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「ジョジョリオン」 コミックス感想
26~27巻






★第27巻★ 全ての呪いが解けるとき



<カバーイラスト>
前巻の時の予想に反し、この27巻でついに最終巻となりました。
ウルジャン9月号(2021年)表紙イラストや最終回の見開きトビラ絵との連作です。「しゃぼん玉」柄の大きな旗を持つ定助。背景には、「ジョジョリオン」で登場したスタンド達の顔アイコン。定助がこちらに歩いて来るかのようでもあり、まさに凱旋パレードって感じ。最後を飾るに相応しい。定助の澄んだ真っ直ぐな瞳、自信と希望に満ちた表情、堂々たる佇まい。彼が歩んできた苦難の道の果てに「福音」が訪れた事を確信させてくれます。この10年の色々が蘇り、なんかグッと来るなぁ……。
カラーリングとしては、ウルジャンの表紙と同じグレー基調。いや、むしろシルバーと言うべきか。いぶし銀で最高にカッコイイ。派手さや勢いは無くても、その上品・上質な渋みが心を掴みます。最終巻にして最高の絵が来ちゃいましたよ。
背表紙は花都さんの残り部分と、『ワンダー・オブ・U』の顔アイコン。この物語が「敵」や「悪」ではなく「呪い」や「禍い」と戦う物語である事を強調している気がしました。そして、母と子の物語、「痛み」と「悼み」の物語でもありました。

<作者コメント>
「厄災」について。「ジョジョリオン」のテーマそのものを、ついに荒木先生自らの言葉で語っていただけました。これを読めばさすがに、ラスボスの透龍くんのキャラが弱いからダメ、みたいな意見も出て来なくなるかな?そう、透龍くんはラスボスじゃないんです。ラスボスは「厄災」なんです。
でも、「厄災」を乗り越えると考える事自体がいけない事なのかも、という言葉はなかなかに深いですね。悪い出来事に立ち向かって打ち勝つのではなく、むしろ、ただ「そういうもんだ」と受け入れて生きていくべきなんでしょうか?「敵」としてではなく、自分の「人生の一部」として。自分を取り巻く「環境の変化」として。そりゃあ、生きてりゃ良い事も悪い事も起こるよ。いや、本当は良いも悪いもなく、ただ「変わる」だけだよ。そのぐらいの気持ちの方がいいんでしょうかね?結局、誰にでも平等に襲って来るのだから、避けようと思う事自体が間違いで。たとえそうなのだとしても、「でも!」「それでも!」という荒木先生の祈りが、1つの答えの形が……、「ゴー・ビヨンド」であり、この物語のエンディングなのかもしれません。

<内容>
物語そのものについては、もう十分に語りました。その辺は総括レビューの方を読んでいただければ幸いです。なので、今さら言う事もありません。ただ、定助に言いたいだけです。過酷な「定め」を、多くの人達と「助け」合って、越えて行った彼に。……お疲れ様。ありがとう。そして、おめでとう。
でも、各話のタイトルについては語っておきましょう。まず、第107話のタイトルであり、この最終巻のサブタイトルにもなっている「全ての呪いが解けるとき」。めちゃくちゃ素晴らしいですね!しゃべった時の語感やリズムも気持ちいいし、これまた最後を飾るに相応しい言葉。そして、最終回のタイトルは「東方フルーツパーラー」絶妙……!!一切飾らず、何気なく、当たり前のような普通の名詞です。でも、そこに全てが詰まっているし、スゴく「ジョジョリオン」らしい。「家族」がいて、「帰る場所」がそこにある。このタイトル自体が、東方家の新しい始まりを示しているかのようでした。

ラフ画は無し。透龍くんやルーシー、ジョセフあたりのラフ画も見たかったですね。あるいは、最後に定助&康穂とか。寂しいけどしょうがない。
スタンド紹介は『スペース・トラッキング』と「ゴー・ビヨンド」説明。まぁ、とりたてて新しい情報はありません。ジョセフのスタンド紹介が無かったのも残念でした。でも、『スペース・トラッキング』の全身像がちゃんと見られたのは嬉しい!やっぱクールなデザインですわ。それと、ガードレールの解説もありました。こいつ自身の名が「ラヂオ・ガガ」で、「岩生物」である事も確定。実に面白い生き物です。
ウルジャン掲載時からの修正は、当然ありました。集中線・効果線の追加が多く、あとはセリフや擬音、血しぶきなんかの追加・微修正も。例えば、花都さんの体の震えや、「ラヂオ・ガガ」にやられたドライバーから噴き出す血が増していて、より感情や状況が伝わりやすくなっています。ただ、最終回の見開きトビラ絵が未収録なのは痛いですね~。あれ、マジ最高なのにな。スッゲーもったいない。
そして、正真正銘最後の最後。2ページの描き下ろしがありましたよ。そのうちの1ページが、「瞑想の松」と「壁の目」の風景。「ジョジョリオン」のシンボル的な光景とも言えるでしょう。もう1ページは、スタンド達の顔アイコンのみ。この2ページは、純粋に余韻に浸るためのボーナス・トラックって感じですね。本編はあくまでウルジャンと同じ終わり方。それが良かったです。


これにて第8部「ジョジョリオン」も本当におしまい。荒木先生、本当にありがとうございました!第9部も待ってます!

