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でも確か地面ではなく
「フルーツ」の話だったような


#086 TG大学病院の院長 その③





●今回は記念すべき令和最初の「ジョジョリオン」!トビラ絵は、ちょっと変な走り方でどこかへと駆けて行く康穂です(笑)。その背後には『ペイズリー・パーク』の姿も。
只今、院長を絶賛追跡中の康穂達ですが、果たしてターゲットの院長に辿り着く事は出来るのでしょうか?


●院長の追跡中、あちこちにぶつかり、気付けば両脚に重傷を負ってしまった礼さん。『ドギー・スタイル』でバラケさせてはいますが、骨も丸見えで、立つ事さえままならぬ状態です。院長は定助達から逃げている風で、実はすでにスタンド攻撃を仕掛けていたのでしょう。あえて追跡させていたものと思われます。
そんな時、病院を出発するバスが通り、その中に康穂は院長の姿を発見!ところが、礼さんは追跡をやめさせようとしてきます。彼もさっき、傘立てにぶつかる瞬間、定助が見たと言う謎のスタンドを目撃していたらしいのです。このスタンドは恐らく、「追跡」という行為そのものがスイッチ。院長の正体も分からずに追跡するのはリスクでしかない、と。……しかし、追跡しなければ正体を掴めないのも事実。せめて顔だけでも確認しようと、康穂と定助はバスを追って走るのでした。
この辺の、病院の出入口付近の風景にしても、バスを追跡する康穂&定助にしても、臨場感たっぷりの大ゴマで最高にイカしてますね!こういう描写でテンポが悪くなってストーリーが進まないなどと不満に思う人もいるんでしょうけど……、自分がまさにその場にいるようなリアリティを味わえる絵、これは「ジョジョリオン」の大きな魅力の1つだと私は思ってます。


●バスの先にはゲートがあり、そこで減速・一時停止するはず。いよいよ院長確保の時も近い……!?康穂は定助から回収したスマホで、院長の顔を激写しようと狙ってます。ところが、バスのタイヤが道路に落ちてたタバコの吸い殻を踏み付け、その拍子に吸い殻は定助の方向へ弾き飛ばされた!うわ~、患者がタバコを捨てる絵が描かれてた時点で危ないと思ってたよ(笑)。やっぱりかよ~。
吸い殻はスゴい勢いで飛んで来て、定助の手に突き刺さっちゃいました。さっきガラスのドアにぶつけて出血した右小指のすぐそば。ダメージこそ少ないものの、これ以上の追跡は危険と判断。定助も康穂を止めに入ります。もう少しで院長の顔が見えそうで、ついにこちらを振り向いた……その次の瞬間、なんと2人に車が激突ッ!しかも、ドライバーのおっさんは事故の対処をするでもなく、姿すら現さない。轢き逃げするとはとんでもない輩です。最近、交通事故関係の痛ましいニュースが多いだけに余計に怖い。
定助と康穂はと言うと、とっさに『ソフト&ウェット』の「しゃぼん玉」でエア・クッションを作ったおかげで軽傷で済んだ模様。お互いの無事を確認し、安心し合う2人がエモいけれど、今はそれどころじゃありません。礼さん曰く、この謎の攻撃には時間差があるようで。まだ「何か」は見えませんが、予測の出来ない方向からのさらなる攻撃が近付いているはずなのです。そうこうしてるうちに、バスは病院の外へと走り去ってしまいました。結局、院長の正体は分からずじまい。


