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管理人!ルッカへ行く 2
~ マエストロは賑やかに迎えられる ~





その①


すべての始まりは、2019年7月初旬……。Web上にて、とんでもない情報が突如公開されました。それは……、イタリアのルッカで開催されるオタク達の祭典「Lucca Comics and Games (ルッカ・コミックス・アンド・ゲームズ) 2019」(以下「LCG」)に荒木先生がゲスト出演する、という驚くべきものッ!しかも、10/30(水)・31(木)の2日間にも渡って!
先生が海外のイベントに参加されるのは初めてですし、ルッカなら5年前に一度行ってる(詳細はこちら)ので、こりゃ是非とも参戦したいところ。とは言え、相手は言葉も勝手も分からぬ異国の一大イベント。フラッと行って見られるような単純なもんでもないでしょう。申し込みやらチケットやら、何やかんや細かいルールがあるはず。ただ行くだけでも一苦労だっつーのに、これはハードルが高すぎるぞ。正直、「さすがに見送りかな~」とも思ってました。


事態が動き出したのは、8月中旬。「ジョジョ」5部のアニメイベント開催に連動して、「黄金のイタリアツアー」なる公式企画が発表されました。「ネアポリス」ことナポリや、ポンペイ、ローマ、ヴェネツィアを巡る、5部ファン垂涎の聖地巡礼ツアー!「ナポリは治安が悪い」って話はよく聞きますんで、こういうツアーの中で行けるのはありがたいよなぁ。行ってみたいなぁ。
しかし……ッ!せっかくナポリまで行くのに、カプリ島には行かないスケジュールになってるのがもったいない。何より、参加者はほとんどが若い女性と推測されます。こんなおっさんがぼっち参戦したところで、気を遣いまくって、お互いの空気が悪くなってしまいかねん。止む無く、応募を断念する事に。

ただ、この企画のおかげで、旅へのモチベーションも俄然高まってきました。だったらもう、1人でルッカに行ったるか!そんな勢いになっちゃったワケです。9月になり、旅行会社との相談を重ね、ついにガチで行く事に決定ッ!どうせならと、ナポリにポンペイ、カプリ島にも突撃する事にしました。
荒木先生を生で拝見するついでに、聖地巡礼もやっちゃうぜ。心配事は尽きないけど、こいつはカネと命を懸けるに値するってもんよ。人間、いつまで生きていられるか、いつまで健康体でいられるか、分かったもんじゃない。動けるうちに動く!
―― かくして、実に5年ぶりとなるイタリア個人旅行が幕を開けたのであります。




その②


<2019年 10月25日(金)>
今回の旅は苦労の連続だったんですが、それはのっけからでした。そもそもイタリアに行けるのか?それ以前に、成田空港まで辿り着けるのか?……っていう問題からクリアしていかなければならなかったからです。この日、台風21号接近の影響による豪雨で、千葉県が大変な被害を受けてしまいました。一部の線路も水没し、成田空港に向かうための成田エクスプレスも終日運休。成田空港も陸の孤島と化した模様。直撃こそ免れたものの、いきなり先が読めない状態に……。
とりあえず仕事が終わってから、不安いっぱいで東京へと向かいます。ネットで情報を仕入れていると、京成スカイライナーは動いているとの事。東京に到着し、チケットを購入すべく京成上野駅まで行ってみました。すると、けっこうな行列が出来ている。私もしばらく並んで待ってたんですが、明日のチケットは明日じゃないと買えない事が判明。結局、そのまますごすごとホテルに向かったのでした。
ああ~、いきなりハラハラな展開だよ。どうなってもいいから、せめてイタリアには辿り着かせてくれー!前途は多難です。



京成上野駅の行列



<10月26日(土)>

早朝4時半に起き、京成上野駅へ。スカイライナーのチケット、あっさりゲット!しかも、これまた拍子抜けするほどあっさりと成田空港に到着!空港内ではまだ寝泊まりしている人達の姿がありますが、昨日の混乱が嘘のような落ち着きっぷりでした。逆に気合い入りすぎて早く着きすぎちゃったけど……、まぁ、何はともあれ、無事に着けて良かった。



