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だから想い出だよ
永い年月で残るのは想い出だけだ


#102 終わりなき厄災 その⑧





●今回のトビラ絵は、かなり無茶めな体勢で走ってるっぽい定助&康穂。この2人がこうして再会できるのはいつなのか?
物語の初期からそうですが、この2人は離れ離れになる事が多くってヤキモキさせられますね。それゆえにお互い募る想いもあるでしょうし……、最後にはお互いを支え合い救い合える関係性となって結ばれ、ハッピーエンドで締めてほしいもんです。


●冒頭は、康穂の過去エピソード。見た感じ、小学生くらいの頃のようです。母:鈴世さんに連れられ、学校か地域のイベントでサマーキャンプに来ていた模様。サマーキャンプと言えば、荒木先生の作品にはちょいちょい出て来るシチュエーション。「ビーティー」でも初っ端に起こった事件がサマーキャンプ事件でしたし、「ジョジョ」4部のラストバトルでは吉良がサマーキャンプでの出来事を思い出していました。「ジョジョリオン」でも、常敏もつるぎちゃんもボーイスカウトのキャンプに参加してました。先生にとってキャンプとは、子どもの頃の想い出の象徴みたいなイベントなのかもね。
しかし、当の康穂はキャンプなんか興味が無いようで、思いっきりグズッてます。駐車場にあった謎のウ〇コ、暗くてジメジメした森、蛾やお化け、そして知らない子達……、とにかく全てがイヤ。泣きじゃくる娘のそんな訴えにも耳を貸さない鈴世さん。なんと、この当時から康穂には『ペイズリー・パーク』の片鱗が発現しており、母が沖縄便について検索していた事を敏感にキャッチ。たぶん、彼氏と沖縄旅行に行きたくって、娘をキャンプに預けたんでしょう。後で分かりますが……、これは10年前の出来事らしく、そうなると離婚する直前くらいの話って事になるんですよね。不倫旅行かよ。ひょっとしたら、旦那さんには「康穂と一緒にキャンプする」って言って出掛けて来たのかもね。不遇な家庭環境はこの頃からだったか。
いざキャンプが始まっても、康穂は周囲に馴染めず、浮いちゃって孤立してしまいます。この辺の、キャンプ参加者達の描写がまた、悪意に満ちてると言うかリアルと言うか……(笑)。ホント、「ジョジョリオン」で描かれる「他人」って冷たいヤツばっかだよなぁ。心の距離が遠すぎる。「ジョジョリオン」に遠隔自動操縦タイプのスタンドが多い理由の1つにも、そういった「現代社会のディスコミュニケーション」みたいのがあるのかも。立場や種族などの違いによって生まれる距離や壁。自分自身では決して触れ合おうとしない、希薄な接点と関係。ケータイ・スマホやSNSで仲良さげに繋がっていても、一方で、蔓延・増幅する悪意と無関心。それらの顕れでもあるのかもしれません。


●ファイアー・スターターで火をつけようとして指をケガし、手当てに行って、ますます除け者・厄介者になっちゃった康穂。すっかり落ち込んで、ポツンと佇んでいます。でも、こういうの分かるな~。1人っきりでいるより、大勢に囲まれてる方がよっぽど孤独っていうか。
1人寂しくケータイをいじっていると、ふと、カリカリと音が聞こえてきます。背景には、スズメ蜂の注意看板。……音の方を見ると、そこにはフードで顔を隠した青年が座っていました。うん、明らかに透龍くん!スズメ蜂もすっかり「岩人間」のシンボル的存在になったな。透龍くんは、今とまったく変わらぬ風貌のまま、康穂に穏やかに語り掛けてきます。こすり合わせると火がつく2個の岩(ってか小石)を見せ、彼女の気を引こうとする。寂しい心の隙間に入り込まれたのか、康穂は透龍くんに興味を感じ始めます。透龍くんは道に迷って困っているらしい。それも、「場所」ではなく「人」を捜している。その人の名前も知らない。
名前は知らないけど……、老人で、医者の資格免許を持っていて、現在は介護施設に入っていて、家族の縁が薄い人。そんな条件の人物を捜している、と言うのです。『ペイズリー・パーク』の能力を無意識に当たり前のように使い、あっさりケータイで検索完了しちゃった康穂。恐らく、さっき鈴世さんにスタンドを使ってたところを、透龍くんは見てたんだろうね。で、康穂を利用しようとした、と。彼の言う条件に合う人物は、日本人男性だけで8人いる事が判明。しかし、一番近い人でも茨城県らしい。ケータイに映る人物は、なんと「明負 悟」ッ!


