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国立新美術館へ遊びに行こう
〜 マサリオン
マサ@管理人の奇妙なレポート Part10





その@


これは「呪い」を解く物語――
その始まり――



いきなり私事ですが……、2014年1月下旬から2週間ほど、どうにも良くない事ばかりが続いていました。インフルエンザには罹るわ、唇にヘルペスは出来るわ、治ったと思ったら胃腸炎で寝込むわ、親父が死にかけて入院するわ(今は落ち着いてますが)……。まったく、ろくでもねー。
しかし、私には希望がありました。それこそが、第17回 文化庁メディア芸術祭。公式サイトの文章をお借りすると、【アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバル】です。今回、このマンガ部門の大賞に、我らが荒木飛呂彦先生の作品「ジョジョリオン」が選ばれたのですッ!そして、2014年2月5日(水)〜2月16日(日)の12日間、東京・六本木の国立新美術館を中心に受賞作品展が開催される運びとなったのでした。(詳細については、例によって@JOJOさんをご覧になってください。)
「ジョジョリオン」は、第1話の生原稿などが展示されるとの事。これはもう、考えるまでも無し。槍が降ろうがヤドクカエルが降ろうが、ただ「行く」のみです。……ああ、言わずもがな、今回も1人ですよ。




そのA


<2014年 2月8日(土)>
さあ、行くぜッ!と思いきや……、槍やヤドクカエルは降らなかったけど、なんと東京では20年に一度の大雪が降るらしい。タイミング最悪!東京に着いてさえしまえば、帰りがどうなっても構いませんが、行く事すら出来ませんでしたってのが一番怖い。早くも暗雲立ち込めてきたな……。
しかし、幸いにも何事もなく、電車は予定通りに東京に到着ッ!良かった〜。ここまで来ればこっちのもんです。雪も確かに吹雪いて積もってはいるものの、雪国在住の自分にとっては日常の風景。私個人にとっては障害ではありません。そもそも、今回は地下鉄がメインの移動手段。雪の影響は最小限に食い止められるはず。

東京駅から地下鉄を乗り継ぎ、乃木坂駅へ。そこから国立新美術館は直で繋がっており、あっさり楽勝で辿り着けました。



国立新美術館

突入ッ!




そのB


「ジョジョリオン」の展示は、1Fの企画展示室1Eにて。まずは、この作品展のタイトル&シンボルマークがお出迎え。その横には、各部門の大賞受賞作品のパネルが飾られています。もちろん、そこには「ジョジョリオン」のパネルも。しかも、荒木先生の直筆サイン入りです!ワクワクが大いに高まってきました。
ちなみに、会場内はフラッシュ禁止・動画撮影禁止ですが、基本的に写真撮影はOK!さすがに生原稿など、撮影禁止のポイントもありますけどね。



タイトル&
シンボルマーク



大賞受賞作品
のパネル



「ジョジョリオン」

荒木先生のサイン!




広い会場内には、多くの受賞作品が所狭しと展示されていました。でも、まずは何を置いても「ジョジョリオン」です。今日は大雪のせいで、想像してたよりは空いている印象。まあ、おかげでゆっくり楽しめそう。
「ジョジョリオン」の展示内容は、第1話の生原稿(ただし、カラーは無し)が最大の目玉です。他には、様々なパネルも飾られています。作品紹介に、荒木先生のデスクの写真、カラーページや白黒原稿のコピー、荒木先生のインタビューなど……のパネルです。さらに、荒木先生が執筆中にBGMにしているらしいCDも展示されていました。見所は満載ッ!



これが会場だッ!



「ジョジョリオン」の
展示スペース

生原稿は
ショーケース内に

荒木先生のデスク



作品紹介



カラー原画も
観たかった

生原稿のコピー



荒木先生の
インタビューも読める



執筆中のBGM




今までカラー原画を鑑賞する機会は何度もありましたが、生原稿となると珍しい。「ジョジョ展」ではほんの数ページだけ第1部の生原稿が展示されていたものの、丸々1話分ものボリュームは初めてです。こんな貴重なチャンスに巡り逢えるとは、感謝感激大感動であります。





結局、4〜5回は繰り返し鑑賞させていただきました。荒木先生の魂と熱が直接込められた生原稿のリアルなド迫力繊細な美しさ、格別です。青鉛筆の下描き、ペンの流れ、ベタ塗り、ホワイト修正、トーン処理などなど、カラー原画とはまた違った魅力があります。やっぱ生は立体的で、観てて楽しいなあ。しかも、生原稿はどんな感じなのか観察するつもりが、ついつい普通に作品そのものを読みふけってしまったり(笑)。いやあ〜、最高でした。
……で、以下、箇条書きで感じた事・思った事・発見した事を書いていきましょう。


@出版された際には印刷されない端っこの部分の書き込みが、非常に興味深いです。印刷されないのがスゴいもったいなく感じちゃいます。
例えば、康穂が消防署に電話したページの次のページ。定助の「星のアザ」がドアップで描かれ、次のコマでは無言の定助が描かれていますよね。実はこのコマの定助、生原稿だと首筋から血が滴っていたのです。この僅かな血の有無でも、印象は微妙に違うものです。
生原稿の全体を印刷したバージョンなんて発売したら、マジで欲しいなあ。万一、発売する事があったら、その時は小口染めはしない方向で。

A原稿用紙は市販のマンガ用原稿用紙ではなく、(以前、インタビューでも話していた通り)荒木先生自作のオリジナル用紙です。そのため、目盛りなども一切ありません。
どこからどこまで印刷されるのかは、荒木先生自身の経験と感覚で分かるのでしょうね。

