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止まるんだァッ!
明負悟ッ!


#084 TG大学病院の院長 その①





●2ヶ月ぶりの「ジョジョリオン」はセンターカラー!波しぶきの舞う堤防(?)でイチャつく定助&康穂、そして『ソフト&ウェット』。コミックス20巻の表紙と連作になっています。
こちらの絵は、2012年の「ジョジョ展」のために描き下ろされた「ジョジョ日本八景」シリーズの1つ、「松島の定助」にもちょっと似た構図ですね。しかし、密着度はあの時よりもアップし、定助が康穂を肩車。定助はクールな表情を崩さないけど、内心はドキドキのウッキウキなのでしょう。そんな心を反映してか、『ソフト&ウェット』は、「ジョジョリオン」フラッグをマントのように広げてハシャいでいます(笑)。
個人的に好きなポイントは、定助の服のマリンボーダーの色。青と赤が半々になってて、まさしく定助にピッタリのカラーリングです。荒木先生のカラーイラストは何でもそうですが、やっぱり遠くから見ても色がビビッと映えるなぁ。いい絵だ。


●「新ロカカカ」収穫まで、あと6日 ― と04時間12分 ―。時系列的には、前回描かれたつるぎちゃん達の野外活動の日の翌日になります。一旦、視点は定助サイドへ。
羽先生を撃破して約4日後。定助・礼さん、そして康穂の3人は、改めてTG大学病院を訪れていました。あの「ロカカカ」のラボを出入りしていた最後の1人、この病院の院長先生を捜すためです。どこか浮かないムードの康穂に、定助は気遣って声を掛けます。彼女は院長を捜す事には協力的であるものの、「新ロカカカ」の枝が東方邸にあるという持論は変えていない様子。そんな康穂に、定助は何を思うのか?なんとなく2人の心の距離が遠ざかっている気がして、寂しいなぁ。詳しくは後述しますが、「目に見えないもの」を信じられるか否かが今後の鍵になってきそう。
礼さんが受付のおっちゃんに院長の所在を訊ねると……、さすがに会えはしないまでも、なんと今、院内にいるらしい事が判明。ゴーイング・マイ・ウェイな礼さんは力ずくで会いに行きかねない勢いでしたが、警備員に睨まれると、(アーバン・ゲリラ戦で)指を4本失った左手を診察してもらいたいという口実で攻め始めます。おっちゃん曰く、院長は名誉職に就き、現在は医療行為は行っていないとの事。ちなみに、院長の名は「明負 悟 (あけふ さとる)」。不思議な響きだけど、元ネタはあるんでしょか?洋楽か何か?関係あるのか知らんけど、「アケフ」とはヘブライ語で「ノスリ」(鷹の一種)を意味するみたいです。


●院長の顔写真がどこにも無いと、おっちゃんに訴える礼さん。すると、そんな礼さん達の後ろをスッと通り過ぎる影が1つ。おっちゃんは、その人が院長だと言います。後ろ姿しか見えませんが、スーツと帽子を身に纏い、全身黒ずくめ。杖をついて歩いています。人間社会では89歳という事になっているように、彼は本当に老人なのかもしれません。
当然、すぐに後を追う定助一行。しかし、まずは何者なのか、「岩人間」なのか、枝がどこにあるのか、それらを見極める事が先決。「STAFF ONLY」の扉も『ペイズリー・パーク』で開錠し、中へと侵入します。階段を見下ろすと、ゆっくりと階段を下りる院長の姿が確認できました。これなら余裕で追い付けそうだったんですが……、定助の背後にいきなり謎のスタンド出現!「ジョジョリオン」の人型スタンドらしくボディーは細身で、その両腕にはバオーやカーズの如く刃状の物が伸びています。顔や全身が輪っかで覆われ、黒いロボットみたいな、そんな無機質さを感じさせるヴィジョン。天井のスミの闇から逆さまにぶら下がっているかのよう。かな~り不気味でクールなデザインだな。スゲー好き。
気配に気付いた定助。振り向きざまにラッシュを繰り出すも、そこにはすでに何者の姿もありませんでした。ダメージや目立った異変はまだ無さそうですが、その正体も能力も未知数。油断は出来ません。まあ、十中八九、院長のスタンドなんでしょうけど。


