TOP  <<#078 戻る #080>>



主人の常敏にも
まだ… 東方家の誰にも言ってない

わたし 妊娠している……


#079 等価交換と大学病院 その③





●今回のトビラ絵は、無表情でこちらを向く定助・康穂・常敏・密葉さん・つるぎちゃん・礼さんの6人。定助は康穂を、常敏は密葉さんを、しっかり抱き止めています。やっぱり大事な女性ですからね。つるぎちゃんは礼さんの肩にしがみ付いているけど、意外にも懐いちゃったんでしょうか?(笑)
6人とも同じ方向を見てはいるものの、その関係性や目的・思惑は様々。追い求める「新ロカカカ」の「等価交換」のパワーを手にするのは、果たして誰になるのか?


●康穂の危機を察し、大学病院に大急ぎでやって来た定助と礼さん。待合室を見渡しても、康穂の姿は見えません。とにかく康穂が心配でしょうがない定助とは対照的に、礼さんはクールに現況を把握。院内にはあちこちに監視カメラがあり、これから「誰か」に観られ続ける事になる。一方、自分達はと言えば、この病院の誰かが「枝」を持っているかもという予測しかないし、知っている情報なんてホリーさんがここに入院してるって事くらい。圧倒的に不利な状況なのです。
そうは言っても、今の彼らは康穂を捜し出して助ける事が優先。彼女が密葉さんを目撃した事で、「間違いなく」「とてつもなく」ヤバい事態が起こってしまっているのだから!
ただ、「ジョジョ」は都合良くピンチに仲間や神様が助けてくれる漫画じゃありません。むしろ、羽先生は康穂&密葉さんのコンビで戦い、定助&礼さんはもう1人の「救急車の運転手」と出くわして戦う事になるのかもしれませんね。


●謎の攻撃に倒れた康穂ですが、かすかに意識を取り戻した様子。またも「髪留め虫」の時の事を思い出していました。「髪留め虫」は康穂の「弱さ」につけ込んで利用し、彼女の親父さんに化けて騙してきやがったワケで。「弱さ」を見せてしまった己を悔い、「「弱さ」はいらない」と自戒しております。う~ん、戦士としては立派かもしれません。でも、あまりに心が頑なになってしまわないか気掛かりでもありますね。定助という存在が、自分の「弱さ」を見せられる唯一の相手にでもなってくれれば良いんだけども。
なぜ「髪留め虫」を思い出したのかと言うと、今の状況と似ているから。バラバラになっているけど、集まって1つになれる生き物。細かいフケが集まって出来た偽物の親父さん。今、康穂と密葉さんを襲っている羽先生。両者は似ているのです。この時点ではまだハッキリと見えてはいませんが……、実際、羽先生は自分の肉体を粉々にバラバラにしたり、また集まって元に戻ったり出来る能力を持っている模様。それを早くも理解しかけているのでしょうか。
まぁ、偽物の親父さんは「髪留め虫」のスタンド能力で作られたものっぽいし、羽先生のだってスタンド能力による現象だろうから、「似ている」のはたまたまだと思いますけどね。もっとも、何らかの共通する特徴ゆえに似た能力を獲得した可能性もあるから、それが「岩人間」「岩動物」の構造や生態、ひいては弱点を知るキッカケにもなるかも。


●ようやく目を醒ます康穂。床にうつ伏せに倒れる彼女の上に、密葉さんが乗っかっています。細身の密葉さんには似つかわしくない異常な体重で、身動きが取れず。必死に呼び掛ける康穂の声で、ふと我に返る密葉さんですが、まるで今会ったかのような対応。記憶がおぼろげらしく、この状況をまったく理解もしていない。康穂は立つ事すら出来ず、這いずりながら密葉さんに尋問。「ロカカカ」や「等価交換」について説明し、心当たりを訊ねます。
絶対に「ロカカカ」を食べているはず。果実としてじゃなくても、形を変えて投与されたか飲まされたかしたはず。そして、「等価交換」が起こったのなら、完璧に治るなんてあり得ない。必ず「何か」を失っている。それがルールなのです。
すると、密葉さんの指先から、例の小さな「破片」がいくつも飛び出し、康穂の脚に付着。「破片」はそのまま脚を少しずつ上っていきます。太ももの間にまで入り込み、おパンティーまで丸見えに。この危機を打開すべくスマホを探すも、なんと密葉さんが踏み潰してしまっていました!密葉さんも自分の指の重さに身動きが取れません。しかも、その指からはゾロゾロと「破片」が出て来て、康穂の脚は大渋滞。おパンティーの中にまで侵入しつつあります。このままでは強引にこじ開けて、彼女の体内にまで入ってしまう。生命はもちろん、乙女の貞操的な意味でも危険です。そんなレイプまがいのセクハラ、許さんよ。
「弱い所は見透されているッ!」と康穂は言ってますが、生理痛で病院に来たくらいだから、この場合の「弱い所」=子宮・女性器って事?そこに向かって「破片」が進み、そこから体内に侵入していくって事?だとしたら、相当えげつないな。そして、「岩人間」「岩動物」の特徴として、他者の「弱点」や「欲望」を敏感に察知できるような感覚があるのかもしれません。


