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「ジョジョリオン」の謎と考察・予想をまとめたよ


No.36 【 康穂の父親は誰なのか? 】






【第1版】
「ジョジョリオン」のヒロイン:広瀬 康穂。彼女は気丈で心優しく、可愛らしい女の子。しかし、彼女の育った家庭環境は、決して恵まれたものではありませんでした。詳細は不明ですが、どうやら父親が不在らしく、母親は男を家に連れ込んではよろしくヤッちゃっている模様。そんな荒んだ環境に、彼女の心は大きく傷付いてしまっているのです。
では、康穂の父親とは一体どんな人物か、作中で描かれる事はあるのでしょうか?父親の存在は、ストーリーにどのように関わってくるのでしょうか?……そこら辺について考えてみたいと思います。



今のところ、康穂の父親に関する描写は、ほんのほんのちょっぴりだけ。両親は離婚したのか結婚すらしていないのかも謎ですけど、「自分が何者かわからない」と感じるほど、康穂には父親の記憶が無いらしい事。それと、母:鈴世が言うには、父親は皮肉屋であるという事。このぐらいです。実質、何の手掛かりもないに等しい状態。まぁ、あんまりマトモな男ではなさそうだよな〜、って印象は漠然と抱いていますが。
―― いきなり結論から言っちゃうと、康穂の父親がどんな人物なのかは分からないままだと思ってます。作中の誰かの隠し子とかって衝撃展開になっても面白そうではありますが、あえて謎のままにしておくのも良い。康穂のルーツの方にまで物語がスライドしてしまうと、なんか焦点がぼやけてしまいそうですし。



つるぎちゃんの心理分析によると……、康穂が定助に好意的・協力的なのは、記憶のない定助に自分自身を投影してしまっているから、との事です。それを聞いた康穂はブチ切れちゃったものの、その分析自体はけっこう的を射ているように感じました。要は、無意識下で定助に感情移入し、代替行為・代償行動を取っているワケです。定助を救う事で、自分の傷付いた心を救いたい。そういう部分も、多かれ少なかれ、確かにあるのかもしれません。
(もちろん、彼女の純粋な優しさや恋愛感情があってこそ、ではあります。)
自分が何者かさえ分からない。「帰る場所」も「進むべき道」も見えず、孤独に涙する。その点において、記憶があろうが無かろうが、定助も康穂も同じです。それはつまり、記憶喪失だとか「融合」だとか、そーゆー異常な境遇や特殊な事情なんか無くても、人は「定助と同じ想い」を持ち得るって事。言わば、定助は「自己喪失」の象徴なのです。誰にでも起こり得る問題であり、「呪い」の1つの形であり(⇒ No.31 【第1版】参照) 、それを身近な存在として表したのが「康穂」というキャラクターなのです。
そして、現実世界にいる我々もまた、この「自己喪失」に陥っていると言えましょう。2011年3月11日に日本を襲った未曾有の大災害、東日本大震災。地震、津波、放射能汚染。未だかつて体験した事もない、想像を絶する出来事の連続でした。あの日を境に、それまでの当たり前の日常は奪われてしまいました。詳しくは、コラム『「ジョジョリオン」の意味について』の方でも書いていますが……、「自分自身」や「自分の居場所」を見失っている定助と康穂の姿は、多くの大切なものを失った震災後の日本の姿であり、生きる事の根底を揺るがされた我々1人1人の姿でもあるのです。


そう重ねて考えると、被災地・被災者がそうそう簡単に復興なんて出来ないのと同じく、定助と康穂にも都合の良い結果なんて容易く訪れるとは思えません。
きっと、定助が元の2人に戻る事はないでしょうし、康穂も父親と出会って家族みんなでハッピーなどという事にはならないでしょう。過ぎ去った時間はもう二度と戻らない。失った後、再び取り戻せるものなんて、ごくごく僅か。結局、定助も康穂も、境遇そのものは最後までほとんど変わらないのです。
ただ、それでも「今」を受け入れ、「過去」を礎とする事で、「未来」を築いていく事は出来ます。その「道」の途中で、新しい出逢いもあるでしょう。その「道」を歩むからこそ、初めて得られるものもあるでしょう。そして、それらがやがて、確かな「自分」を作り上げていくはずです。忌まわしき「呪い」を解く「福音」となるはずです。
特別な存在である定助だけでなく、一般人代表とでも言える康穂までもがそんな気高い姿を見せてくれるなら、読む者の心により強く大きな勇気を湧き上がらせてくれるに違いありません。そのためにも、どんな形であれ、康穂は父親不在のまま「自分は何者か?」の答えを見付け出す必要があるのだと思います。