●急いで院長を追い、扉を開くと、そこはICUのそば。ちょうどやって来ていた担架にうっかり激突してしまい、素直に謝罪する礼さん。しかし、ちょっと目を離した隙に、院長を見失ってしまったのでした。
そして、康穂は担架を運んでいたのが透龍くんである事に気付きます。康穂の存在に気付いた透龍くんは、彼女の手を取り、彼女に協力をお願いします。と言うのも、担架で運ばれているのは幼い子ども。糖尿病の発作で運ばれて来て、処置も終わったはずなのに、呼吸をしていないらしいのです。透龍くんはその原因が、気管の奥に詰まらせたチキンの破片と見抜きました。彼は康穂に手伝ってもらいながら、的確かつ迅速な応急処置を施します。その甲斐あって、無事にチキンの破片を取り除き、子どもは心停止する前に呼吸回復!
ふと気付けば、2人の顔はめっちゃ接近。「出逢うタイミングが… 良いね…」「いつも僕たち………」と、穏やかな微笑みを浮かべて語る透龍くん。う~ん、いいヤツだ。その上、人命救助という共同作業までやってのけちゃうとは。透龍くんの恋のテクニック、恐るべし。しかも、一緒に救った相手が子どもってのがまたね。「結婚」や「家族」を連想させるじゃないですか。こりゃあ、康穂のハートもますます透龍くんに傾いてしまいそう。あまつさえ、それを見た定助……、ジェラシーゆえの苛立ちなのか、透龍くんに難癖をつけ出しました。「担架をわざとブツけた」だの「いつも急に現れるな」だの「オレたちの邪魔をした」だの、言いたい放題。おいおい、こんな時に好感度が落ちるような事言うなって。
この定助の難癖には、康穂も理解不能で不快感を抱いてるっぽい。それでも、当の透龍くんは別段動じる風でもなく、紳士的に対応してくれます。さらに、すぐそこのイスに院長が座っている事まで教えてくれました。確かに見失ったはずなのに。いつからそこに座っていた?明らかな違和感!すると、院長は立ち上がり、またどこかへと歩き出すのでした。


●ここで場面は移り、密葉さんサイドへ。時間は前後し、昨日のトラブルの続きから。密葉さんは、つるぎちゃんに「何か隠してる事ある?」と質問します。つるぎちゃんの脳裏に過ぎるは、「新ロカカカ」の枝。父:常敏と手を組み、枝を密かに独占しているのです。それを告白するでもなく、逆に「ママは?」「あるの?」と聞き返すつるぎちゃん。密葉さんは密葉さんで、妊娠している事や、「ロカカカ」での治療について、家族に話しているんでしょうか?まだ秘密にしてそうだよなぁ。だからそれ以上、つるぎちゃんに問い詰める事も出来ません。
「新ロカカカ」収穫まで、あと6日 ― と03時間25分 ―。先生や保護者の皆さんが学校の会議室に集まり、ミナちゃんの事故について話し合っています。校門に設置されている監視カメラの映像が残っており、それには、鉄門のすぐ近くにいるつるぎちゃんの姿がハッキリと。この直後、鉄門が動き、ミナちゃんを挟んだってワケです。幸いにもミナちゃんは軽傷で済んだようですが、娘の流血を見たショックで母親も入院しちゃったとの事。皆さん、態度はそれぞれだけど、やっぱりつるぎちゃんが犯人と決め付けており、密葉さんを責める空気がムンムンです。しかし、密葉さんはどこまでも強気。馴れ馴れしく肩に手を乗せて説得して来るおばちゃんになんて、「前足をどけろ」と人間扱いすらしない有り様(笑)。
つるぎは何もしていないし、何も言っていない。理由なくつるぎを指差したりしたなら、あたしが指をへし折ってやる。……密葉さんは徹底抗戦の構えです。誰を敵に回そうが、自分の子をどこまでも信じて守り抜こうとする姿勢は素晴らしい。実際に関わりたくはないけど、啖呵切りまくる彼女は「カッケーなー!」って思いました。


