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倫理よりも家族の幸福に決まっているっ!
それを「心に決めて」!


#107 東方花都の”攻撃”





●今回のトビラ絵は、東方家のGRAND MOTHERである花都さん。トランプを手に、涙を流しながら画面の奥を見つめる姿が痛々しくも麗しい。
特筆すべきは、何と言っても彼女の背後。花都さんのスタンドらしきものが見えるッ!そもそも「ヴィジョンがあったんだ」ってところから驚きですし、そのヴィジョンにしても、これだけじゃ全体像が全然分かりません。どこが顔で、どこが腕?……っていうか、人型なのか?ただ、水玉模様やハートマーク、あとは何だろう?トランプの絵柄?とにかく、いろんな柄が散りばめられているっぽい。こりゃあ、今回の話でスタンド名もヴィジョンも能力もガッツリ描かれる事を期待しても良さそうですね!ワクワクです。
ちなみに、まだ最終回までのカウントダウンは無し。とりあえず一安心。終わりが近いのは分かるけど、まだ終わってほしくないんです。


●ついに「ゴー・ビヨンド」を透龍くんに命中させた定助!TG大病院地下のシャワールームから出ると、その足でホリーさんの病室へ。確かに彼女の病室も地下ですもんね。依然眠り続ける母の姿を確認すると、定助は倒れてしまった礼さんと虹村さんを想います。そして、地下から地上へ。この後、2人が横たわる「ラボ」へ向かうのか、それとも康穂がいる東方邸へ向かうのか。定助の行く先が気になります。
余談ですが……、「LOCACACA 6251」を飲んで石化したはずの左目は、すっかり元通り。初めは眼球そのものが石化していた描写だったのが、石化した皮膚がバオーのように目を塞いでいるだけって描写にだんだんと変わっていきました(笑)。単に作画上・作劇上の都合なのかもしれませんが、あえて深読みしてみます。一応、私は以前より「仗世文は半分「岩人間」であり、定助にもその要素が受け継がれている」と勝手に予想してました。左目の石化が徐々に回復していったのも、実はその影響。「岩人間」と「ロカカカ」は相性も良いんですしね。


●場面は変わり、東方邸のガレージ。瀕死の透龍くんと、涙を流す花都さんの邂逅。「インカのめざめは煮込まない」とか唐突にクリームシチューのレシピを語り出す花都さんですが、どうやら常敏の大好物らしく、彼が花都さんにリクエストしていたようです。すぐ近くにアパートを借りて住んでいるとの事で、作ったシチューを持って来たから、ちょうど東方邸にいたのでした。
理由として自然だし、何よりこういう話って切ないなぁ。好きな食べ物なんて、これ以上ないくらい何気なく「人間臭さ」や「その人らしさ」が溢れてるじゃないですか。ずっと昔から一緒で、ほんのついさっきまで当たり前に日常を生きていた家族が、今はもういない。もう二度と会えない。好きだった物も、もう食べてもらえない。残酷すぎる現実。10年前の大震災でもあり、今現在のコロナ禍でもあり、いつ誰に降り掛かるかも知れない「厄災」でもあります。
そして、その忌まわしい「厄災」を引き起こした張本人である透龍くんが目の前にいるッ!愛しい息子の命を奪ったヤツがいるッ!……言ってしまえば、透龍くんも院長も、「厄災」そのものなんですよね。「厄災」という流れそのものがラスボスであり、透龍くんや院長は漫画的・視覚的にそれを分かりやすくキャラクターとして描いただけの存在。彼らのバックボーンや信念・思想、感情・欲望などの強烈な個性が見えてこないのも当然の話。「厄災」とは、それ自体に意志や理想があって起こされるものではないからです。いつだって前触れもなく、不条理に突然襲い掛かって来るものだからです。我々は「厄災」に対し、こちらから向かって行って打ち破る事など出来ず、出来るのはせいぜい「備える事」「待ち構える事」ぐらい。起こってから、理由や意味を後付けで考えるばかり。結局のところ、透龍くんは「厄災」が起きる必然性や説得力、漫画的なルール付けのために存在するだけで……、真に重要な問題は、それぞれの人物達が自らに降り掛かった「厄災」とどう向き合うのかって事なのでしょう。(だからこそ、「厄災」を乗り超える定助と康穂の繋がりは、1つの明確な回答でもあり、我々読者1人1人の心にも訪れる「福音」になり得るワケです。)


