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…母さん…


#092 危険な追跡 その④





●イタリアのルッカで荒木先生を生で拝見し、なんとか無事に日本へと帰って来れました。全部が全部思い通りの結果とはなりませんでしたが、この旅でもまた素晴らしい想い出が出来ましたよ。―― そんなワケで、さっそく今月の「ジョジョリオン」感想といきましょう!
今回のトビラ絵は、登場人物達による手旗信号。この絵、実際にちゃんと信号になってまして……、真ん中の定助は準備姿勢ですが、康穂・つるぎちゃん・『ソフト&ウェット』・常敏のポーズで「J」「O」「J」「O」になっています。彼らの胸に描かれている通り、アルファベットで「JOJO」
今回の話をラストまで読んだ上で、改めてこのトビラ絵を見ると、なんだか意味深。もしかすると、定助がついに8代目「ジョジョ」として完成した回でもあったのかもしれません。「運命」という暗闇の大海を寄る辺無く漂っていた定助が、ようやく確かな「自分」を見付け出した……と言えるのかもしれません。そんなメッセージが込められた絵にも見えてきます。


●TG大学病院の記念堂では、いよいよ明負悟院長の講演会がスタート!テーマは「再生医療」について。再生医療とは、病気や事故などで失った患部を、培養した理想的な細胞組織で治療する医療技術。しかし、細胞の培養に膨大な時間と費用が掛かる点や、炎症リスクが避けられない点といった弱点も存在する。なんとTG大学病院は、それらの弱点を克服すると豪語しました。そして、壇上に登場した院長ッ!
壇上の光と影の表現が個人的にスゴく好みでして……、ステージのまばゆさって言うんでしょうか、これまで何度もステージに上がってこられた荒木先生だからこそのリアリティを感じます。この原稿が描かれたのがいつの時点なのか分かりませんが、つい先日も、ルッカの歴史あるオペラハウスや教会で熱狂のステージを体験されたばかりですしね。


●場面は変わり、院内の定助へ。気絶させた警官が、院長のスタンド能力によって「激突」して来て、脇腹に大ダメージ。せっかくここまで近付けたのに、立ち上がる事すら出来ない状況に早くも追い込まれております。すると、そんな定助に誰かが声を掛けてきました。その人は、ちょっと診ただけで、負傷の具体的な状態を見抜いてしまいます。そして、定助を「吉影」と呼んでいる。……そうです、そこにいたのはホリーさんだったのです。
「フレミッシュジャイアントうさぎ シンディちゃんの身長は?」などと、唐突なクイズを出してくる彼女。なんでも、吉良が4歳の頃、牧場でシンディちゃんと遊んでいたら転んでしまい、肋骨を折る大怪我をした事があったそう。その時も彼女が治療したらしく、「また直ぐに治せるわ」と優しい言葉を掛けてくれます。そんなホリーさんの姿が現実なのか幻覚なのか、理解できずに戸惑う定助。
ホリーさん曰く、定助が病院に来ている事は「感覚」で分かったとの事。さらに、窓越しにICUに運び込まれるのも目撃し、ここまで来てくれたのでした。ジョースター家が互いに感じ合う肉体の信号・波長のような感覚は、この「新世界」においても健在である事が判明しました。それなら定助と虹村さんはどうなんだ?という疑問も生じますが、個人差があるのかもだし、成長に伴って定助の信号が強くなったって事なのかもしれませんしね。
ホリーさんは、溺れた仗世文を治療した時と同じぐらい意識がハッキリしているように見えます。自分で食べちゃった両手の指も、すっかり元通りに治っているっぽい。意味不明な事を言って康穂を困らせたり、眠り続けたりしていた彼女とは、まるで別人のよう。一体、どういう事なのでしょうか?


