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岸辺露伴は動かない
〜 エピソード6 密漁海岸 〜





2013年10月12日発売の「週刊少年ジャンプ」第46号(2013年)に掲載された、「岸辺露伴は動かない」シリーズ第4弾!「富豪村」から1年振りの新作です。やけに早いご帰還で喜ばしい限りですし、11月19日にはついに「動かない」シリーズのコミックスが発売される事となりました!そのページ数調整のために今回の読切依頼があったのかもしれませんが、今後もちょくちょく描いていただけると嬉しいですね。
カラートビラ絵は「JOJOVELLER」風の露伴!杜王町の地図と、露伴&『ヘブンズ・ドアー』が一体化しているような絵です。この地図を見ると、今回のエピソードの舞台となる「ヒョウガラ列岩」の場所も記されています。それだけでなく、お馴染みの「ボヨヨン岬」や「杜王港」なんかもあります。しかし、それと同時に「六壁神社」や「カツアゲロード」、「二本松」に「東方家の敷地」なども記されていました。このトビラ絵の時点で、4部の杜王町と8部「ジョジョリオン」の杜王町とが融合したようなパラレル・ワールドである事が窺えます。
もっとも、4部の杜王町に「カツアゲロード」や「二本松」とかが存在しないとも、「ジョジョリオン」の杜王町に「ボヨヨン岬」が存在しないとも、明言されてるワケじゃありませんけどね。ただ、本編を読み進めていっても、やはりこの杜王町がパラレル・ワールドである事は明白でした。コラム『「ジョジョリオン」の世界観について』でも書きましたが、「動かない」シリーズはそもそも(「●巡後」でも「新世界」でもない)パラレル・ワールドという前提で描かれているようです。なので、設定がどうのこうのツッコむのはナンセンス。その辺は割り切って読みましょう。



さて、本編。読者への挨拶代わりに、漫画を描く前の「ウォーミングアップNo.2」をいきなり披露してくれる露伴。「富豪村」に続いて、つかみはOK!
――で、唐突に現れた「鮑(アワビ)のリゾット」。半生レアのアワビの切り身に、細かく刻まれた冬瓜、すりおろされたトロロイモが、上品な器の上で味のハーモニーを奏ででいます。見るからに美味しそう。コマ外の注釈によれば、どうやら美人料理研究家として知られる森崎友紀さんに協力していただいた様子。荒木先生もいろんな方と繋がりを持ってるなあ。(森崎さんはジャンプ連載作品「食戟のソーマ」にも協力されているので、どうやらジャンプ編集部繋がりっぽいですね。)
このリゾットを食べる人物は、やっぱり我らが岸辺露伴。彼の眼球がいきなりドロドロに溶け出し、次の瞬間にはスッキリ爽やかな表情に!疲れ目がバッチリ解消されたみたいです。そして、料理にまとわり付いていたかのように描かれているのは『パール・ジャム』。説明するまでもなく、その料理を彼に振る舞ったのは、トニオさんことトニオ・トラサルディー
いつもながら、最初の数ページの無駄ない構成に唸らされます。準備体操や美味しそうな料理で読者の興味を惹き、ページをめくればドロドロの露伴でビックリ。かと思えば、それは体の調子の悪い部分を癒して治してくれる料理だったって事が一目瞭然。しかも、謎の物体(スタンド)が漂っている事からも、どうやら普通の人間達ではなさそうだ、と。「ジョジョ」を読んだ事のない人達に対しても、おおよその設定や関係が分かるように描かれているのです。