●「厄災」=透龍くんと対峙する花都さんに、康穂が叫びます。決して彼に触れてはいけない、と。「等価交換」に使われてしまう、と。果実を失って転がる鉢植えを見やり、状況を理解したであろう花都さん。鳩ねーちゃんと大弥ちゃんが母の存在に気付き、声を掛けますが、花都さんはこっちに近付かないよう指示。血塗れで横たわる常敏の遺体。「ひとりじゃ淋しいだろうから、息子のそばにいたいだけ」……と言って、娘達を巻き込まないようにしています。
立ち上がろうともがく透龍くんは、工具箱をひっくり返してしまい、落っこちた折りたたみ式ノコギリを拾って花都さんに向けました。透龍くんは彼女に語り掛けます。―― 海岸の崖の上に「岩」がある。その岩が目撃するものは夢と思い出だけ。眺めの良い海岸からの景色の思い出だけ。晴天の空や嵐のあとの虹、霧、灯台の光、渡り鳥やカモメたち、セリ科のハマボウフウ……、その夢だけ。終わって残るモノは、ただそれだけ。敗北だの勝利だのの区別は、崖の上の岩には無縁。……でも、あなたたちの夢と思い出はどうか?大切な長男は血塗れで死に、彼の願いは叶わないままで、あなたたちの最後には何が残っている?
透龍くんは、花都さんの悲しみと怒りを誘って、自分を攻撃させようとしているのです。そうすれば「厄災」が彼女を襲い、倒れたところをその肉体に触れ、「等価交換」に利用できると。しかし、単なる煽り文句にしては、なかなかに深い言葉でもありますね。なんて言うか、透龍くん自身の「空っぽ」さ・「空虚」さが伝わると言うか。彼が語る「崖の上の岩」は、きっと彼自身をも意味してるんでしょう。東方家のように「勝利」や「幸福」にこだわって追い求め続けるから、そこには必ず激しい争いが起こるし、だからこそ「敗北」や「不幸」というものも生まれる。望むから打ちのめされる。それはある意味「呪い」です。しかし彼は、ただ目の前にあるモノだけを受け入れ、ただ「生きる事」のみに忠実なのでしょう。他者や物事に対する、執着や期待・関心の無さ。何があろうと、全てはいつか夢と思い出に還る。だから、その夢と思い出だけを大切にする。なんとも虚無でアンニュイな、まさしく「無事が何より」という生き方です。


●透龍くんの挑発に、花都さんはトランプを数枚飛ばして地面に落とします。背後から現れたのは、花都さんのスタンド!来たァ――ッ!その名も『スペース・トラッキング』!『キング・ヌー』ではなかったか(笑)。恐らく、「ディープ・パープル」の曲名が元ネタだろうと思います。ヴィジョンも最高にカッコイイ!意外とちゃんとした人型じゃん。パッと見の印象は、成長した『ボール・ブレイカー』?全身にトランプの図柄がアシンメトリーに配置され、顔には大きな口がうっすらと開かれているだけ。『アウェイキング・Ⅲリーブス』に匹敵するレベルで好きなデザインだな。
スタンドまで出して来た花都さんを見て、「もう少しだ」と思ったであろう透龍くんはなおも挑発を続けます。彼は花都さんの過去も知っている模様。―― 常敏のためにエロガキを殺し、刑務所に入り、憲助さんには未だ許してもらえていない。「愛」ゆえなのに。それで今、あなたにはどんな思い出が残った?「残酷さ」だけだ。常敏の願った夢も何ひとつ報われていない。
まんまと挑発に乗ってしまったのか、花都さんは再びトランプを飛ばします。それは、透龍くんの肩に乗っかる。すると、その肩がグシャっと潰れてしまったじゃありませんか!康穂の制止も聞かず、トランプ攻撃を繰り返し、透龍くんの手足が次々と潰れていく!しかし、これは「攻撃」ではなかったのです。『スペース・トラッキング』の能力は、カードとカードの間の空間に物を挟んで隠す能力。『D4C』と『エニグマ』の融合みたいな能力です。潰しているように見えても、ただ「隠している」「しまっている」「抑えている」だけ。何のダメージもありません。このタイミングで、傷だらけの院長がついに東方邸に到着・合流しちゃいましたが、害意の無い花都さんに「厄災」は起こらず!それどころか、透龍くんに手を近付け、「触りたい?」と逆に挑発し返す始末。透龍くんが瀕死で『ワンダー・オブ・U』も弱まり、そのため「厄災」が発生しにくくなっているってのもありそう。
彼女は動けぬ透龍くんの脇を悠々と通り抜け、能力の説明をしながら、周囲にもトランプを投げて配置していきます。この謎の行動、花都さんの狙いとは……!?