(2021年9月17日)






★第26巻★ ゴー・ビヨンド



<カバーイラスト>
例によって、ウルジャン5月号(2021年)表紙イラストとの連作……と思いきや!なんと、まったくの別イラストでした。これは意外。しかも、さらに意外な事に、定助も康穂もいません。透龍くん&『ワンダー・オブ・U』が表紙をジャックしちゃったのです!敵オンリーのカバーイラストは「ジョジョリオン」では初。これは快挙ッ!腕を腰に組んで仁王立ちする透龍くんと、その背後に佇む院長こと『ワンダー・オブ・U』。院長はマフラーを脱いで、スズメ蜂柄のネクタイを披露してくれています。スズメ蜂自体も透龍くんのサイドに配置されていますが、もうすっかりスズメ蜂が彼の象徴みたいに扱われてますね。院長が持つ杖の先端部には「オブラディ・オブラダ」もくっ付いてる。常敏とオソロのカフスも似合ってます。
カラーリングとしては、透龍くんが赤基調。院長はオレンジ。背景は小豆色と言いましょうか、えんじ色と言いましょうか、ワイン色と言いましょうか、とにかくそんな濃ゆい紫。イイですねぇ~。ハッピー&ピンクな25巻の対極って感じのデンジャー&レッド。見るからに毒々しく禍々しく、厄い絵です。赤い透龍くんも、25巻カバーやウルジャン5月号(2021年)表紙イラストの青い定助とは対照的。いつか原画展で並べて展示してほしいなぁ。こんなイカした表紙まで描いてもらっちゃって、透龍くんってばラスボスとしての風格も十分ですね。
背表紙は『スピード・キング』の残り半分と、花都さん。ラストを花都さんで締めるとは考えにくい気がするので、27巻が最終巻ってワケじゃなさそう。ここまで来たらキリ良く30巻までやっちゃいましょう!

<作者コメント>
ブルブルマシンについて。作者近影でもマスクを付けてらっしゃる通り、このコロナ禍で、ジムなんかにも気軽に行けない世の中に。普段から健康には気を使っている荒木先生ですから、恐らくそれで「振動マシン」を導入されたんじゃないかと想像します。効果は徐々に表れてきているようですね。「ジョジョリオン」だしね。……さすがは先生、お茶目で癒される(笑)。

<内容>
21巻から続く、「厄災」という巨大な流れ。いよいよそれを断ち切る時が近付いて来ました。サブタイトル「ザ・ワンダー・オブ・ユー(君の奇跡の愛)」も、その21でついに打ち止め!流れが、変わったのです。
今巻は飛行機のパネル落下を通じて、非常にまとまりの良い巻となっていますね。1巻丸々使って、パネルが剝げ落ちるところから東方邸に直撃するまでの時間が克明に描写されています。その短くも濃厚な時間の中でとりわけ濃密に描かれるものは、定助と康穂の「繋がり」。見えないしゃぼん玉「ゴー・ビヨンド」と、『ペイズリー・パーク』が通す道筋。2人の出逢いと繋がりが結実した、必然の奇跡。絶対に辿り着けないはずの透龍くんに届いたのです。
たぶん、これは「ジョジョリオン」において最大級に重要で象徴的な事だと思うんですよ。目には見えないけれど、確かに在るもの。それは自分の忘れ去った過去であり、知りもしないルーツであり、そこから脈々と受け継がれてきた想い。そして、そんな人と人とが出逢い、互いに結び付く事で自然と生まれる「繋がり」。人は本当はただ存在しているだけで、孤独じゃない。不幸じゃない。誰かと、何かと、繋がっているからこそ存在していられるのだから。「厄災」や「呪い」が様々な繋がりから生まれるのと同じく、「愛」も「福音」もまたそこから生まれるのだから。見過ごされて良いものなど何一つとして無い事を「知り」、孤独でも不幸でもない自分に「気付く」だけ。そうすれば、たとえ思い通りにならない時でも、たとえ不運の真っ只中に落ちてしまっても、良い「未来」が巡って来る事を諦めずに生きていける。どんな事だって乗り超えて行ける。そんな力が、強さが、人間には絶対に在る!そういうメッセージなんじゃないかな~、と勝手に捉えています。夢と思い出という「過去」にばかり目を向けている孤独な透龍くんには、決して理解できない事でしょう。

ラフ画は2点。スマホを手に微笑む康穂と、地面に両手をついてこちらを見る定助。どちらも素敵ですが、やっぱ透龍くんのラフ画も見てみたい。
スタンド紹介は無し。しかし、「ダーダーダー」に続いて「オブラディ・オブラダ」解説が載っていました。onちゃんの顔みたいでキュート。崖の上から動物に飛び付き、血液や体液を吸って一瞬のうちに増殖するようです。まぁ、それは本編を読めば大体分かる事だけど、初めて明文化されました。あと、「岩生物」なので増水や嵐を嫌うという情報もゲットです。お風呂に浸かったら離れていったのは、単に呼吸が苦しくなったからってだけじゃなく、本能的に水を避けているってところもあったみたい。
ウルジャン掲載時からの修正は、もちろんありましたよ。セリフの微修正、擬音や効果線の追加、血しぶきや汗などの追加etc.……がちょこちょこと。例えば、103話にて『ソフト&ウェット』の振り向きざまパンチを「LOCACACA 6251」に叩き込むシーンでは、「ガン」「ガン」という擬音が追加されています。ただ、これは正直言って個人的には不要だったかな。修正前の”渾身の一撃!”っていう感じが好きだったんで。意外にも、ラストの106話の修正が最も多かったです。「ゴー・ビヨンド」着弾の軌道や衝撃がより伝わるようになっていました。些細な事ですが、パネル墜落直後の康穂の口の中の描き込みもプラスされてますし、透龍くんに触れられそうになってる康穂の顔には汗と影も追加されてます。康穂の表情・感情が大切に描き出されていて良いですね。でも、「ゴー・ビヨンド」2発目着弾後、失ったはずの右腕が描かれている常秀は修正無し!そんなぞんざいな扱いも常秀ならサマになるぜ(笑)。

(2021年5月20日)







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