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元カレです


#081 等価交換と大学病院 その⑤





●今回のトビラ絵は、「岩人間」&「岩動物」の解説:最新バージョン。もはや妖怪大百科の様相を呈しております。そんな目新しい情報はありませんが、「岩人間」や「岩動物」を総称して「岩生物」と呼べばいいんだなって事は分かりました。もしかすると、「岩植物」なんかも存在するのかもしれませんね。実はそれが「ロカカカ」だったり?(適当)
あと、「髪留め虫」がフケそのものも舐めて食料にしてるっぽい事も判明。ただ、勝手に予想していた「髪留め虫」=羽先生説はさすがに無さそうだな~。


羽先生についての説明も載っていました。彼は日本の国籍と戸籍を持ち、公には33歳。実際の年齢は、およそ70歳。身長185cm、体重79kg。けっこう大柄です。
スタンド名は『ドクター・ウー』。スティーリー・ダンの曲名が元ネタではありますが、もうそのまんまだな(笑)。まぁ、でも、自分自身の肉体と一体化してるスタンドでしょうから、自分の名前とほぼイコールでも納得は出来ます。……で、この説明上では、バラバラになった肉体を戻すのがスタンド能力であり、肉体を「破片」や「粒子」にまでバラバラにする事自体は「岩人間」としての体質っぽく書かれているのが気になるところ。えー、どうなんだ?
「岩生物」の体質にも個性があるんでしょうか?例えば、目や口からラップを出すのが夜露の個性、キャタピラーとなって地中を進めるのがドレミファソラティ・ドの個性……みたいな。その辺、もっと詳しく知りたいです。謎多すぎだぞ、「岩生物」。


●自分の体内から異物を取り除いた密葉さん。ところが、よく見れば、それは石化した小さな小さな両腕。「ロカカカ」を食べた事により、自分は何を引き換えにしたのか……。その恐ろしい事実に気付き、小さな両腕をすくい上げ、涙を流します。隙間からエレベーター内に侵入して来る羽先生を見下ろし、康穂は「このゲス野郎ォオオオッ―――!!」と怒りの絶叫!
しかし、そんな2人に、羽先生は静かに語り掛けてきました。「悪」は君達だ、と。定助や康穂達こそが正しくない存在だ、と。病気や怪我の症状も、その理由や事情も、みんな異なるけれど、「治したい」という願いはそれぞれがとても強い。彼はその願いを必ず叶えてきた。この「等価交換」は「公益」だ、と彼は言います。「ロカカカ」の秘密は社会への利益。「公益」であれば、秘密だろうと、ゲスな行為だろうと許される。
……羽先生の言葉にも、確かに一理あります。実際、「岩人間」は事前に「ロカカカ」のリスクも教え、公正な取り引きを行っている様子でした。それを覚悟・承知の上で、欲しい者は「ロカカカ」を買って食う。その結果、何が起きようとも全ては自己責任でしょう。ましてや、今まで幾度も言われている通り、「ロカカカ」はどこにも違法なところなど無い植物。認知されているかはともかくとして、人間社会に許容された存在なワケです。「何も悪くない」と言われてしまえば、おっしゃる通りなのかもしれません。
大義名分を掲げる巨大な「正義」と、それに立ち向かうちっぽけな「悪」。社会を味方に付けた歪んだ「正義」と、他ならぬ自分自身が信じる道を貫く気高い「悪」。「SBR」での、「聖なる遺体」を巡る大統領とジャイロ&ジョニィの関係性にもよく似ていますよね。


●14週目の胎児の中絶は「合法」だから、気にしなくて大丈夫!羽先生は、そんな言葉を平然と密葉さんに吐きやがりました。法さえ犯さなければ、何をしても許されるのか?合法でさえあるなら、あらゆる行為は正しいというのか?……いや、今の羽先生が「正義」などとはとても思えません。誰よりもドス黒い邪悪です。人間には、守らなければならない領域が、超えてはならない一線があるんです。羽先生はそこを踏みにじった。人間の尊厳を。
この場にいる誰の叫びなのか、はたまた3人全員が同時に叫んだのか、「羽伴毅ィイイ―――ッ」という声が響く!そして、再び「破片」と化した羽先生が、密葉さんの口から体内へ侵入しようとします。『アウェイキング・Ⅲリーブス』の「矢印」を上向きに3個連ねて出現させるも、思わぬ方向から現れた羽先生の左腕が、密葉さんの腕を掴んで阻止。絶体絶命か……と思いきや、この「矢印」は最初から、羽先生ではなくエレベーターに貼るつもりだったのです。「矢印」は3連に重ねれば、加速も3倍になるらしい。上昇するエレベーターは一気に加速し、縦方向の衝撃が3倍で襲い来る!「破片」化して細かく軽くなっている羽先生は、その衝撃をモロに喰らい、床に押し付けられるのでした。
すかさず密葉さん、持って来ていた医療用テープで羽先生を床にベッタリ貼り付けてしまいます。剥がそうとしても、めっちゃベタベタで剥がれやしません。おお、こんなシンプルな攻略法があったか~。細かいゴミをコロコロの粘着テープで取るように、羽先生を行動不能にして封印!密葉さんの代わりに康穂がテープを貼りまくり、されるがままの羽先生。なんともシュールな絵だな(笑)。