●すると、首を痛めている1人の男が定助にカラんで来ました。「ベッ」「ベッ」と、しきりにツバを吐き出しています。その顔には、何故か血も付着。どうやら定助が走ってた時、出血している手も振り回していたから、血が彼にまで飛んでしまったようなのです。血が口の中に入り、それで吐き出しながら怒っていたワケです。赤の他人の血なんて舐めたくもないし、しかも、どんな病気を持っているのかも分からないのだからキレるのも仕方ない。
でもコイツ、さっきタバコの吸い殻をポイ捨てしやがった野郎ですよ。今もタバコ吸ってるし。マナーがなってない上に、慰謝料と治療費をふんだくろうとしてるので、むしろイラッと来ますね。この男が定助に掴み掛かろうとするも、定助は「しゃぼん玉」でガード。直接触れられる事は回避しました。触られずに戦う方法は、ドロミテ戦で鍛えられてますからね~。さすがの身のこなし。ところが、なんと突然、この男の首がボキンと折れ、彼は倒れてしまったのです。え……?何事?
これも恐らく、スタンド能力による「激突」。定助から彼に「何か」が跳ね返った事で、彼が犠牲になってしまったようです。先程から定助は、「しゃぼん玉」で車や彼との激突をガードしていましたよね。ガードすると、その衝撃は「ガードされた者」に跳ね返るのかもしれません。だとすれば、ドライバーのおっさんも交通事故レベルの衝撃を受けてしまってて、人知れず大ケガしてたから姿も現さなかったのかな?そして、激突をガードできても、また次の激突がすぐに迫るのです。追跡者に「何か」がちゃんと激突しない限り、攻撃は止まない。回避すればするほど、被害は周囲の無関係の者達にまで広がっていく。本当に逃れたければ、院長への追跡を諦める以外にない。そんな能力だとしたら、非常に陰湿で厄介極まりないですね。これらの描写を見ると、やっぱミナちゃん鉄門事件はつるぎちゃんの意思じゃなく、院長の能力による事故っぽいよなあ。


●哀れ、タバコの男は死んでしまいました。目撃者のみなさんは、警察に通報したり、スマホで撮影したり。定助にとっては、めっちゃヤバい状況です。このままでは定助が彼を殺した容疑者にされかねません。康穂は「定助はあたしを守ってくれただけ!」と訴えますが、人の不幸を面白がってる野次馬連中には伝わらないでしょう。「みんな優しそうな人たちじゃあないか」「……いつかは信じて貰えるかもな」なんて、礼さんは皮肉ってますけど。
もし捕まったら、否定するほど拘束は長引く。「新ロカカカ」の収穫が近いってのに、そんな事に付き合ってる暇はありません。院長を倒す術も分からない今は、とにかく逃げるのみ!ここで一旦、3人はバラバラになる事に。各々で逃げた方が発見されにくいとの判断なのでしょう。それに、康穂が『ペイズリー・パーク』を使いこなせば、別れた定助達を捜し出して合流する事は容易です。散り散りになった3人をまとめるのは康穂の役目。これはちょいと意外な展開になってきたな。
病院に1人取り残されて不安げな康穂に、またもや透龍くんが話し掛けてきました。彼はさっきの定助達の様子を見ていたらしく、定助は何もしていないと証言するとまで言ってくれます。相も変わらずいいヤツなんだよなぁ~。でも、康穂への愛も変わらずってなもんで、さりげなく康穂の肩を抱きながら「君が心配」だの「ずっとそばに居てあげたい」だのとのたまっております。定助のピンチを助けてくれる透龍くんに、康穂もすっかり心を許してしまっているみたい。定助的にはありがたいやら悔しいやらってトコでしょうね。もっとも、本当の本当に証言してくれるかどうかは分かりませんがね。


