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ここに書いているのは、スタンドの個人的な解釈に過ぎません。
原作の設定・描写をベースに、
勝手に考察・妄想しただけのものです。
正確な公式データが欲しいという方には何の役にも立ちませんので悪しからず。




キラークイーン (第4部) / 本体: 吉良 吉影
< 「爆弾」を創り出す能力 >





<特徴>
@本体:吉良 吉影(きら よしかげ)が、父:吉良吉廣の持つ『矢』で射抜かれた事によって発現したスタンド。
発現時期は、エジプトで『矢』が発掘された1986年以降である。


A人型のヴィジョンを持つ、射程距離1〜2m程の近距離パワー型スタンド。
だが、吉良は無用な争いを好まず、静かに暮らしたいと常に願って生きている。そんなハングリーさに欠けた性格を反映して、この『キラークイーン』も直接的な格闘にはあまり向いていない。パワーもスピードも、空条承太郎の『スタープラチナ』や東方仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』には大きく遅れを取る。


B猫と髑髏を組み合わせたような、邪悪で禍々しいヴィジョン。筋骨隆々でありながら、しなやかで滑らかなボディーラインは、妖しい色気すら感じさせる。
独特なエンブレムが、両肩や両手両足、ベルトのバックル部分など、体のあちこちに配置されている。また、両肩の後ろには、それぞれ2本ずつ小さな角のような突起が生えている。
見た目は『キラークイーン (第8部)』と瓜二つ、名前も同じである。


C指の先端部には、その能力に使用する「起爆スイッチ」が付いている。
吉良の気分や体調によってなのか、その時々で「スイッチ」の付いている箇所が異なるようだ。左右どちらの手か、親指・人差し指どちらの指かはまちまちである。(どこに「スイッチ」が付いていようが、能力の効果に差は無い。)




<能力>
「爆弾」を創り出す能力



@「爆弾」を創り出す能力を持つ。
この能力には複数のバリエーションが存在し、それぞれ効果や使用法も異なる。



< 第1の爆弾 : 触れた物質の「爆弾」化 >

@『キラークイーン』の手で触れた物質を「爆弾」に変える能力。この「爆弾」で完全に爆破された物は、この世界から影も形も無くなって消滅する。そして、この「爆弾」で殺された生物は、魂さえも粉々に爆破される。死後の安寧を得る事すら許されず、この世からもあの世からも永遠に消え去ってしまうのだ。
本体:吉良 吉影は、女を殺さずにはいられない性(サガ)を背負った殺人鬼である。同時に、余計なストレスや敵を作る事なく、目立たず平穏に生きていきたいという、殺人衝動とは相容れぬ願望・理想を持つ男でもある。そんな相反する2つの欲望の激しい衝突ゆえ、吉良の中には「破壊」「消滅」のイメージが生まれ続けている。そして、そのイメージはスタンドパワーと結び付いて、「爆発」のエネルギーとして結実した。2つの欲望を実現・満足させるため、己の犯行のあらゆる証拠を抹消する能力が宿ったのだ。
『キラークイーン』の手・指には「爆発のエネルギー」が集中しており、触れた物質に瞬時に流し込んで閉じ込める事が出来る。こうして、「爆発のエネルギー」が内部に充満・流動する物質は「爆弾」と化すのである。


A「爆弾」化の対象は、生物・無生物を問わない(スタンドも含む)。吉良自身を「爆弾」には出来ないが、肉体の一部をピンポイントで「爆弾」にして爆破する事なら可能である。
「爆弾」化を維持できる能力射程は、恐らく数十m程と思われる。


B「爆弾」は、『キラークイーン』の「起爆スイッチ」が押された瞬間に作動し、爆発する。
この時、何かしらの生物(スタンドも含む)が「爆弾」に触れていた場合、「爆発のエネルギー」は「爆弾」からそちらに伝導・移動する。そのため、「爆弾」そのものではなく、「爆弾」に触れていた生物の方が爆破される。吉良の殺人衝動を反映して、「爆発のエネルギー」も生物を殺す事を優先する性質があるのだ。そして、爆発に巻き込まれた周囲のモノをも全て、内部から爆破してしまうようだ。「爆弾」化した物質は、無傷でそのまま残る。
一方、生物が触れていなかった場合、「爆発のエネルギー」は行き場を失い、「爆弾」そのものが爆発する。「爆弾」化した物質は、跡形もなく消滅してしまう。
(なお、多少離れた距離からでも吉良が視認できる程度の大きさの生物でなければ、「爆弾」に触れたうちに含まれない。仮にミジンコやアリなどが「爆弾」に触れていたとしても、「爆弾」そのものが爆発するだろう。)