●明負悟の経歴を見ると、TG大学医学部卒の医学博士の79歳。今の明負院長は89歳って事になってるので、これは10年前の出来事って事になります。透龍くんはどうやら明負が気に入ったようで、「こいつは良さそうだ…」「『なり済ます』のに」とつぶやく。つまりこの後、自身のスタンド『ワンダー・オブ・U』に、明負の姿形や知識・記憶などをそっくりそのまま写し取り、戸籍も奪い、本物の明負は始末しちゃったって事?そして、『ワンダー・オブ・U』は明負悟に成り代わり、医師としての活動も始め、やがてTG大学病院の院長に上り詰めたって事?顔写真も今とは違う顔ですが、人間のように歳を重ねていったって事?
……んっ?でも、この出来事よりも何年も前の、礼さんの親父さんのお葬式の時も明負の姿で現れてたよね?どゆこと?う~ん、まぁ……、葬式の時は会話したワケでも顔を見たワケでもありませんしね。後ろ姿が明負に似てはいるけど、実は、「明負悟」に成り代わる前に使っていた別人の姿だったのかもしれない。もしくは、『ワンダー・オブ・U』を目撃した記憶は、能力によって「今現在の姿」に常に書き換えられているのかもしれない。当時はまったく違う別人の姿だったのにも関わらず、今思い出そうとしても、今現在の明負悟としての姿でしか思い出せなくなっている……みたいな。こじつけは可能です(笑)。
―― ともあれ、康穂の能力に導かれ、透龍くんは明負悟というターゲットを見付け出せました。皮肉にも康穂は、定助だけじゃなく、知らぬ間に透龍くんまでナビゲーションしちゃっていたのです。それが今の危機的状況を生み出したのであれば、「縁」とは本当に不思議なもの。当時の康穂は、なんか透龍くんを見つめて頬を赤らめ、熱い吐息を吐き出しており、すっかりノボせちゃった御様子。触れても熱くないのに火がつく岩もプレゼントされ、恐らくはこの後のキャンプでそれを使って人気者になったであろう事も窺えます。(この岩も「岩生物」か何か?) 透龍くんは康穂にとって、自分を尊重し救ってもくれた「憧れの王子様」になったっぽいですね。透龍くんも康穂がオキニの子になったらしく、彼女が大人になって自分の事を忘れた頃にまた会いたいと言い残し、どこかへと去って行ったのでありました。なるほど、それなら2人がかつて恋仲になったというのも納得。


●ホリーさん、吉良、透龍くん、定助……、自覚すらなく様々な人と巡り逢い、いつの間にか「縁」を結び付けていた康穂。この分なら、過去に仗世文と逢った事があってもおかしくない。そんな「縁結びの女神様」ですが、これまた常秀という「縁」のおかげで、失った右腕を取り戻す事に成功ッ!それだけでなく、皮膚のヒビ割れや擦り傷なんかも、全部丸ごと常秀に「交換」しちゃっていました。康穂、完全復活ッ!常秀は……、うん、お気の毒(笑)。
それにしても、この常敏版「新ロカカカ」の効能はかなり強力ですね。仗世文版は果実1個につき1ヶ所の負傷しか「交換」できなかったのに、こっちは1個で体中の負傷を一気に「交換」。こういう明確な差があれば、みんなが追い求めるだけの価値があるって実感できますよ。陰で観察していた透龍くんも、この生命のアップグレードに感動。死や運命は平等ではなくなり、社会の勢力地図も一瞬で塗り変わる。表向きの人間社会はもちろん、それを裏から支配しコントロールできれば、「ヒト」と「岩人間」の関係も逆転必至。「ちゅーことで」なんて軽~いノリで喋ってる透龍くんの余裕がまた恐ろしい。
康穂は雑木林から覗いている人物が透龍くんであると半ば確信し、彼に問い掛けます。透龍くんがこの「厄災」のスタンドの本体で、そして「岩人間」なのか?……透龍くんも心を決め、ついに彼女の問いに答え始めます。透龍くんがそこにいた時点で、もはや問いの答えは「YES」。しかし、彼はさらに重大な事をあえて警告してきました。もし透龍くんの顔や姿を直接目視したら、『ワンダー・オブ・U』の「厄災」は最終段階になる。目視したら、直ちに死ぬ。オイオイ……、いくらなんでもヤバすぎだろ。つまり、『ワンダー・オブ・U』にとって透龍くんこそが、それほどまでに何が何でも最優先で護るべき「真の秘密」という事なんでしょう。まさに核心。ここが天王山。


