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これは死んだ吉良からの
オレへのプレゼントだ…


#088 オージロー再び その②





●今月のウルジャン表紙は「ジョジョリオン」が飾ってくれました。例によって、コミックス21巻のカバーイラストと連作ですね。
ダンスを踊っているかのような楽しげな定助。一際目を引くのは、やはり彼の背後の松の木でしょう!『ソフト&ウェット』と「瞑想の松」が融合したっぽい樹。『ソフト&ウェット』の頭部の他にも、錨のマークが彫られ、さらには杜王町や東方フルーツパーラーのマーク、「オーソン」の店名などの旗?紙?布?が貼り付けられています。21巻の方には無い、帽子屋「SBR」や「杜王新聞」の名前、TG大病院のマークも確認。これはもう、『ソフト&ウェット』と「杜王町」が融合したとさえ言える絵ですね。
カラーリングは、定助のブルーと、松の木や背景のグレーが中心。その中で、松の葉のピンクが鮮やかに映えています。この松の葉ですが……、まとまった「葉」にも見えるし、実った「果実」にも見えるという、かなりデフォルメされた形状やカラー。勝手ながら、私は「二本松」をかなり重要な場所と予想しており、それぞれ「知恵の実」と「生命の実」が成る「知恵の樹」と「生命の樹」なんじゃねーかと考えてる事もあって、余計に意味深に見えてしまいました。


●今回のトビラ絵は、コミックス21巻のカバーイラストの定助まんまでした。背景も特に無し。タイトルが書かれた石に定助が乗ってるのは、ちょっと面白い。コミックスだと、ここにサブタイトルが入るんでしょうか?
……でもやっぱり、荒木先生の新しい絵が見たかったなぁ。残念。


●突如として現れた桜二郎に襲撃される常敏・つるぎちゃん親子。つるぎちゃんは、『ファン・ファン・ファン』の「印」を付けられた左手が操られている状態。皮膚がむけ、血が滲むほど擦っても、決して「印」は取れません。つるぎちゃんの左手は、彼の意思を無視して、勝手に窓を開け始めます。さっき居間の窓が少し開いていたのも、操られた左手がやった事。全ては桜二郎の仕業だったのです。
左手がつるぎちゃんの顔面を何度も殴り、窓ガラスまで破壊!さらに、左手ごとつるぎちゃんの体が上方に引っ張られ、割れたガラスに突き刺さりそう。これを阻止しようと、常敏がつるぎちゃんの左手を押さえ込むと……、上から2本の浅黒い腕が現れ、常敏の両手に触れました。そう、これは桜二郎の腕。ヤツに触れられた常敏の両手に、「印」が浮かび上がります。どうやら、桜二郎自身が直接触れた場合は、わざわざ傷付けずとも「印」を付けられる模様。近付くリスクに見合ったメリット、とも言えるでしょう。それなら、すれ違った瞬間に、つるぎちゃんに「印」を付けられたのも納得です。
いとも容易く常敏の両手をも支配した桜二郎!常敏の両手はつるぎちゃんの首を締め、その上、割れたガラス片に押し付けようとし始めました。桜二郎が常敏に与えた「選択肢」は3つ。息子を絞め殺すか、あるいは切り殺すか、それとも「新ロカカカ」を桜二郎に捧げるか。


●密輸&資金洗浄の証拠を押さえられ、息子の命まで人質に取られ、さすがの常敏も為す術なし。一族の繁栄のため、息子の幸福のため、ずっと頑張って来た常敏ですから、こうなってしまっては桜二郎に従うほかありません。桜二郎に命じられるがまま、おとなしく質問に答えます。
「新ロカカカ」があと3日で収穫できる事を告げると、桜二郎は大喜び。このタイミングの良さ!何かが自分に味方しているかの如きツキ!「持ってる男」桜二郎ッ!そして彼は、スタンドの姿を見せるよう常敏に命令。自分の身を守るためにも、常敏のスタンドの姿形や射程距離を確認しておきたいらしい。コロッセオでのポルナレフ並みの用心深さまで持ってやがる。「スタンドを見れば帰る」という、だいぶ常敏に譲歩した取り引きでもあり……、つるぎちゃんの安全のために、常敏は素直に『スピード・キング』を出して見せるのでした。
ここで父親と一緒にスタンド(折りガエル)を出して見せたつるぎちゃん。完全降伏の意思を示し、自分と父親を助けてほしいと懇願しているのでしょうか?それとも……?しかし、「お前のは見せなくていい」と、桜二郎は不機嫌そうに折りガエルを引っ叩きます。そして、「気が変わった」とあっさり言い放ちました。姿を見ただけじゃ能力までは分からんし、なんか強そうだからやっぱ殺しとくわ。そーゆー事のようで、この平気の反故・裏切り、まったくもってクズ野郎の所業です。常敏の両手を操り、ガラスの割れた窓を閉じてギロチン代わりに処刑!常敏とつるぎちゃんの首は窓に挟まって、ガラスがザックリと深く突き刺さり、大量の出血と共に2人は倒れる!