C『キラークイーン』の「爆弾」による爆発は、スタンド使いにしか認識できない。
一般人には、爆発音も聞こえないし、爆発を見る事も出来ないようだ。恐らく、爆破されたモノが無音のまま消し飛んでいく様子だけ、辛うじて認識できるぐらいだろう。ただし、爆風で吹っ飛ばされた物質の破壊音は普通に聞こえる。
ちなみに……、『キラークイーン』の「爆弾」は物理的な爆弾ではないが、吉良の知識・常識に縛られている。そのためか、基本的に不発弾はあり得ないが、空気が無い環境下では爆発しない性質がある。


Dこの「爆弾」化の能力は、一度に1発ずつしか使用できない。一度創り出した「爆弾」を爆発させてからか、または解除してからでなくては、次の「爆弾」は創り出せないのだ。
だが、創り出した「爆弾」を切ったり砕いたり潰したりした場合は、それら全ての破片に「爆弾」の能力が宿ったままとなる。1個1個の威力は弱くなるし、異なるタイミングでの爆破も不可能ではあるが、形としては複数個の「爆弾」になり得る。


E「爆発のエネルギー」の流動の具合や、爆発の威力を調整する事が可能。意図的に相手の指だけを吹き飛ばす程度に抑える事も出来るし、蒸発するかのように「爆弾」をジワジワ消滅させる事も出来る。
しかし、吉良自身も爆発の被害を受けてしまうため、自分と近すぎる距離で大きな爆発を起こす事は極めて危険である。爆発した時の爆圧半径は、最大で約3m。「爆弾」と自分とターゲット、3者の位置関係を計算に入れて起爆する必要があるのだ。また、触れた物質に込める「爆発のエネルギー」の量を調節する事により、爆発の威力を調整できる。だが、それは「爆弾」化する時にしか行えず、それ以降、威力を変更する事は出来ない。
ただし、吉良自身が「爆弾」に直接触れている時だけは、「爆発のエネルギー」をかなり精密にコントロールできるようだ。自分に危害を及ぼす事なく、ターゲットのみを爆破するという器用な芸当も可能になる。もっとも、これは無力な一般人を殺害する時に行うのが主で、他のスタンド使いとの戦闘時にそんな無謀な事はまずしない。


F猫草のスタンド『ストレイ・キャット』が作り出す「空気弾」を「爆弾」化する、という戦法も駆使していた。
『キラークイーン』の腹部に空洞を作り、そこに猫草を収納。腹部の開閉によって、猫草が取り込む日光量を調節し、吉良の狙い通りに「空気弾」を発射させる事が出来るのだ。この「空気弾」を「爆弾」化した「空気爆弾」は、肉眼では見えにくい上、空気が通れるだけの僅かなスキマや微細な穴さえあれば、どこにでも入り込める。『キラークイーン』の能力で固定されているため、たとえ針で突き刺しても刃物で切り付けても、しぼんだり割れたりして消え去る事もない。
ただ、「空気爆弾」内を駆け巡っている「爆発のエネルギー」の流動を吉良自らが調節する事で、そのエネルギーの偏りによって「空気爆弾」に僅かな裂け目を入れる事が出来る。裂け目からは空気が漏れ出し、それを推進力として、速度調整方向転換も可能となる。(これは、コンパス程度で破れる「空気弾」だからこそ可能な技なのだろう。)


Gこの「空気爆弾」には、「接触弾」「着弾点火弾」の2種類が存在する。
「接触弾」は、他の物質と最初に接触した瞬間、自動的に爆発するタイプの「爆弾」である。接触しての爆発であるため威力は絶大だが、物質を通り抜ける事は出来ず、ガードされる事も多い。なお、本来は「空気弾」に限らず、他の物質でも「接触弾」として創り出す事自体は可能である。しかし、自分でコントロールできない不確実性ゆえ使い勝手が悪く、吉良は基本、「着弾点火弾」の方を好んで使用している。
「着弾点火弾」は、『キラークイーン』の「起爆スイッチ」を押す事で初めて作動するタイプの「爆弾」である。自由なタイミングで爆破できる反面、タイミングを逸すると、ターゲットへのダメージも浅くなってしまう。正確に距離を測って、確実なタイミングで爆破する事が求められるのだ。