「君は僕の想い出で…」 「僕は想い出を大切にしたい」 「だから君を助けたい」。康穂を想う気持ちも事実ではあるようで、彼女だけは「厄災」から逃がしても良いと考えている模様。ただし、あとひとつでも、透龍くんや『ワンダー・オブ・U』を追いかける行為をやらかしたなら、死ぬ順番は康穂からになる。これから全員死ぬ事になるけれど、君だけはその順番から外に出ろ。何もせずに、全て忘れてそのまま家に帰るんだ。透龍くんは、そう警告を出します。本当なら、堂々と姿を現すだけで皆殺し完了できる最凶スタンドなのに、康穂がここにいる事で結果的に抑止されているのですから、つくづく康穂ってキー・パーソンですなぁ。
記憶では別人かと思っていたけれど、ずっと同じ年齢で、時々近付いて来て、いつの間にかいない。幼い頃からずっと、透龍くんがいたような気がする。そして、都合の良いものだけを奪われていた気がする。……自分の人生に、「呪い」のように纏わり付く「岩人間」「岩生物」の存在。康穂は、「それ」から逃げる事はしませんでした。そばでうずくまる常秀のポケットからスマホを抜き取り、透龍くんの言葉も無視してアドレス帳を開こうとします。すると突然、常秀が泣き喚いて康穂に向かって来る。右腕を返せ、と。オレの右手で誰かに手コキなんかしたらブッ殺す、と。お下品・お下劣な罵倒に、康穂もドン引きです。
しかし、これは康穂の策略!「厄災」を逆に利用するための!……この場合、康穂にぶつかって来る「厄災」とは常秀その人となります。常秀が狂暴化して自分に襲い掛かって来れば、その時に開いていたアドレス帳こそが「厄災」の原因。そのアドレス帳を開いた行為が、「追いかける行為」と見なされたからです。康穂は今、居場所の分からない(恐らく院長を追っている or 院長と対峙しているであろう)定助に連絡を取って、ここで起こった事を伝えたいと考えています。それを「厄災」が邪魔して来る以上、そのアドレス帳の人物は定助に辿り着ける人物という事。つまり、「厄災」=常秀が狂って襲って来たら、その時のアドレス帳の人物に電話すれば、必然的に定助と連絡が取り得るって事。「厄災」を定助レーダーとして逆利用する作戦!