●桜二郎が悠々と窓から御登場です。2人の死体を横目に、ついに「新ロカカカ」をゲット!真正のクズだけど、この奇襲は鮮やかと言わざるを得ません。あんなに扱いにくそうな能力を、ここまで見事に使いこなすとは。無駄の無い行動で心身共にどんどん追い詰め、選択の余地すら与えずに従わせ、殺る時は一瞬で殺る。イカしてるぜ、桜二郎!クズだけど。
「新ロカカカ」を手に、桜二郎は「このフルーツは元々、吉良の物であり、ホリーさんのための物」「東方家が持つべき物じゃない」「これは死んだ吉良からのオレへのプレゼントなどと、自分に都合の良い言葉を吐きまくり。さらに、つるぎちゃんの手から落ちた自分のスマホを回収し、常敏のサイフからお札を抜き取ります。最後に、キレイな瞳で吉良との縁に感謝だな」と言い残し、堂々の帰還!言葉の端々からも、吉良に対してだけは特別な感情を抱いている事がよく分かります。ホリーさんを「さん」付けで呼んでるあたり、妙なところで礼儀正しいというか義理堅いというか。
……マコリンのマンションへと帰る桜二郎。なんかやたらと暑がりながら、タクシーの運ちゃんにイバり散らしてる。そんな得意顔の桜二郎に、突然の異変が。指やら胸やらが「熱く」て仕方ない。いや、それどころか、舌も顔も眼までもどんどん熱くなり、もう大パニックです。これはもちろん、常敏の『スピード・キング』の能力。桜二郎が持って行ったスマホやお札に「熱」を持たせておき、それらに触れた指に「熱」が伝導したってワケですね。その指を舐めた舌にも、思わず手で覆ってしまった顔から血管を通じて眼にも、「熱」は次々と伝導。体のあちこちが煮え滾り焼け爛れた桜二郎は、もはや「新ロカカカ」どころじゃない。


●『スピード・キング』が発動しているという事は……、当然、本体の常敏も生存しているという事。常敏が生きていた理由、それはつるぎちゃんの『ペーパー・ムーン』のおかげでした。実際は首に小さなガラス片が刺さっただけだったのに、デカいガラスがブッ刺さって大量出血した「幻覚」を見せていたのです。折りガエルに触れちゃった時点で、桜二郎は『ペーパー・ムーン』に支配されていたワケです。「一本松」でも能力を体験したってのに、つるぎちゃんを甘く見すぎたのが運の尽き。
自分のせいで「新ロカカカ」が奪われたと嘆くつるぎちゃんに、「おまえのせいなんてのは どこにも無いんだ」と諭す常敏。全ての責任を自分で背負い、全ての始末を自分で付ける。そんな孤独な覚悟を感じさせます。常敏は、自分のしている行いが社会的に「悪」と見なされる事は百も承知で、それでも何を犠牲にしようがどんな罰を受けようが、「家」と「家族」を守り抜くと決心しているのでしょう。それこそが自分の「正しい道」だ、と。強いヤツが、勝ったヤツが、最後には「正義」になるんだ、と。その「漆黒の意志」と揺るがない姿勢は、危ういながらもカッコイイ。
「新ロカカカ」は桜二郎がどこか近くに置きっぱなしにしているはずと、常敏は回収に出向きます。しかし、ここでの問題は、桜二郎みたいなヤツが急に湧いて出て来た理由。それをしっかり把握しておかねば、危険が去った事にはなりません。


