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STEEL BALL RUN 技術私評



ここでは、「STEEL BALL RUN」に登場した
技術の個人的な解釈を書いていきます。
原作の設定・描写をベースに、
勝手に考察・妄想しただけのものです。
正確な公式データが欲しいという方には何の役にも立ちませんので悪しからず。





「黄金の回転」 / 使用者: ツェペリ一族



ネアポリス王国で死刑執行人の任務を受け継ぐツェペリ一族が、確実かつ迅速に処刑を遂行するために代々発展させてきた技術。作中ではジャイロ・ツェペリと、その父:グレゴリオ・ツェペリが使用。ジャイロからこの技術を伝授されたジョニィ・ジョースターも、自身のスタンド能力に応用している。
その原理の秘密は「黄金長方形」にある。全ての生命に敬意を払い、自然の中の「美」を感じ取る事が出来たなら、1:1.618の黄金比率で作られた「黄金長方形」が自然界にちりばめられている事に気付くだろう。その「黄金長方形」の中に正方形を作ると、残った小さい長方形も「黄金長方形」となる。これを延々と続けていき、それらの正方形の中心点を連続でなぞっていくと、無限に続く渦巻きが描かれる。この「黄金長方形」の軌跡で正確に物質を回転させる事によって、「無限」の力と可能性を引き出せるのだ。これが「黄金の回転」である。
なお、正確さが要求される繊細な技術のため、ゴツゴツした石などでは回転が不安定になってしまう。不完全な回転では、威力も効果も弱まる。ツェペリ一族は回転を完璧に近付けるべく、滑らかな真球の鉄球でもって、この技術を行使する事が多い。訓練によって手のひらをも「黄金長方形」の比率にしているらしいが、これも回転の精度をより高めるためなのだろう。
また、どれほど熟練した者であっても、「黄金長方形」を見ながら回転させなくては「黄金の回転」には到達しない。つまり、「黄金長方形」が見えない場所・状況では使えない技術なのだ。たとえ同じ「黄金長方形」であっても、人工的に作られたものや人体に隠されたものでは効果は薄い模様。あくまで、「人間」を取り囲む「世界」の中で自然物が形作る「黄金長方形」でなくては真価を発揮できない。


「黄金の回転」を一言で表現するならば、物質の「反応」を支配する技術と言えるだろう。「回転」のエネルギーに触れた物質に、様々な「反応」を引き起こさせる。「無限」の力を帯びているせいなのか、その「反応」は時に常識を超越した領域にまで及ぶ。
生物に対して使う場合、「回転」の刺激によって、筋肉の緊張・弛緩の「反応」を自在に操れる。本来、処刑しやすいよう死刑囚の肉体をリラックスさせるために編み出された技術だが、逆に筋肉の力を引き出し、瞬間的に爆発させる事も出来るのだ。この肉体の「反応」を巧みに調節・操作する事で、(短時間ではあるが)肉体の状態を変化させる事が可能となる。痛みもダメージもなく捻じ曲げたり、硬質化して防御したり、平面化して狭い場所へ逃げたり、体内の水分を搾り出したり、老人のようにシワシワに変身したり、反対にピチピチのムチムチにしちゃったり……。「回転」を認識できるのは皮膚までで、決して筋肉には悟られない。本能的・反射的な抵抗さえ起こさせないからこそ、気付かれる事なく相手の筋肉を反応させられるのだ。
無生物に対して使う場合も、「回転」のエネルギーはその物質に働き掛け、奇妙な現象を発生させる。回転する鉄球で岩や地面を削ったり、木々を捻じ曲げたりなどは序の口。2つの鉄球を同時に投擲すれば、空気を集めて光を屈折させ、敵の距離感を錯覚させる事も出来る。また、「回転」の振動の波も利用していた。見えない場所の映像を砂煙や水などに映し出したり、音を集めて敵の位置を探ったりと、情報収集にも応用できるのだ。
極め付けに、強烈な衝撃を喰らった際には体表を伝わらせ、ダメージそのものを移動させていた。言わばエネルギーの回転。これこそが、この技術の最終奥儀である。


鉄球の射程飛投距離(敵に致命傷を与え得る距離)は20〜30mほど。
「回転」を加えた鉄球は、どういうワケか、投擲した者の元へと戻って来る性質もあるようだ。そういう「回転」が掛かっているからか、鉄球の構造自体に秘密があるのか、「回転」の中心が使用者の手のひらにあるからか、詳細は不明。
「無限」への追求を目指す技術であるため、まだまだ発展の余地もあり、謎もまた多い。そしてジャイロの場合、アリゾナ砂漠「悪魔の手のひら」に踏み入った影響でスタンド能力に近付いている可能性もあるらしい。ジャイロ自身も気付かぬうちに、効果や応用の幅が拡大・強化されていたとも考えられるのだ。

