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帰って……!
帰るんだッ…… 直ぐに……!


#093 危険な追跡 その⑤





●今月のウルジャン表紙は「ジョジョリオン」が飾ってくれました。例によって、コミックス22巻のカバーイラストと連作になっていますが……、それだけじゃなく、なんと先月号第92話のトビラ絵も含めてのトリプル連作でした!登場人物達による手旗信号!キャラの選出と配置がそれぞれ異なり、今回は礼さんが最初の「J」を担当です。
特筆すべきは、定助のカラーリングでしょうか。ホワイト・グレー系の色合いだったコミックス版とは対照的に、鮮やかなピンク・パープル系。両者を見比べてみるのも、また楽しいものです。
ところで、この手形フラッグ、原画展のグッズとして販売してくれないかなぁ~?いや、別にそれで何をするってワケでもないんですけどね。なんかイイじゃん?


●今回のトビラ絵は、迷いの無い顔付きでまっすぐ駆けて行くかのような定助の姿。「LOCACACA 6251」の副作用により、左眼を始めとして、頭部左側のあちこちは石化しています。しかし、そんな事は意にも介さない。母への想いが背中を押す ――
間違いなく、前回でのホリーさんとの触れ合いで、定助は「主人公」としてのステージや格が一気に上がりましたね!ようやく「自分自身」としての明確なバックボーンが得られ、それによる「誇り」をも手に入れたんですから。自己喪失・自己否定という「呪い」から解き放たれた今の定助は、どんな敵や障害にも屈しはしないでしょう。


●プアー・トム戦で「新ロカカカ」の枝を奪われた時を回想し、どこかで今も枝が育っている事に思考を巡らす定助
……と、そんな頃、TG大病院に1人のおっさんがやって来ました。新手の「岩人間」かとも思いましたが、彼は「バイクハイ!」とかいうバイク便の人。とある病室に入ると、そこには彼を呼んだ客の姿が。その病室はホリーさんの部屋で、客は定助でした。パンツ一丁ではなく、ちゃんとセーラー服を着ていますね。そして、ガムテープで厳重にグルグル巻きにした小包みをおっさんに渡しました。果たして、この中身は何で、送り先はどこなのか?送った目的は?
無難な予想としては、「LOCACACA 6251」を東方家に……といったところかな。味方である憲助さんに成果の報告、みたいな。さらなる調査・分析のために康穂の家に送った、という線もあり得るかも。「ロカカカ」は非常に貴重な即効性のある回復手段でもありますから、いざという時に役立ちますしね。あるいは、病室で発見したホリーさんの手記か何かだったり?別の可能性としては、定助のメッセージや能力を閉じ込めた「しゃぼん玉」詰め合わせセットとか?


●バイク便のおっさんとのやりとりは、町の住人達の「無関心さ」がよく表れているようにも見えました。定助の眼や顔の石化に詮索もして来なけりゃ、別段驚きも興味を示しもしないという。ただ、自分の仕事を淡々とこなすだけ。それ以外の余計な情報は一切無視。でも、それは「冷淡さ」でもありますけど、ある意味では「程良さ」にもなるのかもしれません。くだらない差別や偏見や諍いって、興味・関心がマイナスに作用しちゃう事で生まれるワケですから……、「他人がどんな見た目だろーが、何をしてよーが、別にどうでもいいよ」ってぐらいのフラットさの方が、却ってお互い平和かも。
そして、そんなある種の「無関心さ」は、今の定助も同じ。自分のすべき事を黙々とするのみ。おっさんに対して一言も発する事なく接し、その後は3階の「A2室」(=婦人科診察室B=「ロカカカ」ラボがある部屋)へと直行!メチャクチャに破壊された部屋のド真ん中で、一人悠然とイスに腰掛け、じっと院長来訪の時を待つッ!なるほど、「LOCACACA 6251」の隠し場所にさえいれば、何もしなくたって院長はそのうち現れるという事か。単純明快だし、納得いくアンサーです。今の定助は、院長の正体を突き止めるためだとか、院長を追跡して倒すために動いているワケじゃありませんからね。全ては、ホリーさんを助けるための過程・手段に過ぎないのです。
それにしても、定助カッケーなー!強い意志を秘めた眼光、不言実行のスタイル……、風格が増したな~。もっとも、今は「母を救う」という目的だけのために生きてる状態でしょうから、心が余裕なくガチガチに硬直しちゃってる。そこに柔らかな温もりや潤いを与えてくれるものは、康穂との恋……って事になるのかな?