●さて、ここで少々時間が経過。「新ロカカカ」収穫まで、あと5日 ― と01時間05分 ―。およそ丸1日が経ちました。定助達の逃亡劇も気になりますが、これより描かれるのはまったくの別人です。
杜王町のどこかのマンションの屋上で、男と女が会話をしています。男はプール脇のジャグジーでくつろぎ、女はビーチチェアで男のお相手。男の方は、こんがり日焼けした青年で、ビジュアルは笹目桜二郎みたいな感じに見えました。「マコリン」と呼ばれる女の方は、太めの体型で、奥様的な雰囲気を纏っています。荒木先生の巧みな描写と会話劇により、2人の関係性がほんの1ページで何となく察する事が出来ます。マコリンはこの立派なマンションを持つ大金持ちで、男は彼女に気に入られたヒモ……ってところでしょう。マコリンが見てない隙に、彼女の財布からカネをくすねてるあたり、男の方は金ヅルくらいにしか思ってなさそうですが。
……で、なぜ急にこの2人がフォーカスされたのかと言うと、なんとマコリンは「前足マダム」だったからです。こないだ密葉さんに「前足をどけろ」とあしらわれた、あの妙に馴れ馴れしいおばちゃん。密葉さんへの恨みつらみを男に語りまくってます。でも、前足の件は「ああ なるほど」「前足か」と納得されてる(笑)。彼女は屋上から町を眺めつつ、東方家の土地についても語り出しました。海岸からせり上がる丘陵地帯、もの凄く良い地形で価値ある土地。マコリンはそこにカジノを建てたいようです。高級別荘地域で、港や駅、ショッピングモールも近い。果樹園なんかに使うより、よっぽど経済効果がある。代々続く一族は何かしら問題を抱えているはずだし、火事でさらに弱っているかもしれない。そこで憲助さんと仲良くし、彼の懐にさえ入れれば、色々と「良い事」があるに違いない。……そう思っていたのに、密葉さんに台無しにされたワケです。泣くほど悔しがってる(笑)。


●マコリンはマンションの所有者というだけでなく、なんと球団「晴天バーディーズ」のオーナーでもありました。その上、このマンションやスタジアムは地盤が弱い場所にあり、法律を捻じ曲げてギリギリで建築許可を取ったらしい。だからこそ、震災でも平気で、津波も止まった、東方家の盤石な丘陵地帯が欲しいみたい。それだけでなく、病気を治す土地が存在し、それを使って常敏は同級生と病気を交換した……という「噂」「伝説」を知っていました。
このマコリン、思ってた以上に食わせ者ですね。独善的な自惚れ屋で、社会のルールも自分の都合で無視する悪どさ。加えて、その資金力と情報収集力も油断ならない。「晴天バーディーズ」のオーナー、スタジアム、建築、金持ち……。この辺の要素を考えるに、彼女は自分でも気付かぬうちに「岩人間」に利用されていそう。夜露か誰かのパトロンだったりして。マコリンってば、スタンド能力もないただの一般人のはずなのに、実はけっこう重要人物?憲助さんには好かれなさそうな性格ですが、発想は常秀に似てるから、常秀と手を組んだりしても面白いな。
私個人としては、マコリンも好きなキャラですわ。なんだかんだ図太くて逞しいし、ふくよかな体にも色気を感じます。案外、今までにない女性キャラに育ってくれるかもしれませんよ?


●マコリンは娘を迎えに行く時間らしい。その時、彼女はうっかり男の指を踏み付けてしまいました。うげ、これは痛そう。男がこれでブチキレて、スタンドなり「岩人間」としての正体なりが明かされるのかなぁ~……と思いきや、ページをめくって超ビックリ。男の両手の指がバラバラに取れちゃったじゃないですか!しかも、マコリンが彼を呼ぶ名は「オージローちゃん」!ええッ!?こいつ、マジで桜二郎じゃん!笹目桜二郎、まさかの再登場ッ!
今はこの感想、電子版を読んでから書いております。スマホの小さい画面で見てるせいか、「指があるから別人だろう」って勝手に思い込んじゃってましたよ(言い訳)。義指だったかー。髪には「×」の模様が追加され、胸には『ファン・ファン・ファン』の「印」マークのタトゥー(?)が刻まれてる。リデザインされて、より「ジョジョ」らしいカッコいいビジュアルになってんじゃん。こうなると、今後の活躍にも期待が掛かります。まぁ、指を失っている彼は、ある意味で最も「新ロカカカ」を欲する動機がある人物ですからね。
桜二郎は登場するたびに違う女性を連れています。そもそも最初は東京の女の子を拉致・監禁してましたけど、元はと言えば、彼のナンパに引っ掛かったのかもしれませんし。海で『ファン・ファン・ファン』を悪用してた時もそうだし、12巻の過去編でも女の子とラーメン食ってたし。ろくでもない男ですが、女性を惹き付ける魅力があるんでしょう。「モテる」ってのも立派な才能・能力なので、桜二郎はやはり侮れない。