●ここで花都さんの回想スタート。数日前の東方邸にて。カフスが袖にうまく付けられず苛立っている常敏。このカフスのデザイン、コミックス26巻カバーイラストで院長が付けてるのと同じですね。深い意味はなさそうですが。ともあれ、そこに花都さんが現れ、カフスを付けてあげます。しかし、息子の苛立ちは、何か迷い事があるからと察しました。普段は明るく強気な常敏ですが、母の前では素が出るようで、不安げな表情を浮かべてごまかそうとしています。そんな息子のホッペを叩いて活を入れる花都さん。「ウジウジしてんじゃあないよ」 「そーゆーので夏休みを楽しく過ごせるのか?」と。さすがは母親。
母に隠し事は通用しないと悟り、常敏は不安を吐露します。クワガタやカブトの飼育棚では、折れていたはずのミヤマクワガタの右アゴが生え替わっていた。一方で、一緒に入っていたヘラクレスオオカブトの顔が欠けていた。棚に隠していた「新ロカカカ」が生長してはみ出た枝の表皮から、ミヤマクワガタは樹液を吸ったため、「等価交換」が起こった。このように「新ロカカカ」の栽培には成功したものの、肝心の隠し場所に困っていたのでした。「新ロカカカ」を探す「敵」はきっと、そのうちここにやって来る。それを恐れていたのでした。つるぎちゃんのためにも、父:憲助さんに打ち明けて相談した方が良いのでは?それを迷っていたのでした。ここまで「弱さ」をさらけ出す常敏も新鮮ですね。
弱気な息子の頬をもう1発ビンタする花都さん。「心を決めろ」と。「ひとりでやり抜け」と。憲助さんは「等価交換」に反対するし、その時、「敵」にバレてしまう。15年前の事件の事も許していない。でも、全ては「果実」が実るまで。「果実」が実れば、家族の繁栄が確定する。「倫理よりも家族の幸福に決まっているっ!」 「それを「心に決めて」!」という言葉、実に花都さんらしい力強さがあります。「正しい」とか「間違ってる」とかはさて置いて、「愛」があります。倫理や法律や正義を守る事は、人間同士が集団の中で生きやすくなるために必要な事であって、いざとなったらそれよりも優先して守るべきものがあるだろと私も思ってるので、綺麗事のない花都さんやジョニィみたいな考え方は非常に共感できますね。
ここまで立派に登って来て辿り着いた常敏を誇りに思い、花都さんは解決策を教授。『スペース・トラッキング』のカードに挟んで、「新ロカカカ」を隠してしまえば良いのです!……とは言え、カードに隠しっぱなしでは栽培できないし、花都さんもいつでも東方邸にいるワケでもないので、この策が実行される事はなかったんですけどね。例えば、実は「果実」を1個だけ隠していた、とかでもない限りはね。まぁ……、ここで重要なのは、花都さんの能力と、母子の関係性や覚悟の方なのでしょう。