H「爆弾」化した物質の表面には、猫のような形をした小型の爆破装置が埋め込まれる。ただし、これは吉良だけが見る事が可能であり、他のスタンド使いには見えないヴィジョンである。この爆破装置の有無により、吉良は物質を「爆弾」化できたかどうかを判断できる。吉良だけが知り得るこの情報は、他のスタンド使いとの駆け引きの材料としても利用できるだろう。
また、この爆破装置は時計の針のような物も内蔵されている。もしかすると、これを応用して「時限爆弾」を創る事も可能なのかもしれない。



< 第2の爆弾 : 『シアーハートアタック』 >

@『キラークイーン』の「左手」の甲から1発だけ分離・発射される、頑強堅固な小型「爆弾戦車」。それが『シアーハートアタック』である。「第1の爆弾」との併用も可能。
サーモグラフィーのような視界を持ち、「温度」を感知・追跡する自動操縦タイプのスタンド。「高熱」を優先的に追い、人間の「体温」に到達すると数瞬後に爆発を起こす。何度爆発しても、『シアーハートアタック』自体にはまったく影響は無い。


A自動操縦であるため、遠隔操作でもパワフルに行動でき、発揮できる「爆発のエネルギー」も凄まじい。自我も持ち併せているものの、知能は極めて低く、発情した野生の獣に近い。計算された行動は取れず、プログラムされたかのような単純・単調な動作を繰り返すだけである。
また、本体の意志によるコントロールから切り離されているがゆえ、『シアーハートアタック』が受けたダメージは本体にフィードバックしない。ただし、スタンド能力の効果に限っては、本体:吉良 吉影の「左手」にフィードバックする性質があるようだ。


B『キラークイーン』から発射された『シアーハートアタック』は、まず、視界内で最も「高熱」の物体に向かって飛んで行く。そして、弾丸や矢のような勢いで「熱源」を貫き、破壊する。
その後は、あらかじめ吉良が設定したターゲットを始末するまで、ひたすら周囲の「熱」を追い続ける事となる。事実上、射程距離の概念は無く、ターゲットがどこまで遠くへと逃げても、絶対に追跡は止めない。やがてターゲットを爆破し終えると、『シアーハートアタック』は本体の元へ真っ直ぐ帰って行く。
作中では、吉良が自分の「左手」を切断しても、『シアーハートアタック』の存在を維持していられた。しかし、もしターゲット(東方仗助一行)を始末し終える事が出来ていたなら、切断された「左手」に帰ったきり、もう二度と発現する事もなかったであろう。


C吉良は幼少の頃より、母親から「可愛がられ過ぎる虐待」を受けていたらしい。もしかすると、「手淫」などの性的・近親相姦的な虐待だったのかもしれない。その原体験のせいなのか、彼は女性の「手」に対し、異常な執着・愛着を抱くようになった。それはやがて、彼が持って生まれた「殺人衝動」と、密接に強固に結び付く事となる。
作中でも描かれている通り……、彼は手の美しい女性を好んで殺し、手だけを切断して、恋人のように接している。そして、手そのものを女性本人として扱い、「会話」や「デート」を楽しんでいる。つまり、手を「人間」「人格」として認識しているのだ。そんな歪んだ認識・性癖が反映され、『キラークイーン』の手も「別個のスタンド」として、単独で行動できるようになったのである。
(なお、吉良は「爪」の伸びる早さが早い程に「殺人衝動」が高まる体質を持ち、絶望した時には血が出る程に「爪」を噛むクセがある。これらも、「手」への執着と「殺人衝動」とが密接に結び付いた結果顕れた、心身の変化なのだろう。)


D吉良は常に自分の高い能力を隠し、勝ち負けになどこだわらず、目立たずに平穏に暮らす事を願っている。……しかし、その心の奥底では、「勝ちたい」「注目されたい」「自分を知ってほしい」という矛盾したプライドを秘めてもいる。それゆえ、学生の頃はいつもわざわざ3位をキープしていたし、空条承太郎達に追い詰められても杜王町から出ない事にこだわり続けた。圧倒的優位に立った相手には、不用意に自分の正体をベラベラ喋ってしまう悪癖もあった。
吉良自身さえ自覚していないであろう欲求・願望、何事にも決して揺らがない自尊心・自負心。ずっと昇華される事なく、心の奥底に押し込められていたそれらの感情は、「別個のスタンド」として発現した『シアーハートアタック』の方へと流れ込み、沈殿し凝縮された。そして、『シアーハートアタック』が持つ性格・性質にまで大きな影響を与える事となる。


