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フーン
オレのスニーカーは アウトレットでナナキュッパだ


#103 終わりなき厄災 その⑨





●ウルジャン今月号の表紙は「ジョジョリオン」!コミックス25巻のカバーイラストとの連作になっています。
こちらも無数の「しゃぼん玉」に囲まれた定助&康穂が描かれていますが、ポーズはまったく異なる。定助が「しゃぼん玉」に腰掛け、康穂はそんな彼の上に体を預けています。特に違うのは2人の視線でしょうか。25巻では我々読者からそっぽを向いてましたが、ウルジャンでは逆にこちらを見つめている感じ。ピンクと水色の組み合わせといい、2人のおどけない表情といい、スゴく可愛い絵ですね!いやぁ~、この連作もいつか原画で観てみたいものです。


●今回のトビラ絵は、これまた連作。「しゃぼん玉」いっぱいの空間で、定助が1人で承太郎さながらに指差しポーズしているバブリーな絵です。こっちの定助だけは顔の石化・岩化が解けてない模様。
この3連作は「しゃぼん玉」がテーマになっており、作中の展開とも結び付きます。「回転」する「線」「ひも」。定助自身も未だ知らない、『ソフト&ウェット』のさらなる領域。終わりなき「厄災」を打ち砕く決め手となるか?


●冒頭は、唐突に飛行機のフライト情報。上空10,000mの出来事。この日、新千歳を飛び立った飛行機が、17:05頃、ゆっくりと高度を下げてS空港への着陸態勢に入りました。S空港は仙台空港の事ですんで、無論、杜王町のすぐそば。杜王町沖の海側から進入する形です。その時、冷気と気圧の変化により、一部配管から高圧空気が漏れ、それが脱出用スライドパネルの開閉ロックを解除してしまったのです。約3kgもの重さのパネルが機体から剥がれ、落下!
原因は、2日ほど前のシベリア高気圧の影響か、空気中のPM2.5濃度が高かったせいか、機体設備の経年劣化をもう少し厳しめの点検基準で検査すべきだったからか……。ダモカンもかつて語っていたように、物事は複合的ですから、いろんな要素が絡み合っての結果なんでしょう。しかし、我々は真の原因を知っています。そう、『ワンダー・オブ・U』の「厄災」のエネルギーです。「厄災」の流れが生み出した、避けようのない「因果」。パネルは猛スピードで東方邸に向かって落下していきますッ!ここまで丁寧な解説付きで、ダイナミックな構図と絵で描かれた以上、このパネル落下はいよいよ最期の「厄災」となるであろう事は確実。どんな結末を迎えるんでしょうか?
……ところで、時刻はいつの間にやら17時を回っていたようですけど、コミックスでは15:05頃とかに修正できんかなぁ?TG大学病院記念堂の院長の控室にあった時計を信じるのであれば、今の時刻はせいぜいそのぐらいだと思いますんでね。


●パネルが落下している事など露知らず、東方邸では康穂が常秀をあしらっているところでした。「厄災」そのものと化し、康穂に襲い掛かった常秀でしたが、「新ロカカカ」の鉢を盾にされてつまずきズッコケ。あっけなく回避しちゃったものの、しかし「厄災」はもはや死ぬまで終わる事はありません。
康穂の目に、木の枝の上に立ってこちらを見下ろす院長の姿が映ります。こっちは当然、スタンド『ワンダー・オブ・U』自体のヴィジョンではなく、「不幸」「厄災」のイメージ像的な映像に過ぎません。しかし、そんなイメージ像が明確に前を向き、その上、語り掛けてきました。「厄災が来る」 「やめろと忠告したのにな」 「順番は君から死ぬ」。本体:透龍くんのそばだからか、「厄災」が最終段階に入りつつあるからなのか……、今までずっとただ無言で後ろを向いていただけに、この変化が恐ろしい。見た目も、老人の姿から半分スタンドの状態に変わってるし。
康穂は虹村さんに電話で伝えます。東方邸でスタンド攻撃を受けている事、本体が分かった事、そして……、定助の元に向かうからには、非常に危険な「厄災」の流れの中に入る結果になるという事。いきなり巻き込まれたとばっちりとは言え、虹村さんはめっちゃクール。そういう事情もすでに理解し、表情ひとつ変えずに院内を進む。定助の半分は兄:吉良吉影。母:ホリーさんは、そんな兄を助けようとしていた(ホリーさんの手には、子ども達の名前と「助けに行く」というメモが書かれてある)。彼女にとって、戦う理由はそれだけで十分なのです。定助のいるラボはもう目前ッ!
ちなみに、虹村さんの帽子に結局「G U」の文字が復活してますね(笑)。まぁ、いいんですけど。でも、前回からの彼女は上まつげがキッと鋭くなって、特徴が出てステキです。


