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「オージロー」っていうんだよ
よろしくな


#087 オージロー再び その①





●今回のトビラ絵は、野球場に1人で突っ立つ桜二郎。(球場広告には、おなじみの名前がズラリ並んでました。) アオリ文の通り、改めましてのキャラ紹介です。
まず、あれから歳を1つ重ねたらしく、年齢は23歳。8月下旬~10月下旬頃の誕生日なんでしょう。自称:サーファーで独身。ガールフレンドは、シングルマザーのマコリン。不倫じゃないし、複数の女性と同時に関係を持ってるのではと疑ってもいましたが、実際はそうではないのかな?純粋な愛情で付き合ってるワケじゃないとしても、それならまだ幾分マシか。吉良のせいで一時は病んでいた心も、今は良好みたいです。ただ、奇妙な事に、彼は今でも吉良を「親友」だと思っているそう。よっぽど友達がいないヤツなのか、吉良のカリスマ性がそう感じさせてしまうのか……、いずれにせよ、「やっぱり病んでんじゃねーか」とツッコミたくもなります(笑)。まぁ、恨みながらも友情を感じるってのは、(スケールが違いすぎるけど)ジョナサンとディオっぽくもある。
そして、スタンドは『ファン・ファン・ファン』。能力説明は一切ありませんが、さすがに忘れちゃった人もいそうですよね。ターゲットの「真上」に立つ事で発動し、ターゲットのケガをした部位(最大で両手両足の計4点)を自由にコントロールできるという能力です。言ってしまえば、両手両足に「見えない糸」を通して操り人形にしちゃう「操り師」。いかにしてターゲットにケガを負わせるか、いかにしてターゲットの「真上」を取るか、そのへんが鍵を握るスタンドですね。


●我らが桜二郎、駅前のアーケード街でジェラートを貪り食ってます。いや、ジェラートどころか、カップ麺やらお菓子やら飲み物やらを食い散らかしまくり。「完全なるクズ!!」と、文字通り、アオリ文にまで煽られる始末。おばちゃんに注意されても、散らかしたゴミをビニール袋に詰め込んだかと思えば、それを通りすがりの女性のスーツケースに食いかけのガムでくっ付け、一緒に持って行ってもらってお掃除完了。「ここはキレイになったんだからイイっしょ?」と言わんばかり。
そんなドクズの目的は、東方フルーツパーラー!そこには憲助さんや鳩ねーちゃん、大弥ちゃんの姿。その様子を写メで撮りまくってます。(ってか、今は「写メ」って言わないのかな?知らんけど。) ひとしきり盗撮をしたところで、東方フルーツパーラーのジェラートを絶賛しながら去って行くのでした。
あれっ、アーケード街からあっさり出ちゃうのか。『ファン・ファン・ファン』の能力からすれば、アーケード街こそが絶好の狩り場かとも思ってたんですが。それとも、ゆくゆくはアーケードで戦ったりもするんでしょうか?


●場面は変わり、居眠りをしてうなされるつるぎちゃん。誰にも内緒で父:常敏と手を組み、「新ロカカカ」の枝を独占するため果樹園に火を放った事に罪悪感を抱いているのか……、「そのおかげでみんなは助かったんだ」と自己弁護しています。肝が座ってるとは言え、まだまだ幼く未熟な子ども。そうやって自分を正当化しないと、「迷い」や「弱さ」に押し潰されてしまうのでしょう。
そんなつるぎちゃんの手から落ちた折り紙のカエルに触ろうとする赤ちゃん。慌てて目を覚ますと、そこは町の噴水広場。赤ちゃんの母親が、折り紙をつるぎちゃんに返します。ところが、つるぎちゃんはただならぬ様子で走り去ってしまう。母親がふと気付くと、赤ちゃんの姿はどこにもない。なんと、噴水の水場に沈んでしまっていたのです!悲鳴が響く広場を後ろに、つるぎちゃんは必死に逃走!「違う」「母親が赤ちゃんに気付かなかっただけ」「僕は気絶していただけ」と、自分のせいじゃないと、自分自身に言い聞かせるように叫びながら。
つるぎちゃんの顔は、異常な形に歪んでいました。彼も自覚している通り、とうとう「石化病」発病の時間が来てしまったようなのです。と言う事は、桜二郎と同じく、つるぎちゃんもいつの間にか誕生日を迎えて10歳になっていたのかも。ようやくつるぎちゃん視点で語られましたが、例のミナちゃん事件の時も、彼は気絶していた模様。ミナちゃんに対しては、特別恨みや好き嫌いの感情も無いとの事。病気やら「枝」やら、抱える秘密が大きすぎて重すぎて、ミナちゃんの悪口なんて気にしてる場合でもないでしょうしね。しかし、それを家族に知られれば、憲助さんが自分を犠牲に「等価交換」すると言い出すに決まっている。だから、ずっと何も言えずにいたのです。
そうか~、つるぎちゃんなりに考えての行動だったんですね。納得!家族を守りたい一心で1人苦しむ彼の姿は、なかなか切ないものがあります。そして、1人で悩み苦しむその極限のストレスにより、『ペーパー・ムーン』の制御が効かなくなってきているのでしょう。これが、数日後に訪れる、憲助さんとつるぎちゃんの不穏な場面に繋がる要因にもなるのでしょう。そういう意味で、常敏のつるぎちゃんへの評価は誤りだと、現時点では言わざるを得ませんな。結局、常敏の価値観でしかない。