E上記C及びDの結果として、『シアーハートアタック』は何者にも打ち砕けぬ硬さ・堅牢さを宿し、普段の吉良とは正反対の性格となった。
野蛮で凶暴な言動によって、延々と自分の存在をアピールし続ける。(そのためか、『シアーハートアタック』の声は一般人にも聞こえるようだ。)だが、これこそが吉良のもう1つの本性・本心とも言えるだろう。



< 第3の爆弾 : 『キラークイーン バイツァ・ダスト』 ( BITES THE DUST (負けて死ね) ) >

@1999年7月、極限の絶望に陥った本体:吉良 吉影が、『矢』に再び射抜かれた事によって発現した新しい能力。それが『キラークイーン バイツァ・ダスト』である。1人の人間が『矢』に2度も選ばれ、貫かれるという事象は、他に例が無い。(「レクイエム」は、本体でなくスタンドに『矢』を刺して発現するものなので、この例には該当しない。)
この『バイツァ・ダスト』は、吉良が陥った絶望的状況そのものを破壊するための「爆弾」である。それゆえ、「第1・第2の爆弾」とは異なり、吉良の意志で自由自在に発動する事は出来ない。あくまで、吉良が心の底から絶望した時にのみ発動できる能力なのだ。
なお、この新たな能力について、吉良は発現時に感覚で理解できたらしく、特に説明や試行錯誤の必要も無く使いこなしていた。


A「ジョジョ世界」はある超越的・絶対的な力で満たされており、ありとあらゆる存在がこの力を共通して保有している。『フー・ファイターズ』(が引用した天文物理学者フレッド・ホイル)の言葉を借りるなら、その力とは「知性」である。全ての物質や生物はこの「知性」に導かれて生まれ、物質や生物に宿る「知性」は自身の「情報」を絶えず記憶し続けているのだ。
そして、この「知性」は大なり小なり互いに反応し合い、影響し合い、「物質世界」において1つの巨大な流れを形作る。何者にも抗えぬ「因果の流れ」、なるべくしてなる「必然の連続」。人はそれを「運命」と呼び、「運命」を決定付ける「知性」そのもの(が持つ意志のようなもの)を「神」と呼ぶのである。
『矢』の原料は、数万年前に地球に飛来した隕石なのだが、その中には未知の殺人ウイルスが閉じ込められていた。このウイルスとは、他の「知性」との反応が特異に強い「知性」の塊であり、言わば「運命」の意志「神」の意志そのものが宿っている。そのため、このウイルスに感染し生き残った者は、「知性」によって定められた「この世のルール」を1つだけ破れる特別な力・資格を獲得する事が出来る。これこそがスタンド能力の発現の原理である。
即ち、スタンド使いとは「知性」「運命」に選ばれた存在であり、それゆえ、スタンド能力は多かれ少なかれ「知性」に働き掛ける力を宿しているという事になる。だからこそ、この『矢』(=「神」の意志)に2度も選ばれた吉良は「運命」を味方に付け、彼に授けられた新たな能力『バイツァ・ダスト』は「運命」に深く関わる力を持つのだ。


B「ジョジョ世界」において、宇宙は幾度となく誕生と消滅を繰り返している。ビッグバンによって「無」から宇宙は生まれ、途方もない時間を経て、やがて終焉を迎えた宇宙はビッグクランチによって再び「無」へと還っていく。この「無」とは……、すべての「終わり」であると同時に「始まり」でもある、「未来」であると共に「過去」でもある、そんな「特異点」と言えよう。「特異点」に物質は存在しないが、唯一、「知性」だけは変わらずに在り続ける。
そして、この「知性」に導かれるまま幾度も繰り返す宇宙では、その中で起こる出来事もまた繰り返される。つまり、宇宙レベルで「運命」は決定されており、何度生まれようとも宇宙はほとんど同じ時間と歴史を歩む事になるのだ。
ところが、程度の差こそあれ、その「運命」を超えて行動できる者が時に現れる。それは、宇宙の「運命」を導く「知性」を味方に付けた者である。彼らは共通して「時間」を操るスタンド能力を持っているが、「時間」と「運命」は決して切り離せぬ密接な関係があり、「時間」を操るという事は「運命」を操る事に等しい。そんなスタンド能力の中でも究極に位置するのが、「時間」を無限に加速する『メイド・イン・ヘブン』であろう。循環し続ける「時間」を無限に加速できるという事は、即ち、どの「時間」にも辿り着ける、どの「時間」にも存在し得るという事。それはもはや、「時間」の外側とも呼べる領域であり、「運命」の束縛からの解放でもある。自分の意志で「運命」を変える力、「運命」という名のストーリーを思うがままに書き換える力、それが『メイド・イン・ヘブン』の本質なのだ。
『メイド・イン・ヘブン』は2012年、DIOの意志と力を受け継いだエンリコ・プッチという男が獲得する事となる。だが、その13年も前、吉良に味方する「知性」は、彼に『メイド・イン・ヘブン』に準ずる能力を授けたのだった。その能力『バイツァ・ダスト』は、言わば擬似的・簡易版の『メイド・イン・ヘブン』なのである。