●「新ロカカカ」の鉢を自分の後ろに隠し、「腕は返さない」「鉢は定助に渡す」と常秀をさらに刺激します。いろんな人のアドレス帳を開いていくと、それまで再び自虐行為に走っていた常秀が、急に鬼神の如き形相でブチ切れて襲って来ました!『ナット・キング・コール』まで発現させて!(スタンドの右腕はあるのね。) 定助レーダーに反応あり!その時、康穂が開いていたアドレス帳の人物の名は……、虹村 京 (にじむら けい)!!そうです。東方家の家政婦であり、吉良吉影の実の妹でもある、あの虹村さん!
たとえこれから何が起ころうとも、虹村さんに電話を掛ければ、定助の所へは辿り着ける。覚悟を決めた康穂は、ついにスマホの電話マークにタッチ!これで、死ぬ順番は康穂からになった。あまりにも危険すぎる諸刃の剣。彼女を見つめる透龍くんの目は、なんとも言えず寂しそう。「岩人間」なりの、彼なりの愛情は、康穂に向けていたんだな。死にかけの彼女をほっぽって音楽にノリノリだったけどな。
―― 場面は変わり、TG大学病院のホリーさんの病室。話題の虹村さんは、母:ホリーさんをかいがいしく介護中でした。血統は一流なのにずぅ~~~っとモブと化してた彼女が、最近はまるで描かれもしなかった彼女が、ようやっとメインに!これは感無量ですよ。彼女は常秀から電話が掛かって来た事に気付き、出ると……、もちろん電話の主は康穂でした。虹村さんは定助の近くにいるはず。捜し出して、そのスマホを定助に渡してほしい。康穂はそう頼みます。その時、虹村さんはホリーさんの腕に「ロカカカのラボ」の場所がメモされているのを発見。きっと定助はそこにいる!理解・確信した虹村さん、定助のもとへ向かうッ!


★今月は45ページ!康穂と透龍くんの「縁」、虹村さんの参戦、ますます盛り上がってきました!それに引き替え、常秀は株を落としてばっかだなぁ~。でも、今回のアレは、殺人級の「厄災」そのものと化した事による暴挙ですから、彼だけの意思や責任ではないのです。全てが収まったら、我に返っていつもの常秀に戻り、康穂を殺そうとした自分を大いに恥じるかもしれません。それどころか、記憶にすら残ってないかも。まぁ、そういうワケで、あんまり常秀を責めないでやってください(笑)。コイツ、アホだけどいいところもあるんです。
作者コメントは「虹村”きょう”ってなってたけどずっとチェックしてなかった。読み方は数字のけいです。」との事。 衝撃ッ!コミックス24巻の人物紹介でさりげに「きょう」から「けい」になってたけど、さすがに「けい」の方がミスだと思ってたよ。かれこれ8年近くもチェックされてなかったんかい。すっげー今さら。令和の花京院か。つーか、ホリーさんの腕のメモ書きにもあったので、「京」は本名だったのね。吉良 京 (きら けい)?スタンド名も二転三転して『ボーン・ディス・ウェイ』に落ち着いた経緯もあるし、その名残りだった帽子の「GU」の文字も今回で消えた。どこまでも忘れられがちで不憫な子ですが、とうとう新生・虹村さん始動ッ!捲土重来の活躍をして、みんなの記憶に刻み込めッ!
それと、実写ドラマ「岸辺露伴は動かない」で露伴役を務める高橋一生さんのインタビュー、読み応えがありました。ご自身の感情を言葉として表現するのも上手い人だなぁ。これだけの熱意を持った方達が作り出すドラマなら、絶対に面白いでしょ。年末が待ち遠しい。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 12月号(2020年)
339ページ


今月は、幼き日の康穂に話し掛ける透龍くんのコマ。前回の変態常秀なんかとは真逆の、神秘的で影のある雰囲気がカッコイイ。めっちゃイケメンですな。
こんなイケてて優しいお兄さんとの謎めいた出逢い。そりゃあ、康穂のハートにも強烈に焼き付き、本人と知らずに再会しても恋に落ちちゃうワケだ。




(追記)
掲示板での書き込みで気付かされた事なども色々ありまして、備忘録として追記しておこうと思います。

●『ワンダー・オブ・U』が明負悟になり済ますより以前に、豆銑家の葬儀にも現れていた件について。よくよく考えてみりゃあ、『ワンダー・オブ・U』が成り代わった人物の顔は誰も記憶できないんでしたね。第92話でホリーさんも「院長には…顔が無い…」 「何度も会ってはいるけれど…決してその顔を覚えられない」 「そういう能力」と明言していますし。だから、本物の明負悟がどんな顔であろうと、葬儀の時になり済ましていた人物の顔がどんな顔であろうと、まったく関係ないし問題ないってワケですね。
そもそも、『ワンダー・オブ・U』は「老人」の姿にしか化けられない、という可能性があります。どんな人物にでも化けられるけれど、高い地位を得たいから老人を選んだだけって事も、もちろん考えられますが。ただ、もし「老人」にしかなれないのなら、その理由も気になるところです。今「若者」である透龍くん本体と結び付かせないための保身が働いているのか、はたまた、家族や血統の概念すら無いであろう「岩人間」の彼にそれらへの憧憬みたいな感情があったのか。透龍くん、底知れぬ男です。