●フラフラと歩くつるぎちゃんの横を、ワイワイと元気に走る少年達が通り過ぎます。それを眺め、「幸せ」を自問するつるぎちゃん。

「僕って」 「他の子供たちと比べて」 「「幸せ」なのかなぁ…」
「「幸せ」じゃあないのかなぁ……」
「同じくらいなのかなぁ…」
「「何が」そろっていれば「幸せ」なのかなぁ」

このモノローグ、なんかスゲー胸にクるな……。ちょっと泣きそう。あまりにも素朴で無垢で、それでいて哀しすぎる孤独な疑問。ほんの10歳そこらでこんな事を切実に想わなければならない、彼の「宿命」の重さよ。
84話の感想にも書きましたけど、「ジョジョリオン」という作品では、多くのキャラが各々の「幸せ」の定義を語っています。かつてつるぎちゃんが語ったのは、「子孫繁栄」という、あくまで東方家としての「幸せ」。彼自身は未だ、「幸せ」とは何なのかを追い求めている途中のようです。彼もまた、定助や康穂と同じく、「自分」を探し求めているのです。願わくば、彼が自分の「幸せ」の意味を見付け、「幸せ」にならん事を。


●つるぎちゃんはそのまま自宅の方へと戻り、「一本松」の近くへ。そこに現れ、声を掛けて来た人物は……、そう、桜二郎でした!
何の用かと思えば、クリーニング屋を探していると言う。あるフルーツ加工会社のユニフォームをクリーニングして、昨年だけで2億円もの利益があったクリーニング屋。でも、本当はそんな仕事なんかやっておらず、フルーツ加工会社とクリーニング屋はグルになって違法な金を資金洗浄していた。無論、桜二郎は全てを知って、ここに来ていました。「東方フルーツパーラー」と「ダモカンクリーニング店」。クリーニング屋に行ってみてもクモの巣が張ってるだけだったから、フルーツパーラーの経営者の方を訪ねに来たようです。
「これがバレたら(おまえのパパは)刑務所行きだ」と脅されたつるぎちゃんは、慌てて桜二郎から逃げようとします。すると桜二郎、つるぎちゃんの名前を呼んで引き止め、さらに吉良がここらへんで死んだ事実にも触れてきました。「何でも知ってるぞ。隠しても無駄だ。」というメッセージです。「お前は誰だッ!!」と訊くつるぎちゃんに、余裕の自己紹介。ここでもやっぱり最初にサーファーを自称してる(笑)。超ヤヴァイ崖につるぎちゃんをじわじわと追い込み、「違法行為を通報されたくなきゃパパに会わせてくれ」と話を持ち掛けます。
そして、つるぎちゃんを捕獲……しようと思ったら、そこには誰もいない。勢い余って、危うく崖から落ちかける桜二郎。つるぎちゃん、『ペーパー・ムーン』で自分の姿の幻影を見せていたらしく、その隙に家にトンズラです。しかし、つるぎちゃんのスタンド能力を体感した事で、いよいよ桜二郎も臨戦態勢!


