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ジョジョの奇妙な冒険 ファントム ブラッド(劇場版)





荒木先生執筆25周年&「ジョジョ」連載20周年を記念しての、「ジョジョ」初の劇場版作品です。2007年2月17日より、全国各地の劇場で公開されました。私の住む地域では上映されない上、行動範囲内の東北地方は3月下旬からの公開だったため、ネタバレを恐れていてはネットも出来やしません。逆に感想を見まくってやる事にしました。ところが、公開初日からあちこちのサイトやスレッドで不評・酷評の嵐……。
しかし、皆さんの感想を読めば読むほど、一刻も早くこの目で確かめたくなっていきました。そして4月1日、いよいよ時は満ちた!車で片道2時間程の道のりを、SOUL'd OUT「VOODOO KINGDOM」を聴いてテンションを上げつつ、1人で岩手県は盛岡シティーへと向かいます。慣れない街に少々迷いながらも、無事に劇場に到着。私の他には、同世代の紳士達やお若いレディー達、おじちゃん・おばちゃんまでも。合計20人ほどの客しかおらず、席はガラガラでしたが、「この人達もみんなジョジョ好きなんだな〜」と妙な親近感を覚えたり。受付の兄ちゃん達が「ジョジョ」話でこっそり盛り上がってるのも耳にしました。普段はなかなか出会えない同志の姿。
そして正午キッカリ、ついに「ファントム ブラッド」の上映がスタート!以下、感想です。



え〜……、まず結論から言っときますと、ぶっちゃけ面白かったです。いや、想像していたモノよりはクオリティが高くて「思っていた以上に楽しめた」という方が正確なのかもしれませんが。内容も評価も知り尽くした上で鑑賞したせいか、全てをすんなり受け入れてしまえた自分がいます。ずっとスクリーンに釘付けでした。「覚悟」は「幸福」とはこの事なのか!?
無論、手放しで絶賛できる出来とは言い難いです。欠点は多い。特に感じたのは、あらゆる面において説明不足って事。「どうしてこんな事をするの?」「何が起こったの?」という疑問が解消されないまま話が進んで行くので、何もかもが唐突に感じられ、とにかく説得力が致命的に欠けてしまっています。行動・動機・設定という根本的な部分なのに。唯一、ジョジョが「チクリ魔」と友達にけなされる理由だけは、原作より分かりやすかったですが。
ディオは何故、ジョジョを執拗に追い詰めるのか?空白の7年間、ジョジョとディオはどんな関係だったのか?ジョジョは何故、殺されそうな父をそのまま放って、薬の分析に出掛けちゃったのか?エリナは何故、いきなりジョジョに別れを告げ、しかも7年後にバッタリ再会しちゃってるのか?ツェペリさんは何故、ジョースター邸やワンチェンの店に現れたのか?結局、波紋ってどんな能力なのか?吸血鬼ディオの謎の能力(冷凍法やお城建築法、目ビーム等)は何なのか?――それらが1つの作品内で明かされなくては、キャラクターも物語も理解不能になってしまいます。ジョジョとディオの関係性を中心に据えるのなら尚更です。それさえしっかり描かれていれば、原作と違おうが、登場人物がカットされようが、絵が時々荒れてようが、私は大して気にしません。
ジョジョ濃度を薄める事で、より広い観客層を取り込みたかったのかもしれませんが、こうも脈絡がないと未読者はついて行けないでしょう。かと言って、原作ファンからすれば、メリハリのない薄っぺらい作品に感じられるでしょう。何というか、この映画を制作する上での方向性・スタンスからして曖昧で中途半端なのです。思いっきり初心者向けでもジョジョヲタ向けでもいいんで、どうせならトコトン極端な作品にした方が面白かったと思います。
あと、ジョジョが炎上する館の屋根からディオを撃退した時も、最期の波紋をワンチェンにブチ込んで歯車に巻き込んだ時も、なんか偶然の出来事っぽくなっているのはどうかと思いました。勇気と智恵で勝たないと、ちょっとジョジョが情けなく見えてしまいます。それから、BGM鳴りすぎ。曲自体はイイ感じですけど、「ゲームか!」って勢いで終始鳴りっ放し。その分、無音の「き… 切れた…」のシーンが印象深くはなりましたが。