●康穂は『ペイズリー・パーク』を発現ッ!スマホは無くても、診察室のパソコンは使えます。パソコンに左腕を突っ込むと、そこから院内のMRI室とリンク!そのまま右手で康穂の顔を覆ったかと思うと、顔の内部をMRI検査し始めました。『ペイズリー・パーク』は、繋がっている機器の機能まで我が身に取り込む事が可能みたいです。スッゲー便利なスタンド!
検査の結果、右側頭骨内面に、すでに骨組織と一部「同化」している「破片」を発見しました。「破片」の成分は有機ケイ素化合物。酸素と結合できて、エネルギーを作る事が出来ます。我々のような「炭素生物」とは別に、生物としての構成物質と成り得るそう。つまり、「岩人間」とは「ケイ素生物」なのです。改めて言われると、本当に「人間」とはまったく別種ですよね。SF的な存在ですよ。
自由に動けない康穂は、力を振り絞り、医療器具の入った棚に頭突き!落ちてきた注射器を手に取った『ペイズリー・パーク』、なんと康穂の眼球に針をブスリ!すでに正確な位置を掴んでいる「破片」を貫き、無理矢理引っこ抜いてしまったのでした。見てるだけで痛くてエグいけど、効果は覿面。同化していた「破片」が体外に出たせいで、脚を上って来る「破片」も一気にパワーを失って離れたようです。要するに、骨と同化した「破片」を目標・目印として、無数の「破片」も半ば自動的に体内へと入って行こうとする習性って事か。
そうやって大量に体内に侵入し、骨に取り憑いて同化してしまえば、その者の肉体を支配する事が出来る。そんなスタンド能力なんでしょう。人間社会に「寄生」する「岩人間」を象徴するかのような能力です。


●やっと立ち上がれるくらいには回復してきたらしい康穂。動かなくなった「破片」を手で払い落とし、密葉さんと一緒に診察室を出ようとします。混乱中の密葉さんには、要点をシンプルに伝達。あなたと東方家は攻撃されている。あなたの体には「岩人間」が入っている。敵の目的はお金ではなく、「等価交換」の技術を支配する事。そのために今、あなたが利用されている。……うむ、非常に分かりやすい。
ところが、無数の「破片」が集まり、再び羽先生の形を取り始めると……、彼は語り出しました。康穂の説明はほぼ合っているが、少し違う、と。人間社会がカネで動き、自分達もそこで生活している以上、「金儲け」も目的の1つではあるらしい。「等価交換」のついでに2億円も儲かるんなら、まぁ、そりゃあ貰っときますよね。とんでもない事を目論んでいる割に、けっこう現実的で打算的。庶民的、とも言えますな。でも、そういう堅実なところもまた不気味。
さらに、羽先生は康穂の存在もしっかり認識済みでした。フルネームもバッチリ。東方家や定助と関わりがあるのだから、当然と言えば当然です。ただ、今は密葉さんにしか用は無いみたいで、康穂には「別に帰ってもいいよ」って態度。そこまで密葉さんにこだわる理由は何なのか?


●密葉さんの手を引き、康穂は診察室を脱出!羽先生はすかさずリモコンを手にし、エアコンを起動!その強風で自らの「破片」を周囲に撒き散らします。これを見る限り、「破片」となった羽先生は動きが鈍く、自分の意志で自由自在に動き回る事も出来ないものと思われますな。移動・行動に制限がある分、それを補ってしまうとヤバそう。
康穂達が待合室に飛び出ると、遠くに定助と礼さんの姿が確認できました。これでひと安心かと思いきや……、微細な「破片」はホコリのように辺り一面を舞い漂い、康穂達を取り囲んでいたのです。しかも、定助と礼さんもこちらにはまだ気付いていない。ひと安心どころか、依然、大ピンチの真っ只中です。
そんな中、密葉さんが突然の衝撃告白ッ!まだ夫の常敏にも家族にも言っていないとの事ですが、なんと密葉さん、妊娠していると言うのです!……え?マジ……?このブッたまげの事実で、今までの違和感の意味が見えて来ました。「豊胸」の代償に、「歯」と「舌」を失った。「歯」と「舌」の治療と引き換えに、「頭皮の一部」と「耳」を失った。それなら、「頭皮の一部」と「耳」の治療の代償は?それが「両脚」だったのだとしても、なら「両脚」を治した代償は?記憶が曖昧にはなっているものの、明らかに不健康な箇所は見当たらず、「等価」と言うには足りない気がします。そう……、「等価」となる代償が「胎児」であるなら、全て納得が行くじゃありませんか!完璧な治療が一回限りってのも、もっともな話。母体内の赤ちゃんは母親の一部でもあり、まったくの他人・異物でもあるんですから。赤ちゃんを犠牲にすれば、母親はキレイさっぱり完璧に治るって寸法です。