●場面は変わり、マコリンのマンション。娘と一緒に部屋に帰ってきたマコリン。どこかで電話が鳴っています。桜二郎がいるのかと思い、「オーちゃん」「オーちゃん」と名を呼ぶ2人。娘も公認の関係だったのか。
テラスのプール脇でスマホを見付け、マコリンが出ると……、電話の主が語り出します。「熱」は常に、温度が高い方から低い方へと流れる。これが熱伝導。しかし、自分の能力は、「熱」を散らさずに1ヶ所に「溜めて」おける。そこに触れたら流れ出すようにも出来る。無論、この電話の主は常敏。あの僅かな時間で、常敏は桜二郎の電話番号をちゃっかり入手していたみたいです。プアー・トムの時もそうだったけど、油断ならない男だぜ。電話の主が東方家の人間であると推測は出来ても、スタンド能力の説明はさっぱり理解できていないマコリンの様子から、彼女がスタンド使いではないただのガールフレンドと判断。もし彼女がスタンド使いだったら、用心のために家族ごと消すつもりだったようです。
電話が切れると、マコリンの顔にも「熱」がすぐさま伝導!血を噴き出し、気絶してプールに落下!プールの底には、なんと桜二郎がすでに力無く横たわっていました。かくして、桜二郎とマコリンは2人仲良く死亡。残された娘さんが気の毒ではあるけど、常敏にとっちゃ知った事じゃありません。そして常敏は、「新ロカカカ」を何事もなく回収!「新ロカカカ」収穫まで、あと3日 ― と01時間19分 ―


★今月は45ページ!「殺人」すら躊躇なく犯せる常敏の「漆黒の殺意」、実にスマートでした。まぁ、桜二郎に殺されかけたんだから、そこはお互い様って事。
それにしても、桜二郎&マコリンはもう脱落か~。もっともっと掻き回して掻き乱してほしかったし、惜しいキャラだなと思いますが、結局はこれがヤツらの「器」と「限界」なのでしょう。このエピソードの目的は、 常敏の「覚悟」をハッキリ描くため と、 つるぎちゃんの心理をより不安定にさせるため ……ってところですかね?憲助さんに自分の身代わりになってほしくなくて「病気」の事も黙っているつるぎちゃんが、最終的に憲助さんを殺したような結末になっているのだから、彼の心が変わるキッカケが必要になりますよね。もしくは、憲助さんを守るための行動こそがあの結末なのか?
加えて、 吉良が他人に「ロカカカ」の情報を与えていた事実を明示するため でもあったのかな?これにより、かつてカレラに「ロカカカ」の話をしていても不思議じゃなくなったし、カレラまでもが「新ロカカカ」を狙って来る下地が整ったように思います。少しでも「ロカカカ」に近付く可能性を上げるためだろうとは言え、かつての吉良の行動が、「呪い」のように今の東方家に襲い掛かって来るのです。
作者コメントは「動画配信サービスに入った。おすすめの作品、何でこんなに僕の好みがわかるんだ?」との事。そういう何気ない「疑問」が荒木先生の中で大きな「謎」となり、創作の「アイディア」になってくれるんじゃないか……なんて期待をしてしまいます(笑)。マナーや歩きスマホ、筋トレで、魅力たっぷりの短編作れちゃう人ですからねぇ。
そして……、原画展「JOJO - 冒険の波紋 - 」金沢巡回決定ッ!「金沢21世紀美術館」にて、2020年4月25日(土)~5月23日(土)の期間、行われるらしい。長崎に続いて金沢か!もちろん、これも行くぜ!どっちも初めて行く街でもあるし、めっちゃ楽しみです。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 8月号(2019年)
326ページ


今月は、「新ロカカカ」をゲットして颯爽と立ち去る桜二郎。淡々と目的を果たして消える、この身軽な感じが素敵じゃないですか。しかも、普通に窓から下りて帰りゃあいいものを、わざわざ屋根にまた上ってる無意味さが好き(笑)。高い場所にいる桜二郎からは、全てを見下してるクズな精神性が伝わってきますよ。
絵的にも、桜二郎が中心に小さく描かれてるだけで、ほとんどが東方家の屋根と町の風景。しかし一方で、彼の上には『ファン・ファン・ファン』がデッカく描かれています。まるで「東方家も、この杜王町も、世界も、全部オレのものだぜ!」とでも言わんばかり。……これが、彼の最期の雄姿となりました。さよなら、そしてありがとう。桜二郎……。お前と過ごした2ヶ月、楽しかったよ。




(2019年7月19日)




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