早朝の京成上野駅


成田空港到着


穏やかな空港



時間に余裕が出来たので、お金を両替したり、軽くごはんを食べたり、空港内のお店を見て回ったり。あと、私の話を聞いて面白がった友人が、わざわざ空港まで見送りに来てくれました。見送られて旅立つなんて、さりげに初めてだな~。そして、荷物検査、顔照合、出国審査を済ませて、飛行機の搭乗ゲートへ。この5年の間に、パスポートの顔写真と実物の顔を照合するマシーンが導入されていた事に驚き。
搭乗時刻を待っていると、そこになんとディレイのお知らせが!出発が2時間遅れるらしい。でも、その程度で今更うろたえはしません。もはや、無事にイタリアに着いてくれるんなら何でもいいよって気持ちなのです(笑)。ディレイのお詫びとしてお食事券が配られたので、軽食屋でラーメンを食べました。近くの席でイタリア人らしき少年達が、パスタのようにフォークで巻きながらラーメンを食べてて、ちょっとほっこり。

2時間後、飛行機はイタリアに向けてテイク・オフ!ここから12時間ものフライトとなります。例によって通路側の席を押さえておいたので、肉体的にも心理的にも楽。寝たり、座席備え付けの娯楽設備で「テトリス」に興じたりしてました。
困ったのは、普通に機内食が出された事。だったら、さっきのお食事券もいらなかったよ。ガッツリ食っちゃったよ。12時間で都合3回の食事が出され、後半は満腹でキツかったです(笑)。



2時間待ち


ラーメン食う


いざイタリアへ!



イタリア時間で26日の夜8時頃、ローマのフィウミチーノ空港に到着。サマータイム期間のため、日本との時差は7時間です。はるばる来たぜ、10,000kmの彼方へ。ここでも顔照合をやって、相変わらずの雑な入国審査も済ませ、めでたく入国!これで3回目のイタリアか!
ローマ市街へは、レオナルド・エクスプレスという直通列車に乗りました。チケットに刻印も忘れずに。30分程でローマのテルミニ駅へ。今夜は、テルミニ駅からすぐ近くのホテル「Windrose(ウインドローゼ)」で1泊。「黄金の風」を追い掛ける旅の始まりとしてはお誂え向き、と言えますね。こうしてイタリア最初の夜を迎えたのでした。



レオナルド・エクスプレス




夜のテルミニ駅




ホテル「Windrose」




その③


<10月27日(日)>
ちょうどこの日の午前3時をもって、サマータイム期間は終了。日本との時差が7時間から8時間になりました。その影響か何かで目覚ましの時間がズレて寝坊したらヤベーなぁと心配し、自然と早起きになっちゃいました。
さて、今日はナポリへと向かいます。今回の旅では「ユーレイル・パス」という、電車乗り放題的なパスを事前に購入。とは言え、無条件ってワケではなく……、少なくともイタリアでは、国鉄(厳密には、国鉄の事業を引き継いだ会社)の「トレニタリア」の列車に限られます。私鉄の「イタロ」では使用できません。そして、使用前には「バリデーション」という、要するにパスを有効化する手続きを行う必要があります。テルミニ駅の「トレニタリア」の窓口に行き、このパスとパスポートを提示。すると、窓口の人が必要事項を記入し、スタンプを押してくれました。これでOK!あとは、自分がこのパスで乗りたい列車の日付や時刻、乗る駅と降りる駅を記入して、その都度使う……といった感じです。

さっそくパスを使って、ナポリ行きの列車に乗りました。この列車は「フレッチャロッサ」という高速列車。ちなみに「ユーレイル・パス」は便利ですが、こういう高速列車なんかは特急料金っつーか、別料金が若干プラスされます。ちょっと面倒なので、私の場合、事前にその辺の料金も支払い済み。何かあっても振り替えや払い戻しは出来なくなるけど、現地でやる事はなるべく減らしたかったんで。
……で、今回初めてビジネスクラスの席にしてみたんですが、席はガラガラで静かだし、お菓子やジュースなどのサービスもあるしで、実に居心地が良い。列車自体の走行もめっちゃスムーズで、振動や音もほとんど感じず、いつまででも乗れちゃいそうです。



