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JORGE JOESTAR





荒木飛呂彦先生執筆30周年&「ジョジョ」連載25周年を記念して企画された、「ジョジョ」を愛する気鋭の作家陣が「ジョジョ」の小説化に挑む「VS JOJO」!今作はその第3弾として、2012年9月19日に発売されました。舞城王太郎氏による、ジョージ・ジョースターを主人公に据えたノベライズ小説です。ジョージと言っても、ジョナサンの父親ではなく息子の方。いや……、主人公の「ジョージ・ジョースター」は、なんと彼1人ではありませんでしたが。
読み終えた率直な感想としましては、「とにかく長え!内容もとんでもねえ!」ですかね(笑)。いえ、これは否定意見じゃないんですよ。発売前に【ただ単に50年の空白を埋めるだけの安易な話に終わらず、独自のテーマ性を持った1つの物語として成立させてほしい】とか、【何も恐れずに、その個性をガンガン発揮させてほしい】とか書きましたけど、見事にその期待に応えてくれたんですから!よくぞここまで無遠慮に、ブッ飛んだ奇想天外予想外ストーリーを書き切ったもんだな、と賞賛したいくらいです。確実に賛否(というか好き嫌い)が分かれるでしょうが、私としては、変に萎縮してこじんまりした薄い話になるより遥かに読み応えがあって良かったと思います。



そもそもの大前提として、この物語は「ジョジョ」の完全なるパラレル・ワールドになっています。読めば分かるように、ジョージが主人公と言っても、原作で描かれた1部と2部の間に起こった出来事としては書かれていません。「一巡後の世界」でも「隣りの世界」でも「新世界」でもない、純然たるパラレル・ワールドが舞台。(そのパラレル・ワールドの「●巡後の世界」や「隣りの世界」は出て来るけど。)……だからこそ、原作との整合性など一切気にする必要もなく、思うがままに舞城氏なりの「ジョジョ」を表現できています。
今作の内容は2つのパートに大きく分かれており、その両方に「ジョージ・ジョースター」なる主人公が存在します。ジョナサンの息子である「ジョージ」と、ジョースター家の養子にして名探偵の「ジョージ」。ややこしいので便宜上、前者を「ジョージ2世」、後者を「名探偵ジョージ」と区別して呼ぶ事にしましょうか。
ジョージ2世の物語は、1900年のカナリア諸島から幕を開け、彼の長い半生が書き記されています。リサリサとの不思議な関係、友人との出会い、そして血統ゆえの因縁。多くの出来事を経て、気弱な彼が少しずつ男らしく成長していくのです。名探偵ジョージの物語は、2012年の福井県西暁町から始まります。そして、運命に導かれるように杜王町へ。そこで発生した連続殺人事件と、常識を超えた異常な事態の連続。全ての真相に近付く、彼の超濃密な1日が書き記されています。
そんな、まるで共通項がなさそうな2つの世界・2つの物語を結び付けるキーパーソンが「九十九十九(ツクモジューク)」でした。「九十九十九」とはもともと、清涼院流水氏の作品に登場するメタ探偵ですが、舞城氏も彼を主人公にしたトリビュート小説を発表しています。そんで、まるで自分の生み出したキャラであるかの如く、今作にもしれっと登場させたという寸法(笑)。彼もまた名探偵であり、事件を通じてジョージ2世の初めての親友となります。その後、なんと時空を超えた彼は、名探偵ジョージとも出会います。その出会いこそが、名探偵ジョージが杜王町の事件に関わるキッカケとなるのです。そして何より、彼が2人のジョージに語った「ビヨンド」の存在。物語の作者とも言える、超越者の存在。これが2人のジョージの物語を大きく動かしていく事になるのです。