●怒って部屋を出て行こうとする密葉さんを、皆さんは「モンスター」呼ばわり。その時、皆さんが手に持っていたカップから熱々のコーヒー(?)が吹き出し、部屋中大騒ぎに。カップには「矢印」が上向きに貼り付けられていました。密葉さんのささやかなリベンジ(笑)。
振り返り、「お気をつけて」などと白々しいセリフを吐くと、たまたま視界に入った「あるもの」が引っ掛かりました。それは、監視カメラの映像。ミナちゃんが鉄門に挟まれて騒然としていた時、1人のスーツ姿の老人が、ゆっくりと校門前を通り過ぎようとしていたのです。その人物に密葉さんも心当たりがありました。そう……、TG大学病院の院長!まさかここにまで繋がって来るとは!院長は何故、この時この場所にいたのか?あの事故と関係があるのか?謎が謎を呼びます。―― というところで、次号に続く。
……じゃあ、院長についての予想も書いておきましょう。あのスタンドは「タイミング」を操る能力、と予想しときます。様々な出来事が起こる「タイミング」「間」が、院長本体にとっては都合良く、彼に害をなそうと近付く者にとっては都合悪く変化するのです。恐らく、院長の周囲10メートルとかその程度の範囲内でのみ、自動的に働く能力。院長自身にも、どんな事がどんなタイミングで起きるのか具体的には分からない。ある意味、ふわっとした局地的な運命操作とも言えるでしょう。これにより、院長は定助達に顔も見られず、追い付かれて捕われたりもせず、逃げ切れるのです。また、定助にとっては最悪のタイミングで、康穂と透龍くんが遭遇しちゃったワケです。そして、つるぎちゃんにとっても悪いタイミングで事故が起こり、彼が疑われる結果に。枝の所有者の可能性ありと、目を付けられたんでしょう。
「タイミング」という時間や運命を扱うスタンドであるなら、院長は当然、大物のスタンド使いです。でも、いわゆる「ラスボス」ではないと思っています。ラスボスを求める読者の声が大きくなってきている状況ですが、むしろ、だからこそ、ここまで来てあっさりラスボスを出してほしくはない。必ずしも明確なラスボスが必要なストーリー展開ではありませんし、いるのだとしても、まだまだ引っ張ってもらって良いですね。


●それにしても……、定助達や東方家はつくづく難儀っつーか、メンドっちい連中ですね(汗)。かつて定助も「東方家はみんなそれぞれでバラバラ」みたいな事を言ってましたけど、それは定助自身にも当てはまる事。それぞれに「正しい」と信じるものがあり、愛する者がいて、各々の「幸せ」を求めて生きています。実際、多くのキャラが自分の「幸せ」の定義を語ってました。いくら家族と言えど、お互いにそこには深く踏み入る事はなく、どんなに仲良くしていても「個」と「孤独」が常に感じられます。それゆえに、考え方ややり方の些細なズレがそのまま放置され、次第次第に大きな不和となっている気がします。
それは、家族みんながなまじっかスタンドなんてものを持っているせいなのかもしれません。スタンドとは、憲助さんの言葉を借りるなら、「ケツの穴」であり「エロ本の隠し場所」。要するに、曝け出された本性であり、剥き出しの本心に他なりません。そういうデリケートな心の領域がクッキリ目に見えてしまうため、お互いに尊重し合い……と言うよりかは、お互いにどこかで避け合い、無関心・不干渉を貫くスタンスに自然となっていったんでしょうね。全員スタンド使いなんていう家族は、長い「ジョジョ」の歴史の中でも極めて異質。そこに暮らす者にしか分からない、複雑な心理や微妙な関係性ってもんがあっても当然なのでしょう。

また、スタンドが見えるばっかりに、「目に見えるもの」しか信じようとしない傾向も見受けられます。だからこそ、その「目に見えるもの」の形を操ってしまう『ペーパー・ムーン』は、未だ誰にも破られていないヤバいスタンド足り得るんでしょう。
思えば、定助は視認した物の大きさ・長さを測れる特技を持っているし、自分の正体も自分の目と耳で知りたがっていました。そんな彼が最初にスタンドを使ったのも、常秀の「視力」を奪うため。最初の敵は、本体もスタンドも姿が「見えない」桜二郎で、コイツも「視力」を奪う事で倒しました。しかも、定助と吉良を「見間違えて」襲って来たというオマケ付き。次の敵は、「目が見えない」のに常人以上に何でも見えてる大弥ちゃん。……といった具合に、「見えるもの」「見えないもの」が重要なファクターになっているように感じられました。「岩人間」だって、人間社会に溶け込む未知の存在で、見えるけど見えていないものと言えます。
「正しさ」も「愛」も「幸せ」も、目に見えるものではありません。「目に見えるもの」しか信じないと、結局、いろんな事を見失ってしまう。それが今のすれ違い疑心暗鬼な状況を招いてしまったのです。


