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これが「男の世界」…………
反社会的と言いたいか?



●今年2006年は荒木先生のデビュー25周年という節目の年。それに呼応するかの如く、様々なプロジェクトが動き出している模様です。それがユニクロTシャツであり、「ジョジョ」1部・劇場アニメ化であったワケですが、今月のウルジャンを開いてみて仰天。なんと、「ジョジョ」1部のゲーム化まで決定しましたッ!
カプコンではなく、バンダイが開発しているようです。5部ゲーのような画面で、各キャラクターも原作に近い形で再現されていますね。ジョナサンやディオの筋肉も大層ごっつく、ディ・モールト良い感じです。画面にゲージが表示されていますが、ライフゲージだけじゃあなく、波紋ゲージなんてのもありそう。一定のリズムでボタンを押すとゲージが上がり、波紋のパワーも強くなるとか。
今年は「ジョジョ」1部が日本各地でオーバードライブしそうですね。楽しみだ…。



#10 大草原の小さな墓標A





●扉絵は西部のならず者チックなジャイロ。余裕の表情を浮かべる彼の後ろには、「DEAD OR ALIVE」の文字。今回のストーリーを暗示するかのような意味深なイラストです。


●ドクロのヒゲ男の正体判明。名はリンゴォ・ロードアゲイン。3年程前にアリゾナ砂漠で目醒めたスタンド使い。スタンド名は『マンダム』6秒だけ時間を戻す能力。驚いた事に、ラスボスの専売特許であった時間系能力を使う者が早くも現れました。まあ、戻す度に世界中が混乱してもよろしくないので、時戻し前の記憶が残る射程が果樹園くらいの範囲と解釈しておきましょう。腕時計の秒針をつまんで戻す事で発動できるという、極めてアナログな能力です。腕時計にコードが生えたっぽいヴィジョンはカッコイイけど、それはやはりただの飾り。あくまで攻撃は自らの銃だし、「SBR」のスタンドは必要以上に前に出て来ないのが好印象。時代や舞台、雰囲気に合ってると思います。
そんな彼の目的は「修行」。フェアな決闘を繰り返す事は、未熟な自分を生長させるための、そして「神聖さ」を身に宿すための大事な荒行。そのために能力を使い、果樹園をラビリンスにして、決闘の相手を待っていたのです。彼には何か、もっと大きな目的があるのでしょうか?「聖なる領域」とやらに達しようとしている理由が気になる所です。言ってる事は電波っぽいけど、スゴイ真っ直ぐで澄んだ眼をしてやがるなあ…。自分なりの美学を貫き通す男は、善悪問わず惹かれますね。
彼は大統領にその才能を認められ、修行に最適な場所を与えられたらしく、恩を感じている様子。これも「遺体」絡みのイベントだったんですね。大統領と共に、この世界をより良い方向へと導きたいと願っているのか?「広い広い大草原の小さな墓標」というSTAGEタイトルも、大統領が彼の事を知って名付けたものだったのかも。目を付けられたレース参加者は、あそこに迷い込み、彼と決闘して殺されるだけ。あのボロ小屋こそが、そしてロードアゲイン自身こそが、敗れた者達への「小さな墓標」