回し方にもコツがあり、手首だけで「回転」させるのではまだ不完全。下半身から腰・背中・肩・ヒジ・手首・指……と螺旋状にエネルギーを伝わらせて、体全体で回してこそ無敵の回転パワーが得られるのだ。(最終奥儀も、この螺旋の伝導を逆利用した技なのだろう。)
そして、「鐙」から下半身へと吸収した馬のパワーをも上乗せする、「騎兵の回転」とでも言うべき幻の技術もツェペリ一族の伝承の中に残っている。これは、馬を「黄金長方形」の「走行形(フォーム)」で走らせる事によって生まれるエネルギー。騎兵が甲冑や盾を身に纏った敵と戦う時のために編み出され、そして封印された技術とされている。どんな頑強な防御すらも突き抜ける「回転」であるはずだと、ジャイロは推測していた。
死刑執行人の血筋であるツェペリ一族には、長い年月、その技術を扱える者はいなかった。ズバ抜けた馬乗りの才能と経験を持った者にしか使えない技らしい。だが、何故かジャイロには扱う事が出来た。厳しい旅の末、ジャイロは戦士としても男としても、大きく生長してきた。馬乗りとしての才能もまた、大きく開花したという事なのかもしれない。この「騎兵の回転」は、「回転」の技術の究極に位置し、そのエネルギーはもはやスタンドの領域に達している。
なお、「騎兵の回転」のエネルギーは『ボール・ブレイカー』と名付けられており、詳しくはスタンド私評にて述べる事とする。






「大地の走法」 / 使用者: サンドマン
             (本名: サウンドマン)



アリゾナに住むインディアンの青年・サンドマンが、インディアン独特の生活環境の中から体得した走りの技術。平坦な地形ではなく、岩場や崖で高速で走るためのフォームである。
普通、人間が走る時には、地面を蹴る際の衝撃のエネルギーが関節や筋肉への負担となる。それが疲労として蓄積されていくのだ。だがサンドマンの場合、かかとが地面に一瞬しか触れない、触れたとしても決して踏み込みはしない走り方をしている。衝撃はすぐに爪先へと移動し、そのエネルギーを再利用して地面を蹴り、さらに加速する。つまり、衝撃のエネルギーをヒザ方向ではなく、前方へ逃がしているという事。疲労やダメージがほとんど無いどころか、むしろ走れば走るほど加速されていくのだ。
着地時には、崖面を何度か蹴って降りるため、衝撃も拡散される。滞空すればするほど筋肉は休む事となる。岩場を登る時も、全身の筋肉を使って、脚だけに負担を掛けない。
体格の割には長い脚と、一瞬で体重を移動できるスピードが必要不可欠。自然と共に生きるインディアンならではの、そして、優れた肉体と知性を持つサンドマンならではの「大地」を味方にした走法である。エネルギーの流れを敏感に察知し、効率的に利用する事で、時速40km以上の信じ難いスピードを見せていた。






体内の「虫」 / 使用者: ミセス・ロビンスン



メキシコの砂漠の村で生まれ育ったミセス・ロビンスンが身に付けていた技術。左眼が無い彼は、自身の左の眼窩内無数の虫を飼っている。音なのか、匂いなのか、はたまた心が通じているのか……、理由は不明だが、彼はその虫達に命令し、自在に操る事が可能。
砂漠に群生する「チョヤッ」と呼ばれるサボテンは、空気の振動に反応して、種子でもある針を飛ばす習性がある。うかつに近付くと、針が突き刺さるという事だ。彼は虫を「チョヤッ」の周囲に飛ばせ、その飛行風圧によって、離れた場所から針で標的を襲わせる。かなり熟練された技術で、狙いは恐ろしく正確。「チョヤッ」の針の威力もなかなかのもので、連続して突き刺せば馬の手綱くらいなら切断できるし、投擲された鉄球をも弾き返せる程である。
ただ、ミセス・ロビンスンは誰にも負けないためにこの技術を習得したらしいが、随分と限定された環境・状況でなくては有効に利用できそうもない。彼の故郷でなら無敵なのかもしれないが、「チョヤッ」が群生する砂漠以外で使えるのかは甚だ疑問な偏った技術である。






「レッキング・ボール(壊れゆく鉄球)」 / 使用者: ネアポリス王国・王族護衛官 ☆



ネアポリス王国の最重要警備王族護衛官の任務を受け継ぐ一族が、確実かつ迅速に王族の敵を排除するために生み出した技術。作中ではウェカピポと、同じ護衛官だった友人(妹の夫)が使用。
回転の原理は不明だが、ツェペリ一族の「黄金の回転」とは別種の回転である。「衛星弾」と呼ばれる14個の小型鉄球がくっ付いた特殊な鉄球を使うのが特徴。鉄球が直撃すれば致命傷を与えられるし、もし外れたとしても「衛星弾」を射出し、更なる攻撃に移れる。仮に「衛星弾」まで交わされたとしても、顔の近くをかすったなら、その衝撃波は十数秒〜数十秒の間、脳の一部の機能を誤作動させてしまう。全てのものの左側が認識できなくなる状態、つまり「左半身失調」になってしまうのだ。左眼がまったく見えなくなるだけでなく、左半身の感覚が失われ、残った右眼で見詰めたものすら左側が見えなくなってゆく。完全な死角となった左側から近付き、再び攻撃を仕掛けるというのが、護衛官の戦闘スタイル。
また、ツェペリ一族の「黄金の回転」と同様に、回転による肉体の硬質化も可能である。ネアポリス王国には複数の鉄球技術が存在するようだが、それらに共通する基本的な技と思われる。もしくは、「黄金長方形」の原理は知っていたウェカピポが、不完全ながらも「黄金の回転」を真似てみた技なのかもしれない。なお、「衛星弾」も含め、鉄球が自ずと使用者へと戻って来る性質もある。
攻撃と防御に加え、相手の利点と行動を封じ込める事も出来る、無駄のない洗練された戦闘技術と言えるだろう。




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