●そういう「孤独」も「無関心」も、「すれ違い」も「疑心暗鬼」も、彼らを縛り苦しめる「呪い」です。「ジョジョリオン」とは、「呪い」を解く物語。必ず解かねばなりません。では、具体的にどうすれば良いのか?
実は、これをすでに体現してくれている好例が存在するんです。誰あろう、定助と憲助さんです。定助にとっての憲助さんは、最初は「一番怪しい人物」でした。ところが、今では「尊敬すべき人格者」となっていますよね。「最大の敵」と思い込んでいた人物は、本当は「良き理解者」になってくれる人だったワケです。そんな誤解という「呪い」が解けたキッカケは、お互いにちゃんと向き合い、会話を交わした事。分からない事を質問し、思っている事を伝える。シンプルで当たり前の事ですが、これに尽きます。そして、東方家にしろ、今の定助と康穂にしろ、それが決定的に欠けてしまっているのです。
ホリーさんだって言ってました。自分の事だけ見つめていると、大切な事は見えない……と。憲助さんだって言ってました。物事には自然な「流れ」があり、それに逆らわなければ必ず目的地に辿り着ける……と。自分だけの狭い価値観で凝り固まってしまうと、目も心も曇ってしまいます。自分の世界を広げ清めてくれるのは、いろんな人達との出会いと繋がり。時には傷付く事もあるし、めんどい事も怖い事もありますが……、しっかりぶつかり合わなきゃ何も変わらないし、認め合って尊重し合う事も出来ません。
だから定助は、透龍くんとの関係にしろ、枝の在り処についての意見にしろ、もっとちゃんと康穂と向き合って話し合わなきゃダメだと思うんですよ。そうした上で、自分の目で「見たもの」以上に、康穂という大切な「人」を信じてあげてほしい。その点、透龍くんは康穂の言葉や気持ちをしっかり聞いて、受け止めてくれる感じがするしね。東方家の面々も、ダモカン、プアー・トムと、2回も襲撃されてやっとこさ「情報の共有」までは来たものの……、家族みんなで問題に向き合って言葉を交わさなきゃ、幸せな繁栄など実現できないでしょう。ここまで来ると、相当大きなキッカケじゃないと無理そう。やはり「新ロカカカ」で復活したホリーさんが、東方家の歴史と「石化病」の原因を語って、みんなが同じ目的に向かうようになるって展開がスムーズかな。


★今月は48ページ!サスペンスに満ち満ちていて、メチャ面白かったです。やっぱ「ジョジョ」は、荒木作品は、最高だぜ。「新ロカカカ」収穫直前の時刻、「倒れた憲助さんを引きずるつるぎちゃん」という不穏な結末が、すでに前回描かれているため、そこに到達するまでの間にどんな出来事が起こったのかの「答え合わせ」を見ている感じがたまりません。6日もあれば何だって起こりそうだしなぁ。まだまだ予想外のとんでもない事態が連続で勃発しそうです。
作者コメントは「今年はミントとかレモングラスとか鉢植えでハーブを育てるぞ!」との事。オシャレな料理とかでハーブを使ったりするのかな?
そして、驚きの大ニュース!昨年から今年にかけて東京・大阪で開催された「荒木飛呂彦原画展 JOJO - 冒険の波紋 -」が、なんと来年1月から長崎にも巡回決定です!いや……、本当は数日前に公式アプリにフライング掲載された情報を見てたので知ってはいましたが、これにて晴れて正式発表。もちろん行くのは決まってます。長崎は初めてなので、今からワクワク。新しいキー・ビジュアルも描き下ろされるでしょうし、今後もお楽しみがいっぱいで幸せです。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 4月号(2019年)
193ページ


今月は定助の背後に現れた謎のスタンド。スタンドの初登場シーンはどれもイカしてますが、これもご多分に漏れず。異形の黒い存在が、逆さまになってこっちを見てる。一目でヤバさが分かる秀逸な絵ですね。
このコマにおいて、定助だけは白いまま。礼さんも康穂もトーンが貼られて影になっているし、敵スタンドは真っ黒な闇の中。白と黒が互いに引き立て合ってます。読者の視線は当然、影に覆われていない定助に自然と向き、自ずとその背後の黒い違和感も目に飛び込んで来るワケで。視線誘導も計算し尽くした、さすがの1コマ。