●虹村さんの名前について。東方家に家政婦として潜入するための偽名は「虹村 京 (にじむら けい)」で間違いないんでしょう。しかし、本名は「吉良 京 (きら きょう)」なのかもしれません。
少なくとも、吉良家と繋がり・関わりがある東方家に潜入しようってのに、本名まんまで突撃するとは考えにくい。不用心にも程がある。それなら、もっと全然違う名前にしろよとは思いますけども(笑)。「京」という名に愛着と矜持があって、そこは譲れないっていう彼女なりのこだわりだったのかも?読み方を変えるくらいで我慢しといたるわ的な?……つーか、私自身が「きょう」という名に慣れて気に入っちゃってるだけなんですが。


●「新ロカカカ」収穫までのカウントダウンについて。第72話から、残り12日と何時間……とカウントが開始され、以降、事あるごとにずっと表示されてきました。ところが、前回第101話にて、カウントダウンがゼロになる前に果実が収穫されるという事態が発生!つまりこのカウントダウンは、収穫という「事実」から逆算された時間ではなく、あくまで礼さんなり常敏なりが「予測」した時間でしかなかったってワケです。客観的で厳密なカウントじゃなく、主観的でざっくりしたカウントだったって事です。
フルーツのプロの見立てだからかなり正確ではあるでしょうが、主観的である以上、その時々の状況次第で変化する事だってあり得るはず。実際、カウントダウンを無視して食べられていますし、途中でカウントが早まったり戻ったりしたっておかしくない。カウントダウンを足掛かりに「事実」の時系列を並べて整理したとしても、実のところ、あまり適切ではないのかもしれませんね。
さりげになかなか衝撃的な話ですが、そうなると、つるぎちゃんが書斎で憲助さんを引きずっていく描写のあった時間はいつになるのか?カウントダウンは、収穫まで あと0日 ― と0時間13分 ― と示されていました。まさに収穫直前!しかし、収穫可能な果実はすでに康穂が食べちゃって、残りの果実はまだまだ熟しておらず小さい状態。この小さな果実が収穫できるまでだったとなると、さらに数日は必要になるでしょう。カウントダウンも改めて仕切り直しになるのかもしれませんし、そのカウントが正しい保証すらもありません。つるぎちゃんや憲助さんがあのまま何日も持つのかも心配ですよね。う~ん、どうなるんだコレ?


●「ジョジョリオン」には、「等価交換」を齎す場所やアイテムがたくさん登場します。しかし、その「交換」の効果・作用はそれぞれに異なる。それを整理してみたいと思います。

「聖なる遺体」
第7部「STEEL BALL RUN」から登場。アメリカ大陸の各地にバラバラに散らばっていたが、大陸横断レースによって集められた、2000年前の聖人の遺体。
この世のどこかの誰かと、「吉良(きちりょう)」と「害悪」を「交換」するパワーを持つ。ケガや病気を誰かに一方的に押し付ける事が出来る。
(使用例 : 理那・ジョースター(旧姓:東方)とジョージ・ジョースター3世、ジョージ・ジョースター3世とジョニィ・ジョースター)

「壁の目」
杜王町の海岸付近に存在する、パワーある土地。2011年の震災後に隆起した。「悪魔のてのひら」の一種か?
近くに埋められた者同士の細胞・肉体を「交換」し、「融合」させる。2人の人物が1人になるのではなく、混ざり合った者が2人出来上がる。
ケガや病気の「交換」はほとんど出来ないか……、あるいは、ケガや病気の「交換」が出来るほどの「融合」をすると、元の人物とはまったくの別人になってしまうのかもしれない。
(使用例 : 吉良吉影と空条仗世文、レモンとみかん)

