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「知らなかった」で逃げたら…
幸せになれない


#082 等価交換と大学病院 その⑥





●今回のトビラ絵は、来年2019年の年賀状用イラストとおぼしき1枚。中央には来年の干支「亥(いのしし)」がエンブレム的に配置され、そのバックでは康穂と定助が猪突猛進とばかりに駆けるかのような姿が描かれています。
年賀状ではこれに色が塗られるのかな?それとも、イラストそのものも連作になってるのかな?年明けが楽しみですね。


●手押しカートを片手に、いよいよ「ロカカカ」の栽培ルームへ足を踏み入れる康穂。もちろん密葉さんも一緒です。「ロカカカ」を保護するウインドウを『ペイズリー・パーク』で開錠すると、目の前には予想以上に大量の果樹。康穂は、金額にして何十億円にもなるであろうこれらを全部丸ごと奪っちまうつもりでした。大胆っつーか豪快っつーか、さすがに肝が座ってんな~(笑)。でも、天井には監視カメラも見えるので、誰かに見られていないかどうかが心配ですね。すでに『ペイズリー・パーク』で細工してるんなら良いんだけど。
ふと部屋の奥を見ると、何本もの試験管やビンが置かれていました。モルモットも何匹も飼われているようです。それは恐らく、「ロカカカ」を使った何らかの研究室。そこも含めて、康穂は「新ロカカカ」の枝を探してみたものの、結局どこにも見当たらず。そんな康穂を横目に、密葉さんは密葉さんで重大な決意を固めます。そう……、我が子を救うために、あえて「ロカカカ」をもう一度食べようというのです。リスクは覚悟の上。「知らなかった」で逃げたら、幸せにはなれない。各々の人物が、自分なりの「幸せ」を探し求めて生きる「ジョジョリオン」。密葉さんの幸せは、自分の気持ちをごまかした先になど決して存在しないのです。
我が子をなでるようにお腹に手を当て、「すでに愛情が湧いて来てるわ」とつぶやくと、密葉さんはついに「ロカカカ」を1個もぎ取って齧るのでした!


●密葉さん曰く、「ロカカカ」はイチジクみたいな味がするそうです。でも、甘くはなく、苦味がある模様。ふ~ん、フルーツとしてあまり美味しい物ではなさそうですね。
さきほど羽先生の解説ビデオで言っていた通りに、1個の2/3以上の量の果実を食べます。ところがその時、康穂は違和感に気付きました。果実を食べている咀嚼音がジャリジャリ言ってるのです。何か硬い物を噛んでいるような……。さらに、「ロカカカ」の茎や枝から、細かい無数の「破片」らしき物がポロポロこぼれ落ちています。すると、唐突に密葉さんが「矢印」を康穂に手渡してきました。次の瞬間、康穂は「矢印」の方向にブッ飛ばされ、研究室の壁に直撃ッ!
当の密葉さんは、また記憶や意識が混濁し、トボケた感じになっちゃってます。倒れた康穂に手を差し伸べたかと思いきや、今度はその手から「矢印」がポトリと落下。再び吹っ飛ばされる康穂!試験管やシャーレが散らばり、その割れた破片が指先に突き刺さる!
そうです、羽先生はまだやられてはいなかったのです。テープでグルグル巻きにされて外に捨てられた羽先生ですが……、外の水道管に何とか侵入できたらしく、そこを伝わって「ロカカカ」栽培用の散水スプリンクラーからこの部屋に辿り着いたのです。そうやって「ロカカカ」の茎や果実の中に潜み、それを食べた密葉さんの体内に入ったというワケ。いやぁ~、良かった良かった。あんなやられ方じゃ物足りないし、ちょっと不安も残りますからね。このしぶとさや執念も、一読者としてはむしろ嬉しい(笑)。でも、あんな状態からよく戻れましたよねぇ。外にいた誰かにテープから解放してもらったんでしょうか?それこそ、透龍くんでも外の清掃とかで現れたのかな?