ユーレイル・パス


フレッチャロッサ




静かな車内


色々くれる





旅情をそそる広大で牧歌的な風景を楽しみ、1時間程で列車はナポリに到着。ナポリ中央駅です。作中における「ネアポリス駅」に当たる場所。
となれば、まず最初に向かうべきは6番ホーム!ここでブチャラティ達は亀を手に入れ、フィレンツェ行き超特急に乗ったのです。……ところが、何やら大規模な工事中のようで、5番と6番のホームは閉鎖中でした。なんてこった!仕方ないので、近くまで行って雰囲気だけ感じときました。

「ナポリ中央駅周辺は治安が特に悪い」と、ネットやガイドブックには書かれているんですが……、警察やガードマンらしき人達が睨みを効かせているようで、パッと見た限りそこまでヤバい空気は感じ取れません。油断禁物だけど、少し安心しました。というワケで、タクシーでホテルに向かいます。駅前のタクシーに声を掛け、ホテルのあるサンタ・ルチアまで行ってほしい旨を話します。その際、「『タリッファ・プレデテルミナータ』 ペルファボーレ」とも伝えました。『タリッファ・プレデテルミナータ』とは、ナポリのタクシーの定額表みたいなもので、ボッタクリ料金を予防する事が出来ます。「ペルファボーレ」は、イタリア語で「お願いします」の意味です。
タクシーの運ちゃんは「ああ、もちろんさ!」ってなノリ。タクシーに乗ると、陽気に話し掛けてきます。その途中、アニメ第5話冒頭で、ブチャラティがジョルノに組織の説明をした場所「ジョヴァンニ・ボヴィオ広場」を通ったので、すかさず写真に収めときました(笑)。私の目的はあくまで「原作の聖地巡礼」ですが、ついでで回れる所なら見ておきたい。



6番ホーム


ナポリ中央駅


タクシー乗り場


ボヴィオ広場



タクシーはサンタ・ルチアのホテル「REX (レックス)」に到着。ところが、請求された料金は、私があらかじめ調べていた金額よりも少々高い。……ん?おやっ?しかし、運ちゃんも譲らず、結局支払う事に。口頭だけだと分からなくなるから、今後は紙に金額を書いて交渉しよう。さっそくの洗礼に反省しきり。
ホテル「REX」では、今夜から2泊する予定の者だと伝え、あらかじめ書いておいた「Si prega di lasciare bagagli (荷物を預かってください)」の文面を見せました。この時点でまだ朝の9時ちょい過ぎ。チェックインにはまだまだ早いのですが、とにかく身軽になりたい。翻訳アプリで調べた文章はバッチリ通じたようで、フロントで荷物を預かってもらえました。やったぜ!



タクシーを降りる


ホテル「REX」







重い荷物から解放され、ナポリの街を軽やかに散策します。天気も良くって気持ちイイ。ホテルを出れば、もう海は目の前。海沿いを歩いて行くと、いきなり美しい光景が広がります。おおお~!これはスゲー!遠くにはヴェスビオ火山も見える。海もキレイだけど、建物もまた美しく、坂の多い街ゆえに縦に連なる建物の山も見応えがある。これは直に見てこその感動ッ!思わずナポリ民謡「サンタ・ルチア」を口ずさみたくなりますね。
ナポリは予想以上に暑く、念のために着てきたコートなんぞまったくの不要でした。普通に夏じゃねーか。こりゃあ、むしろ半袖短パンでちょうどいいレベル。海沿いではランニングに励む人も多く、「ナポリの人達は健康に気を遣ってるのかなぁ?」と思いました。まぁ、こんなキレイな景色の道だから、単純に走りたくなるのかも?



