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「ジョジョリオン」 コミックス感想
21~25巻






★第25巻★ 究極のジレンマ



<カバーイラスト>
ウルジャン1月号(2021年)表紙イラストとの連作として描かれています。大小様々な「しゃぼん玉」に包まれた定助と康穂。定助の石化も治ってますね。2人とも視線はこちらに向けないあたりが、近年の荒木先生らしいクールさ。なんとなく定助の胸で護られているかのような康穂が、乙女チックでちょっと幼い感じもしてキュートです。一見、甘々でラブラブな絵なんですが……、「しゃぼん玉」に映る院長の後ろ姿がスパイシーにピリリと効いてる。
そして、この絵が最も目を引くのが、何を置いてもやっぱりカラーリングでしょ。一面のピンク!定助の水色!桜と青空を思わせる、必殺技のピンクと水色が炸裂です。23巻とは色の配置が逆になっている点も要注目。オレンジやグリーンも、程良いアクセント。ってか、この絵、メチャクチャ最高です。温かみと爽やかさと可愛さがあって、色の塗り方も超好み。世界規模・人類レベルの「厄災」に見舞われたロクでもない2020年でしたが、そのラストをこんな幸せな絵で締めくくってくれるなんて。荒木先生、ありがとうございます!
背表紙は『スピード・キング』でした。ここで来るとは予想外。でも、この巻で常敏の死亡が明言されるワケだし、ちょうど良いタイミングなのか。

<作者コメント>
「ジレンマ」について。荒木先生曰く、この25巻ではジレンマを描いているとの事で、サブタイトルも「究極のジレンマ」です。
確かに、まず『ワンダー・オブ・U』の能力自体がジレンマそのものですよね。正体を掴みたいけど、追おうとすれば攻撃を受けてしまう。「ロカカカ」での「等価交換」だって、まさにジレンマ。こっちの負傷を治せば、別の箇所が石化しちゃう。今の「新ロカカカ」争奪戦も、ジレンマばかりです。果実の数が限られているのに、負傷や病気に倒れる人物はどんどん増えていく。誰かを救おうとすれば、誰かを見捨てなきゃならなくなる。また、「ヒト」と「岩人間」、炭素系生命とケイ素系生命の関係性も、ある種のジレンマなのかもしれません。共に並び立つ事など決して出来ない両者。
でも、何よりのジレンマは……、失った自分の腕は治したいけど、そのためには、よりにもよって常秀と細胞を「交換」しなきゃならなかった康穂でしょうか(笑)。

<内容>
25巻です。「SBR」の全24巻をも突破し、「ジョジョリオン」が歴代最長記録を更新ッ!第9部に持ち越しなんて事にならない限りは、まだ活かされてないままの設定もたっぷりあるワケですし、もう数年は続きそう。30巻の大台も十分あり得ると思いますよ。
各話のサブタイトルもちょうど今巻にて最長記録を樹立ッ!その18まで続いた「DIOの世界」を追い越し、その19にまで達した「ザ・ワンダー・オブ・ユー(君の奇跡の愛)」。96話の「動かないしかない」までちゃっかりカウントされてるのは気になりますけど、まぁ、それはそれ(笑)。とにかく、1つの巨大な流れに誰も彼もが飲み込まれているって感じが伝わってきてグッドです。果たしてどこまで続くのか!?

さて、そんな記念すべき今巻!いよいよ明かされる「岩人間」のレゾンデートル。未知なる回転をする「しゃぼん玉」。まさに命尽きんとする礼さん。「新ロカカカ」による、常秀と康穂の「等価交換」。透龍くんの正体と、康穂との出逢い。そして、虹村さんの参戦。
これまであちこちに蒔かれた種は徐々に芽吹き、ついに今、一斉に花開こうとしています。盛り上がらない道理が無い。盛り上がりどころしか無い。ここで開いて咲き乱れた花は、やがてどんな実を結ぶのか?様々な苦悩やジレンマを抱えながら、定助は、康穂は、何を選び取るのか?どこへ行き着くのか?物語の終着点、ますます目が離せませんね。