結果を見ると、完璧にハッピーエンドの「ジョジョ」でした。ジョージ2世は生き延び、なんとジョナサンも復活し、野望を阻止されたディオもおとなしく何処かに立ち去っていく。カーズもヴァレンタイン大統領も割といいヤツになってるし、超絶便利アイテムの「スタンド携帯電話」でいつでも名探偵ジョージ達とも連絡を取り合えるし。都合良すぎで安直なのかもしれないけど……、まあ、こんな世界がどこかにあってもいいよねって気持ちになりました。
この全768ページにも渡って書かれた物語のテーマは何かと考えると……、ベタだけど「信じる心」なのかな。「心」の力は、原作「ジョジョ」においても幾度も描かれている事です。「波紋」だって、恐怖を我が物とする「勇気」が作り出す力。「スタンド」はまさに精神の形ですし、出来て当然と思う心がより強い力を引き出します。今作にしても、「ビヨンド」を信じられるかどうかが物語の鍵を握っていました。自分を、仲間を、敵を、世界を、全てを、信じる。その心が生み出すものは、血や運命さえも超える力になるのです。ジョージ2世が死の運命を打ち破れたのも、ジョースターの血を引かない名探偵ジョージがディオに太刀打ちできたのも、全ては「信じる」事が出来たから。我々も、信じる心が力になると信じましょう。



さて、大筋はこんなもんです。以下、細かい感想等について箇条書きしていきます。




 @名探偵ジョージがいる世界の正体には驚かされました。なんと、ジョージ2世がいる世界から数えて36巡後の世界ッ!前の世界と近い歴史を辿ってはいるものの、さすがに36巡もの差はデカイらしく、地球の地形そのものすらまったく異なっています。そして、この37巡の宇宙が巨大なサイクルとなり、1つの「世界」を構成しているのです。途方もないスケールで、ポカ〜ンと圧倒されちゃう世界観。しかし、それにも確かな意味があるワケです。全てはディオが『天国』に辿り着くために必要なものだった、と。かなり好き放題に無茶苦茶やらかしてくれてますが、それでも根幹にはしっかりと「ジョジョ」が根付いていました。
 そんな世界観ゆえに、登場キャラもパラレルな連中揃いです。ジョルノも「ジョルノ・ジョバァーナ(汐華初乃)」ではなく、「ジョルノ・ジョヴァーナ(汐華初乃)」になっています。「杉本美」さんも「杉本美」さんに、「広瀬康くんも「広瀬康くんに、重ちーこと「矢安宮重「矢安宮重に、「辻さんも「辻さんに。何故か日本人以外は、名前はそのまんまのようですけど。でも、それぞれの持つスタンド能力はまるで異なります。これまた、何故かジョルノや吉良、ディアボロ、プッチ、露伴のように、原作で超強力なスタンドを持つヤツらはほぼ同じ能力を引き継いでますが。


 Aクセの強い文章ではありますが、それも慣れてしまえば、逆に2人のジョージに愛着が湧いてきます。常識人でお調子者の2人の目線で書かれているので、感情移入もしやすかったです。
 才能自体はあるのに、不器用な生き方しか出来ない未熟なジョージ2世が、「ジョージらしく」成長していく様は応援したくなりました。「波紋」も「スタンド」も持たない彼が、なけなしの勇気とリサリサへの愛と「ビヨンド」の意志によって、歴代ジョジョにも引けを取らない奇妙な冒険を突き進んでいく姿はカッコ良かったです。それを言うなら、名探偵ジョージも負けていません。いきなり超能力者や生き霊と遭遇するわ、島が「カブト虫」化して動き出すわ、火星に飛ばされるわ、過去に飛ばされるわ、別の次元に飛ばされるわ、しょうもない事で何度も死にかけるわ……、散々な目に遭わされてます。しかし、次々と人知を超えた出来事ばかりが襲って来ても、現実を受け入れて、自分の中の「常識」を広げて推理を進めていく。さすがの名探偵っぷりでした。


 B1〜7部までの様々なファクターを、巧みに大胆に再利用・再解釈・再構築していました。メインキャラ大集合なストーリーや『天国』に向かう方法、ディオの目的なんかはその最たる例。強引ではあるけど、それなりに納得のいく展開を作り上げてくれています。伏線もキッチリ張られ、多くの展開や設定にちゃんと「意味」が隠されている点も好印象です。読んでて「おおっ、あれはそういう事だったのか」と驚かせてくれる事も多々ありました。そーゆーのは楽しい。
 「14の言葉」の解釈については、子守歌の歌詞で特に意味のない言葉とした「OVER HEAVEN」の西尾氏に対抗してなのか、ただの偶然か……、舞城氏は1つ1つの言葉に沿ったストーリーを書き上げてみせています。こうだと思ってたら、本当はこういう意味だった……みたいな展開もあり、油断なりません。いろんな事件や思惑が交差し混迷していたけど、それでも最終的にはディオこそが黒幕という真相に落ち着いたのも、「ジョジョ」らしくて安心しました(笑)。