●ホリーさんの体には、謎の数字や模様が書かれていました。よく見れば、文字や文章も書かれています。数字は明らかに、何らかの「時間」を示しています。最初は「ホリーさんのスタンド能力か?」とも思いました。例えば、触れたモノの時間だけを戻すとか早めるとか、そーゆー感じの能力。でも違いました。
最近、めっちゃ忘れっぽくなったから、自分の体にサインペンでメモしていたと言うのです。まるっきり『ジェイル・ハウス・ロック』戦の徐倫です。服をまくり上げ、腹部を見せ付ける彼女。そこには石化した皮膚が!しかも、なんとこの石化はズルズルと動いていました。少しずつ上に登っていっている。全身を転移しながら、やがて脳にまで登っていくらしい。メモしていた「数字」は、石化が脳に達するまでの時間を計るためのもの。今は120の所なので、あと120秒で脳が石化・昏睡する。……で、そのうち石化は脳から離れ、目が醒める。この流れを繰り返しているようです。なんて厄介な……。ちょっと「岩人間」に近い存在になっちゃってるじゃん。
ただ、これらのメモは今までは書かれていなかったのだから、ごく最近になって書かれたものでしょうね。「定助」という特異な存在が近くに現れた影響か、はたまた、「新ロカカカ」収穫の時期が近付いているためか……、ホリーさんの昏睡と覚醒の周期にも変化が起こったのかもしれません。つーか、ハッキリと意識が覚醒したのは久しぶりなんじゃないかって気がします。


●場面は再び院長の講演。体をプルプル震わせ、咳込みながら、ついに院長が言葉を発す!
院長が手にした物は、謎の液体が入った筒状の容器。その名も「LOCACACA 6251」!いやいや、「LOCACACA (ロカカカ)」は良いとしても「6251」って(笑)。画集の「JOJO6251」じゃん。画集の方はそれまで描かれた6251ページのエッセンスを詰め込んだ内容って意味ですが、こっちの方は何かしら意味があったりするんでしょうかね?6251人の犠牲の上に完成した、とか?
それはともかく、その名の通り「LOCACACA 6251」は、「ロカカカ」の成分を抽出して精製した治療薬。これを体内に注入するだけで、患部を新しく変換。細胞の培養も、手術も、必要無し。したがって、炎症リスクも無し。再生どころか元通り。そんな夢のような「交換」が実現するワケです。完成はもう間近。明日・明後日にも完璧の治療技術となる。そう力強く断言する院長!「新ロカカカ」さえゲットできれば、って事ですね。前代未聞で画期的な発表に、会場は大フィーバー!
驚くべき事に、院長の顔が真っ正面からしっかり描かれていますね。透龍くんが持ってた写真で見た顔とは、微妙に印象が違うような……。単に荒木先生が描き慣れてないだけか、別の意図があったりするのか?


●ホリーさんは定助を車椅子に座らせ、婦人科棟研究室「A2室」へと向かいます。彼女の腕に、その部屋の名前がメモされていたのです。そこに「LOCACACA 6251」がある。定助の負傷も治せます。その他にも「息子の名前は吉影」とか「記憶がなくなる」とか、「信用するな 羽伴毅 プアー・トム」なんて事まで書かれていました。その「A2室」は、ホリーさんがいつも行っていた部屋らしい。もしあの「ラボ」の事だとしたら、羽先生や様々なウイルスと共に封印中のはずなので、うかつに開けるのは危険すぎやしないか?
それより、ホリーさんが「ロカカカ」を知っていた事にビックリする定助。つまり、康穂は羽先生が話していた情報を定助達に伝えていない、って事ですね。まぁ、内容が内容だけに言いにくいのは理解できますけど。ホリーさんは自らの身に起きた出来事を語り始めます。……体調の異変も、彼女は最初「仕事のし過ぎ」としか考えていなかった模様。病院側からは残業を減らすように指導されたようです。そして、明負悟が院長として就任した頃、新しい医師の数も何人か増えた。彼女の体調は、自覚も無いまま悪化。記憶は途切れ途切れになり、時間の進む感覚が遅くなり、物を落としたり、歩けたり歩けなかったり……。
定助はこの時点で気付きました。ホリーさんがずっと「ロカカカ」を投与されていた事実に。病院内に院長の手下が忍び寄り、ダモカン達にさえ知られる事なく「臨床実験」が行われていた。いつの間にか迫っていた危険に気付く事も出来なかった彼女は、息子:吉影に何一つ伝える事が出来なかった。南の海でトビウオが跳ね、吉影が「ロカカカ」の存在を知るまでは ――。


