TOP  戻る



『キング・クリムゾン』の謎





ここではタイトル通り、謎だらけの『キング・クリムゾン』の能力について考察していきます。
『キング・C』は「時間を消し飛ばす」というイメージしづらい能力の上、作中での描写もあやふやな所があるので、何かにつけて議論が繰り広げられてきました。「これが答えだッ!」などと言い張るつもりは毛頭ありませんが、ネット上での様々な解釈等も参考にしつつ、自分なりの考えをまとめて書いてみたいと思います。



まず、『キング・C』の時飛ばし能力には「運命」の存在が先にあります。「A→B→C」と進む運命から「B」の時間を消し飛ばして、「A→C」という流れに省略する。実際は単にそれだけの能力です。人々には多少の混乱はあるかもしれませんが、「ジョジョ世界」内では運命の「意味」は変わっても、「形」を変える事は出来ないので同じ事。
ただし、本体・ディアボロが絡んでくると話は別。『エピタフ』で予知した未来の運命さえも時間ごと吹き飛ばし、都合の悪い出来事を回避する事が出来ます。時が飛ばされている間は、ディアボロが存在していないかのように運命が動くからです。即ち、ディアボロにとっての時飛ばしとは運命の改竄。しかしながら、そうやって不幸な運命を強引に変えていった反動で、彼にはより強い不運が襲い続ける事に。必然的に人の悪意や敵意を引き付けてしまいます。それを逆に利用して裏社会のトップにまで上り詰めたものの、ついには続出した裏切り者達に追い詰められ、倒されてしまいました。結局のところ、運命を変えたというより、運命を先延ばしにした分、より悲惨な結末になっただけだったのかも。
ちょっと話が逸れてしまいました……。では能力について、もっと深く突っ込んで考えてみましょう。


基本的には、『キング・C』(とディアボロ)は時飛ばし中、他者と干渉し合う事はありません。「時間」というものが消滅している世界(=「キンクリ世界」と仮称)のモノは、「時間」が刻まれている世界(=「通常世界」)のモノとは別次元の存在になっているからです。もちろんディアボロ自身は「通常世界」の存在のまま。「キンクリ世界」のモノ同士は、同次元に存在するから互いに干渉し合えます。
ただし、この異なる次元のモノが重なり合ってしまうと、2つの次元の危うい均衡が崩れ、数瞬後には強制的に時飛ばしが解除されてしまいます。世界自体が持つ自己修復力・自浄力(=世界が正常な状態に戻ろうとする力)を、『キング・C』のエネルギーで辛うじて抑え付けているに過ぎないのでしょう。だからこそ、ディアボロはいちいち攻撃を避けていたのです。リゾット戦ラストは、もともと0.5秒しか飛ばす気が無かった事もあり例外。
(余談ですが、『ザ・ハンド』で削り取って閉じて狭まった空間も、この「世界の修復力」によって、自然と元の状態に戻っていくものと思われます。そのため、『ザ・ハンド』を使う度に世界がちょっとずつ狭くなるなんて事もないのです。「時間」と「空間」。「世界」を形成する上で最も重要な要素を「消し去る」という点において、『キング・C』と『ザ・ハンド』は非常に近い能力と言えますね。)

時を消し飛ばす際、『キング・C』が触れていたモノに限り、時飛ばし中にも干渉する事が出来ます。『キング・C』のエネルギーを与えられ、「物体」としての「時間」だけは刻んだまま(「通常世界」の物質としての存在を保ったまま)でいられるからです。ちなみに、地面や空気のような、場を形成する最小限の要素はそんなに厳密に分けられてはなさそうですね。
しかし『キング・C』のエネルギーは、他者の魂に働き掛ける事までは出来ず、どのみち「精神」の「時間」は飛ばされてしまいます。つまり、ディアボロと物質的な干渉こそし合えるが、やはり殆ど惰性的な動作しか出来ないし、その間の記憶もまったく残りません。無論、「通常世界」の存在でいる以上、「キンクリ世界」のモノとは干渉できないし、もし接触したら時飛ばしも強制解除されます。
敵に接触した状態で『キング・C』を使えば、ほぼ確実に一方的に始末できるでしょう。だが、そのためには敵の眼前にまで近付かねばならないので、逆に危険も増えてしまいます。だから、正体を知られる事を最も恐れるディアボロは、滅多にそれをしないのです。