東方邸にて。ソファに倒れるつるぎちゃんを見て、発病を疑い焦る常敏。しかし、気丈に振る舞うつるぎちゃんは、さきほどの桜二郎の話を父に伝えます。父は本当に、法を破るような悪い事をしていたのか?その事実確認でもあります。しかし……、フルーツの密輸、資金洗浄、それらの違法行為についての言い訳はしない、と常敏。この潔さが常敏らしいし、なんか逆に清々しい。法律以上に守りたいものがあるという、彼の「漆黒の意志」ですね。
「オージロー」の名に、常敏は聞き覚えがない様子。まぁ、当然っちゃ当然の事。不思議に思っていると、家の窓が僅かに開いている事に気付きました。外の植木鉢は倒れ、窓際には謎の足跡。急いで自分の部屋に向かい、飼育室やらあちこち見回って、その流れで「新ロカカカ」の無事もさりげなく確認。あまりおおっぴらに見てしまうと、もし家の内部に侵入者が隠れていた場合、存在がモロバレですから。……ところが、奇妙な事に、侵入者がいる気配はまったく無し。一体、何者なのか?その狙いと目的は?
その時、常敏はある異常を発見。つるぎちゃんの左手の甲に、汚れなのか模様なのか、変なものが付着していたのです。そしてそれを、我々読者はすでに知っています。桜二郎のスタンド『ファン・ファン・ファン』の能力の支配下に置かれた証のマークだと!思えば、つるぎちゃんが桜二郎とすれ違った一瞬、2人の手が描かれたコマがありました。その時に桜二郎は、つるぎちゃんの手をかすかに傷付けていたのかも。右手のようにも見えるけど、まぁ、それはいいんです(笑)。重要なのは、すでにつるぎちゃんが桜二郎に操られていたって事!


●謎の「印」は、いくらこすっても消えはしません。その上、つるぎちゃんの左手は、彼自身も気付かぬうちにスマホを握っていました。そのスマホまでも、彼の物ではありませんでした。もはや自分の意思ではスマホを手放す事も不可能。
言わずもがな、このスマホは桜二郎の物。さっきからずっと動画が撮影され、つるぎちゃんの指を操作して、その動画を桜二郎のもう1台のスマホに送信させていたのです!マコリンの資金力があれば、スマホ2台やタブレットぐらい持ってたって何も変じゃない。つるぎちゃんの「真上」=東方邸の屋根の上には、もちろん桜二郎の姿。ここでもお菓子を食い散らかしてやがります。コレ、自分の聖域・テリトリーを汚染されたって言うか、侵犯されたって言うか、やられたらメチャ最高に不快な行為だよな~。そんな事さえ平気でやってのける桜二郎は……、常敏の違法行為の証拠ともなる「新ロカカカ」の情報をあっけなくゲットし、それをマコリンにも素早く報告!「新ロカカカ」を手に入れれば、桜二郎は失った指を取り戻せ、マコリンは東方家をブッ潰せる。一石二鳥です。
まんまと「新ロカカカ」の在り処までおびき出され、知らぬ間に追い詰められていた常敏とつるぎちゃん。考えを巡らせますが、果たして逆転の手はあるのかッ!?ってなとこで、以下次号。


★今月は41ページ!ページ数はやや少なかったものの、桜二郎が大いに楽しませてくれました。やってる事も考えてる事も全てクズなのに、相変わらず執念深く用意周到で恐ろしい男。偵察した上で、他に家族がいない時間を狙って東方邸に来たんでしょうしね。一度は敗れ去って退場した男の、ここに来ての再登場・大躍進にはゾクゾクしますな。ヴェルサスがウェザーの「記憶DISC」をかっぱらって反逆した時の感覚にもちょっと近い。ズッケェロとサーレーが『矢』の争奪戦に加わったり、L.A.が「遺体」争奪戦に加わったりしたら、きっとこんな気持ちだったんだろうな。
前回も書いたように、是非とも常秀も仲間に引き入れてほしい。さらに、カレラも加わって、チームドクズ結成!カレラが再登場すれば、定助と2人でいるところを康穂が偶然目撃してしまい、康穂は誤解したまま透龍くんの元へ……的なドロドロ修羅場展開にも持って行けそうですし。「ロカカカ」を手に入れたい動機もすでに十分。クズ共が大集合して、ストーリーを無茶苦茶に荒らしてくれる事を、ついつい期待してしまいます(笑)。
作者コメントは「「ステーキ屋」でステーキの前の前菜でお腹一杯にさせるお店ってバカなの?」との事。本末転倒なお店(笑)。肉食いに来たんだから肉食わせろって感じですね。先生のそんな怒りの体験談、そのうち作品にも反映されたりするかな?
さて、次号は「ジョジョリオン」が表紙です。例によってコミックス21巻と連作になっているはず。どんな絵なのか、早くも待ち遠しいです。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 7月号(2019年)
356・357ページ


今月は桜二郎の全身が描かれたこの大ゴマ。桜二郎のくせに妙にカッコイイのが腹立つ。筋肉が程良く引き締まった褐色ボディ、ゲスさが滲み出る表情、子ども相手にイキッてるポーズ、全てが桜二郎らしいヤヴァさ全開でパーフェクトです。…………。……いつの間にやら桜二郎推しになってないか、俺?




(2019年6月19日)




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