●う~む、この辺の情報を整理し直さないといけませんね。そもそもの話、ホリーさんは「石化病」ではなかったって事なんでしょか?でも、憲助さんは「東方家とジョースター家は同じ宿命」と言ってましたから、「石化病」は伝わってるはずなんだよなぁ。
だとすると、最初の異変はやっぱり「石化病」の発症で……、それを知ってか知らずか、院長達がそんな彼女に目を付けた。「ロカカカ」の実験台にされ、その過程で「石化病」自体は完治。しかし、今度は「ロカカカ」による「石化」に苦しめられる結果に。ひょっとすると、院長達から「ロカカカ」をこっそり奪い、院内に造った「ラボ」で独自に研究していたのかも。ただ、実は院長達から泳がされていただけで、研究結果も「ラボ」も逆に奪われちゃったと。あるいは、甘い言葉で共同研究を持ち掛けられた挙げ句、利用されるだけされて切り捨てられたか。息子達への警告も、密葉さんのように記憶を混濁させられたせいで不可能だったとかね。そして院長達は、「臨床実験」やホリーさんから奪ったデータなどを基に、「LOCACACA 6251」の開発に成功したワケです。ひとまずは、そういう流れだったと解釈しとこうと思います。
それにしても、こうなってくると吉良と仗世文があまりに不憫。「ロカカカ」で救おうとしていたホリーさんが、とっくに「ロカカカ」を投与されてたなんて。「ロカカカ」のせいで苦しむホリーさんのために、命懸けで「ロカカカ」を手に入れようとしていたなんて。こんな皮肉があるでしょうか?でも、その意志と行動のおかげで「新ロカカカ」が生まれたのだから、決して無駄ではなかった。


●石化はどんどんホリーさんの頭部に登っていきます。残された時間は僅か。彼女は消火栓のボックスから取り出した斧で、部屋の扉をメッタ打ち!すると、扉そのものは閉じたままですが、扉の一部分が引き出しのように開いて、その中に保管されていた「LOCACACA 6251」をゲット!あとはこれを飲めば、肉体のどこかは石化するけど、引き換えに負傷は治る。
いよいよ限界が近いホリーさんは、ベッドに横たわりながら定助に忠告。あの院長についてです。……院長を絶対に追い掛けてはいけない。近付こうとしてはいけない。院長には顔が無い。何度会おうと、決してその顔を覚えられない。そういう人物であり、そういう能力。追い掛けると、あらゆる「悪い力」が激突してくる。院長を追わなければ、関わろうとしなければ、それだけでいい。大切なのはあなた自身。
しかし、定助は諦める事など出来やしません。必ず院長を倒すと、改めて決意!「LOCACACA 6251」を口に含みます。ところが、一瞬のうちに唇が「等価交換」されて石化してしまい、口も鼻穴も塞がれて呼吸が出来ない状態に!残りの「LOCACACA 6251」を飲む事も不可能!院長を倒すという意志を持ってしまったために、「LOCACACA 6251」が激突してきたのです。そこで、ホリーさんが代わりに「LOCACACA 6251」を持ち、雨粒の「激突」で定助の頬に開いていた傷穴に流し込む。彼女が言うには、吉良は昔からうぬぼれが強く、一度思い込んだら突っ走っちゃうタイプだったようです。それは大成功したり、致命的に失敗したりと、両極端な結果を招いてきたらしい。そういうところは、確かに定助にも受け継がれているように思えますね。


●ホリーさんのおかげで、唇の石化も解かれ始めました。彼女は「院長を追い掛けるのは駄目」「追い掛けさせるのは良い」と、定助に伝えます。なぬ!?そんな単純な攻略法がッ!なんか『ノトーリアス・B・I・G』とか「緑色の赤ちゃん」にも似てます。「害悪」を引き寄せる力は「女神」ルーシーか。つまり、院長に自分を追わせる理由を作ればいいんですね!
「気をつけて…」 「お願いよ…」 「あなたに… また会いたい…から」と最後に言い残し、ついにホリーさんは眠りに就いてしまいました。その姿を見て、定助の眼から大粒の涙が……。ホリーさんは、自分の事を息子:吉影と思い込んでいた。それとも、息子が死んだ事も何もかも全て理解していて、あえて自分を「吉影」と呼んでくれたのか。