C『バイツァ・ダスト』を発動させて仕掛けるためには、まず、吉良の正体を知る「人間」を『キラークイーン』で「爆弾」に変える必要がある。対象の生死は問わず、たとえ死体であっても「爆弾」化すれば発動可能となる。ただし、『バイツァ・ダスト』のエネルギーは、他のスタンドパワーに掻き乱されやすい性質があるようだ。そのため例外として、スタンド使いや吉良自身には、この『バイツァ・ダスト』を仕掛ける事は出来ない。
そうして『キラークイーン』の「起爆スイッチ」を押した時、打つ手無しの絶望的状況下に限り、この『バイツァ・ダスト』は偶発的に発動。『バイツァ・ダスト』は、絶望により閉塞し切った「今」という状況を爆破する。それは即ち、「今」という時間を爆破する事に他ならない。「今」を失ったこの世界は「過去」へと落ちて行く。時間は、発動時の1時間前にまで戻り、爆破した「今」とは違う「今」に向かって刻み直されるのだ。もし対象が死んでいる場合は、対象が死ぬ直前の時間まで戻る事になる。
これは、「知性」が『バイツァ・ダスト』の「爆発のエネルギー」に、ビッグバンの役割と性質を付与した事を意味する。ビッグバンによって宇宙が新生するように、『バイツァ・ダスト』の爆発をキッカケとして「時間」がやり直される事になる。つまり、擬似的な宇宙一巡なのである。ただし、36名以上の罪人の魂をもって初めて至れる『メイド・イン・ヘブン』に対し、『バイツァ・ダスト』はあくまで吉良個人の魂のパワーでしかない。実際に宇宙を一巡させる事までは不可能だったため、そのパワーは「時間を爆破する爆弾」として顕現した。「時間」をひたすら前進し続けグルリと一周して「過去」に行くのではなく、『バイツァ・ダスト』は逆に、ただ「時間」を一歩下がって「過去」に行く。そうする事で、少ないパワーでも『メイド・イン・ヘブン』に近い結果が得られるのである。


D吉良にとっての恐怖・絶望とは、自分の正体がバレ、安心した生活を二度と送れなくなる事である。よって、吉良が陥った絶望的な「時間」「運命」を爆破するために存在する『バイツァ・ダスト』は、吉良の正体を守るために作動するのだ。
『バイツァ・ダスト』が発動して時間が戻った時点で、『キラークイーン』のスタンド・ヴィジョンは20〜30cm前後にまで小さくなり、「爆弾」化した対象に取り憑く。吉良本体から切り離された状態になるため、『バイツァ・ダスト』を解除しない限り、吉良自身はスタンド・ヴィジョンを意識的に使う事すら出来ない無防備状態になってしまう。そして、取り憑いた「宿主」に大怪我や命の危険が迫った際には、このスタンド・ヴィジョンが「宿主」の身を自動的に守るようになっている。「宿主」は死という逃げ道すらも塞がれるのだ。
吉良の正体を探る「追跡者」が「宿主」に接触して来た時、『バイツァ・ダスト』は作動。「追跡者」の体内へとスタンド・ヴィジョンが侵入し、何人同時であろうと、そのまま爆殺してしまうのだ。スタンド・ヴィジョンにダメージを与える方法も、爆死を回避・防御する方法も無い。
『バイツァ・ダスト』の具体的な作動条件は3つあり、いずれか1つにでも抵触してしまうと作動する。その条件とは……、「宿主」から吉良の「情報を得る」事、吉良の情報を得ようと「宿主」に「質問する」事、そして、「宿主」を危険から守るために現れたスタンド・ヴィジョンを「目撃する」事である。吉良の正体を知る「人間」が「宿主」となる理由が、そこにある。すでに「追跡者」から目を付けられている者であれば、なお良い。「宿主」自らが、「追跡者」達を誘き寄せる「エサ」になり、ついでに始末までしてくれる生きた「地雷」になってくれるからだ。
したがって、「宿主」が吉良の正体について知れば知るほど、『バイツァ・ダスト』が作動する可能性は高くなるという事にもなる。吉良が「宿主」に自分の情報を喋る事は、至極当然で自然な行動と言えよう。自分の正体を知る者をあえて生かし、その状況自体を逆に武器にしてしまう能力なのである。