●ロードアゲインは神懸かった観察眼を持っているのか、一目で相手の深い部分まで見抜けるようです。銃の射程はもちろん、人の心の底までも。ここでもジャイロは、己の弱さについて言及されています。「才能」に恵まれていながら、やはり今のジャイロには致命的に欠けているものがある。それは「漆黒の意志」。いよいよとなれば、敵を殺してでも前へ進もうとする躊躇いのない覚悟。正当防衛でも逆上でもなく、相手を殺すべくして殺せる強い強い執念と信念。醜い欲望や憎悪で澱んだ「ドス黒い精神」とは違う、命に対する敬意を忘れない汚れなく輝く「漆黒の殺意」。ハードボイルドな、まさしく男の世界。今までの「ジョジョ」で美しく描かれてきた「黄金の精神」と対極をなす、血生臭い残酷なる勇気です。
しかしジャイロは今、それが無くては勝者にも生者にもなれない状況に立っているのです。心身にこびり付いた受け身の「対応者」の性。ジャイロは果たして、それを血によって洗い流す事が出来るのでしょうか?「対応者」のままで生き続けるか、「漆黒の意志」を手に入れて生き抜くか、それとも未知なる第3の道を示すのか。増して、ジャイロは死刑執行人としての人生も背負っているのです。「生」と「死」と真剣に向き合う事は、決して避けては通れない宿命。ジャイロの決断と行動、そして生長。それが導く結末。早く目にしたいです。
このイベントは3rd.STAGEゴールから一連の流れになっていたんですね。レースに続いて、バトルにおいても生長の必要性を説かれています。自分の中に巣食う「甘ったれた思想」を拭い去り、これまでとは異質の強さを得るための、ジャイロの修行の時期なのでしょう。明確な殺意を持って、自らの手で人を殺めた事はないであろうジャイロですが、もう後手になど回ってはいられません。先手必殺です。
「黄金の精神」と「漆黒の意志」、矛盾するかのようなこの2つの心を確かに宿す事こそ、「気高く飢える」という事なのかもしれませんね。守りに入っては何も掴めない。正しいだけでは何も生み出せない。本当、「SBR」は今までの「ジョジョ」とは一線を画していて、魂が激しく揺さぶられます。


●ホット・パンツのスタンド名は『クリーム・スターター』。さすがの応用性で、自分の肉体の一部をスプレー化させ、切り放す事も可能です。しかも、この肉スプレーを強烈な勢いで吹きつければ、相手の肉をも溶かすように切り放せます。ここまでされては、イケメンの立場がありません
でも、あっさりロードアゲインにやられてる……。このままやられっぱなしじゃあ、何のために出て来たのやら分からんし、真の活躍はこれからなのかな?ロードアゲインは能力上、即死させるか腕時計を封じるくらいしか勝機がなさそうなので、腕時計に肉スプレーをブッかけるとか?皆の弾痕を肉で埋めるくらいはありそうだけど。


●ジャイロと違い、その胸の内にしっかりと「漆黒の殺意」を抱いているジョニィ。どうしても邪魔するなら、殺人も厭わない凄みを持っています。よっぽど「遺体」に希望を見出しているんでしょうけど、それ程だったとは。ディエゴへの嫌悪や警戒も相変わらずで、ジャイロにも必死の説得。決闘でも冷静にロードアゲインを狙撃。ジャイロと出会う前の惨めな自分には二度と戻らないっていう、花京院的な確固たる決意があるからでしょうか。ガウチョが撃たれてるのを見て叫んでたクセに、やる時はやる男です。
そんなジョニィも善戦空しく敗北……。えらいブサイクな顔になって弾丸が脳天直撃ッ!しかし、完璧に死んだと思いきや、それでもギリギリ生きてる様子。意図的か偶然か、ロードアゲインの距離があと一歩足りなかったのです。前回のガウチョ戦から巧く設定を繋げてきましたね。未熟なジャイロを生長させて、価値ある果し合いをするために、あえて生かしておいたのかもしれません。「決めるのはおまえ自身だ」と言ってる所からも、ジャイロが決闘を望んで立ち向かって来るなら、とどめを刺してやってもいいってくらいには思ってそうですし。


★ページをめくる度にドキドキハラハラしました。これぞマンガの醍醐味。ロードアゲインの静かな圧力、決闘の一瞬の緊張……、たまりません。
ジャイロ一行が一気に全滅しちゃって、マジメにビックリしましたよ。あの絶望感ったらないね。あれほど感情を露わにして叫ぶジャイロは初めて見た気がします。「ジャイロがすかさず鉄球で腕時計の秒針を回して、ジョニィ達を救うんじゃあねーか?」とか予想しながら読んでましたが、やっぱり外れました。もっともっと熱くて渋い展開です。瞳に漆黒の炎を燃やすジャイロ!お互いの精神剥き出しの、小細工抜きの真っ向勝負を期待してます。
今月は正月もあったから、また40ページ弱の覚悟はしてたんですけど、キッチリ63ページ描き上げてくれた荒木先生に感謝いたします。




(2006年1月19日)




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