●変わり果てた姿となった我が子を見つめ、密葉さんは激しく後悔。それでも、「生きているように見える」との康穂の言葉にすがり、産婦人科の診察室の奥で「ロカカカ」が栽培されていた事実を伝えます。密葉さんを止めようと羽先生も足掻くものの、足で踏み砕かれ、「矢印」に引き裂かれ、もっと細かくバラバラに。手際良くテープで体中を貼り付けられた挙げ句、3F到着後、頭部は丸めて窓から捨てられちゃいました。まさかこんな情けないオチで退場しちゃうとは……。
ようやく邪魔者が消え、康穂は密葉さんに話します。「ロカカカ」があるなら、きっとまだ間に合う。でも、「ロカカカ」を食べるかどうかは密葉さんが決めないといけない、と。今の密葉さんは、完全なる健康体。リスクの高い「ロカカカ」を再び食べてまで、まだ誰も存在すら知らない子を救うのか?しかし、密葉さんは迷う事なく、「矢印」を自分に向けて、我が子を胎内に戻すのでした!「まだ間に合うなら!」「わたし… ……急ぎたいッ!……」。最初は性悪女な感じだった密葉さんも、今や立派な母親の顔ですね。


●産婦人科の診察室に向かう密葉さんと康穂。エレベーターに乗ろうとする若い男性に、「汚れてるから使わないで」と忠告しときます。羽先生でビッシリですからね。するとその男性、康穂の知り合いらしく、彼女に挨拶。名前を「透龍 (とおる)」というようですが……、この透龍くん、なんと高校時代の康穂の元カレでした!アフロっつーか、パーマが掛かった髪が特徴的で、顔自体はなかなかのイケメン。人当たりも良さそうだけど、けっこう遊び慣れてる風で今ドキの男の子ってイメージ。
病院でシーツを洗ったり搬入したりするバイトをしている、との事です。「3Fに来て」という定助への伝言を透龍くんに頼めたのは良いとして、何やら定助の存在を気にし出してる模様。康穂とどんな関係なのか訊き、さらには「昔の君は僕の指でよくビショビショに濡れてた」などとセクハラ発言まで。素っ裸の定助に対する反応から、康穂は今まであんまりそういう経験は無さそうに見えたので意外でした。推しのアイドルのスキャンダルにショック受けるファンみたいな、「ウッソ!マジかよ」っていう心境です(笑)。常秀は知ってんのかな?


●康穂の過去の恋愛事情はさておき、ようやっと件の診察室に到着。部屋には誰もおらず、調べると確かに、部屋の奥へと歩いて行った痕跡が床にあります。『ペイズリー・パーク』でそこの壁を調べたところ、暗号的な施錠の扉になっていて、電力も情報も外部から独立したものになっている様子。『ペイズリー・パーク』は扉の内部に潜り込み、情報を探し、開錠を試みる。
すると、扉の一部に映像が映し出されました。それは、羽先生が誰かに「ロカカカ」の説明をしている映像記録。「1回の「等価交換」に必要な果肉量は125g以上」「「ロカカカ」成分は血液とともに全身を巡り、病巣に達すると自動的に反応」「「等価交換」の全行程は平均3分21秒で完了」「病巣の深刻さや痛みの大きさによって優先治療される」「交換される部位は「ロカカカ」が選ぶ」などなど……、「等価交換」のメカニズムが延々と語られます。さらに「ロカカカ」は、指先の小さい傷を治すために、生命にとって重大な脳の一部を交換する時もあるらしい。ただ、その理由は「岩人間」にとっても謎。全然「等価」じゃない気がしますが、そもそも誰から見ての「等価」なのかって話ですからね。その「価値」は誰が決めた基準なんだ?「ロカカカ」自身?
どうやら羽先生は、「破片」化する能力によって血管内に侵入し、「ロカカカ」成分が脳に達するのを一時的に遮断しているようです。そうやって、危険な部位との「等価交換」を防いでいる、と。これをさも、科学的な技術体系を確立してるかのように振る舞っているけど、実際は思いっきり個人のマンパワー。なるほど、そりゃあ陰謀の中枢にもなるわなあ。