ラフ画は無し。ムムッ、残念……。透龍くんのラフ画なんか見てみたいところなんですがね。
スタンド紹介は『ワンダー・オブ・U』の追加2連発。目新しい情報としましては……、「透龍」という名が偽名である事、彼の姓・名字は康穂さえも検索した試しがない(つまり知らない)という事、「厄災」のエネルギーを認識した者が『ワンダー・オブ・U』を見るとスタンドの姿として映る事。その上、なんと待望の「ダーダーダー」解説もあるじゃないのッ!とは言え、詳しい生態は謎だらけのまま。でもまぁ、巻きすだれのような体形だけど1匹って事は明確になりました。解剖図とか見たいな~。どういう構造してるんだろ?
ウルジャン掲載時からの修正は、あんまり多くはありませんでした。その中で、常秀絡みでは効果線やトーンなどの追加が見られ、透龍くん絡みではセリフの追加が目立った印象。「岩人間」が17年間変態しながら過ごすだとか、17年後に身長が伸びるだけでなく体重も増えるだとか。特に驚いたのは、「永い年月で残るのは夢と想い出だけだ」ってセリフに変わった点。夢が加わった。透龍くんの言う「夢」とはどんなものなんでしょうかね?昔の想い出を大切にする透龍くんと、過去の想い出を一切持たない定助。そういう意味でも対照的な人物なので、彼の語る言葉には非常に興味が惹かれます。

(2020年12月19日)






★第24巻★ 動かないしかない



<カバーイラスト>
ウルジャン9月号(2020年)表紙イラストとの連作です。杜王町マップや「ジョジョリオン」にまつわる様々なアイコンを背景に、丸コマの中に描かれる定助・康穂・礼さん、そして透龍くん。高々と掲げられた定助の左腕が印象的でした。また、康穂と礼さんの位置が入れ替わり、それに伴ってベース・カラーも交換。グリーン系が礼さんとなり、康穂はピンク系に。そういった違いを探してみるのも、連作ならではの楽しさですね。
背表紙は透龍くんの配送車と、後ろ姿の院長。配送車はカバーイラストにも描かれてますが、こうやってピックアップされると妙に不穏に見えてきますね。車の中に何かが隠されてたりするのかな……?そして、2度目の登場の院長。25巻以降も無数の院長がズラリと描かれたら面白そう。

<作者コメント>
未来の世界について。今年、産まれた赤ちゃんが、その生涯で見る事になる時代と世界。どうなるんでしょうね?
地球や宇宙、生命に新しい発見があり、新しい技術が確立され、新しい文化が栄えていく。100年前の人々に現代の世界が想像できなかったように、きっと100年後の世界は、想像を超えたものになっているんだろうな。不老長寿や「岩人間」なんて当たり前に存在する世界だったりして。そして、生命や文明の盛衰が続いた果てには何があるんだろう?浪漫ですねえ。

<内容>
今巻のサブタイトルは「動かないしかない」。体のみならず、心が動いただけで「厄災」が襲い掛かる『ワンダー・オブ・U』。八方塞がりで、まさに「動かないしかない」ってな状況です。さりげに、本来あるはずの「ザ・ワンダー・オブ・ユー(君の奇跡の愛) その13」が、このサブタイに乗っ取られちゃってるし。
東方邸サイドと病院サイドでの同時展開。徐々に明らかになる、透龍くんの闇。いよいよ核心に迫ってきた感がありますね。2011年の東日本大震災を受けてスタートした「ジョジョリオン」が、その9年後、世界が新型コロナウイルスの脅威に曝される中で「厄災」を描く。「呪い」を解く物語を描き切る上で、「厄災」は決して避けては通れぬリアルなテーマと言えるのでしょう。「禍い」に見舞われてしまったなら、我々も「動かないしかない」のか?過ぎ去るまで、ただただじっと耐える以外にないのか?それとも、「立ち向かう」術があるのか?その答えが、「ジョジョリオン」には在るのかもしれません。