●場面は変わり、東方邸を捜査する康穂へ。『ペイズリー・パーク』で、邸内にあると睨んだ「新ロカカカ」を探し続けています。常秀のケツポケットのスマホに潜み、そこから東方家の面々の様子を窺う。康穂本体は、近くの木々に隠れて東方邸を眺める。常敏の策に嵌って遠回り中の定助&礼さんとは違い、彼女だけは「新ロカカカ」の真相にかなり接近中!
常秀は常敏の部屋に行くも、そこに常敏の姿はありません。すると、神妙な面持ちで階段にうずくまる憲助さんを発見。常秀はそんな父に「家族で力を合わせよう!」「ひとりで考え込まないでくれッ!」と、声を掛けます。いつものおふざけ変態モードは鳴りを潜め、かなりマジなモード。常秀の変化からも、何やら尋常ではない緊迫した空気を感じ取った康穂。みんながそれぞれ緊張して動いている。一体、何が起こったのか?そして、「新ロカカカ」はどこに隠されているのか?
まずは密葉さんに会って話をする事に。「新ロカカカ」を求める「岩人間」に利用された密葉さんだけは、この件に関しては唯一信用できる人物。ところが、彼女はなぜかケータイの電源を切っているようで、連絡が付きません。


●わずかに開いたドアの隙間から、変わり果てた姿でベッドに横たわるつるぎちゃんの姿が見えました。常秀は父を追って2階に向かおうとしていたため、スマホごとケツポケットから脱出!うまい事、つるぎちゃんのいる部屋のドアの所まで滑り込みます。常秀はスマホを拾って2階に行っちゃいましたが、『ペイズリー・パーク』はつるぎちゃんの部屋の中にあったスマホへと移動済み。切れていたスマホの電源を入れ、つるぎちゃんに話し掛けます。
目を覚ましたつるぎちゃん、康穂の存在に気付くや否や「直ぐに帰って」と警告。康穂の事が大好きだから、ここに来られないようにネット環境やスマホの電源を切っていたと言うのです。次の瞬間、『ペイズリー・パーク』が潜むスマホが何者かに掴み上げられ、そのままどこかの水中に沈められてしまいました!生身の愛唱に「スマホ折りガエル」が踏み付けられた時もそうでしたが、『ペイズリー・パーク』は自身が潜んでいる機器と一体化しているようで、物理的なダメージも受けてしまう模様。そのダメージは当然、本体の康穂にもフィードバック。彼女の目・鼻・口から水が溢れ出し、今にも溺れそう。なんとスマホは、常敏によってトイレに沈められていたのです!
この辺の一連のシーンの流れや見せ方は、さすが荒木先生ってカンジでした。巨大な手に囚われ、どこかに無理矢理に連れて行かれる。スマホ視点で描かれるため、横たわるつるぎちゃんが斜めや天地反対になって平衡感覚を失わせる。いきなり深い水の底に沈み、見上げる水面にはアーチのような輪郭と常敏の姿が映る。そして、ページをめくると、トイレにいる常敏の絵がようやく俯瞰で描かれ、状況がハッキリと分かる。……素晴らしいです。トイレの底からのアングルなんて、なかなか見られないよ。