E前述の通り、『バイツァ・ダスト』の爆発は「擬似ビッグバン」である。そのため、「追跡者」を爆殺すると、その時点から(最大で)さらに1時間「時」が戻る事になる。つまり、何度でも「時」を戻す事が可能だし、そうなれば「同じ時間」を複数回繰り返す事にもなるのだ。
『バイツァ・ダスト』発動前の「本来の時間」の精神・記憶は、吉良本体と「宿主」だけは保たれ、引き継がれている。よって、『バイツァ・ダスト』を発動したという記憶や能力そのものを、吉良自身が失う事はあり得ない。
そして、『バイツァ・ダスト』発動中の「繰り返される時間」の精神・記憶は、「宿主」にだけ残る。これにより、「宿主」は「以前の時間」と異なる行動を意識的に取る事が出来、より多くの「追跡者」が始末される結果も招きやすくなる。(と言うか、「宿主」の記憶が引き継がれなければ、「宿主」は永遠に同じ行動を繰り返し、無限ループに陥ってしまう。)吉良本体には、あくまで「本来の時間」と「今回の時間」の記憶しか無く、その間に繰り返された時間の記憶は消え去っている。これにより、吉良の心の平穏は、「時間」の繰り返しに乱される事なく維持される。必然的に、知らず知らずに「以前の時間」と同じような行動も取りやすくなる。吉良に出来る事は、「宿主」の言動から状況の変化を推測する事のみ。吉良は『キラークイーン』を使う事も不可能な無防備状態であるため、「宿主」からの反撃には注意する必要があるだろう。
いずれにせよ、吉良と「宿主」以外の者達には「時間」が繰り返されている記憶も自覚も一切ない。吉良か「宿主」が干渉しない限り、彼らは何度「同じ時間」をやり直そうと、まったく同じ行動を繰り返すのみである。そのため、実際のところ、世界の大部分には何の影響も変化も起こらないだろう。変わり得るのは、基本、吉良と「宿主」のごく狭い行動範囲内だけなのだ。


F『バイツァ・ダスト』発動中の時間(以下「バイツァ時間」と仮称)内では、「運命」の力と入り混じった『バイツァ・ダスト』のエネルギーが世界を包み込んでいる。『バイツァ・ダスト』自体が新たに「この世のルール」として追加されて組み込まれ、そこから生じる歪みのため、「運命」が不安定な状態になってもいる。そもそも、「時間」を遡り、吉良の「運命」を変えるための能力である以上、それも当然であろう。(吉良自身でさえ自由にコントロールできないのも、何者も抗えず、打ち砕く事が出来ないのも……、『バイツァ・ダスト』が「この世のルール」そのものだからこそなのだ。)
しかし、「宿主」があまりに容易く「運命」を変えられるようでは、逆に吉良にとって不都合な事態を招いてしまうかもしれない。それを防ぐためのルールも「バイツァ時間」には存在する。そのルールとは、一度起こった「結果」は変えられない、というものである。
ここで言う「結果」とは、物質の比較的大きな変化の事で、特に「形状」や「状態」の変化を指す。その「結果」(=変化)が起きたポイントを、『バイツァ・ダスト』のエネルギーは記憶する。「楔(くさび)」を打ち込むかの如く、その「結果」を「運命」の流れの中に固定してしまうのだ。この「運命の楔」により、「戻る以前の時間」で起きた出来事は、「戻って以降の時間」においても、必ず近いタイミングで同じような出来事として再現される事になる。「以前の時間」で壊れた物は必ず壊れ、死んだ人間は必ず死ぬ。特に、『バイツァ・ダスト』による爆発は、キッカリ同時刻に再現されるようだ。この「結果の再現」を避ける事は不可能である。
ただし、「以前の時間」で起きていなかった変化を新たに起こす事は出来る。壊れていなかった物を壊し、死ななかった人間を殺す事は可能なのだ。そして、「以降の時間」からは、それらも起こるべき「結果」として固定される。つまり、「同じ時間」を繰り返すたびに、「結果」がどんどん「運命」の中に積み重なっていくという事である。