ラフ画は3点。院長と、トランプの絵札のような常敏&『スピード・キング』、そして『ソフト&ウェット』。院長の鋭く邪悪な眼光がめっちゃカッコイイ!常敏&『スピード・キング』も、こういう絵はなかなか見られないので貴重ですよね。お空を見上げる『ソフト&ウェット』は、なんだかキュート。
スタンド紹介は無し。そりゃそうだ。新しいスタンド、しばらく登場してないもんね。25巻では「ダーダーダー」の図解があると嬉しいな~。
ウルジャン掲載時からの修正は、今回は少なめ。まぁ、ちょっとした効果線やトーン、ホワイトの飛沫などの追加があった程度。……と油断していたら、98話でやってくれました。定助が礼さんに「そして味方というなら…」「豆銑さん…」と話し掛けてるコマ。礼さんの表情が描き直され、定助の方をハッキリ見つめている顔になってます。ここは、「あらゆる事柄が味方にならないぞ」という礼さんからの警告へのアンサーでありまして、「いいや!オレには『ソフト&ウェット』があるし、何より豆銑さんや康穂ちゃんという味方がいる!」と伝える大事なシーンなワケです。それだけに、荒木先生もこだわったんでしょうね。さらに、ラストページの定助の目付きも微修正!より強い意志を感じさせる眼差しに!いくつかの擬音のベタ忘れがそのままになっちゃってるのは残念でしたが、こういった表情の修正が見られたのは良かったです。


―― さて、巻末には気合いの入った次巻予告!これを見たら、コミックス派の人も気になってしょうがないでしょ(笑)。
そんな25巻はなんと今年の冬発売らしい。マジか。冬っていうか、12月しかないけどな。久々に「コミックスの続きはウルジャンですぐ読めるよ!」作戦を決行するつもりのようです。「露伴」ドラマ化もあるし、年末は荒木作品で大いに盛り上がりそうだぜッ!

(2020年10月17日)






★第23巻★ 胸いっぱいの愛を



<カバーイラスト>
毎度おなじみ、ウルジャン5月号(2020年)表紙イラストとの連作となっています。右半分は、こちらを見つめる定助のアップ。美しくセクシーな表情ですが、左眼や左頬は石化しているというショッキングなビジュアル。背景の町並みには、無数の院長が空中に浮遊。マグリットの作品「ゴルコンダ」がモチーフと思われます。ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」が「裏切り者は常にいる」に、尾形光琳の「燕子花図屏風」が「ジョジョ展」長崎・金沢展キー・ビジュアルに、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」が「神奈川沖浪裏上空」になったように、近年は名画モチーフの絵を描かれる事が多くなっていますね。いつの日か開催する原画展で、そういうテーマのコーナーがあったら面白そう。
カラーリングとしましては、やはり定助のピンクと背景の水色が春満開ッ!道路や木のオレンジ色も、良いアクセントになっていますね。
背表紙は透龍くん。気付けばすっかりメイン・キャラみたいになっちゃいました。隣り合う院長とは、一体どんな関係なのか?正体が明かされる時が待ち遠しい。

<作者コメント>
幸福感No.1の曲について。サント&ジョニーの「SLEEP WALK」という曲に決定しました。私もさっそく聞いてみましたが、先生のおっしゃる事、分かるなぁ~。なんというか、晴れた土曜日に訪れた海辺の夕方のまどろみみたいな、ノスタルジックで穏やかな幸福感に包まれる。現実は新型コロナウイルスによる非常事態の中ですから、せめて音楽や漫画で幸福をいっぱい味わいたいもんです。

<内容>
今巻のサブタイトルは「胸いっぱいの愛を」。レッド・ツェッペリンの楽曲が元ネタでしょう。もっとも、狂おしいほどに激しい恋愛感情を歌った元ネタとは異なり……、この巻で描かれているのは深い深い家族愛
しっとりと沁み込んでいくような、定助とホリーさんの優しい愛情。そして、家族を守るためなら何を犠牲にしても構わない、常敏・密葉夫妻の漆黒の愛情。形は違えど、自分以外の誰かを大切に想う気持ち自体は等しく尊い。このサブタイだけでも涙出そうになります。
残念ながら、今巻もページ数は少なくて、薄いコミックスになっちゃってます。そういう事で評判を落としたりするのももったいないんで、もう1話収録してほしかったんだけど……。でも、これはもうしょうがないのかな。ウルジャンはページ数が自由な分、先生は描きやすいけど、コミックスにする際にボリューム的に悩ましい。まぁ、きっと先生にとって「ここまでまとめて読んでほしい」という内容のひと塊なんでしょうから、ページ数にこだわる意味もないか。今後はもう、このぐらいの薄さになると思っておいた方が良さそうです。