 C今作には、オリジナルの能力が数多く登場します。しかも、これまでのメディアミックス作品の比にならぬほど大量に!それはオリジナルの「スタンド」……という意味だけじゃありません。繰り返し与えられる恐怖や苦痛から逃れるための力「ウゥンド」。環境と理解し合い、環境そのものと一体となる力「バウンド」。そして、人を恣意的に選ぶ「神」の如き超越者「ビヨンド」。そんな「スタンド」と似て非なる能力も出て来るのです。多数の人々の不安や恐怖が凝り固まって、そのイメージの形が具現化するって現象もありました(「蛾男(モスマン)」や「ゴリラ蜘蛛」等)。……正直、「バウンド」なんかはサウンドマンくらいしか使い手がいなかったし、「スタンド」だったとしても別に影響なさげだから、思い付いたんでとりあえず書きました感が強いんだけど(笑)。
 「スタンド」はと言うと、重要な能力は原作そのまんまですが、なかなか凝ったオリジナル能力もあります。『Uボート』や『リアウィンドウ』なんかは、原作に登場してもそんなに違和感ないかも。ドッピオの「スタンド携帯電話」もメッチャ便利。スタンド名の元ネタが「洋楽」ではなく「洋画」になってる辺りも、パラレルっぽくて面白い。
 そして何より、ペネロペのスタンド「キューブハウス」。物語全体に関わる超重要で壮大な能力。その小さな立方体の建物の内部はテッセラクト構造になっており、それ自体が1つの「世界」「次元」を内包しています。そんな性質から、時空移動装置としての能力をも宿しているのです。ある意味、反則的なご都合能力ではありますが、時空を超えるストーリーは単純にワクワクしました。


 Dいじめっ子のアントニオ・トーレスはいいキャラでした。序盤も序盤で死んだものと思ってたんで、まさかこんなに重要なキャラになるとは予想外。皮だけのペラペラ屍生人(ゾンビ)と化しながら、年に1度だけ脱皮する「ウゥンド」を持ち、ねずみ算式にどんどん増殖。なんと92万体以上にまで増えてしまった破天荒ぶり!かと思えば、ペネロペの「ウゥンド」で巨大な1体にまとめられ、それゆえに時の加速からグレートブリテン島を守る結果となって……。
 物語のあちこちで働く、影の功労者とも言えるかも。ろくでもない性格だし、九十九十九やケントン達を殺したクズではあるんだけど、ユーモアと哀しみもあって憎めないんだよね。そのくせ、死ぬ描写さえないのが切ない。こいつのドえらい存在感に拍手を送ります。パチパチ。


 E個人的に一番好きなシーンは、結婚式の日、瀕死のジョージ2世が「九十九十九」の名前の意味を解くシーン。ついにジョージ2世が「ビヨンド」を信じ、その力を自分の意志で使おうというシーンです。ここはすんごい盛り上がりました。文章だけなのに、明らかに空気が変わった気がしましたね。名前が重要な「ジョジョ」で、名前の意味を解けるか否かが生死を分けるって展開にもカタルシスがあります。名前の意味そのものは強引っちゃあ強引なんですが、分からんでもないという絶妙さ。他人が作ったキャラの名前を、よくもまあ、ここまで活かせたものです。
 名探偵ジョージが推理し、「キューブハウス」の時空移動能力に気付くシーンも好きですね。ヒントはすでにいくつも提示されていて、あの時点で全てが明かされる。これもまた「おおおっ!」と驚かされました。次点は、名探偵ジョージと九十九十九がお互いの世界について語るシーン。2枚の世界地図が描かれ、そのあまりの違いっぷりにゾッとする反面、冒険心が疼きました。RPGで別の世界に来た時のような不安感と高揚感。