G本来、人と人の出会いや別れもまた「運命」の一部であり、「結果」を引き起こすために必要な「過程」でもあるのだが、「バイツァ時間」において「過程」は軽視・無視される。たとえ「以前の時間」における「原因」「過程」を取り除いたとしても、それとは無関係に「結果」だけが必ず再現される事になる。つまり、「宿主」と「追跡者」とが出会ったという事実すら必要なく、「以前の時間」で爆死した者は同時刻に再び勝手に爆死するのだ。これは『メイド・イン・ヘブン』にも無い、『バイツァ・ダスト』だけが持つ特性である。
このルールにより、爆死する者は、どうして自分が死んでいくのかも分からぬまま命を絶たれてしまう。「宿主」と接触したという事実さえも消え去っている以上、吉良に繋がる痕跡や手掛かりも残しようがなくなるのだ。「追跡者」だけが排除され、第三者が吉良へと辿り着く術も無く、吉良の正体は守られる。そして、この「結果の再現」による爆発はただの爆発に過ぎず、それゆえ「時」は戻る事なく、そのまま過ぎ去っていく。
……なお、「人の言動」は、「バイツァ時間」内で固定・再現される「結果」「運命」のうちに含まれない。上記Eでも少し触れた通り、「同じ人物」である以上、「同じような状況」に直面すれば、自ずと「同じような言動」を取る可能性が高くなるというだけの事である。よって「宿主」は、「以前の時間」で寝坊した人物を早起きさせる事も出来るし、「同じような言動」を取るように誘導する事も出来る。


H『バイツァ・ダスト』は一度発動すると、吉良が死ぬか、意図的に解除しない限り、ずっと持続する。たとえ吉良が眠っていようと、気を失おうと、勝手に解除される事はない。
そして、『バイツァ・ダスト』が解除された時点で、発動中に打ち込まれていた「運命の楔」から世界は解放される。「今回の時間」の中での因果が優先的に適用され、「原因」が無ければ、「以前の時間」と同じ「結果」も起こらなくなる。「以前の時間」で『バイツァ・ダスト』によって爆殺された者は、すでに「今回の時間」で『バイツァ・ダスト』が解除されているため、死ぬ「原因」も消え去っている事になる。無論、死ぬという「結果」が訪れる事もなくなるのだ。
逆に言えば、『バイツァ・ダスト』が解除された時点までに「今回の時間」で起こった「結果」は、解除によって「戻らない過去」「決定した事実」として確定する。(すぐさま『バイツァ・ダスト』を再び発動させるような事でもない限りは。)吉良が「宿主」からの反撃を恐れ、これ以上の時間の繰り返しは危険と判断した場合には……、ある程度「結果」を確認した後で『バイツァ・ダスト』を解除し、反撃を阻止する事も出来るだろう。ただし、『バイツァ・ダスト』を再発動させるためにはまた絶望に陥る必要がある。次にいつ発動できるか、吉良自身にも分からず、解除のタイミングは非常に難しい選択となる。
なお、『バイツァ・ダスト』を解除するという事は、吉良本体の元にスタンドが戻るという事でもある。そのため、「宿主」に取り憑きながら『バイツァ・ダスト』自身が体験してきた「繰り返された時間」の記憶も、この時点でようやく吉良にも伝わる。


I上記F及びGで述べた「運命の楔」による「結果の再現」は、言ってみれば、吉良の無意識のブレーキでもある。たとえ「同じ時間」を何度繰り返そうとも、たとえ手間が掛かって回りくどくても、自分の正体を守るという安全・安心・確実さを優先したからこその現象なのだ。スタンドパワーの大半を「自分の身を守るため」に費やした結果なのだ。その意味で、先を見据えた理性的・保守的な能力と言えよう。
だが……、この無意識のブレーキがまったく効かなくなる時がある。自分の正体が大勢にバレ、完全に包囲されるという、待った無し・選択の余地無しの「詰み(チェックメイト)」。そんな存在の危機生命の危機に瀕した極限状況下で『バイツァ・ダスト』を発動させた時である。その刹那、『バイツァ・ダスト』の全スタンドパワーは、「自分を追い詰めた者を殺すため」だけに費やされる事になる。吉良が明確な「殺意」を向けた相手を、『バイツァ・ダスト』のエネルギーは記憶する。そして、「楔」を打ち込むかの如く、彼らの「速やかな死」を運命付けるのだ。「時」が1時間戻った瞬間、どこで何をしていようと、この「殺意の楔」を打ち込まれた者全員が即座に爆死するのである。仮に「今回の時間」ではまだ何も知らなかったとしても……、自分を追い詰めた者達、それを見てしまった者達が一瞬でもこの世に存在する事を、吉良も『バイツァ・ダスト』も決して許さない。もはやなりふり構わない衝動的・攻撃的な能力と言える。
この状態の『バイツァ・ダスト』は、発動時の最初の1回しか「時」を戻せない。その後、「殺意の楔」や「宿主」の言動によって爆発が起こっても、ただ相手が死ぬだけで、時間はそのまま流れていく。自分の正体や痕跡を消す事より、とにかく敵の抹殺にのみスタンドパワーを集中・特化させたため、2回目以降の爆発からは「擬似ビッグバン」としてのエネルギーも失われているのだ。(もっとも、こちらの『バイツァ・ダスト』は、発動直前に阻止されてしまったため、詳細が作中で描写される事はなかった。)