……ここからはオマケの余談です。せっかくなんで、おおまかなストーリー展開の予想まで書いてみちゃいました。
2015年7月現在、「ジョジョリオン」はコミックス10巻が発売されるというところ。2011年5月から連載スタートしたワケなので、(休載もあるにせよ)4年で10巻分って事。私個人としては、この作品は10〜12年ほど連載されるものと見ております。何しろ「ジョジョリオン」は、「大震災」を現実世界と共有している作品であり、甚大な被害を受けた故郷に対する荒木先生の想いを乗せた作品でもありますから。現実世界ではどんどん時間が過ぎていきますが、「ジョジョリオン」の作中世界は震災から間もない2011年のまま。読者の心を2011年に繋ぎ止め、あの震災を風化させない意味でも、むしろ「ジョジョリオン」という作品は長く連載されるべき作品とすら言えるでしょう。
かと言って、何十年も延々続けるワケにもいかないので、キリの良いところで終わらせる必要はあります。以前は「10年かな?」と思っていましたけど、想像よりもゆったりしたペースで描かれているようなので、干支が一回りする12年で完結かなと今は思ってます。つまり、2023年まで、あと8年ほど続くはず。コミックスにして全28巻(1〜3部までと同じ巻数)ってトコでしょうか。

ストーリー全体の流れや構成、連載期間なども、荒木先生が重要視している「起承転結」でざっくりと予想してみます。

: 定助が康穂と出逢う。記憶の無い孤独。 =「今」 (第1話〜第17話 【連載期間 / 1年半】
: 様々な苦難を乗り超え、定助が自分の正体とルーツを突き止める。「岩人間」との激闘。 =「過去1」 (第18話〜 【連載期間 / 4年半】
: 杜王町や「壁の目」、東方家・ジョースター家の歴史が紐解かれる。東方家、内部分裂。 =「過去2」 (【連載期間 / 3年半】
: 定助と康穂が「呪い」を解く。ハッピー・エンド! =「未来」 (【連載期間 / 2年半】

虹村さんの話から、自分は2人の人物が「融合」した存在と悟り、慟哭する定助。「今」の自分を知る。そこまでが「起」となります。自分の「過去」を突き止めるべく、謎の「フルーツ」を追いながら「岩人間」達と戦っている現在は、まさに「承」の真っ只中という事ですね。まぁ、見事なまでに全て妄想に過ぎませんけど(笑)。
なお、「転」における東方家の内部分裂に関しては、別のページに予想をまとめています。(⇒ No.34 【第1版】参照) (2020/05/06:削除) 



(追記1)
第71話にて、驚愕の事実が判明!なんと、康穂は父親と交流があったようなのです。
彼女が10歳の頃、両親は離婚。以来、母と2人で杜王町で暮らしてきたらしい。しかし、それでも康穂と親父さんは、ちょくちょく会ってデートをしていた模様。その浮かれ具合からしても、母よりむしろ親父さんの方を信頼し、好いている感じがしました。これはなかなか意外な話です。

ただ……、康穂が13歳の頃、ある事件が起きました。彼女がフリーマーケットで購入した「髪留め」が、実は「岩動物」だったのです。(⇒ No.25 【第1版(追記7)】参照) 虫のような形をした「岩動物」が変形・擬態した姿だったのです。この「髪留め虫」、彼女の頭皮に舌を突き刺し、水分(?)を吸い取っていました。おかげで頭皮は乾燥しまくり、ものすごい量の「フケ」が出まくり。それのみならず、大量の「フケ」を操って集め、親父さんの姿を作り出し、康穂が傷付く言葉を連発させたのです。
これはきっと「髪留め虫」のスタンド能力、なのでしょう。水分を吸い取るだけでは飽き足らず、脳に影響を与えるのか、はたまた記憶をも読み取って利用するのか?最も愛する人が最も残酷な言葉を浴びせてくる幻覚を見せ、心を砕いてしまう……といった現象を起こすのか?詳細は不明ですが、とにかく康穂は偽の親父さんから絶縁を言い渡され、そのショックと絶望で自殺未遂をして入院してしまうのでした。


康穂と親父さんは恐らく、この時から関わっていないものと思われます。まだスタンドや「岩動物」の存在も知らぬ康穂は、あの親父さんが単なる幻覚だなんて気付けるはずもありません。一方、本物の親父さんは、デートの約束をすっぽかされた事で、康穂から縁を切られたと勘違いしちゃったのかもしれません。どちらかが相手に歩み寄れれば解決したんでしょうけど、デリケートな関係ゆえにそれも難しかったのかも。結局、お互いに気を遣い過ぎ、そのまんま疎遠になってしまいました。哀しいすれ違い
だからこそ、康穂は今も、自分の存在価値を信じる事が出来ていないワケです。母親とは気が合わず、父親からは疎まれ、自分が何者なのかも分からなくなっているのです。最終的に家族3人が和解してヨリを戻せたんならハッピーですけど、果たしてどうなるやら。正直、個人的にはやっぱり、そんな都合良く行かない気がします。康穂がずっと部屋に保管していた「髪留め虫」を調べるうち、その生態や能力も露わに。長年の誤解にようやく気付き、親父さんとまたやり直したいと願うけれど、親父さんはつい最近、マジに再婚して新しい家庭を築いている事が発覚……とかね。
「あの時、もっとパパを信じていれば良かった」 「ああすれば良かった」。―― 身を切られるような後悔。決して取り返せない時間、やり直せない関係。そんな悔恨や心残りはそのままに、それでも、別の形で新しい「幸せ」や「救い」を見付け出してほしい。そう勝手に期待しています。




(2015年7月9日:【第1版】更新)
(2018年2月2日:【第1版】追記1)




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