トニオさんの絶品料理を皮肉交じりに賞賛する露伴。「人は腹が空いたときは所詮ひとりぼっち」って言葉、なんとも露伴らしい(笑)。トニオさんが祖国イタリアじゃなく杜王町に店を開いている点も、前から気に入らなかった様子。「イタリアなんて素晴らしい国を故郷に持っておいて、なんでわざわざこんな異国の片田舎でひっそり料理してるんだい?あんたほどの腕前なら、イタリア料理をさらに進歩させて、もっともっと多くの人々を幸せに出来るだろ?もったいない!」とか、そーゆー想いがあるのかな?同じプロフェッショナルの矜恃を持ちながら、高みを目指そうとしない(ように見える)トニオさんをもどかしく感じていたのかも。
ともあれ、露伴の言葉は紛れもなく褒め言葉。しかし、トニオさんの表情はどうにも浮かない。チラッと店の奥に目をやると、車椅子の若い女性の姿。するとトニオさんは、「友人」として露伴に相談を持ち掛けてきたのです。杜王町の海岸にある「ヒョウガラ列岩」という場所には、世界中でもそこでしか採れない特別な「クロアワビ」が存在しているとの事。それさえ手に入れば、トニオさんの生涯最高の料理が作れる、と。つまり、その「アワビ」を一緒に採りに行ってほしいという依頼でした。
おもむろにスマホで「アワビ」について検索する露伴。縄文時代から食べられていたとか、神事にも捧げられる神聖な食材とか、「熨斗」のデザインが「アワビ」を薄く剥いた形を意味しているとか、タコが天敵とか……、いろんな情報があって興味深い。しかし、露伴はイマイチ気が乗らない模様。貴重な「アワビ」は漁師も売ってはくれないらしく、そんな物を採りに行くとなれば「違法」な行為にならざるを得ない。増して、自分は少年少女のために漫画を描いてる人間で、社会的にもちょっとは有名。それに加えて、「アワビ」を育てている漁師の苦労は想像も出来ないほどだと猛反発ッ!
ところが、さんざわめいといて……、「密漁をします」とのトニオさんの発言に、「だから気に入った」とニヤリ。この悪そうな不敵な表情、最高にシビれます(笑)。これ、字面も用法も完全に「だが断る」の反対語ですしね。

好奇心が刺激されまくり、露伴は密漁にノリノリ。とは言え、問題はある。「アワビ」の密漁は、時代が時代なら「死刑」に処されるほどの重罪。今も番人がいるし、監視カメラも設置されている。どうやって忍び込み、「アワビ」をGETしようと言うのか?
トニオさんは杜王町に移住してから、杜王町の歴史を調べていました。それによると、杜王町には「密漁の伝統」があり、その密漁は古代から「芸術」だったというのです。「芸術」というワードに反応する露伴。「アワビ」は「ヒョウガラ列岩」の内側で採れるらしく、当然、その一帯の警備は厳しい。しかし、列岩の外側からロープを這わせ、進んで行く方法があるとの事。それは日時が重要で……、年に1度、8月のお盆前後の満月の夜、ほんの数時間だけ可能になる方法でした。月の引力で列岩の周りの潮の流れが変わり、「アワビ」は上下の感覚が狂ってしまい、岩から剥がれて泳ぎ出すというのです。そして、列岩の外側までやって来た「アワビ」を手で捕まえるだけ。特別な道具もテクニックも必要なく、誰も「アワビ」が採られた事に気付きもしない、まさに芸術的な密漁!
――ちょうど今夜がそのタイミング。恐らく、トニオさんの方から露伴を食事に招待したんでしょうね。彼の性格なら、きっと密漁に興味を持って、協力してくれるはずだと確信して。
そんなワケで、2人はいよいよ密漁開始!だが、その前に露伴には確かめておきたい事がありました。ただ美味しい料理を作りたいだけで、トニオさんが密漁までするはずがない。それではストーリーの辻褄が合わない。さっきの車椅子の女性と関係があるのか?
トニオさんは涙ながらに語ってくれました。彼女の名はヴェルジーナ。アマルフィーを故郷に持つ女性で、トニオさんの恋人らしい。彼女の頭の中にはグレープフルーツ大の腫瘍があり、もはや立ち上がる事も出来ないというのです。多くの人々を健康にしてあげられた『パール・ジャム』でも、彼女を治す事は出来なかった。だからこそ、杜王町だけに生息する特別な「クロアワビ」に、神々さえ喜んで食べる食材に、一縷の望みを懸けていたのでした。それこそが、トニオさんが杜王町に来た目的だったのです。
ようやく全てが腑に落ち、トニオさんの動機にも納得。なんだかんだ言いながらも、結局は密漁に協力するのでした。好奇心だけじゃなく、トニオさんの願いを叶えてやりたいって気持ちも芽生えたんでしょうねえ。皮肉屋だけど、根は熱い男です。