Bフキダシ内には、鉛筆でセリフが書かれています。でも、私が見た感じ、荒木先生と複数人のアシスタントさんが交代で書き込んでいるっぽい。フキダシによって、筆跡が全然違うんで。つーか、荒木先生らしき字はほんのちょっとしかありませんでした。荒木先生の字は独特だから、アシスタントさんが読みやすく清書してるんじゃないかと想像。
康穂や常秀の名前には、ルビがふられていました。カギカッコ傍点も、鉛筆書きの時点で存在しています。ただし、文字の大きさやフォントの指示は一切なし。また、(当たり前でしょうけど)段落の分け方は、鉛筆書きと印刷時とでは異なります。細かい部分は印刷業者さんにお任せしてるんでしょうね。

C同じく手書きのセリフ部分について。
出版された際には「国土地理院地図」となっている部分が、鉛筆書きの時点では「国土○○○地図」と書かれていました。後で調べようと思って、この時点ではテキトーに書いてたのかな?あと、「感染る」という文字が「染る」(しかも誤字)になってました。
印刷業者さんは誤字脱字とかも修正してくれるものなのかなあ、と思ったりしました。その分、たまに誤植もあるから、おあいこって事?(笑)

Dこれも当然の話ですが、各ページにページ数がしっかり書かれています。上端には鉛筆で白黒原稿としてのページ数が、下端には青鉛筆でカラーページも含めたトータルのページ数が、それぞれ書かれているようです。

E常秀に「しゃぼん玉」が当たって割れるシーンでは、ページ下に「しゃぼん玉には白線トーンを貼らないで」的な指示らしき文字も見えました。

F荒木先生のデスクの写真パネルを見ると、どうやら「SBR」執筆時のもののようです。ジャイロやジョニィ、ウェカピポ、マジェント、ホット・パンツといった主要キャラの絵が掛けられているし、机の上のネームはフィラデルフィアでの大統領によるジョニィ銃撃事件のものっぽい気がする。
……でも、ルーヴル美術館の写真集も置いてるから、「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」のネームなのかも。

G荒木先生が執筆中にBGMにしているというCD。5枚のCDが展示されていましたが、その内容はこんな感じです。
   1. チャーリー・ヘイデン&パット・メセニー 『beyond the Missouri Sky』
   2. ヴァン・モリソン 『Tupelo Honey』
   3. レッド・ツェッペリン 『Physical Graffiti』
   4. ジョージ・ストレイト 『Troubadour』
   5. ブルーノ・マーズ 『Unorthodox Jukebox』



行こうかどうか迷っている方がいましたら、迷わず行くべきです。こんなチャンスは次にいつ来るか分かりませんからね。その時は「ジョジョリオン」のコミックス1巻を持って、生原稿と見比べてみるのも一興です。





「ジョジョリオン」以外の展示も見て回り、パンフ的なブ厚い冊子も購入。こうして国立新美術館を後にしました。
続いて、原宿へ。お土産を買うためです。でも、目的のお店は雪のせいか、お休みでした。仕方なく、駅近くのオムライス屋で昼食。うまし。


そして、今度は日枝神社へと向かいます。去年の6月、フィレンツェへ行く前に行った時は、荒木先生が奉納した絵を発見する事が出来ませんでした。しかし、今回は調べもついています。雪の神社は、静謐さの中にもどこかもの悲しさが漂い、白と赤のコントラストも和風で美しい。



日枝神社

なんかいいムード

山王夢御殿



社殿の隣にある「山王夢御殿」という名の祈願所に入ります。そこでは、祈祷の受付をしています。初めはそんな気も全然なかったんですが、せっかく来た事だし、「家内安全」の祈祷をお願いしてみる事に(汗)。
その受付のすぐ横に、荒木先生の奉納した絵も飾られていました。ここにあるのは、「ジョジョ日本八景」の1つ「酒樽とジョナサン」。神社の許可も得て、写真を撮らせていただきました。……もっとも、さすがにこれは原画ではありません。「ジョジョ展」の時に販売されていた複製原画です。精巧に再現されているとは言え、原画の持つ輝きはこの比ではないので、一目で分かるかと思います。でも、荒木先生が「この絵」を奉納したワケですから、やはり特別な絵には違いないでしょう。
なお、荒木先生は全3点の絵を奉納されたらしいので、これ以外にも2点、どこかにあるはずです。さすがに神社の中を探してウロつき回るワケにもいかないので、他の絵には辿り着けませんでしたが。もしどこかでラッキーにも発見された方は、じっくり堪能してください。



受付の横に


「日本八景」の1つ

「酒樽とジョナサン」



さて、祈祷の方ですが、これまた貴重な体験でした。これほど本格的な祈祷なんて初めてで、ちょっと感動。古来より受け継がれし日本の神聖なる伝統、神様や全てのものへの感謝と尊敬の念、美しい装束や音色……。なんか清められた感じがします。
また、こういう日本的な美は「ジョジョリオン」(というか、ここ数年の荒木作品)にも通じるものがありますしね。



紅白の妙


鳥居だらけ



そして神社を後にし、お土産も購入。やる事もやったんで、早々に帰路に就く事にしました。2時間早い便にキップを替えてもらい、雪の影響で1時間遅れ、トータル的には予定より1時間早く帰宅したのでした。



――荒木先生の生原稿を目の当たりにし、日枝神社では祈祷もしていただき、まさしくこの日の旅は「呪い」を解く物語でした。災難続きだった私ですが、これで身も心も清められました。心機一転、頑張っていけるというものです。ありがとうございました。




国立新美術館へ遊びに行こう

完




(2014年2月9日)




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