●身動きが取れぬ透龍くんを見下ろす花都さん。その手のトランプには、何かが挟まっていました。カードをめくると、そこから現れたのはなんとつるぎちゃん!「石化病」で意識を失っているつるぎちゃんでした!つるぎちゃんの体が転がり、透龍くんに触れる。「等価交換」が始まる。これは、家族の「呪い」。透龍くんが全てを引き受ける事になるのです。花都さんの狙いは、透龍くんを利用して、つるぎちゃんを治す事だったのです。それは同時に、亡き常敏の夢と願いを叶えてやる事に他ならない。倫理観ブッ壊れ&家族愛たっぷりの見事な大逆転ッ!
花都さんの背後から院長が迫って来ているようですが、これまた絶妙ですね。院長の方から近付いて来る事を見越して、位置を予測・計算し、トランプをあちこちに配置しているはず。恐らく院長は、トランプ・トラップを踏みまくって自爆しちゃうんだろうな。こりゃあ、透龍くんと院長のとどめを刺すのは花都さんになりそうな勢いです。懸念材料としては、透龍くんが食べたのが未熟な「果実」だった点と、「ロカカカ」と相性が良い「岩人間」である点か。これらの要素によって予想外の結果が起こる可能性も否めません。


★今月は49ページ!ページ数もちょっぴり増量の上、内容も凄まじい盛り上がり。先生、ノリにノッてます。ここんとこ毎回、読む時のドキドキ具合がヤベー。花都さんの深い愛情と、静かな悲しみと怒り。叫んで騒ぎまくりの康穂とは対照的で、しかも康穂ガン無視で透龍くんとばかりコミュニケーション取ってるのが、余計に彼女の感情を際立たせますね。
作者コメントは「料理ばっかしてるんで野菜のみじん切りがペンタッチテクよりものすげー上達した(自画自賛)。」との事。料理人としてどんどんスキルアップしている荒木先生!「ジョジョリオン」終わったら漫画家引退して、まさかのシェフデビュー!?イタリア料理店「リストランテ・アラキ」開店!?(笑) いやいや……、先生が元気で幸せならそれでイイんですが、一読者としては、やっぱずっと漫画を描き続けていただきたいものです。それはともかく、先生の手料理はかなり美味しいらしいですからね。食べてみたい……!花都さんのクリームシチューも、実は先生のお得意料理?





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 6月号(2021年)
316ページ


今月は、『スペース・トラッキング』を発現させる花都さん。本体の背後に立つという、スタンド発現シーンとして王道の描写が嬉しい!素直に燃えます。
何より、『スペース・トラッキング』のデザインが好き過ぎる。見れば見るほどイカしてるぜ~。完全なる全体像や、後ろ姿も描いてほしいな。やっぱ「ジョジョリオン」のスタンドデザインって、相当キレッキレだな!軒並み手足が細いのも異形感があってゾクゾクします。




(追記)
●透龍くんとつるぎちゃんの「等価交換」、果たして何が起きるのでしょうか?なかなか予想のし甲斐がある問題です。

まず改めて整理しますと、そもそも「新ロカカカ」には2種類あり、1つは仗世文版、もう1つが常敏版です。仗世文版は、仗世文が東方家の果樹園で接ぎ木して育てたもので、吉良と仗世文の「等価交換」に使われました。効果としては、果実を食べた者の負傷や病巣が、触れた者の肉体と引き換えに治ります。正確に言うと、食べた者に触れた部位が石化します。治せる箇所も、果実1個につき1ヶ所。
一方、常敏版は、礼さんが蛾の幼虫を入れた枝を、さらに常敏がサボテンに接ぎ木して育てたもの。康穂と常秀、ミヤマとヘラクレス、そして今回の透龍くんとつるぎちゃんの「等価交換」に使われました。仗世文版よりもパワーアップしており、たった1個の果実を食べるだけで、食べた者の全ての負傷や病巣が一気に完治。触れた者の肉体と引き換えである点は共通していますが、治療した部位と同じ(あるいは近くの)部位が欠損してしまうようです。石化はしません。ミヤマとヘラクレスのように、果実ではなく樹液による「等価交換」も可能ですが、これは小さな昆虫だから成立した事なのでしょうね。人間がやろうとしたら、樹木が何十本も必要になりそう。効率的ではありません。
……ちなみに、透龍くんは未熟な果実を食べましたが、彼が「ロカカカ」との相性が良い「岩人間」だからこそ、辛うじて「等価交換」の効果を発揮できたのかもしれませんね。もし彼が普通の人間だったなら、「等価交換」は起きなかった可能性があります。