ラフ画は4点。つるぎちゃん、康穂、そして1ページに収められた常敏&密葉さん。生意気そうなつるぎちゃんもキュートだし、流し目康穂もセクシー。頬杖をついた常敏の横顔はカッコイイ。でも、今回は密葉さんが王者ですねッ!何そのポーズ、何そのあどけない表情、めっちゃ可愛いじゃないですか!美少女かよ!
スタンド紹介は無し。まだまだ院長のスタンドは秘密か~。
ウルジャン掲載時からの修正は、効果線・擬音・トーン・飛沫・丸コマの追加、セリフの微調整・追加などなど、今巻は色々とありました。初っ端の91話のトビラ絵からして、『ソフト&ウェット』の拳が追加されてるし。特に94話は驚きました。密葉さんが防犯カメラに映る康穂を発見するくだりでは、絵そのものは変えていないのに、効果を微調整しただけでより自然な流れになっています。塀の上にいる康穂の手元には、彼女のスマホも描き足されました。そして、つるぎちゃんが寝ていたベッドの脇の小物、ちゃんと今月のウルジャン(96話)と同じ物に描き直されています。そういう細やかな仕事を目の当たりに出来る事が、ウルジャンとの比較の醍醐味なのです。
ただ、もちろん修正にも個人的好みはありまして。例えば、康穂が透龍くんに「東方邸まで連れて行ってほしい」と頼むあたり、パトカーが描かれた丸コマが追加されていました。また、康穂が右腕を失ってしまうシーンでは、「…うあ…」というセリフが追加。この辺は正直、ウルジャンの時の「空白」「余白」がいい味出してたので、それが無くなっちゃったのはむしろ残念です。分かりやすさと情緒、どっちを取るかはなかなか難しい問題ですね。漫画家ってやっぱ大変だしスゴイな。

(2020年4月18日)






★第22巻★ TG大学病院院長 -明負悟



<カバーイラスト>
ウルジャン12月号(2019年)掲載第92話のトビラ絵や、ウルジャン1月号(2020年)表紙イラストとのトリプル連作。登場人物達による手旗信号という、遊び心満点の楽しいイラストです。もっとダイナミックでスタイリッシュでカッコイイ絵の方が好きではありますが、たまにはこういうユルい絵があっても良いですね。
パッと見はほとんど同じに見えますが、キャラの選出と配置が変わっており、なんと『スピード・キング』が最初の「J」に抜擢!張り切って旗を挙げてくれています。『スピード・キング』の全身像がちゃんと描かれたのって、さりげにこれが初めてなんですよね。やっと見れたな!さらに、実はこの絵には続きがあって、『アウェイキング・Ⅲリーブス』は「2」を、『ペイズリー・パーク』は「N」を、礼さんは「L」を、『ソフト&ウェット』は「I」を担当しているのです。「2」は、「夫婦2人ラブラブ」とか「愛しい2人の子ども」とか、そういう密葉さんの想いが込められているのかな。「N」は、『ペイズリー・パーク』の能力である「Navigation (ナビゲーション=案内・誘導)」っぽい。「L」は、『ドギー・スタイル』の能力「LINE (ライン=紐)」か、はたまた自らの仕事に誇りを持つからこその「Labor (レイバー=労働)」か。「I」は、定助が求め続けていた「自分」を意味しているんでしょう。そんな事をあれこれ考えながら見るのも面白い。『アウェイキング・Ⅲリーブス』と『ペイズリー・パーク』は内股気味でキュートだなぁ、とかね(笑)。
カラーリング的にはグレーやブルーが主体となる、落ち着いた色合いです。でも、手旗をツートンカラーにしたおかげで、レッドがイイ感じに差し色になっててキレイ。
背表紙は予想通り明負院長でした。今はまさに院長のための展開ですからね。次に登場するのは透龍くんで確定です。そうなると、なおさら両者の関係性も気になってくる。