●「厄災」の流れの中へ新たに踏み入った者がいると感じ取ったのか、ラボの院長はチラッと後方を振り向きます。しかし、深くは意に介さず、定助をこちらに近付けさせるよう誘う。瀕死の礼さんを心配する定助でしたが、先程の礼さんの言葉を反芻。自身の「しゃぼん玉」は、「回転」する「線」。作戦は続行です。院長の方から近付かせる。
『ソフト&ウェット』は振り向きざま、ラボの扉をブン殴り、「しゃぼん爆弾」で爆破ッ!すると、ブ厚い扉の装甲が1枚剥がれ、その奥から「LOCACACA 6251」がズラリと登場。ホリーさんが斧で無理矢理引っ張り出した部分だけじゃなく、この扉全体が「LOCACACA 6251」の保管庫になっていたようです。床に転がった、何本もの「LOCACACA 6251」の試験管。定助がそれに足を掛けると、さすがに院長も動揺し始めました。「新ロカカカ」を手に入れたとしても、「LOCACACA 6251」は医学界にとって重要な治療アイテム。一流アスリート達からの予約も入っている、社会が必要としているテクノロジー。1本2億円以上すると言うのです。てっきり実物の「ロカカカ」よりもずっと安価な、ジェネリック・ロカカカ的な薬剤だと思ってたんですが。ハッタリかもしれんし、最初のうちは高額にする予定ってだけかもしれんけど。ってか……、「岩人間」、2億円って金額がやけにお好きよね。
「やめろ」という院長の制止にも、定助はまるで興味なさげでつれない表情。「フーン」 「オレのスニーカーはアウトレットでナナキュッパだ」と言い放ち、試験管をバリバリ踏み潰しちゃった!実に痛快な返し。この庶民的で生活感溢れる発言は、仗助と定助くらいしか出来ないよなぁ。庶民の安物が、金持ち達の贅沢品を踏みにじる。そこにあるのは価値観の相違です。「金額」という価値なんぞ、今の定助にとっちゃ何の意味も持ちません。そしてそれは、「ヒト」と「岩人間」の決定的な断絶でもあるんでしょう。


●「LOCACACA 6251」を全て破壊すると宣言し、定助はさらに試験管を殴り壊す!この暴挙を見過ごせず、院長がついに部屋に入って来ました。漂う「しゃぼん玉」を注意深く避けながら、定助に近付きます。しかし、院長もさる者。康穂が今、東方邸にいる事を教え、「君はそんな事をしてる暇があるのか……?」 「彼女… まもなく死ぬぞ」と警告。一連の会話劇、心理戦、味わい深くてスッゲー好き。相手のしたい行動を抑止し、自分のさせたい行動に誘導する。その駆け引きの妙
康穂の死を予告された定助はかなり衝撃を受けたようで、即座に試験管に怒涛のラッシュ!一刻も早く院長との決着を付け、康穂を助けに向かいたいという一心なのでしょう。ところが、その激しいラッシュが裏目に出てしまいます。試験管の割れた破片がはね返り、定助のノドに突き刺さる!その破片のせいなのか、外と通じるデッカい窓まで割れちゃいました。院長は余裕気に、部屋中に散乱している様々な物にペタペタ触れています。どうやら、院長(=『ワンダー・オブ・U』)が直接触れた物には「厄災」のエネルギーが濃密に纏わり付くようで、それに触れちゃっても「厄災」が起こる。しかも、「厄災」にはその触れた物が関わって来る。……って事なんだと思われます。直接触れればパワー全開ってのは、スタンドらしいルールで良いですね。
どいつもこいつも、追跡なんてしなけりゃ無事で幸せに過ごせたのに。「たったのそれだけの事も出来ないのか?」と、理解に苦しむように、小馬鹿にするように、院長は定助に吐き捨てます。思わず、院長の頭部めがけて蹴りを繰り出す定助!しかし、定助自身も把握し切れていない「回転」する「しゃぼん玉」が足に当たり、肉を削いでしまいました。さらに、倒れ込んだ先には、院長が触れたばかりの扉の破片が。それが思いっきり肩口を貫通!やはり院長への追撃は「厄災」しか生み出しません。