ホテルを出れば海


ヴェスビオ火山


海沿いの道



さてさて、私がこの日、ナポリで巡礼してきた聖地をご紹介いたしましょう。
まずは、「卵城」ことカステル・デローヴォ。5部の序盤も序盤、荷物を盗まれた康一くんがジョルノの住所の近くにまでやって来た際、この古城が描かれていました。また、アニメ版だと、このお城に繋がる橋の上で、ジョルノの母親がイタリア人男性と結婚の記念写真を撮っていました。「卵城」という奇妙なネーミングは、このお城の建築時に魔法使いが卵を基礎に埋め込み、「この卵が割れる時はこの城とナポリも滅びる」と呪文を掛けた事に由来するそう。海に突き出た城は、ビジュアル的にも非常に映えますね~。サンタ・ルチアにあるんで、ちょっと歩くだけですぐ着きました。
続いて、ヴィットーリア広場。この広場で、ジョルノはブチャラティに自らの「夢」を語り、組織への入団を宣言しました。ブチャラティがサッカーボールをぶつけられたけど、気さくに少年達に蹴り返してあげた場所でもあります。実際に来ると、「すぐ近くにデッカい公園もあるんだから、わざわざこんな所でサッカーすんなよ」と思いますね(笑)。
お次は、ポジリポの丘。ここはアニメ版における、先程のヴィットーリア広場に当たる場所。入団の宣言も、サッカー少年達も、アニメ版だとこの場所に変更になってます。なので、本来は行く必要もあんま無いんですが……、やっぱロケーションが良すぎなので、ね。ヴィットーリア広場から長~い公園を突っ切り、「シレナの噴水」を横切り、その先にある細くてグネグネした坂道を延々登って行くと……、ナポリの街を一望できる展望台に到着。スゲー疲れたけど、これは一見の価値あり!まさしく絶景でした。夜景もいつか見てみたいッ!
最後は、フニコラーレ。場所って言うか、ケーブルカーの事です。ジョルノがブチャラティに襲撃されたのが、このフニコラーレの中でしたね。ポジリポの丘の近くにもフニコラーレの駅があり、私もそこから乗車。丘を下りました。坂の多い街だけに重宝されている様子。実際、大変だった徒歩での行きと比べて、帰りは圧倒的に楽々でした。



カステル・デローヴォ




海に突き出た卵城




ヴィットーリア広場




公園を抜け……




坂道に入り……


グネグネ登ると……


この絶景!


ナポリを見て死ね


フニコラーレ


車内の様子



こうして美しきポジリポの丘を下りた後は、メルジェリーナ駅まで歩き、そこから地下鉄に乗ってナポリ中央駅まで向かいました。地下鉄なのに駅は地上にあるので、ちょっと困惑(笑)。
なお、ナポリ・ピアッツァ・ガリバルディ駅で地下鉄を降りますが、この駅がナポリ中央駅の地下にあるのです。う~む、ややこしい。



さらば、ポジリポの丘


メルジェリーナ駅


地上のプラットホーム


ガリバルディ駅


ナポリ中央駅に帰還





ナポリをグルッと周って、一旦ふりだしに戻ったところで……、次に目指すはポンペイ!ナポリ中央駅の地下には、「ヴェスビオ周遊鉄道」の乗り場があるのです。ソレント行きの列車に40分程乗って、ポンペイ・スカーヴィ・ヴィラ・ディ・ミステリ駅で下車。そうすりゃ、すぐそこにポンペイ遺跡への入り口があるって寸法です。他にも行き方はあるようですが、「ジョジョ」の聖地巡礼が目的なら、この行き方が最も効率が良いですよ。
ただ、さすがにポンペイ観光は人気が高く、列車では40分立ちっぱなしでした。どうしても座りたければ、ナポリ・ピアッツァ・ガリバルディ駅(=ナポリ中央駅)からではなく、ちょい離れたナポリ・ポルタ・ノラーナ駅から乗車するべき。私はそこまで無事に辿り着ける自信も無かったので、立ちっぱなしを受け入れた次第です。
ポンペイ・スカーヴィで下車したら、マリーナ門から遺跡に入るのが普通。そこのエントランスでチケットを購入します。これは大して並ばずに済みました。