 Fラストは盛り上がったような……そうでもないような……、不思議な感じでした。2人のジョージがもっとドラマティックに出会うものかと期待してたんですが、あるいは、直接的には出会わないけれど相互に影響し合うような展開を期待してたんですが、実際はズッコケちゃうようなオチに使われるだけという……(笑)。ジョージ2世なんて、ラストバトルじゃ死んでてハブられてる有様です。
 つーか、ジョージ2世の蘇生には何と言って良いものやら。ディオの行動を見て、「命の形」を取り出す事を学んだっていう理屈は分かるんですけど……、リアクションに困ってしまいますね。でも、ディオが自身の「命」の半分をジョルノに分け与えたり、ジョルノの「命」がアントニオの肉体と自分(=ディアボロ)の肉体を行き来したり、吉良の皮膚に付着した微量の血液の中に殺害された女性達の「命」が宿っていたり、カーズが名探偵ジョージの「命」が消える前に爆裂した肉体を修復して助けたり、ペラッペラの皮膚だけのアントニオに「命」が宿っていたり……、作中で幾度も「命」についての描写があった事は事実。「人間は肉体は弱いが、精神力は強い」と、カーズも語っていました。
 さらに、宇宙の更新でも、「命」を保ったままでいられる究極生命体の存在。『ゴールド・E・レクイエム』によって、自身の死を「ゼロ」にし続けてきたジョルノ。そして杉本玲美さんが、ペネロペの「魂」や「意志」が「キューブハウス」内に宿って生まれた存在であるなら、ペネロペの「命」が宇宙の更新を経ても保たれ続けてきた……とも言えるはず。「命」の力の強さ。これもまた、今作のテーマの1つだったんでしょうか。


 G私が見落としてるだけなのかもしれませんけど、明かされないままのもいくつかありました。
 まず、「ビヨンド」の正体って多分、ビジュアルとかから言ってもイエス様……ですよね?2人のジョージとディオが持つ「ビヨンド」で、三位一体の存在らしいし。舞城氏自身が「ビヨンド」として出て来るんじゃないかとハラハラしてましたが、それはさすがになかったようです(笑)。
 名探偵ジョージもさりげに謎の存在でした。「聖なる遺体」と同様に、あらゆる次元において1人しかいない存在。そして、『ヘブンズ・ドアー』で読んだ時の「偽書」と「正書」。カーズも彼に対し、「お前はすでに何度か死んでいる」とも話していましたし。例えば……、本来の運命の中で死んだ何人ものジョージ2世から「ビヨンド」が創り出した存在、とか?37巡目のジョナサンの人生に関する描写に矛盾があって、恐らく単純な設定ミスなんでしょうけど、それも過去のジョージ2世の残滓による一瞬の記憶の混濁だったと無理矢理説明できなくもない?
 加えて、そもそもこの物語上では「聖なる遺体」=究極生命体ディオです。ところが、「遺体」は1つしか存在しないのに、ディオは「隣りの世界」にも存在していました。これはどういう事?……もしかすると『メイド・イン・ヘブン・アルティメット・レクイエム』は、「自分」と「世界」を切り離す能力でもあるのかもしれません。まあ、あるいは、めんどい事は全て「ビヨンド」の意志で片付けちゃってもいいのかも。
 ……いや、実は「遺体」の正体がイエス様かディオか、あの世界においても不確定・不安定な部分があって、ディオは完全に「遺体」に成り代わろうとしていたのかな?「遺体」=イエス様=「ビヨンド」であるなら、ディオの真の目的は「ビヨンド」に成り代わる事だった?そうなれば、自分の思うがままの「物語」を書き放題ですからね。「運命」を変えるとか超えるとかではなく、「運命」そのものになる。ディオらしい野望と言えるかもしれません。