●康穂はさらなるピンチに陥ります。彼女が言うには、電波が遮断されたとかで、指先がヒビ割れて崩れかけているじゃありませんか。機器内部に潜んでいる(=機器と一体化している)状態のまま、電波がいきなり遮断されてしまうと、行き場を失った『ペイズリー・パーク』は存在を保てなくなるって事?だとしたら、地味にヤバい弱点ですね。
でも、常敏はどうやって電波を遮断したんでしょうね?よく分からないけど、単に水中だから電磁波が減退したって事なのか?それとも、電波を遮断するためのジャマー的な装置を使ったのか?そのあたりは次回、常敏自身が語ってくれたりするのかな?
康穂がこのピンチをどう切り抜けるのかも気になりますね。透龍くんにここまで送ってもらったはずだから、彼が窮地を救ってくれるとか。そうなったら、少しは彼の正体が分かるでしょうし。


●康穂に謝罪の言葉をつぶやくつるぎちゃん。それでも、つるぎちゃんと常敏は「新ロカカカ」の在り処を知られるワケにはいかないのです。「新ロカカカ」収穫まで、あと0日 ― と3時間24分 ―
…………んっ?あれっ?いつの間にそんなに時間経った?また時系列がよく分からなくなってきたなぁ。ちょっと整理してみましょう。雨に「激突」された日がずっと続いているものと思っていましたけど、そうではないって事ですね。コミックス22巻でも「講演は本日から2日間」っていう部分が修正され、「院長の講演は明日」という設定に統一されていますし。つまり、定助が目を覚ました日は、雨に「激突」された日の翌日ってワケか。
で、雨に「激突」された日は、「新ロカカカ」収穫まで48時間前=2日前。その翌日なら24時間ほど前。今は3時間24分前。普通に考えると、定助が「A2室」でイスに座って待ち構えてから、東方邸を探る康穂が描かれるまでにもう1日経過したって事になる。定助、意外と持久戦だな……。大丈夫なの?しかし、そうだとすると、康穂はこの2日間、何をしていたんだろう?雨が降った後、ホントに透龍くんに東方邸まで送ってもらったのかな?それとも、何か都合の悪い事でも起こって、東方邸探索は2日後に延期になったのか?
しかも、あとほんの3時間のうちに、この緊迫感に満ちた空気からあののほほんとした日常の空気に戻れるものなんでしょうかね?事前に描いた未来に無事に辿り着けるのか、ちょっと心配です(笑)。まぁ、コミックスで微修正してきている以上、先生や編集もちゃんと分かってて調整していると信じたいところ。


★今月は31ページ!ルッカでのイベントや原画展の準備などでお忙しかったためなのか、ページ数は少なくて残念でした。でも、定助サイドと康穂サイド、それぞれが大きく動き出して盛り上がってきましたよ!留置所の礼さんも脱獄して駆け付けてくれんかな~。
作者コメントは「食べたことのない食べ物。[ マッサマンカレー ]食べてみたい。食べるとなったら美味いヤツ。」との事。名前は聞いた事あるけど、私も食べた事ないですね。調べたところによると、世界一美味な料理に選ばれた事もあるほどのタイカレーらしい。ビジュアルも美味しそうだし、これはそそられるぜ。
それと、原画展の長崎展追加情報。荒木先生の初代担当編集者:椛島さんの祖父である椛島勝一氏は挿絵画家です。荒木先生の原画展開催中に、その椛島氏の原画展も開催されるという事は以前から知らされていましたが……、なんと荒木先生がセレクトした作品が展示されるらしい。先生の意志が介在しているとあっちゃあ、ますます見逃すワケにはいかなくなりました。長崎展、楽しみです!





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 1月号(2020年)
214ページ


今回は非常に迷いました。エレベーターに乗る定助の立ち姿も、トイレの底アングルから見上げる常敏も、美しいコマで捨て難い。……でも、今月はコレですね!イスに腰掛けて院長を待ち受ける定助
立ち向かうのではなく、待ち受ける。ふてぶてしいほどに不敵なこの定助は、主人公というよりもむしろラスボス的帝王感たっぷり!荒れ果てた部屋でたった1人、というシチュエーションもまたカッコイイんだわ。なんだかんだ、良い主人公に育ってきたな。




(2019年12月19日)




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