●「ロカカカ」による「等価交換」がどれほど素晴らしく、どれほど人類にとって必要なものなのか、熱く語る羽先生。で、語っている相手は誰なのかというと、恐らく患者スポンサーか。「岩人間」にとって有益な、「カネ」と「権力」と「欲望」を持つ何者かに向けての映像なのでしょう。あるいは、実はひょっとしたら、「岩人間」のボス的存在に対し、研究の成果を報告するための映像だったりして。……いずれにせよ、この映像では以前の「ロカカカ」の説明でしかありません。じゃあ、「新ロカカカ」の枝は誰が持っているのか?常敏がゲットしているとは露知らず、「枝」の在り処を気にする康穂。
その時、『ペイズリー・パーク』が暗号を見付け出し、ついに開錠ッ!その扉の奥の、無数の「ロカカカ」が栽培されている部屋へと踏み入ります。
ここに「枝」が無いとなれば、「岩人間」サイド以外に疑いの目を向けるようになりそうですね。ただ、今、優先すべきは密葉さん。羽先生の補助が無い以上、肉体のどの部位を失うのかは誰にも分かりません。せっかく我が子を救えても、彼女自身の命が危険にさらされては無意味に終わってしまいます。ここで康穂が、『ペイズリー・パーク』で「ロカカカ」の新たな真実を暴き、「岩人間」よりも「等価交換」をコントロールできるようになっちゃっても面白いかも。


●下階のロビーでは、透龍くんが定助を発見。康穂からの伝言を伝えてくれました。彼を怪しむ礼さんが「君は誰だ?」と訊ねると、何の臆面も無く「元カレです」と即答。う~ん……、何なんだ、この展開わ(笑)。
順当に考えれば……、こんな状況で唐突に現れた透龍くんこそが、救急車の運転手で、「岩人間」で、倒すべき敵。で、このまま定助達と戦う。それが一番手っ取り早いとは思います。しかし、定助の事はマジに知らなそうだから違うのかな。羽先生に体を乗っ取られているって線も考えられます。あのままあっさり退場しちゃうのももったいないですし、もうひと頑張りお願いしたところ。そうでなければ、まさかのレギュラー入り!?もし苗字が山岸だったりしたら、スタンド使い&恋のライバル確定でしょ。髪型や服の模様から、「物質をカールさせる能力」とかでもいいし。
何にせよ、元カレの登場は個人的に喜ばしい出来事です。「ジョジョリオン」のストーリーには定助と康穂の感情・関係が深く絡まって来るんじゃないかと期待しているので、定助の恋愛感情を揺れ動かすキッカケとしては十分な働きをしてくれそう。過去の想い出を語ってきたり、ヨリを戻そうとしたりしてきて、定助はジェラシー。康穂への気持ちをやっとハッキリ自覚する、みたいなね。ストーカーの常秀じゃあ、やっぱその役は務まりそうもないからねぇ……。定助・常秀・透龍くんの恋のライバルトリオが共演しても、大いに楽しませてくれるはず。


★今月は43ページ!サスペンスもテーマ性も深まって来て、その上、別方向から新しい要素まで投入され、盛りだくさんでした。この期に及んで、どう展開していくのかまるで予測できない。読んでてドキドキハラハラできるのが、本当に楽しいです。誰が何と言おうと、「ジョジョリオン」はやっぱ連載を1話1話追って行くのが最高の楽しみ方だと思いますよ。
作者コメントは「大阪にちゃんと行くのは実は初めて。ご挨拶に参ります。」との事。大阪が初とは意外ですが、確かに荒木先生のイメージでは無いですね。もちろん私も「ジョジョ展」の大阪展に参戦しますので、お会いできたら嬉しいな。まぁ、日時的に可能性はほとんど無いだろうとは思いますが、望むだけなら別にイイっしょ!





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 12月号(2018年)
244ページ


自分達の「正しさ」を語り出す羽先生。このページは、11月18日(日)の日経新聞での荒木先生のインタビュー記事にも、執筆途中の原稿が写っていましたね。そういう意味でも貴重な1ページですし、このコマは羽先生の不気味さとカッコ良さが匂い立っています。どこか虚ろで感情が見えない瞳もクールだぜ。
このポージングに元ネタがあるのか、あるとしたら絵画・彫刻・ファッション誌のどれなのかも分かりませんけど、なんともSEXYなポーズ。特に左腕と顔の角度がステキです。




(2018年11月19日)




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