では、良い所はどこか?正直言って、「ここが最大の魅力!」という程の部分は見出せなかったかも……。スタッフの皆さんが「ここに全力注いだから見てくれ!」という程に熱を込めた部分が伝わらなかった、とも言い替えられるのかな。
でも、もちろん良い所はありますよ。まず、作画では背景がキレイでした。少年時代での、草原や川や橋があるのどかな風景が心に残っています。ジョジョとディオが少年・青年・波紋使い&吸血鬼と、それぞれちゃんと描き分けられているのも好感が持てました。羽山氏の濃い絵柄は1・2部には合っていると思います。光り輝く波紋の効果も目を奪われました。声優陣の演技も、なかなかイメージに合っています。特にジョジョとディオの2人の声は違和感なくピッタリ。スゴく熱かった!お笑いコンビ「スピードワゴン」の2人も頑張ってます(ワンチェンは笑ったけど)。エリナはちょいとアニメ声すぎる気がしますが、そもそも原作のエリナとは性格や関係も微妙に異なっているので、あれはあれで。
個人的に気に入ったのが、カメラワーク。ギュンギュン回ったり、グンと近付いたり、迫力ある臨場感が味わえました。私は最近のアニメとかは見てないので、他の作品と比較してどうこうってワケではないんですけど。ウインドナイツ・ロット序盤のショー・タイムでの、ツェペリさんのバトルが最高カッコ良かったのです。帽子を脱いで、ゾンビ共を華麗に蹴散らし、再び帽子を被ってダンディーにキメ!この作品で一番イカしてたのは、文句なくツェペリさん。波紋でワインのコルクを抜いたシーンもステキでした。
エリナのペンダントの演出も悪くはなかったと思います。最期まで渡せずに終わるってのも切なかったし。原作での、無言のまま涙を流してジョジョと見つめ合う、2人の別れのシーンが大好きなんで、それが無かったのは残念でしたが。ただ、ジョジョとエリナのキスは美しかった。ディオとのキスとはまるで違う、愛が伝わって来る優しく悲しいキスでしたね。涙が唇へと流れてゆく所は印象的。これを強調させるために、ディオとの時はあんなに荒々しくしたのかも。
ウインドナイツ・ロットでの最終戦が力押しで決着だったのは「ジョジョ」らしくないですが、この映画では波紋が岩をも砕くエネルギーと表現されているので、氷くらい粉砕しちゃってもいいかなと思いました。ツェペリさんとダブる演出もあって、少年マンガ的で燃えるってば燃えますしね。ここがあっけなかった分、船上での戦いは原作に近い形で描いてくれました。目ビームがジョジョを貫通するシーンは息を飲みましたよ。あのスピード感は原作以上です。
それと、ツェペリさんがジョジョに告げた「波紋を学ぶ事で子孫の運命も変わる」というセリフは良かった。ウインドナイツ・ロットでジョジョがディオと対峙するシーンで、一瞬「星のアザ」がうっすら見えたのにもニヤリとさせられました。やはり原作を読んでいる人間としては、血統を匂わせる部分には過敏に反応しちゃいますね。



時間が90分と短い事もあり、余韻も何もなく、次から次へと不可解な出来事が襲い掛かって来る映画でした。
それでも、酷評するほど悪い作品でもないんじゃないかと思いました。私的にはアリ。まあ、情報が一切ない状態で見たらどう感じるかは保証できませんけども。私以外のお客さん達はやっぱ不満そうでしたしね。
しかし、この映画がキッカケで「ジョジョ」に興味を持ってくれた方もいるようですし、何より私自身が以前よりもっと1部を好きになれました。これだけでも、映画化された意義は充分にあります。スタッフの方々にも感謝いたします。でも、もし次回作があった場合は、ファンも興奮し納得できる熱い作品を期待しています!