<作者コメント>
荒木先生、久しぶりにイタリア旅行をするの巻。フィレンツェやルッカって事は、この前の「Lucca Comics and Games (ルッカ・コミックス・アンド・ゲームズ) 2019」の時の話でしょうね。そっか~、やっぱフィレンツェにも行かれたんですね。ごく近い時期に自分も同じ場所を訪れたって事実に、なんか感動。
そして、そういった歴史ある土地の良さは「人間の盛衰」が感じられるところ、との発言。単なる見た目の美しさとか、その作品や建物の歴史だけじゃなく、それを取り巻く「人間」を見てるんだなぁ。視点や考え方が、私のように浅はかではない。さすがだぜ。

<内容>
常敏・つるぎちゃん父子 vs 桜二郎と、定助・礼さんコンビの院長追跡劇。大きくこの2本立てです。「新ロカカカ」を巡る攻防はいよいよ激化!
とは言え、畳み掛けるようなバトルも、執拗なまでの能力描写も面白いけれど、やっぱりキャラクターの心の動きが一番好き。「幸せ」について考えるつるぎちゃん、息子の疑惑に真っ正面から答える父親:常敏、自分の存在理由を静かに語る定助、過去の過ちを悔いる透龍くん。今の荒木先生が重視している「哀しさ」や「切なさ」が詰まった、いいシーンなんですよ。それぞれが孤独を抱えてて、それでも生きていて……、うん、イイんですよ。
ただ、出来ればもう1話収録してほしかったですね。あんまりコミックスが薄いと気になっちゃう。話数は十分溜まってたのになぁ。

ページをめくると、カバーイラストのモノクロ版が拝めるワケですが、ここにいる『アウェイキング・Ⅲリーブス』は表紙バージョンと違う。「2」じゃなくて「N」になってます。この「N」は何だろう?康穂サイドと常敏サイドの間に揺れる密葉さんの立場「Neutral (ニュートラル=中立)」を意味しているのか?愛しい我が子の命と引き換えに失った「Nose (ノーズ=鼻)」か?それとも、「矢印」の能力と「To Be Continued…」の矢印を掛けて、「Next」の「N」なのか?……などと散々考えまくった末、表紙も含め、単純に「JOJOLION」「22」の意味だったとやっと気付くのでした(アホ)。
ラフ画は3点。桜二郎、常敏、院長です。いや、院長はお馴染みの後ろ姿で、本編の絵をちょっと加工したものっぽいな。これはノーカンか。桜二郎のやけに爽やかで可愛らしい笑顔が印象的ですが、彼が描かれるのもこれがきっと最後でしょう。さようなら、桜二郎。
スタンド紹介は無し。まぁ、新登場のスタンドが無いんだから仕方ない。
ウルジャン掲載時からの修正は、効果線や擬音、トーンの追加、セリフの微調整など、いつものようにちょこちょこ見受けられました。その中で、桜二郎の「オッケェーッ」2連発の追加はけっこう大きい変更。無言の凄みが失われる代わりに、桜二郎のチャラいキャラは立ちますね。あとは、つるぎちゃんや礼さんの年齢の修正。11歳は10歳に、32歳は31歳に、それぞれ直されました。つるぎちゃんに至っては、最初の登場人物紹介も10歳になってます。そして、個人的に最も重要だったのが、院長の講演の日時。「明日21日」とか「本日より2日間」とかっていう余計な部分が削除され、講演は「明日」って事で統一されたっぽい。良かった、これで時系列も整理しやすくなったよ。

(2019年12月20日)