●定助の苦悶の表情と叫び。……と、そこに、が不意に吹き込んできました。風は院長の周りから「しゃぼん玉」を根こそぎ押し流し、ますます逆転の目が消えていきます。
次の瞬間!その場に現れたのは、真っ黒いバイクとライダー!そうです、虹村さんのスタンド『ボーン・ディス・ウェイ』!およそ8年ぶりの再登場ッ!うおお、カッケーッ!『ボーン・ディス・ウェイ』が巻き起こす冷気は「しゃぼん玉」を瞬時に凍て付かせ、院長の元へ弾丸のように吹き飛ばす。恐るべきパワー。虹村さんもとうとうラボに御到着です。この『ボーン・ディス・ウェイ』の攻撃、院長の杖を破壊しただけに留まらず、なんと院長の頭をわずかに切り裂いていました。本体:透龍くんにもダメージは返り、頭部から出血。初めて与えた確かなダメージ!虹村さん、さっそくの快挙ですよ。さしもの院長も、信じられないって感じで焦りを浮かべています。今の「しゃぼん玉」の中に、定助自身も気付いていない見えない「しゃぼん玉」がある。
なぜ院長に攻撃が通ったのかと言えば、虹村さんに攻撃の意志が無かったからなのかもしれません。ラボの扉の引き出しみたいな箇所から風が吹き込み、『ボーン・ディス・ウェイ』は出現していました。つまり、「開いた」場所からの登場。具体的なターゲットをロック・オンしていなくても、そういう自動的な発現方法なのかも。だとしたら、自動的である以上、そこに意志は介在しません。単に出て来て、ただお決まりのように能力を使ったってだけ。「厄災」の対象外となり、院長に攻撃できたとしても納得です。さあ、いよいよ反撃開始ッ!


★今月は45ページ!面白すぎる。なんか、スゴイね。今、荒木先生の筆がノリにノッてるのが、読んでるだけで、絵を見るだけでビンッビンに伝わってきますよ。定助もカッコイイし、虹村さんもイカしてるし、何より院長の今までにない独特の威厳と凄みも最高だし。「しゃぼん玉」の謎もぼちぼち明かされそうで、ワクワクします。「厄災」が間もなく康穂を殺すのならば、それよりも早く院長を、透龍くんを殺せばいい。決着の時は目前か!?恐らく、定助と透龍くんは直接向き合って対峙する事も無いんでしょうな。それもまた「ジョジョリオン」的。
作者コメントは「今年は自粛の年だったけど年末にNHKで露伴のドラマやりますんでよろしくね!」との事。年末でクッソ忙しいけど、「ジョジョリオン」と「露伴」ドラマを心の糧に頑張ってます。楽しみだな~。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 1月号(2021年)
94ページ


今月は、『ソフト&ウェット』のパンチをブチかます定助です。定助の「静」と『ソフト&ウェット』の「動」、そのコントラストが際立つ1コマ。
『ソフト&ウェット』がこんなにもパワフルに見えたの、さりげに初めてかもしんない。いや、もちろん「おおっ!」っていうのは今までにもいっぱいあったけど、今回は特にそう感じたっていうか。歴代ジョジョにも負けない力強さがあった。荒木先生の絵ってイイなと、改めて実感した12月でした。




(2020年12月19日)




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