ここで周遊鉄道の
チケットを購入



ソレント行きに乗る



ポンペイ・スカーヴィ
に到着



エントランス



遺跡のチケット売り場




さあ、ついに遺跡へと突入です!ここでも、私が巡礼してきた聖地をご紹介していきましょう。
まずは、遺跡に入るためのマリーナ門。ここがもう聖地です。ジョルノ達が車を降りるシーンで描かれている、印象的な2つの門ですね。なんでも、かつては歩行者用と馬車用とで門が分けられていたみたいですよ。ここから遺跡までの道のりがまた大変。けっこう急な上り坂になってる上に、ボッコボコの石畳でとにかく歩きにくい。昔の人達は健脚だったんだな~。
続いて、アポロ神殿。マリーナ門からの坂道を上り切ったかどうかっつーぐらいの場所に入り口があります。この神殿にあるのが、1本の白い柱。そう、イルーゾォが身を隠していた柱とまったく同じデザインの柱なのです!柱の位置や遺跡の構造など、作中での描写は、実物と完全に一致するものではありません。でも、良いのです。「リアル描く」事と「リアル描く」事は違うんですから。それっぽく、リアルに描かれてさえいれば、「マンガ」として正しいんです。
お次は、フォルム(広場)からの光景。原作では、ヴェスビオ火山を遠くに望む遺跡の光景が、ポンペイの歴史を語るコマの中で描かれていました。アニメ版でのみ描かれた「ケンタウロス像」もここにあります。この場所で遺跡を見渡してると、「2000年前はここでどんな暮らしが営まれてたんだろ?」って、遥かな時に想いを馳せずにはいられません。
そして、悲劇詩人の家。この家の玄関にモザイク画で描かれた「犬のゆか絵」。作中では、ここに「鍵(キー)」が置かれていました。これにはやっぱり感動もひとしお。でも、ガラス窓みたいなヤツでガッチリ保護されちゃってて、反射のせいで写真が撮りにくいのは難点です。



マリーナ門





キツい坂道



アポロ神殿





イルーゾォは
いないぞぉ



ケンタウロス像





フォルムにて




見覚えあるでしょ?




悲劇詩人の家




犬のゆか絵


奥も見えた



オマケでゴミ箱も探索。ただ、作中で描かれていたような形状の物は発見できず。実はどっかにあるのか、それとも創作なのか。……あ、でも犬とネコはいました。
遺跡を出るとお店があったので、そこでピッツァ・マルガリータを食べました。うまい。



リストランテもある


ゴミ箱


犬 in ポンペイ


ネコ in ポンペイ


お店発見


マルガリータ





無事にポンペイ巡礼を終え、ナポリに戻るべくポンペイ・スカーヴィ駅へ。タバッキ(イタリアのコンビニ・キオスク的な店)でナポリ行きのキップを購入すると、そこの親父が「急げ!急げ!」と列車を指差して急かしてきました。え、何!?これに乗り遅れるとマズイの!?よく分からないけど、とりあえず忠告通り急いで列車に乗りました。…………これがマズかった。
なんと、列車はナポリとは逆方向に進行!ゲッ、マジか!でも、次の駅で降りて、ナポリ行きに乗り換えれば大丈夫だろ。そう考え、程なくして停車したMoregine(モレジーネ?)という駅で下車。ところが、この駅は完全に無人の寂れた駅だったのです。駅の周囲にも何も無い。駅員に聞くとか助けてもらうとかいった手は、これで消えました。仮にここでこのまま待ってたとしても、いつどこに向かう電車が来るのかすら分からないし。正直、この時点で「ヤベ……、これ詰んだか?」という悪~い予感が。



