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「殺し屋ども」には「殺し屋」をだぜ
いい取り引きだ… お安い『買い物』だったぜ!



●今月の表紙は「SBR」!雪にまみれてポーズを取るジャイロ&ジョニィです。中国拳法のようなポーズで『タスク』を構えるジョニィの手首の角度がステキ。鉄球を手にしたジャイロは、植物のツタに巻かれています。「ジョジョ」46巻・47巻で見られる、植物に巻かれた仗助とかの絵が好きなので、これもグッド!なんというか、植物にまで躍動する生命力があって美しいんです。
荒木先生のカラーも渋味が増してきた印象。暖冬で雪の少ない今年ですが、吐く息も白くなるような寒さが伝わって来ますね。そんな冷たい空気の中に、彼らの闘志の熱さが感じられました。くるおしいほど、生きてます。このカラーイラスト、かなり好み。



#23 湖畔のルールB





●トビラ絵は御親切にも「遺体」の分布図。他の部でも見られた、人物やストーリーの現況のおさらい的なもの。分かり切っている事ではありますけど、情報の整理は必要ですからね。最近の新規読者さんも大助かりでしょう。


●11人の敵との死闘の連続!今回はそれに尽きます。殺しても殺しても、次から次へと執拗に襲い掛かってくる敵の脅威が描かれていました。余計な言葉は一切吐かず、黙々と銃を向けて来るのが「プロの殺し屋」って感じで怖いです。しかし無口なばっかりに、ジャイロ達にも読者の皆さんにも何ひとつ教えてくれませんでした。不親切な連中です。
当然、スタンド名も謎のままですが、能力の方は大体理解・推測できました。まず、あの後頭部の「顔」がスタンド・ヴィジョン。全滅しても消えなかった事から、元々ああいう形の後頭部なんだけど、スタンドと一体化していたってトコでしょうか。で、背中の「模様」は能力の効果。これも元々ああいう服の模様なんだけど、スタンドの能力によってゲート化したのです。彼らの共通した「模様」は全て空間を超えて繋がっており、「顔」を持つ者はそこへ自由に出入りが出来る。役割的には、「模様」が門(ゲート)で、「顔」は鍵(キー)。このスタンドの真の本体は、最後に殺された7人のうちの誰かだったと解釈。まあ、こんな風に受け取っておきます。
ただ、もう少し能力を駆使してほしかった所もあります。例えば、前にいるヤツの「模様」に手を突っ込み、別の位置にいるヤツの「模様」から出して攻撃するだとか。そういう部分的なワープも利用したなら、もっとトリッキーで意外性のあるバトルになったかもしれません。数で押しまくる直線的な銃撃戦だからこその良さもありますけどね。


●今までよりダメージがしっかり描かれている気がします。オエコモバに脚を爆破されても割と平気そうだったジャイロでさえ、腕の動脈を撃たれて失血死しかけているくらい。人間としてはそれが普通なんでしょうが、最近の「ジョジョ」の世界では逆に違和感を覚えてしまいますね。絨毯にまで染み込んでいく血液が、彼の出血のひどさを物語っているかのよう。傷口の縫合のため、しきりに糸も要求。そういや、「ゾンビ馬」はまだ残っているんでしょうか?
敵の方も現実的なダメージを受けていました。ジョニィに手首を撃たれたヤツ、ジャイロに脚を潰されたヤツ、苦痛に顔を歪めて呻いている姿が妙に印象深かったです。真っ当に痛みを感じてるんだな〜、などと思いました。5・6部あたりになると、腕の1本や2本吹っ飛ぶのなんて当たり前な世界でしたからね。絵柄と共にダメージ描写もリアルになるのは、私としては嬉しい事。2部でのジョセフの腕切断の時の衝撃はスゴかったし、そういう痛みが伝わる描写が蘇ってくれるのは大歓迎です。
特に「SBR」のバトルは、西部劇であるがゆえか、一瞬でケリがつく決闘が多いワケで。瞬きする間に命が消えていく戦いなのだから、よりリアルにシビアになっていくのも自然でしょう。攻撃を食らって目玉や脳ミソが飛び散るシーンや、口を撃たれてゴボゴボ言ってるシーンも、きっと荒木先生は容赦なく楽しんで描いていると思います。週刊時代のインタビューでは「血やケガはデザインとして描いてる」と仰ってましたが、「ウルジャン」に移籍した今ならば、先生が大好きな人体が破壊される様もより写実的に描けますからね。