★第21巻★ ザ・ワンダー・オブ・ユー



<カバーイラスト>
ウルジャン8月号(2019年)の表紙イラストとの連作。ウルジャン以上にイケイケで踊る定助が、見てて微笑ましい。その背後には、やっぱり『ソフト&ウェット』と「瞑想の松」が融合したかの如き1本の松の木が。『ソフト&ウェット』の頭部が浮かび上がり、錨のマークが刻み込まれ、杜王町や東方フルーツパーラーのマーク、「オーソン」の店名などの旗?紙?布?が貼り付けられています。ウルジャンの方とは異なり、こちらは絵自体に「傾き」があるのも要注目。そのおかげで、パッと見の印象もけっこう違います。
カラーリングとしては、定助が爽やかなブルー、松の木や背景が仄暗いグレー。そんな寒色の中にあって、松の葉のピンクが非常に鮮やかですね。「瞑想の松」こと「一本松」と、東方家の敷地に倒れ込んで「離れ」の地下室と繋がってしまったもう1本の松。震災前までは「二本松」と呼ばれていたこの2本の松の木が、ストーリーにも関わってきてくれる事を密かに期待しております。あと、さりげに定助のスニーカーの色がコミックスとウルジャンで違っててオシャレ。
背表紙はようやく羽先生。22巻は誰だろう?羽先生の隣に黒っぽい影が見えるから、明負院長かな?

<作者コメント>
ヨーロッパでの「H」の発音について。5部のコミックス読んでる人にとっちゃ超今更な話ですが、文庫版やアニメだけ見てる人は知らなそうですしね。「イロイコ」を突破して、「エロイコ」の時もあるようです。「エロい子 アラキ」。ちょっとヤバめの呼び方になっちゃってるけど、当の先生はだんだんカッコ良く感じてきてるみたい?(笑) ……まぁ、先生がいいならイイんです。

<内容>
今巻のサブタイトルは「ザ・ワンダー・オブ・ユー」。エルヴィス・プレスリーが歌うラブソング「The Wonder of You」が元ネタと思われますが……、その歌詞は定助と透龍くん、2人の男達の康穂への想いのようにも感じられます。そんなサブタイトルに相応しく、定助・透龍くん・康穂の恋のトライアングルが描かれた巻ですね。「君の奇跡の愛」、美しい言葉だ。
定助達の追跡劇と同時に、つるぎちゃんの事件も並行。どちらの謎も、明負院長へと収束。1巻丸々使って、結局「謎だ!」って事しか分からない状況です。このねちっこいまでの徹底的な不可解描写が「ジョジョリオン」の特徴ではありますが、じれったくてテンポ悪くてイヤっていう人もいるんだろうな。さらに、ラストでの桜二郎リターンズで、桜二郎を通じて過去のツジツマを合わせる方向に向かって行く事を期待する人も多そうですけど……、実際はそういうワケでもない。多分、荒木先生にとって重要なのは「過去」そのものよりも、その「過去」を踏まえて「今」どう動くのか?どんな「未来」を選び取っていくのか?って事の方なんだと思います。そして私は、そういう全てを含めて「ジョジョリオン」が大好きだし、「スゲー面白い」と感じています。
アニメ化などで「ジョジョ」が急激にメジャーになり、広く受け入れられるようになった今において……、ファンの間でさえどこまで受け入れられてるのか分からないくらい読む者を選ぶ「ジョジョリオン」は、ある意味で最も「ジョジョ」らしい姿の「ジョジョ」なのかも(笑)。

巻頭の杜王町マップが久々に更新。「支倉学園小等部」が追加されました。場所は「カツアゲロード」や「ジョースター地蔵」に程近い「支倉高校」のすぐそば。つるぎちゃんやミナちゃん達はここに通っているようです。
ラフ画は2点。つるぎちゃんと、イチャつく常敏・密葉夫妻。つるぎちゃんも大好きなキャラだし、仲睦まじい夫妻も微笑ましい。改めて考えると、この巻は定助・透龍くん・康穂のティーンの恋愛模様だけじゃなく、常敏・密葉夫妻や桜二郎・マコリンのオトナの恋愛も描かれていますね。やはり「ザ・ワンダー・オブ・ユー」というサブタイトルは、いろんな意味で相応しいな。
スタンド紹介は事実上無し。しかし、明負院長やそのスタンドの現時点での情報は、簡単にまとめられていました。あの謎のスタンドは、振り返った時にチラリと一瞬だけ見えるものらしい。
ウルジャン掲載時からの修正は、そんなに多くはありませんでした。効果線や擬音、トーンの追加、セリフの微調整など、ちょこちょこあった程度。あえて言うなら、83話の時点で「明負 悟」という名前を出した点と、羽先生の担当を「脳神経外科」から「美容皮膚科」に訂正した点ですかね。

(2019年7月20日)







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