以上を前置きとして……、じゃあ、透龍くんとつるぎちゃんはどうなるのか?瀕死の重傷を負った透龍くんが、「石化病」に侵されたつるぎちゃんに触れたワケです。
花都さんが「呪い」を解くためにやった以上、どうあれ、つるぎちゃんの病気は完治するものと思われます。本来ならば、透龍くんの負傷部位と同じ箇所を失い、多分そのまま死んでしまうのでしょう。ところが、今のつるぎちゃんの肉体は全身が石化しています。全ての細胞が硬く石化して弱り切っており、「交換」のしようがないのです。そこで「新ロカカカ」は、細胞の代わりに、「岩人間」の肉体に近い「石化病」の要素を「交換」する事に。かくして、つるぎちゃんはちゃっかり生還!

では、「石化病」を引き受けた透龍くんは?とりあえず3通りの結末を考えてみました。
1つ目は、より強固に石化しちゃう結末。負傷した箇所が岩石で埋められて治るものの、それは「岩人間」でさえ解けないほどの強力な石化だったのです。つまり、脇腹も腕も胸もノドもガッチガチに石化し、マトモに動く事も叶わない。呼吸もろくに出来ず、死んじゃいます。2つ目は、何も起こらない結末。傷の治療と「石化病」の進行とが相殺され、効力が打ち消し合って、何も起こらずに終了。透龍くんは治療する術を失い、やっぱり死んじゃいます。3つ目は、逆に人間になっちゃう結末。「岩人間」が「石化病」に侵されると人間化してしまうという、まさかのオチ。
個人的には、意外性のある3つ目を推したいところです。「新ロカカカ」の成分と共に「石化病」の要素が全身に回ってしまえば、肉体は新しく生まれ変わり、スタンド能力すら無いただの人間になってしまう。さすがの透龍くんもそれだけは耐え難い屈辱で、断固拒否!慌てて自らの肉体を岩石化してガード。でも、ガードしている限り、身動きも取れない。もはやカーズ状態、マジェント状態です。そんな状態でも『ワンダー・オブ・U』は単独で行動可能かもしれませんが、花都さんの仕掛けたトラップでカードに封印されてしまうのでした。「厄災」のエネルギーごと閉じ込められます。すかさず、そのカードの上に岩石化した透龍くんを設置。これでカードは固定され、誰かにめくられたり何かの弾みで飛んで行ったりする事もなくなります。
あとはもう、透龍くんの選択次第。人間になって生き恥を晒すか、「岩人間」として寿命が尽きるのを静かに待つか。こうして東方邸に爆誕した「透龍くん岩」は、言わばアンジェロ岩のセルフ・オマージュでもあり、災害・厄災を忘れないためのレガシー、それを乗り超えていく意志を示すモニュメントと化しちゃうのでした。


―― という、究極のジレンマに囚われ続ける無間地獄エンドなんてのはいかがでしょう?
なまじ生存可能な選択肢がある分、希望も捨てられず、考えるのをやめる事も出来ません。誇りも意地もこだわりも全て捨て去れれば、人間として生き永らえる事だけは出来るんですから。でも、それを簡単に選べないほど、人間と「岩人間」は遠い遠い存在。結局、どちらも選び切れぬまま、宙ぶらりんで中途半端なまま、延々と悩み、迷い、苦しみ続けなければならないのです。




(2021年5月19日)
(2021年5月27日:追記)




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