大まかに言うとこんな所ですが、さらに細かい部分まで考えてみましょう。



仮に『キング・C』が3秒の時間を消し飛ばしたとします。その間の「キンクリ世界」は、時飛ばしした直後の瞬間であり、1秒後であり、2秒後であり、3秒後でもあります。「時間」が存在しないため、そういう特殊な空間になっています。だから、その間に起こる動きの軌跡は全て残像のように見え、手に取るように予測できるのです。もっとも、「通常世界」での「今」に相当する時点にのみ「実体」があるので、それ以外の残像部分と接触しても強制解除は無し。
なお、「キンクリ世界」内における時間(のような概念)は、「通常世界」の時間よりも長い。通常時間での3秒も「キンクリ世界」では数倍の長さだったりします。3秒が数倍の時間に引き延ばされるため、全ての動きはスローモーションに見えます。そしてディアボロは、他のモノの3秒分のスローな動作に、10秒以上もの時間を掛けて悠々と対応できるのです。
ディアボロは、未来の動きが読める相手のスローな攻撃を回避するなり、都合の良いポイントへ移動するなりして、好きな時に解除するだけ。


時飛ばしの能力射程は世界中。ただし、『キング・C』に近ければ近いほど、飛ばされる時間は長くなります。
正確に言うと、仮に5秒の時間を飛ばしたとします。世界中の時間は結果的に、平等に5秒飛ばされます。しかし、『キング・C』の間近にいた者は時飛ばし中にキッチリ5秒分の動作が出来ますが、やや離れた場所にいた者は3秒分程度の動作、もっと離れた者は1秒分、世界の殆どはほんの一瞬にも満たない分だけの動作しか出来ません。そのため、たとえ5秒飛ばされても、世界の多くは実質、一瞬しか飛ばされていないようなもの。時計の針さえも一瞬分しか動いていないので、まず誰も気付きません。世界全体には混乱や影響を与えずに済むのです。
これは「キンクリ世界」内で動く事が許される時間が、『キング・C』から離れるほど短くなっていくからです。『バステト女神』の磁力や『ACT3』の「3 FREEZE」みたいなルールですね。


サン・ジョルジョ・マジョーレ教会で、過去のブチャラティが未来の自分自身を見た事については、以下の通り。
あれは「2つの時が重なっている状態」です。本来ならピッタリと隣り合わせにくっ付くはずの、時飛ばし直前と時飛ばし解除直後の時間が数秒間、互いに重なり合っているのです。時飛ばしが解除される瞬間、『キング・C』の強大なエネルギーで「世界の修復力」に少しだけ抵抗。そうする事で、時間に僅かなズレが生まれ、あのような奇妙な現象が起こるのです。ある種のタイム・パラドックスですが、これも「世界の修復力」ですぐに収まります。
ブチャラティ戦では、彼に自分の恐ろしさと無敵の能力を思い知らせてやるべく、納骨堂のブチャラティ周辺だけ、時間をほんのちょっぴり重ねてみせたのでしょう。ただ、大したメリットも無いので、これも滅多にやらないと思われます。エネルギー消耗が大きいためとかで、次の時間を飛ばせるまでの間が、通常より長くなったりする可能性もありそうだし。



……と、まあ、なるべく矛盾のないように考えてみたら、こんな解釈になりました。『キング・C』とは「時間を狂わせる能力」と言い換える事も出来るかもしれませんね。




(2006年1月14日)




TOP  戻る

inserted by FC2 system