Moregine駅



一緒にこの駅で降りた親子連れの後を追い掛けると、一応、この辺のメイン・ストリートっぽい道路に出ました。さて、どうしよう?内心ヒヤヒヤです。
幸い、ポンペイ・スカーヴィからそんなには離れていないので、そこまで歩いて戻る事を最初に考えました。しかし、戻りたい方向には高速道路が走っており、歩いて戻る道となると相当苦労しそう。増して、ここはまったく見知らぬ異国の地。陽もじきに暮れてきます。めっちゃ危険な通りに、気付かず踏み入ってしまう可能性だってあるでしょう。
ならば、どっかでタクシーを拾いたい。Googleマップを見ると、近くにスーパーマーケットがありました。ここまで行ければ、タクシーもつかまるかもしれない。……ところが、自動車専用っぽい道路やフェンスに阻まれ、スーパーまでは行けなさそうな雰囲気。その上、凶悪な唸り声をあげる野良犬が数匹ウロついており、怖すぎて他の道も探せません。仕方なく、通り沿いの店に入って、スマホの翻訳アプリで「タクシーを呼んでください」と助けを求める事に。しかし、どういうワケか、この辺は中国人や韓国人が多く住んでいるエリアらしく、イタリア語はまるで通じず。翻訳アプリで会話を試みても、何故かこれもロクに通じず。どんどん窮地に追い込まれていきます。チクショ~、タバッキのクソ親父め……ッ!!ドえれートラップ仕掛けてくれたな!


数件のお店にアタックしましたが、どこも撃沈。諦めムードで次の店に入り、また助けを求めます。やっぱりここも中国人ばかり。お客のイタリア人らしき人に話しても、何故かタクシーを呼んではくれず。何なの!?この国って、タクシー呼ぶ程度の事がそんなに無理難題なわけ!?つーか、中国人だとしたって、イタリアに住んでてイタリア語分からないって事あんの!?もはや怒りすら湧いてきます。
店を出て呆然としていると、このお店の店員らしき中国人の兄ちゃんがやって来て、これまたスマホの翻訳アプリで話し掛けてきました。どうやら、知り合いのイタリア人に掛け合ってくれるそう。マジっスか!兄ちゃんの帰りをじっと待っていると、中国人の女の子の店員さんも心配して話し掛けてくれました。うん、さっぱり言葉が分からん。「ソーリー、謝々」とお礼だけ伝えました。この「謝々」って言葉も、果たしてちゃんと伝わってんのかな?そう思ってたら、彼女は「謝々は日本語でなんて言うの?」的な事を聞いてきました。「アリガトウ」と教えて、改めてお礼。この状況だと、気に掛けてくれるだけで有り難いし、ちょっとホッとしますよ……。
すると、兄ちゃんがイタリア人のおばちゃんと老夫婦を連れて登場。そこからまた紆余曲折を経て、老夫婦に車でナポリ中央駅まで送ってもらえる事に決定しました。高速料金とかは、もちろん私が負担します。話によると、Moregine駅から列車に乗って帰る事も出来るらしいんだけど、ハッキリ言って自信がありません。ここは安全策で。別れ際、兄ちゃんが見せてきた「私は中国人です。日本の友人を助けたいです。」という翻訳文を目にし、普段はガッチガチな涙腺も緩みかけました。思わず兄ちゃんに抱きついてお礼を述べました。ありがとう、イタリアに住む中国の友人達。俺も、困ってる人がいたらきっと助けるよ!


こうして、イタリア人のじいちゃんの荒っぽい運転でナポリ中央駅まで一気に帰還!ご夫妻にも心からお礼を伝え、別れました。
駅からタクシーでサンタ・ルチアに帰ると、何故か大賑わい。夏祭りかってぐらい。日曜日限定イベントなのか、毎日こうなのかは不明ですが、すんごい安心するわ~。さすがにクッタクタになっちゃったので、さっさとホテルにチェックインして休む事に。
このMoregine迷子事件……、一時はどうなる事かと思いましたが、本当に強烈な良き体験となりました。人の優しさが目にしみたよ。もっと他に解決法があったのかもしれないけど、あの時の俺にはこれが精一杯だったよ。あと、翻訳アプリの曖昧さも実感したよ。大雑把なニュアンス程度しか伝わらんのね。



ナポリに帰還……!!


懐かしのサンタ・ルチア


お祭り?


ロマンティックな卵城



―― と、こんな感じで波乱の前編はおしまい。続く中編では、いよいよマエストロ・アラキがルッカの街に降臨し、我々ファンは熱狂の渦へとその身を投じていく事と相なります。




(2019年11月11日)




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