●密葉さん本人の意思とは無関係に、「矢印」はどんどん創り出されてしまいます。羽先生は肉体を乗っ取った人物のスタンドまで操れるんですね。ってか、『アウェイキング・Ⅲリーブス』というスタンド名から、最大で3個までしか創れないと思ってたら、なんか普通に4個以上出してるし!羽先生のスタンドパワーも上乗せされている今だからこそ可能な芸当、って事もあり得るけども。
ともあれ、羽先生は「矢印」を使い、今度は試験管やシャーレを康穂めがけて飛ばして来ます。どうにか避けても、それらは壁にぶつかって割れちゃいました。この攻撃にイヤな予感を覚える康穂。……すると、密葉さんの中の羽先生が語り出します。「ロカカカ」は炎症や病巣を治しはするが、ウイルスそのものを退治するワケではない、と。まあ、それはそうでしょうね。病気を根治するような力は無く、ウイルスの存在する場所を入れ替えるくらいがせいぜいでしょう。しかし、もしウイルス退治も可能になったら、「ロカカカ」はさらに最高。この部屋は、そのための研究実験室(ラボ)だと言うのです。そして、このラボを作った人物こそ、吉良ホリーさんだったのです!
これはかなりデカい新事実ですね。ホリーさんは「ロカカカ」という果実を知っていて、しかも改良しようとまでしていた。その理由は、自分の「石化病」の治療のため?それとも、全ての病を克服する力を求める、医者としての純粋な願いのため?そもそも、「岩人間」の存在を知りながら協力関係にあったのか、知らずに利用されていたのかも気になるところ。羽先生は彼女の事を「失敗したんだよ」と嘲っていますが、何があって、今の状態になってしまったのかも謎だらけ。自分で自分の体を実験台にした?誰かにとって不都合な情報を持っていて、そいつに口封じされた?「石化病」の貴重なサンプルとして確保された?いろんな可能性が考えられます。
謎だらけだからこそ、きっと多くの謎の答えもまた握っているはず。もしホリーさんが「新ロカカカ」で復活できたなら、ストーリーは激動し、「終わり」に向けて急加速するに違いありません。


●それにしても、羽先生は何故、ここでホリーさんの情報をわざわざ康穂に話したんでしょう?いや、確実に康穂を始末する自信があったがゆえの余裕・油断ではあるんだろうけど。
ホリーさんが「岩人間」と通じていたかもしれないとなれば……、「本当に救うべき相手なのか?」「本当は最も危険な人物なんじゃないか?」と、疑心暗鬼を招く結果になります。それが狙いなのかもしれません。定助や康穂はともかく、何の恩も接点も無い礼さんあたりは普通に疑ってきそう。そうなると当然、仲間の中で不協和音が生じる。経営方針や「ロカカカ」の使用目的の違いから、東方家内で対立が起きている今……、ホリーさんを巡る感情の差で、さらに仲間同士が分裂してしまう恐れがあるワケです。
「人間」と「岩人間」という種の争いに発展しつつあるってのに、個々がバラバラになってしまっては、「人間」に勝ち目はありません。羽先生がそこまで見越して話したのかは不明ですが、いずれにせよ、この情報が後々、人間関係に響いてくるんじゃないかなと心配になりました。