「オレの名前は…… 「東方定助」……」
「生まれた時からの思い出は…… この世のどこにも無い…」
「これからも ずっと…」
「だけども… 確かな事を見つけた」

「オレはあなたの子供だ」

「どんな場所へ行こうと どんな時代に生きようと」
「信じる事の出来る 確かな事」

「…母さん…」


ああ……、やべえ。これはやべえ。泣けるよ……。このセリフをタイピングしてるだけでも胸が詰まってきた。「定助」という存在は本当に切なくて哀しいけど、ここで1つの「救い」が得られましたね。生まれて初めて「家族」を呼ぶ声。この「…母さん…」って呟き。ずっとずっと孤独だった定助にとっては、天地が引っくり返るくらい大切な一言でしょう。これが読者以外、誰1人にも聞こえていないってのがまたイイよね。
そして、眠るホリーさんを抱きかかえる定助の姿も最高なんですよ。かつて仗世文が心に描いた「幸せのイメージ」……、「ピエタ」のように幼い仗世文を抱くホリーさん。これの逆になってるんですよ。いろんな因果が巡り巡って、廻り廻って、今に辿り着きました。


●『ソフト&ウェット』のオラオララッシュをブチかまして、定助は部屋中をメチャクチャに破壊ッ!これで「LOCACACA 6251」も失われたはず!
「必ず助ける」と、敵を倒す事ではなく母を救う決意を固めました。その左半身には「飛び石」のように石化が広がり、左眼も見えなくなっている様子。石化の患部は固定されていそうなので、転移ってのはホリーさんだけの症状なんでしょう。「石化病」の元患者で、「ロカカカ」を何度も投与されたが故の例外的症状なのかな?とにかく定助は、自分の眼なんぞお構い無しで、「新ロカカカ」の果実を手に入れると宣言するのでした。信じる目的のために、自分の身も命すらも省みない定助。希望と悲壮感を同時に醸し出すこの生き様が、実にカッコ良く、まさにヒーローなのです!―― というところで、続きは次号ッ!
恐らく、定助は院長の追跡を止め、これから院内を探索するでしょう。院長室にも忍び込み、どこかにある「新ロカカカ」を探し回るはず。旧タイプの「ロカカカ」や「LOCACACA 6251」は、見付け次第、全て破壊。それで「新ロカカカ」まで奪い取ってしまえば、院長は必ず自分を追って来る。そういう狙いです。しかし、病院のどこを探しても「新ロカカカ」は無く、康穂の言葉の信憑性が増してくるワケですね。……で、定助は康穂と合流しようとするも、透龍くんがまた何かしらの障害になってくるんです。


★今月は45ページ!グッと来まくりで、最高の回でした。58話90話みたいに、定助が「母=ホリーさん」を語る回はどれも泣けます。ストーリー的に重要な点としては、「不死産業」を具体化したアイテム「LOCACACA 6251」の登場!セリフで発表・解説する院長と、実際に飲んだらどうなるかを絵でも示してくれる定助が交互に描かれるという、分かりやすくて巧みな構成になっていたと思います。無駄が無く、自然な流れで、さすがは荒木先生といったところでしょうか。
作者コメントは「最近している運動はパワー・プレート。頭のてっぺんまでブルブル。」との事。ホントに先生は自己管理が徹底されてますよね。自堕落な私なんかは、余計に尊敬です。
原画展「JOJO - 冒険の波紋 -」長崎展&金沢展のキー・ビジュアルが発表ッ!この予期せぬ出来事にスッゲー驚いて、めちゃんこハイになりました。なんでも、尾形光琳の「燕子花図屏風」をモチーフにしているらしい。荒木先生の描かれる「和」、私も大好物でございます。「裏切り者は常にいる」よりも多い登場人物達!今の荒木先生によって描き出された、かつてのキャラクター達!ああ~、早く原画が観たいッ!先生と椛島さんの対談は落選してしまって落ち込んだけど、これで俄然楽しみになってきたってもんです。





< 今月の1コマ >


ウルトラジャンプ 12月号(2019年)
316ページ


今月は、母:ホリーさんを救うと自分に誓う定助。いや、まぁ……、言うまでもなく荒木先生も決めゴマとして描いてるでしょ。決意を秘めた眼差しといい、引き締まった顔付きといい、パワーを感じるポージングといい、線が描き込まれた美しい筋肉といい……、先生の気合いがビンビン伝わってきますよ。超カッコイイよ。
しかも、パンツに並ぶ「JOJO」の文字!トビラ絵のところでも書きましたが、やっぱり今回は定助が「ジョジョ」として完成する回だったのだと思います。このコマがそれを明確に示しているし、定助を裸にしたのもこのコマを描くためだったんじゃないかってぐらい(笑)。




(2019年11月19日)




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