(追記)
●NYさんが掲示板に書き込んで教えてくださったのが、明負悟と透龍くんの「名前」についての仮説でした。それによると、「明負 (あけふ)」という姓は「AKEF」と書き、つまり「FAKE (偽)」のアナグラムだと言うのです。さらに、透龍くんの服には「S」と読めるような模様が描かれており、その「S」+「TORU (とおる)」で「悟 (さとる)」になるのでは、との事。それゆえ、この2人が同一人物という予想に発展しているようです。
とっても面白く興味深い仮説で、それを読ませていただいた時、私もふと閃いた事がありました。「透龍 (とおる)」という名は「トオル」⇒「トゥルー」で、即ち「TRUE (真)」のもじりなのではないか、と。だとしたら、ますますこの仮説の信憑性も高まってきます。透龍くんと院長はその名が示す通り、「真」と「偽」、「表」と「裏」、「光」と「影」のような関係性なのかもしれません。


●では、この仮説を元にした場合の、透龍くんの正体やスタンド能力もちょっくら考えてみたいと思います。
透龍くん自身が「岩人間」なのかどうかは不明ですが、院長と深い関わりがあるというのなら、当然、「岩人間」とも繋がっているでしょう。ただ、高校時代に康穂と付き合っていて、しかも病院で再会するってのは、偶然にしては出来すぎてる気がします。可能性として考えられるのは、あの「髪留め虫」。康穂本人も気付いていなかったとは言え、彼女は中学時代から「岩生物」と関わっていたワケで、さらにTG大学病院に入院までしてました。もし透龍くんが「岩人間」や「岩生物」達の動向を逐一把握できていたとしたら、その時点で康穂の存在を知って興味を持ち、意図的に彼女に接近したのかもしれません。そして、院内には(礼さんも警戒していたように)監視カメラがあるので、それを見て、康穂との運命の再会をも演じてみせた……のかも。もっとも、透龍くんと康穂のかつての恋は本当だったと信じてあげたいところ。
透龍くんのスタンドは、他人の「影」を切り取って「影人形」を創り出す能力と予想。院長も謎のスタンドも黒ずくめで、スタンドは天井のスミの闇を纏っているかのようだったので、「影」に関係する能力にしてみました。このスタンドの両腕の刃は、物質ではなく「影」を切るのです。そして、切り取られた「影」は、その「影」の主そっくりの姿に立体化・実体化し「影人形」となる。透龍くんの意志や命令によって出現・行動・消滅し、「影人形」の見聞きした事柄はすべて透龍くんにも伝わるというワケです。あの院長も「影人形」であり、本物の院長は身動きも取れなくなって、今もどこかに幽閉されています。んで、透龍くんが院長(の「影人形」)を都合良く動かしている以上、病院は透龍くんに支配されているに等しいのです。「岩人間」ですら、透龍くんと院長の正体は知らないかもしれませんね。


●透龍くんの目的は、やはり「新ロカカカ」の枝をゲットする事。そのために、あえて定助達を泳がせて探させているし、「所有者」の容疑者であるつるぎちゃんを見張っています。そして同時に、康穂への想いも本当なので、羽先生に不利になる事もしていたのでしょう。「新ロカカカ」と康穂を手に入れる事こそ最優先で、仲間を切り捨てる事など容易いのです。
つるぎちゃんに対しては、まだ不安定な子どもという事を利用し、彼を精神的にトコトン追い詰めてスタンドの暴走を促そうとしました。そうすれば、閉塞した状況は否が応にも急変し、つるぎちゃんが枝を持っているかどうかを判別できるチャンスも訪れるはず。だから、院長の「影人形」を使って、つるぎちゃんが門の近くに来た時(何かで気を引いて近付けさせた?)を狙い、門を閉じてミナちゃんを挟めたのです。「影人形」は「影」なので、体の一部分を伸ばしたり平面化したりも可能。そうやって、つるぎちゃんがみんなに犯人と疑われるシチュエーションを作り、どんどん孤立させていこうとしているワケです。
ただ、倒れた憲助さんを引きずるつるぎちゃんは、正真正銘本物のつるぎちゃん。「偽物」なんかじゃないし、紛れもなくつるぎちゃん自身の意志で実行しているものと思ってます。きっと彼なりに「正しい」と信じられる道を選んだ結果、「誤った道」に迷い込んでしまったのでしょう。「SBR」のサンドマンと似たようなもので、豹変する前後で別人って事にしちゃったらテーマ的に台無しになっちゃう。



―― 細かい矛盾とかあるかもしれませんけど、おおまかなイメージとして予想してみました。果たして透龍くんは、敵なのか?それとも……?




(2019年3月19日)
(2019年3月22日:追記)




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