●羽先生のドス黒い陰謀に、康穂も勘付いたっぽい。けど、羽先生の主たる目的はどこにあるんだろう?いろんなパターンの「等価交換」を行い、研究材料にしようとしているだけなのか?それとも、「胎児」との「等価交換」自体に深い理由が隠されているのか?
もし仮に、「等価交換」によって石化した「胎児」は「岩人間」としての生命を得る……みたいな法則があるのだとすれば、羽先生は「岩人間」の仲間を増やしたいと思っているのかもしれません。「新ロカカカ」のデータ化・技術化で「岩人間」中心の世の中に変革するとしても、ある程度の数がいなけりゃ、「人間」の返り討ちに遭っておしまいですからね。で、その研究にも普段の生活にも、やはりお金は不可欠。そういった意味においても、このタイミングで密葉さんが自分の患者になり、しかも妊娠していたなんて、羽先生からすればカモネギもいいトコだったでしょう。つまり、羽先生が密葉さんの体内に入った目的の1つは、石化した「胎児」を回収するためだったと。
しかし、こうなってくると、密葉さんの戦う動機は俄然明確に強くなってきそうですね。まだ見ぬ我が子を利用されたとあっては、母として全力で戦い、取り戻し、守り抜こうとするでしょうから。そして、陰謀の犠牲になんかならず、ちゃんとこの世に、家族のもとに産まれて来てほしいです。


●自分の身に何が起こっているのか?それを突き止めるため、ついに密葉さんが動き出す!その背後に浮かび上がるは、彼女のスタンド
このスタンドがもう、無茶苦茶にカッコイイんですよ。正直、全スタンド中で一番好みのデザインかも。全身「矢印」だらけで、ローブを纏っている人型のヴィジョン。影に覆われ、表情すら読み取れないミステリアスな顔。細身な印象とは不釣り合いな、ゴツめの足。全てが最高です。目にした瞬間、思わず声が漏れちゃうほど興奮しましたよ(笑)。『デス13』や『ブラック・サバス』もそうですが、マントとかローブとかを纏ってるスタンドって、ただそこに居るだけでサマになって絵になって大好きですね。
能力は、普通に考えれば「ベクトル操作」ってトコでしょう。様々な物質やエネルギーの「向き」を変化させる、的な?でも、あまりやり過ぎると万能になっちゃうし、密葉さんは「振り向いてほしい」「かまってほしい」と思ってる人なワケで、しかもジロジロと「人を品定めする」ような人でもある。案外、他人の「意識」や「視線」を数秒そらしたり引き付けたりする程度の能力なのかもしれません。


★今月は43ページ!康穂の貞操の危機、密葉さんの妊娠カミングアウト、そして密葉さんのスタンド登場。見どころたっぷりで、今回も面白かった!女性陣メインだからエロさもあって、実に「ジョジョリオン」らしいし。次回からは本格的に羽先生とのバトルが開始しそうなので、もはやますます盛り上がる予感しかしませんね。
作者コメントは「ある有名なお寿司屋を予約したら「東京五輪が終わった年の10月で。」と言われた。」との事。ゲ――!2年以上待ち!?そこまでしないと食べられない味って、一体どんなんだろ?2年後、先生の食後コメントも楽しみにしてます!
さて、来月号は「ジョジョリオン」が表紙です。その上、コミックス19巻が早くも発売。恐らく、2つのイラストは例によって連作になると思いますが、今度は秋っぽい感じになるのかなあ?





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 10月号(2018年)
247ページ


今月はもう完ッ璧、この最後のコマに全部持ってかれちゃいましたよ。このスタンド、ヤバすぎだもん。新しいスタンドが現れた時のワクワク感って、やっぱり特別です。
このコマの何が秀逸かって言えば、空気の流れが感じられるところです。下方の集中線によるスピード感はもちろん、いつにも増してオーラ(スタンドパワー)の揺らぎや迸りが描かれています。そして、周囲に舞う「破片」と、スタンドのローブのたなびき。グワーッと勢いのあるシーンとは裏腹に、この場の空気はフワァァ~……っと緩やかに流れており、それがまた存在感や威圧感を増してくれています。この妖しくも堂々たる佇まいが、本当に心底カッコイイ!




(2018年9月19日)




TOP  <<#078 戻る #080>>

inserted by FC2 system