海に入るや否や、いきなり異変が!何かが動いた気配があり、ライトで照らすと……、なんと舞い泳ぐ「アワビ」の大群がッ!25センチ以上もあるデカさの「アワビ」(「モリオークロアワビ」とでも言うべきか)がウジャウジャです。まさに『天国』の時ッ!2人とも大はしゃぎ。沖の方を見ると、ここが東方一族の私有地であり、禁漁区である事を示す看板が光っていました。なるほど、地主の命令ゆえに漁師も「アワビ」を売ってはくれなかったのです。
密漁は見事成功……かと思いきや、いつの間にかトニオさんの姿が消えていました。海中に潜ってみると、トニオさんが5m下の海底に沈んでいるではありませんか!急いで助けようとするも、彼の腕や脚に「アワビ」がくっ付いており、重くて持ち上がらない。一刻を争う状態です。海面にあるロープを取って来て、トニオさんに巻き付け、引っ張り上げる事に。ところが、なんと露伴の脚にも、すでに「アワビ」が1個くっ付いてしまっていたのです。「アワビ」の殻はハンマーでも簡単には砕けないほど固く、攻撃を受ければますます強力に張り付いてしまう。スタンド攻撃なんかではないものの、水中でこの「アワビ」に触れるのは危険すぎる行為だったのです。

「アワビ」はさらに、露伴のダイビングスーツの背中に4個もくっ付いてしまいました。重さのため、どんどん海中に沈んでいく!しかし、露伴はスーツを脱ぎ捨て、ようやく海面のロープを掴む事が出来ました。しかし、そのロープに繋がっていたカゴが倒れ、収穫して入れておいた「アワビ」が大量に襲い掛かってきたのです。露伴の全身にまとわり付く無数の「アワビ」達!
露伴もとうとう海底に沈んでしまいます。すると、海底をよく見れば、何人分もの白骨死体が横たわっていたのです。その時、露伴は全てを悟りました。これは昔、密漁に失敗して溺れ死んだ者達の成れの果て。トニオさんが調べたという密漁の文献それ自体が、密漁者達をおびき寄せ、始末するための「罠」だったのです!「アワビ」の習性と地形の特殊性を利用した「罠」!誘惑しといて騙して殺すなんて、どこまでもいやらしく、恐ろしいトラップです。東方一族が古来より地主だったりするなら、その文献も東方一族が書いたんでしょうかね?姿は現さないけど、その存在感が不気味。「死刑執行中脱獄進行中」的な怖さがあります。まさしく「死刑執行中密漁進行中」ですな。
絶体絶命の大ピンチに陥った露伴!ところが、露伴は余裕の勝ちセリフに、不敵な笑み。「歴史への用心と敬意を怠ったのは失敗だった」と認めつつも、「ここのクロアワビはごっそりいただく」と宣言ッ!「岸辺露伴をナメるなよッ!」
ネットの情報が正しければ(笑)、「アワビ」の天敵はタコ!海底に蠢くタコに、『ヘブンズ・ドアー』で命令を書き込みます!「今すぐアワビを攻撃しろ」と。犬や猫も「本」に出来るワケだし、知能の高いタコも余裕で「本」に出来る模様。こうして、タコは露伴に絡み付き、「アワビ」を攻撃ッ!う〜む、「アワビ」に「タコ」。なんかエロティックです。春画っぽくもありますね。その土地の歴史や因習に絡めながら、エロいシチュエーションやモチーフを描き出す感じが、「ジョジョリオン」にも通じてて面白い。ただ正直なところ、海中にタコがいた時点で予想できる解決法ですし、そこからもう一捻りあれば驚きもさらに増したかな〜とは思います。




そして、エピローグ。活躍してくれた「命の恩人」とも言うべきタコも、トニオさんに美味しく料理されたようです。露伴が仗助億泰康一くんとテーブルを囲み、億泰がタコを食べて「ンマあああ〜〜〜〜い」!20年振り?(笑)「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」でもそうだったけど、あくまで仗助の顔は描かれないし、セリフもないのね。「ジョジョ」とは別の作品ですよ、って意味合いなのかな。
この「タコのトマトソース煮」を食べながら、露伴はトニオさんに声を掛けます。「新作アワビ料理はないのか?」と。キッチンでは、1人の若い女性がトニオさんの隣に寄り添うように立っています。その姿を見て、露伴は美味なる幸せを噛みしめるのでした。
――ハッピー・エンドで爽やかな読後感があり、すごく楽しい作品でした。何より、やっぱ露伴のキャラクターがイイんですよねえ。言動がいちいち面白いしカッコイイ。「アワビ」の密漁をストーリーにして、「アワビ」とのバトルをサスペンスたっぷりに描き出してしまうのが、荒木先生ならではの個性ですよね。ホント、これからもちょいちょい描いてほしいです。パラレルではあっても、4部のみんなとの再会は嬉しいですしね。
ちなみに、作者コメントは「「露伴」、ページ数が溜まったのでコミックスにします。めでたいなあ!」との事。まったく、めでたい。早く読みたいなあ!




(2013年10月13日)




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