(追記)
感想はこんな所にして、今度は私なりの改善策というかアイディアを書いてみたいと思います。以前、掲示板の方でもちょっと触れましたが。いろんな方々が言っているように、せめて120分か前・後編にでも出来れば良かったんですけど、90分という条件で自分が映画を作る事になっちゃったとするならば。
まずオープニングは、雨の夜のジョージとダリオの出会いから。少年編はあんなに時間を割かず、母の形見とか枕に針とかの姑息なイジメはカット。ジョジョの誇りが伝わるように、いじめられたエリナを助けるシーンは描きます。なるべくジョジョ視点で、ディオの心は謎に包んでおきます。少年時代から、2人の目的や動機をしっかり描ければ一番ですけど、そうするとかえって全体のバランスが悪くなりそうで。ただ、「一番が好き」という上昇志向セリフは言わせておきたい。
青年編では、大学から仲良く一緒に帰宅するジョジョとディオの姿から。でも内心、出会った当初の悪行や急に親しげになったディオに疑惑を抱いているジョジョ。そして、薬のすり替えを目撃し、疑惑は確信へ。薬の分析のために出発します(スピードワゴンはカットでも止む無し)。その間、ディオが懲りずにジョージの部屋へ訪れるが、ジョジョが依頼した医師達に追い出されたりして。帰還したジョジョと警官に追い詰められた時、初めてディオの口から衝撃の過去や目的を静かに語らせます。そんで、涙ながらに謝罪するディオに、ジョジョが手錠をはめようとして……、あとは原作チックに。後の展開のためにも、ゾンビを生み出すシーンは入れておきたい所ですね。
燃え上がる館の中、「フン!この家を乗っ取ってやろうと思っていたが、燃えてしまっては灰しか残らんな。だが、代わりに手に入れたこの不死身の肉体!こんな炎なぞ通用せん!組織の再生力の方が上よ!無駄無駄ァ!」などと叫びながら、炎が効かない理由の説明もしてもらいます。

続いて、波紋編。ハッキリ言って、ウインドナイツ・ロットが舞台である事の意味も必然性もありませんでした。古から蘇った騎士達と戦うからこその設定なのに、ブラフォードとタルカスもチョイ役で、ゾンビ共も単なる雑魚キャラじゃあ何にもなりません。ポコもいないし。それならいっそ、ウインドナイツ・ロット自体をカットしてもいいと思います。映画でもどんな町なのか良く分からないままでしたしね。
例えば、ディオはロンドン郊外の荒れ果てた教会にでも潜伏させ、そこの墓地からゾンビを生み出すとか。冒頭で描かれた、ダリオの眠る墓地だったりすると面白いかも(ディオの性格的にはあり得なさそうだけど)。日が沈んだ時、教会の鐘が鳴り響き、そこに目をやるとディオの姿が。大勢のゾンビが現れて恐怖を感じるジョジョに、ツェペリさんが「呼吸が乱れておるぞ〜、ジョジョ」と声を掛け、そこからゾンビ共を一網打尽にしながら「ノミと同類よォーッ!」の流れへと繋げ、ジョジョが改めて勇気を奮い起こす……といった展開に。そして、どんどん迫り来るジョジョ達の戦い振りから、ディオは波紋を観察・理解して冷凍法を閃く。で、一度はディオに殺されかけるも、ツェペリさんのエネルギーで復活したジョジョが、教会内のキャンドルかトーチの炎を利用してディオを撃退!
こんな感じはいかがでしょうか?どのみち原作をそのまま再現なんて出来ませんが、それでもジョジョとディオの因縁の戦いを効果的にクローズ・アップするための案の1つとして。
スタッフロールの最後あたりで「VOODOO KINGDOM」のリズムに乗せながら、ファンサービス的にほんのちょっと歴代ジョジョの姿を見せちゃうのもいいかも。後ろ姿のジョナサンにカメラがグーンと急接近して、一瞬だけこちらを振り向き、それに続いて流れるようにジョセフから徐倫……なんて妄想。スタッフロールになるや否や帰ってしまう客を後悔させてやります(笑)。




(2007年4月1日)
(2007年4月3日:追記)




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