J「時」が戻るという事は……、理屈上、それを何度も何度も延々繰り返せば、何年・何十年という昔にまで戻る事が出来るという事にもなる。しかし、このスタンドは所詮、一個人が持つ能力に過ぎない。そこまで「時間」や「運命」に強く深く干渉できる力を宿しているとは考えにくい。きっとどこかに能力的限界時間的境界が存在するものと思われる。
恐らく、吉良が今回『バイツァ・ダスト』を発動させた時間の1時間前(=発動後に到着した時刻)が、その限界であり境界なのだろう。それより以前の時間にまでは、どうやっても遡る事が出来ないのだ。


K杜王町から出ない事に強くこだわる吉良の心理から考えて、『バイツァ・ダスト』の射程距離は杜王町内のみと推測される。「宿主」が杜王町から出て行くと、『バイツァ・ダスト』は「宿主」から剥がれ、能力自体も解除されてしまうのだ。
だが、もし「宿主」が杜王町の外へ出ようとすると、スタンド・ヴィジョンが半ば強引にそれを阻止するのかもしれない。


L『バイツァ・ダスト』の要点をまとめるなら……、「本来の時間」で起きた「結果」は変えられる。「バイツァ時間」で起きた「結果」は変えられない。能力を解除すれば、それ以降の「結果」は変わる場合もある。ただこれだけの事である。以上を踏まえ、作中での描写についてざっと説明しよう。
自分を脅してきた早人を、吉良は思わず殺害。絶望の中、再び『矢』に刺され、『バイツァ・ダスト』発現。……と、ここまでが作中で描かれた時間である。
――その後、吉良は早人の死体を「爆弾」化し、『バイツァ・ダスト』発動。「時」は戻る。戻った先は「早人が死ぬ前」の時刻なので、当然、生きた早人に『バイツァ・ダスト』がセットされている(取り憑いている)状態となる。そして吉良は、「本来の時間」と同じ「運命」を避けるため、早人を殺さずに放置。つまり、早人は「生き返った」のではない。「死ななかった」事になっただけなのだ。「死んだ」という事実そのものが消え去った、という事である。
翌朝、早人は岸辺露伴と出会い、『バイツァ・ダスト』を作動させてしまった。吉良を探って来た露伴を爆殺し、「時」はまた1時間戻る。ちょうどベッドから目覚める時間帯でもあった事から、早人は「以前の時間」の出来事を悪夢と思い込む。この時点ではまだ「時間の繰り返し」の認識は薄いが、しかし、確かに体験した恐怖と危機感は心と体に深く刻み込まれた。これが『ヘブンズ・ドアー』で「本」にされた時の【 警告 】となったのである。そして、早人はさらにもう1〜2回、「以前の時間」とほとんど同じ行動を繰り返してしまうのだった(何度も… 変な夢を見て…」)。「本」になった早人にすでに「岸辺ロハンも殺された。」と書かれていた以上、「以前の時間」でも『バイツァ・ダスト』で露伴が爆殺されるところを目撃していた事は明白である。……ここら辺から再び作中で描かれた時間となる。
――ようやく事態を飲み込んだ早人は、「運命」の回避を試みるも、露伴のみならず仗助達4人まで爆殺。次は覚悟を決めて、猫草を利用して吉良に反撃するが失敗。だが、仗助を吉良と出会わせる賭けに勝ち、誰も死んでいないタイミングで『バイツァ・ダスト』を解除させたのであった。




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