●マコリンの話を聞いて、桜二郎はある事を思い出します。それは……、生前の吉良との会話
吉良はかつて、桜二郎に「等価交換」の話をした事があるようなのです。しかも、「壁の目」ではなく「ロカカカ」について。こんな信用ならないヤツに、意外と深い話してたんですねぇ。いや、吉良としては、とにかく「ロカカカ」をゲットできる可能性をほんのちょっぴりでも高めたい一心だったのかも。何かのキッカケで、桜二郎が「ロカカカ」や「岩人間」と接触しないとも限りませんから。彼に自分の指を食わせたのも、もしその接触のキッカケになったらラッキーっていう想いもあったからなのか?次回あたり、吉良と桜二郎の過去エピソードが読めれば嬉しいですね。
ところで、桜二郎は吉良を「サーフィン友達」などと言ってます(笑)。本当かよ?ま、吉良が嫌いなのはあくまで、ハッキリしない半端者。陸でバイトして生活しているのに、「何者か?」と問われた時に「サーファー」とイキッて答えるようなどっち付かず。別にサーフィン自体が嫌いなワケじゃないでしょうし、ちゃんと「海の男」として生活してるサーファーなら敬意を表しそうですしね。一緒にサーフィンして遊んでたとしても、決して変ではありません。
……あ、ちなみにすっごいどーでもいいけど、ヒョコっと顔半分だけ出す桜二郎の絵はネタになりそうな予感!21巻の広告なり、カバーを外したコミックス本体なり、このひょっこりオージローが使われると予想するぜ!


★今月は47ページ!毎度の事ながら、想像もしてなかった出来事ばかりで最高に面白い。今回は何と言っても、マコリン&桜二郎ですよ。「単なるモブ」と「出番も終わった昔の敵役」くらいにしか思ってなかった連中が、よもや台頭して来ようとは。こういう展開が出来るのが、杜王町の、そして「ジョジョリオン」の強み。もういっそ、マコリン・桜二郎・常秀の大クセチーム結成で「新ロカカカ」争奪戦に参戦してもらいたいなあ。マコリンは「土地」が、桜二郎は「指」が、常秀は「カネ」が欲しい。利害もけっこう一致しそう。定助・康穂・礼さんチーム、常敏・つるぎちゃん(+密葉さんも?)チーム、「岩人間」チームを脅かすダークホースになれるでしょ。
ただ……、「新ロカカカ」と「壁の目」って、「等価交換」の効果はほぼ同じなんですよね。自分と他人との間で行う「交換」なので。だから本当は、ホリーさんも「壁の目」で治せるはずなんですよ。なのにそれをしない理由、「新ロカカカ」じゃなけりゃダメな理由を描いてほしいものです。「東方家だけの慣わしとして許可できない」でも、「実は効果やルールが微妙に異なる」でも、何でもいい。「新ロカカカ」は「ロカカカ」パワーアップの理由を知るための研究材料であり……、真の目的は、誰も犠牲にしない、「等価」でも「交換」ですらも無い究極のパワーを持つ果実を生み出す事にあった……とかでもね。
作者コメントは「「ボーダーライン」の2作目傑作だった!3作目が楽しみ!」との事。荒木先生も絶賛とは、よほど面白いに違いない。観たいですね。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 6月号(2019年)
242・243ページ


今月はこの見開きページ。定助一行が院長の行方を捜すべく、病院の周囲を見渡す1コマです。写真のデータを取り込んで背景に使用しているってのもありますが、やっぱりリアリティがハンパない。
立体感・実在感・空気感が素晴らしく、見開きならではの空間の広がりや奥行きも感じさせ、定助達と共に「そこにいる」ような錯覚さえ覚えます。こういうコマや絵は「ジョジョ」では珍しくないんだけど、見るたびに胸躍ってしまいます。




(2019年5月17日)




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