 H荒木先生のイラストは、表紙に描かれたジョージ2世とリサリサのみ。作中の挿絵とかは一切なし。やっぱちょっと物足りないですね。あとは全て、作者である舞城氏自身が描いています。でも、これがけっこう上手い(笑)。表情なんかコミカルで生き生きとしてて、私は嫌いじゃないです。他人がこの物語を理解して絵にするってのもしんどそうだし、それならいっそ作者自らがビジュアルイメージとして描いた方が手っ取り早くて分かりやすいのかもしれません。
 アントニオはもっとガキ大将っぽい見た目を想像してたんですが、意外とイケメンでした。ペネロペはカワイイ。九十九十九の絵も見てみたかったけど、もともと舞城氏のキャラじゃないし、きっと絵にも出来ない程の超美形なんでしょう(笑)。
 ちなみに、「VS JOJO」の公式HP(こちら)では、全編に渡って舞城氏の描き下ろしイラストを見る事が出来ます。その数も半端なく、彼の本気が滲み出ているようです。


 Iエンディングにて、名探偵ジョージは改名する事になります。英語表記は、「JOJI」から晴れて「JORGE」に。ところが、漢字表記はまだお悩み中。「譲児」にする予定だったものの、なんかしっくり来ないらしく、トンペティ老師に意見を求めました。で、彼が示した漢字名が「城字」。……あんまり私は深く考えなかったんですが、他の方々の感想等を読んでみたところ、これは「舞城 王太郎」「城」「字」って意味っぽいですね。なるほど〜。さらに言えば、「VS JOJO」の公式HPに描かれたイラストを見れば分かるように、ディオの服には「王」という字もデザインされています。
 つまり舞城氏は、自分の名を「ジョースター」にも「ディオ」にも刻んだという事。なんとも大胆不敵な行いですが、ここまで突き抜けてくれると本当に清々しい(笑)。この小説は何て言うか……、読者に対して書かれた作品でもなければ、集英社のために作られた商品でもないのでしょう。純粋に、荒木先生に捧げたファンレターであり、「ジョジョ」という作品に対してのラブレター。その熱き想いは、冒頭の「荒木飛呂彦先生へ。」の一文に現れているし、言い訳じみたあとがきなんか一切ない潔さからも伝わります。
 こういった舞城氏の作風は、受け入れられない人には絶対受け入れられないんでしょうけど、私はけっこう気に入りました。舞城氏の作品に触れるのは今作が初めてでしたが、他の作品にも興味が湧いてきました。隙なく無難にキッチリまとめられた作品より、荒削りでハチャメチャでも、感情を大きく揺り動かされる作品の方が好みだし、私は「面白い」と思えます。




――ぶっちゃけ、なかなか感想が書きにくいストーリーではありました。でも、様々な人物や時代、世界が絡み合うごった煮感・何でもアリ感が面白かったですね。2つの小説が交互にくっ付いてるようなもんなので、読むのにえらい時間が掛かっちゃいましたけど、常に先が気になる展開が用意されていました。
「名探偵」という要素も、物語に絡み合う謎を解いていく上でも特殊な能力を持たない主人公達を活躍させる上でも便利な小説向きの設定だし、「全てを疑って」こその仕事なのに「全てを信じて」こそ物語が完結するという点も巧く出来ています。また、一度読んだだけでは内容が把握し切れず、自分で年表とか作って整理してみた結果、意外とシンプルに破綻なくまとまっている事にも気付けました。チョコラータやセッコ等、思わせぶりに出て来て、そのまま特に何もなく終わるキャラや設定もあるのが惜しいけど……、舞城氏にしか書けないであろう物語を堪能できたのが何よりです。
「VS JOJO」の企画はこれにて終了ッ!改めて振り返ってみると……、真っ向勝負の王道正統派が「恥知らずのパープルヘイズ」。イイもの持ってるんだけど、遠慮しちゃって自分を出し切れなかったのが「OVER HEAVEN」。挑戦的でハジケまくりの自由人・異端児が、今作JORGE JOESTAR。正直、こんな印象です。3作それぞれに良さや面白さがあって、充分に楽しめました。ただ、「VS JOJO」という企画のコンセプトが、荒木先生と作家さん自身の「個性」と「個性」の戦いであるとするなら、今作が最もそれを貫いていたかもしれません。何はともあれ、戦い抜いた3人の作家さん達に敬意を表したいと思います。




(2013年1月6日)
(2013年1月13日:感想Iを追記)




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