●さて、羽先生の攻撃にイヤな予感を覚えた康穂でしたが、それもそのはず。試験管やシャーレに入っていたのは、ウイルスや細菌だったのです。天然痘ウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザ(A型)ウイルス、B型肝炎ウイルス、「SV4D」とやら(「シミアンウイルス40」こと「SV40」の誤植か?)……と、とにかく多種多様でヤバすぎる。5部アニメももうすぐ『パープル・ヘイズ』が登場するってタイミングで、「ジョジョリオン」でもウイルス攻撃ですよ!
「矢印」は全て康穂の方を向いています。無論、このままではウイルスも康穂を襲う事でしょう。とどめとばかりに放たれた「矢印」2個!もはや打つ手無しかと思いきや、康穂は医療用テープを伸ばし、「矢印」を両方キャッチ。そして、テープを密葉さんの顔に貼り付けます。2個の「矢印」は密葉さんの方向を向いている。それら「矢印」のエネルギーの流れに押し出されるように、密葉さんの体内の羽先生が吐き出されていきました!さらにダメ押しで、『ペイズリー・パーク』のMRI機能で密葉さんの体内を検査し、残った「破片」も全て吹き飛ばしちゃいます。手持ちの駒と、相手の能力を利用した、見事な逆転劇!
しかし、部屋がウイルスや「破片」でどんどん汚染されていっているのは事実。一刻も早く脱出しなければなりません。羽先生もとうとう本気を出し、「破片」で「ロカカカ」を細切れにしながら、それごと食わせようとして来ました。羽先生の補助無しだと、「ロカカカ」を食べれば高確率で脳が持って行かれる。守るべき「ロカカカ」を、逆に攻撃のための武器として使ったのです。尿道にすら入り込める羽先生が、「「ロカカカ」を100個食わしてやる!」と叫んで襲い掛かって来るんだから、こりゃ怖い。走って逃げる2人は、羽先生と「ロカカカ」の「破片」を大量に浴びてしまいます。絶体絶命ッ!


●この窮地を救ったのは、なんと定助の「しゃぼん玉」でした!まとわり付く「破片」を「しゃぼん玉」の中に閉じ込めてしまったのです。康穂と密葉さんに「こんにちは」と爽やかに挨拶する、我らが主人公!ヒーローの如きタイミングで来たな~(笑)。ピンチに誰かが助けに来る展開は「ジョジョ」では少ないし、「ジョジョ」的でもないけれど、実際に「助けを呼ぶ」という行動を取った結果ですからね。康穂自身が定助をここまで運んだと言っても過言ではありません。
その上、定助は用意周到に医療用セメントを「しゃぼん玉」に混ぜていたのです。関節の欠けた骨や虫歯の穴などに埋めて補強するセメントで、固まったら半永久的。これで羽先生の頭部をガッチリ捕え、固めてしまいました。セメントは隣の部屋に置いてあったそう。多分、エレベーターに貼り付けられた羽先生の「破片」を目撃したから、その能力の対抗策をあらかじめ練って来れたんじゃないかと思います。これにて羽先生撃破!実にいやらしく、手強い相手でした。
「新ロカカカ」の枝は無いと康穂が告げると、礼さんも自分の目で確認します。やはり全て旧タイプの「ロカカカ」であり、しかも羽先生によってズタズタにされているため、オール破壊&廃棄!自分の手を『ドギー・スタイル』で解いて、カッターのように果樹を切断していきます。スゲー威力。今までの戦いでもコレ使えば良かったのに。でも、スタンド使いの肉体には他のスタンドへの抵抗力が(多少なりとも)あって、そこまで有効な攻撃手段にはならない……とか何とか理由があるのかな?


