、その2人組は邪魔でしょうしね。定助と潰し合ってくれた方が好都合のはず。


●礼さん曰く、「新ロカカカ」の枝は最短10日間で「果実」をつけるようです。ぬぬっ?72話では、収穫まで「あと2日」だったのに!……と思いましたが、コミックス18巻では「あと12日」に修正済み。さりげなくプラス10日されてました。いくらなんでも2日で収穫は早すぎるな、と荒木先生も考え直したんですかね?このプラスされた10日間で何が起こるのやら!
敵に「果実」が渡ってしまえば、データ化のために加工されてしまう事は必至。となれば、敵が収穫するまでの10日間が、「新ロカカカ」を取り返すタイムリミットとなります。しかし、プラス10日に設定変更してもなお尋常じゃない生長スピードなので、ここぞとばかりに常秀が「そんな果樹があるか」とツッコミ。いくら常秀でも、それが普通じゃない事は分かるみたいです。でも、礼さんは鉢植えのサボテンに接ぎ木すれば可能」と、そのものズバリの正解を言い当てました。これには常敏もつるぎちゃんも内心ヒヤヒヤ。
ところが、鳩ねーちゃんと常秀のおバカ姉弟が話題を変えてくれてセーフ!先祖代々の果樹園が焼失した今、それを元に戻すには何年も何十年も掛かってしまう。これからどうすれば?「新ロカカカ」の非日常的な脅威ももちろんですが、そんな身近な不安も大問題なのです。でも、そこは我らが常秀。新たなビジネス・プランを提案ッ!買ってきた松茸を何本か焼けた土地に置いといて、金持ちの別荘族相手に「松茸狩りツアー」!そして、春には「竹ノコ狩りツアー」!さらには、レッサーパンダを飼って、ゴーカート場も作るという壮大な構想も!優しい大弥ちゃん以外は誰も相手にしてくれないけど、この「常識」にも「伝統」にも「善悪」にも囚われない商魂たくましさは好きですよ(笑)。案外、大物になるかも?


●家族会議終了後、礼さんはこっそり定助に話し掛けます。みんながいる場では言わなかったけど、果樹園を放火した犯人はプアー・トムではない、と。むしろ、プアー・トムは火事になったからこそ果樹園に来た。そして、具体的証拠は無いものの、さっきの会話や態度で常敏が犯人と確信したらしい。残念ながら、常敏の行動を目撃していたワケではなかったんですね。それでも真実に辿り着いた礼さんの洞察力・推理力はお見事。この分ならきっと、つるぎちゃんもグルだって事も気付いているでしょうね。
常敏を「信用できない」とバッサリな礼さんですが、反面、「あの火事があったからこそプアー・トムに勝てた」とも評価しているようです。鋭いだけじゃなく、冷静で広い視野もお持ちで。有能・万能なキャラだけに、彼の命の心配もしてしまいますな(汗)。常敏の事は礼さんが密かに見張って調べるそうなので、もしかすると礼さん VS 常敏なんて展開も起こり得る?
……ともあれ、今の脅威は救急車の2人組。定助は救急車のナンバーを憶えており、そこから追跡開始です!やっぱり内外に敵が潜むこの状況、グレートにヘビー。


●場面は変わり、大学病院に向かう1台の車。下りた人物は……、なんと密葉さん!常敏の妻であり、つるぎちゃんの母である、東方密葉さんその人でした。初登場から6年半にして、ついに彼女が動き出しました!
ここに来てファッションも一新!ノースリーブシャツとショートパンツに、スケスケのワンピース(?)を纏っているようなファッション。グラサンを外す仕草や、透けて見えるおパンティーの位置をズラす描写が、そこはかとなくエロスを漂わせております。お腹部分やリストバンド等には「矢印」も付いていますね。スタンド能力と関係があるのかもしれないし、常秀の袖や鳩ねーちゃんの髪のような単なるデザインかもしれません。
性格はと言うと、これまたなかなかのクセモノ。松葉杖のお婆ちゃんが来てるのを分かってて、さっさとエレベーターを閉じちゃうような人です。なるほど、こーゆー人じゃなけりゃ常敏の妻は務まらないのかも。わずか2~3ページで、しかもただ病院内を移動するだけで、どんなキャラクターなのかが伝わってくる。荒木先生の人間観察と表現力ゆえの描写ですね。


●密葉さんが診察室に呼ばれ、お医者さんのもとへ。なぜ病院まで来たのかと言うと、右耳が聞こえなくなったかららしい。しかも、アレルギーのアナフィラキシーで呼吸も苦しいとか。診察するお医者さんは、けっこうなイケメン風の若い男性。前髪以外は、パンチパーマっつーか「大仏様」っつーか「とうもろこし」っつーか、そんなブツブツ頭でちょっとキモい。しかも、あちこちに「DOCTOR」と書かれたプレートを付けてます。自己主張激しいな!仕方ないんで、名前が判明するまでは「ドクター」とお呼びしましょう。
さて、そのドクターですが、海苔(のり)をパリパリ食いまくってます。昼食がまだだったからと言うけど、そういう問題じゃない(笑)。キャラデザから行動から職業から、何から何まで怪しすぎます。コイツ、絶対「岩人間」!……しかし密葉さんは、そんな事実(と決め付ける!)に気付いている様子もありません。そして、診察のために近付く2人。しばし見つめ合い、ドクターはそっと彼女の髪に触れます。ぶっちゃけ、2人はデキてんじゃねーのかと疑ってしまいました。密葉さんが不倫してるんじゃねーか、と。そうじゃなくても、誘惑しに来てんじゃねーか、と。そのぐらいのエロスと悪女の匂いを感じちゃってましたからね。でもひとまず、そんなエグい事は起きずに済みました。
彼女の髪の毛に触れ、右耳を露出させると……、そこにあったのは石化した耳!な、何だってーッ!こいつは不倫以上のビックリ展開ですよ。