「松の洞」
「壁の目」にある二本の松の木、その根元の洞周辺にさらなる強力なパワーが宿った。恐らく、1901年にジョニィ・ジョースターが「聖なる遺体」を洞に隠した事が原因と思われる。
東方家の「離れ」(あずま屋)は、このパワーを利用するために建てられた。また、2011年の震災で地面の隆起が起こり、洞と「離れ」の地下が直結している。
近くに埋められた者同士で、ケガや病気を「交換」するパワーを持つ。ただし、東方家の長男に伝わる「石化病」限定の効果である可能性もある。
(使用例 : 東方常助(後の四代目憲助)と東方伴子、東方常敏とエロガキ)

「ロカカカ」
昔からニューギニア島に存在するフルーツ。「岩人間」は果実1個を2億円で人間に売っている。
果実を食べた者自身の体内で「等価交換」が行われる。ケガや病気の部位を治す代わりに、他のどこかの健康な部位が石化する。
(使用例 : じいさん、ニューギニア島住民、岩切厚徳、東方密葉、田岡)

「LOCACACA 6251」
明負悟率いるTG大学病院の「岩人間」の医師達が研究・開発。「ロカカカ」の効果を科学的に再現した、安価な薬剤である。言わば、ジェネリック・ロカカカ。
もちろん、効果も「ロカカカ」と同じ
(使用例 : 恐らく吉良・ホリー・ジョースター(実験台として)、恐らく東方密葉(実験台として)、東方定助)

仗世文版「新ロカカカ」
空条仗世文が、盗んだ「ロカカカ」の枝を東方家果樹園の木に「接ぎ木」して育てた。「壁の目」のそばで育ったためなのか、通常の「ロカカカ」よりもパワーアップしている。
果実を食べた者と触れた者との間で細胞・肉体の「交換」を行い、ケガや病気の治療も可能。食べた者の肉体と触れ合った部位が「交換」され、石化するようだ。果実1個につき、1ヶ所のみの「交換」である。
(使用例 : 吉良吉影と空条仗世文)

常敏版「新ロカカカ」
仗世文版「新ロカカカ」の枝を、東方常敏がさらにサボテンに「接ぎ木」して育てた。豆銑礼が持参した蛾の幼虫が枝の中に入り込んでおり、果実の成長を促進。その影響もあってか、仗世文版よりももっとパワーアップしている。
果実を食べた者と触れた者との間で細胞・肉体の「交換」を行い、ケガや病気の治療も可能。ケガや病気の部位がそっくりそのまま移動し、石化は起こらないようだ。果実1個で、全身のケガや病気を一気に全部「交換」できる。
(使用例 : 広瀬康穂と東方常秀)


< 今月の1コマ > というコーナーで、絵的に最もグッと来たコマを毎月語っていますが……、絵と言うよりかは総合的に見てめっちゃ好きなコマがありましたんで、そっちも語らせてください。それがこれ!ババンッ!




出典:ウルトラジャンプ 12月号(2020年)
334ページ


そう、開始早々の1コマ目です!このコマ、見れば見るほど絶妙に面白くってマジ笑えてしまう。何が笑えるかって、2人のセリフのコントラストですよ。落差、ギャップと言っても良い。鈴世さんはすごくシンプルに、小川の清々しさ・美しさを語っており、なんというか、期待と希望に満ち溢れたセリフです。その直後に、康穂がものすごくねちっこく詳細に、ウ〇コのエグさ・汚らしさを語って、不安と絶望にまみれちゃってる。これが1コマに収められているから、漫才にも似たテンポの良さで笑ってしまうんです。
しかも、ただ笑えるだけではありません。同じ場所にいるのに、見えている物が決定的に違う。鉄格子の窓から外を眺めた時、泥を見るか、星を見るか。フレデリック・ラングブリッジの「不滅の詩」にも通ずるものがある、と言いますか。鈴世さんの顔や視線は絶対に娘に向いていない事が伝わってきます。お互いがお互いを見てさえいない。親子間の心のすれ違い、隔たりや断絶、交わらなさを感じずにはいられないのです。そういう切なさをも含んだ、なんとも奥深く、味わい深い1コマでした。さすが荒木先生、冒頭1コマ目で様々な情報を何気なく詰め込んでいますね!




(2020年11月19日)
(2020年11月21日:追記)




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