●「ロカカカ」栽培ルーム兼ラボの扉を閉じ、羽先生も「ロカカカ」の残骸もウイルスも封印!今後は完全に「開かずの間」にしとかないと危険すぎる。しかし、「枝は病院のどこにも無い」という康穂の言葉に、礼さんが不機嫌そうに難癖つけてきました(笑)。自分ならともかく、お前なんかに枝を見分けられるのか、と。普段はドライなのに、自分の仕事が絡むと超めんどくせー男です。それだけ仕事に誇りを持つプロって事なんでしょうけどね。
羽先生は以前から、密葉さんの肉体を乗っ取り、東方家を調べていました。それはつまり、彼もまた(定助や夜露、プアー・トム達と同様)「新ロカカカ」の枝を探していたという事。枝を見付けてはいないという事。それが康穂の仮説の根拠。あの火事の時、救急車で来た羽先生も、逃げるプアー・トムも、追う定助も、みんなが違う枝を「新ロカカカ」と思い込んでいた。何者かがとっくにすり替えていたのに。……康穂の仮説は、思いっきり核心を突いていました。礼さんは否定、定助も半信半疑。それでも康穂には、自分の考えが間違っていないという感覚があるんでしょう。
羽先生の狙いには「容疑者」がいたって気配も感じ取っていました。これはつるぎちゃんに辿り着くのも時間の問題か。特に康穂は、つるぎちゃんの能力を直に体験し、コンビまで組んで戦った仲なんですから。礼さんの常敏への不信感も相まって、あの父子2人が裏で手を結んでいる事実に気付きそうです。康穂がこっそりつるぎちゃんに会って、問い詰めたりするのかな?母親:密葉さんの妊娠を伝えれば、まだ見ぬ弟か妹に対し、「兄」として誇れる男になろうと考えを改めてくれたりしないでしょうかね?陰でコソコソせずに堂々と生きていかなきゃ、みたいに。どっちみち間も無く「石化病」になるつるぎちゃんが、自ら身代わりになってホリーさんを救い、石化するって展開もあり得るかも。父が自分を治してくれる事を信じて。そんな息子の行動を目の当たりにした常敏の心も変わり、東方家が1つになっていく……とかね。


●枝問題はとりあえず置いといて、「ロカカカ」を食べた密葉さん。「等価交換」の効果が現れたのは、脳ではなく、でした。まだ途中段階ではあるものの、まるで『シンデレラ』で鼻とその周囲の肉を削ぎ取ったかのようなビジュアルに。他人からは好奇や恐怖の視線で見られるだろうし、モデルの仕事なんて二度と出来ないでしょう。それでも彼女の表情は晴れやかです。「女」である事よりも「母」である事を選び、満足げに微笑みを浮かべています。
この表情がものスゴく良いんですよ。あれだけ強くこだわっていた自分の美貌を捨ててまで、子どもの命を守り抜いた。慈愛に溢れた、やわらかくて優しい表情です。密葉さんの今までのありとあらゆる表情の中で、一番美しいと思いました。お腹の子が無事、元気に産まれて来てくれる事を切に願います。


★今月は43ページ!羽先生戦、完結!途中はめっちゃエグくってヤバイ感じだったけど、終わりは非常に清々しい気持ちになりましたね。味方として登場したはずの『アウェイキング・Ⅲリーブス』が敵に回る展開も、スタンド能力の見せ方として面白かった。妊婦の密葉さんがこれ以上戦うってのは厳しいでしょうが、あの「矢印」は他者でもアイテム的に持ち運びできそうなので、とっておきの切り札として使われる時が来るかもしれません。
それにしても、前回のあの引きで透龍くんがまったく出て来ないとは……。次回こそ、かなぁ?なんか康穂に近しく連絡取ってきそうな気もするし、「新ロカカカ」とは別の意味で、定助もドキドキハラハラでしょう。その辺の人間模様も注目ですよ。
作者コメントは「上海行ってきた。古い街並みも残ってて良かったなあ。」との事。上海はあまり荒木先生のイメージじゃないんで、だからこそ第9部とかで舞台になっても面白そう!





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 1月号(2019年)
225ページ


今月はもう、このコマで決まりですね。ラストの密葉さんの微笑みでございます。大学病院編で登場した当初の胡散臭い悪女っぷりは遥か彼方。文字通り「憑き物」が落ちて、すっかり母の顔になりました。嬉しそうな、安堵したような、でも泣き出しそうな、どこか申し訳なさそうな、気恥ずかしそうな……、そんな繊細な心の機微が描き出された絶妙な表情。
1部ラストでエリナの幸せを願う、死にゆくジョナサンの微笑み。5部でナランチャがボートを追い駆けて来た時の、ブチャラティの切ない笑顔。6部の時間加速時、「最後にひとつ言っておく」と『メイド・イン・ヘブン』について語り出すプッチの、徐倫達を憐れんでいるような、怒っているような、嘲笑っているような、何かを悟っているような不思議な表情。……それらに匹敵する、素晴らしい表情だったと思います。心に残りましたよ。




(2018年12月19日)




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