●石化した耳を目の当たりにしても、ドクターは平然とした態度。どこにも異常は無く健康体、と言い放ちます。聞こえないと思い込んでいるだけだ、と言うのです。そんで、また海苔を食い始めるドクター。密葉さんもさすがに物申す。彼女は元々、下がってきたおっぱいを上げてもらうために病院へ来たらしい。しかし、それが治ったら、今度はがすべて岩のようになってしまいました。何を食べても美味しくなくなり、人前で口を隠さなければならなかったそう。彼女が今まで一言も喋らなかったのも、歯を見せないためだったのかもしれません。
そして、歯も治療したら、次は右耳が石化して聞こえなくなったというワケです。これは紛れもなく「ロカカカ」の効能と副作用!興奮し出した密葉さんを落ち着かせ、ドクターはのんきに高濃度ケイ素サプリの水をガブ飲み。ケイ素は鉱物の構成要素なので、「岩人間」の好物なのでしょうか?(ダジャレじゃなく)
頭皮が硬くなっても命に関わる深刻な事じゃないと言い聞かせても、密葉さんは譲りません。今のところ、おっぱいと歯の件は夫:常敏にも気付かれていないけど、つるぎちゃんが最近特に甘えて抱き付いてくるため、いつ耳に気付かれるか分からない状態らしい。いつ「石化病」が発病してもおかしくないつるぎちゃんには、余計にそんなの見せられません。どうにかして完全に治してもらえるよう、密葉さんは懇願。クセモノと言えど、母親としての愛情はしっかりあるようで、一読者としてはちょっと安心しました。


●ドクターはどこかに電話を掛けると、密葉さんに1つの提案を持ち掛けて来ました。1回だけ可能な、完璧な治療法がある……と。特別な治療で、法律でも認められていない新しい治療法。しかし、それゆえに高額な医療費が掛かる。しかし、お金ならあるし、値段に興味もないと密葉さん。その値段は、なんと2億円!2億円と言えば、愛唱が売買していた「ロカカカ」1個の値段と同じです。密葉さんの決断は……?
東方家の果樹園火災は、テレビのニュースでも取り上げられていました。ここでも「全国2位」とハッキリ言われちゃってますね~。そのニュースを病院の待合スペースのテレビで見ていたのは康穂!あの後、定助から電話が来て、2人とも無事だったけど「枝」が盗られた事を知ったみたい。康穂の方は、「髪留め虫」の調査は何事もなく終わったんでしょうかね?それは後々語られるのかもしれませんが、今は生理痛がひどくて受診しに来た模様です。
そんな康穂の視界に、車椅子の女性の姿が。それは、ドクターに車椅子を押してもらっている密葉さんでした。よく見ると、彼女の両足が石化しているじゃありませんか!これは一体、どういう事でしょう?「岩人間」側はすでに「ロカカカ」のデータ化・技術化に成功していて、最初の2回はその実験として密葉さんにこっそり使用。そして今回は、彼女が常敏の妻と知っていて、あえて本物の「ロカカカ」を食べさせた。「新ロカカカ」の枝を所有しているのが常敏と睨んでいて、常敏への人質にするために密葉さんを利用する事にした。……こんな感じだったりするのかなぁ?
「新ロカカカ」の果実収穫まで、あと10日 ― と19時間06分 ―。密葉さんがしばらく入院(敵の手中も同然)となったら、常敏がますます追い詰められていきそう。「新ロカカカ」の独占か、妻子の安全か。「家」を想い、「家族」を想う常敏に、あまりにも苦しい選択が迫られる展開になるような予感がしてきました。それも、すべてを知った妻の目の前で。


★今月は39ページ!いつもよりページ数はちょっと少ないけれど、それも致し方なし!なにせ、今年はこれから原画展やら何やらで大忙しでしょうから。2mもの特大イラストまで12枚も描き下ろされているワケですしね。それに、今回は物語に動きがある回なので、読み応えは十分でした。密葉さんメインというだけで、「とうとう来たな!」って気持ちになりました。次回の冒頭あたりで、彼女の生まれや過去が語られたら嬉しいです。
作者コメントは「今一番興味がある動物はマヌルネコ種。動物園にいるらしい。」との事。ネコ嫌いで有名な荒木先生ですが、観察対象としての興味は惹かれる様子。どういう部分が気になってるんだろう?こんなところからも意外なアイディアを得たりされそうですし、動物園でマヌルネコと対面できる事を願ってます(笑)。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 8月号(2018年)
29ページ


今月は、接近する密葉さんとドクター。ついつい不倫を疑ってしまったぐらい、エロスとサスペンスが香り立つ1コマになっていますよ。
「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」で露伴と奈々瀬さんのポーズのモチーフとなった、アントニオ・カノーヴァの彫刻「アモルの接吻で蘇るプシュケ」にも通じる構図。密葉さんはとても美しく麗しく、ドクターは男らしい迫力と不気味な雰囲気たっぷり。次の瞬間、2人の男女に何が起きるか分からないドキドキハラハラ感があります。




(2018年7月19日)




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