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「ジョジョ」の魅力とは





20年もの長きに渡り、今もなお連載中の「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ!多くの読者の心を、そして私の心を引き付けてやまない、この作品の魅力とは一体どこにあるのか?今年2007年は、記念すべき「ジョジョ」連載20周年という年。大事な節目っつー事で、せっかくだから自分なりに書き留めておこうかなと思いました。
もちろん、私がこれほどまでに「ジョジョ」を愛読しているのは、良さも悪さもひっくるめて、「ジョジョ」の全てが好きだからに他ならないワケなんですが、私にとっての最大の理由を書かせていただきます。



それは一言で言うなら、「一貫性」です。登場人物みんなが、それぞれの人生・個性・思想を持ち、その確固たる信念・決意・欲望を迷いなく貫き通して生きている。その姿に強烈に惹かれ、憧れるんです。私のようなフラフラした半端者は特に。
こういう話題だとしょっちゅう例に出されるのが吉良吉影ですが、「人を殺さずにはいられない性」と「平穏に生きたいという願い」が彼のパーソナリティーを形成しています。この相反する2つの欲望を満たそうと、どこまでも前向きに生き続けているからこそ、彼はあんなにも恐ろしくて魅力的なキャラクターだったのです。当然、吉良だけではありません。ナンバー1を目指すためなら手段を選ばないディオ、弱い自分を乗り超えるために長い戦いの旅に出た花京院、無知なる者を利用する悪を消し去るために組織すら裏切ったブチャラティ……などなど。善悪の境界をも超え、1つしかない生命を誰もが懸命に輝かせています。
そしてそれは、作者である荒木飛呂彦先生も同様!荒木先生も自分の中にあるルールに従い、それを貫き通して、マンガを描かれています。絶対的な強者が存在せず、限定された状況下・ルール下でのサスペンスや激闘が楽しめるバトル・システム。少年マンガの風潮や規制とは別次元の、独特の美意識。決して人を否定しない、「人間讃歌」という主テーマ。それは20年間、揺らぐ事も歪む事もありませんでした。そういう「芯」「軸」がビシッと1本通った作者・作品だから、その「芯」や「軸」が未来への道標となり、たとえ途中で少々迷走&暴走しちゃったとしても、「道」を見失う事なく先へと歩んで行けるんですね。


しかし、です!ここで言う「一貫」とは「昔から何1つ変わってない」って意味じゃあござーせん!何があろうと変わらない部分もあれば、逆に、常に変わり続けていく部分だってあります。「変化を続ける」事も一貫しているのが「ジョジョ」なんです。
最も如実なのが、やはり絵柄でしょうか。20年の連載の中で、どれだけ絵が変化したか計り知れません。しかも、荒木先生自身が意識的に変化させているようです。生命力みなぎる絵である事は変わりませんが、マッスル全盛の時代にはムキムキな肉体派の絵に、人間同士の戦いへと移り変わった時には細身でエレガントな絵に、今の「SBR」ではよりリアルな絵にしようと陰影法も取り入れているとの事。ルールにしても忠実に守っているかと思いきや、読者の想像力を刺激してくれる自由奔放な発想ゆえに、そのルール自体を変化させてしまう事もままあります。スタンド能力の解釈もアバウトだし、その場その場の面白さや盛り上がりが最優先で、そもそも細かい設定は大して気にもしてなさそう。
登場人物の心理状態も、ほとんど悩まずに突き進んでいた昔とは違い、「SBR」あたりでは未完成な主人公達が苦悩しながら「道」を探し求めています。人間としての、そして自分自身としての「誇り」を持って生きるための前向きな苦悩であり、生きる事に疑問を抱く人物はいませんけどね。ただ、時によってはサンドマンやウェカピポのように、想いを貫くあまり「道」を誤ってしまうという切ないエピソードも見られます。絵のみならず、人物描写も部ごとのテーマに応じて変化が生じているのです。
作品の根本に流れる血や魂は永遠不変ですが、時代も舞台も表現方法も、登場人物や主人公さえも変わっていく。そういった変化によって、作品がどんどん広がり、深まり、奥行きを増していっている事が窺えると思います。荒木先生の無限の想像力と驚異の表現力から生み出される、オリジナリティー溢れる濃密世界には圧倒されっぱなし。荒木先生が今まで触れてきたマンガ・映画・音楽・小説・ファッション・美術品・TV番組・ゲーム・アニメ・資料等を全て鑑賞したとしても、あの世界観は誰にも生み出せないでしょう。


(ちなみに、パクリだ何だと騒ぎ立てている方もいらっしゃるようですが、私は基本的にパクリには寛容な立場です。「ジョジョ」が何からアイディアを頂戴しようが、どの他作品が「ジョジョ」から影響を受けようが、別にどうでもいいです。むしろ、いろんな人達が影響し合っていった方がいいと思うぐらいです。自分の心に響いたモノを別の形で表現する事は、貶されるような事ではないと思います。
100%の盗作じゃない限り、その作者の個性が表れた描写やテーマはどこかしらあるはずで、一部分のパクリに目くじら立てて作品を楽しめないってのも損な話。いちいちツッコんでたって、キリがないし不毛ですよ。重要なのは結局、私が読んで面白いかつまらないか。それだけ。)



「王道」と「異端」「自由」と「自制」「想像」と「創造」「変化」と「不変」。人間や生命の持つ「美」への愛着。これらの創作姿勢が奇妙なバランスで一体となり、作品の中で徹底して一貫されている。荒木先生以外に「ジョジョ」を創り出せる者など存在しない。だからこそ私は、「ジョジョ」や荒木マンガに唯一無二の魅力と普遍的な美しさを感じ、読む度にドキドキハラハラして、勇気と希望が湧いてくるんでしょう。
完璧に信者意見で申し訳ないですが、これからの人生、どんな事が起ころうとも荒木マンガを嫌いになる事だけは決してないッ!と断言します。私も荒木先生の作品を愛読しまくり続ける事を生涯貫き通しますよ!さあ、今日も荒木飛呂彦の世界を冒険しましょう。無限に膨張し続ける、あまりにも奇妙で美しい世界を。




(2007年10月27日)




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