●この戦いもシンプルながら、智恵と機転を利かせたバトルでした。鉄球で殺した敵の肉体を回転させ、もう1人の敵も射殺させる所は、第2話のスリとの決闘を思い出させます。『タスク』の「回転」の力も強くなっているらしく、ジャイロ程ではないにせよ、撃った敵の手首をひねらせていました。銃の罠を張りつつ、ズルズルと動いて近付いて来る敵の死体も不気味です。
そして、ついに取り囲まれたジャイロ達!もう終わりかと思いきや、唐突な弾丸の雨アラレ!何が起こったのか、マジで理解不能でした。それはなんと、この戦いに巻き込まれたギャンブラー達が撃ちまくった弾丸ッ!糸を持って来させるためにブレゲの腕時計を渡したように、6000万と権利書等で彼らを「ボディガード」として雇ったのです。ジョニィに「撃たれるから伏せてろ」と言ったのは、この事だったのです。これは裏をかかれて驚きでした。周りの状況や自分を縛る制約すら利用する見事な策。いくら強力なスタンド使いでも、場合によっては一般人でも楽勝で殺せるのです。このバランス感覚が「SBR」の、「ジョジョ」の面白い所。
それにしても、このギャンブラー達も骨太な野郎共ですね。いきなり殺し合いに巻き込まれても騒ぎもせず、博打や女の事を気にしてる余裕っぷり。その上、カネであっさり雇われ、平気で殺人してるし。こいつら、カタギの人間なのか?修羅場や死に慣れていそうな彼らとのやり取りは、何とも男っぽくてカッコイイです。つーか、カネの力は恐ろしい……。彼らとの契約は破格なようにも感じましたが、命が懸かった緊迫した状態での取り引きだったから、価値も高騰していたのでしょう。


●11人の敵を撃破し、カネも全て使い切った!……と思ったら、ジャイロが「木の根」になっちゃった!「遺体」を手に入れるための試練なのに、何故か「遺体」も使い切らねばならない事が発覚!でも、なんでジャイロだけが「木の根」になったんでしょうか?最初に泉に物を落としたジャイロの方が、先に時間切れ(日没前だけど)になった?それとも、「脊椎」の一部を持つジョニィは、大樹の呪いへの抵抗力が強い?ジャイロは「右腕」を残し、ついに樹に取り込まれてしまいました。
1人、取り残されてしまったジョニィ。せっかくの「遺体」もゼロにしなくてはならない現実。いくらイヤだって、ジャイロを救うためにも、それ以外に手はありません。でも、「遺体」と等価値なモノは「遺体」しかないんじゃないかと思います。ホット・パンツが現れ、ジョニィの必死の交渉で「左腕」・「脊椎」と交換してもらうと予想。とは言え、こんな時に都合良く現れるのもおかしいし、11人は王国側の手先で、ホット・パンツはその様子を窺っていたとか適当な理由も付けて。それならジョニィの心理描写や、ホット・パンツのバックボーンも、何も語らずに散った11人の素性も、まとめて描けそうです。
あと、「木の実」化ではなく「木の根」化になりましたね。正直、「どう見ても実じゃないだろ」とは思ってたので納得です。


★今月は51ページ。カラー表紙だけでなく、ジョースター家&ツェペリ家ポスター、コミックス表紙、映画化関連のインタビュー等々……、色々と多忙だったのでしょう。ちょっとページも少なめです。それでも、ダイナミックでスピード感ある、ハードボイルドな戦いが楽しめました。
荒木先生はインタビューで「ページ数はちょうどいいけど、もっと大きい面積に描きたい」と発言していましたが、今回はそれを実感。まさにページ狭しとばかりに、大迫力の大ゴマ連発です。その分、ストーリー的な進展がほとんどなかったので、読み応えとしては少々物足りなかったのは残念でしたけど。でも、先生が本当に描きたいものを自由に描いたら、一体どんなマンガになるのかなあ?めっさ読んでみたいです。



(追記)
●ジャイロだけが「木の根」化してしまった、ちと不可解な状況。これはもしかすると、カネを消費し尽くした事が認められ、イジワルな「最終試練」が開幕したって事かもしれません。このままジャイロを見捨てれば、「両耳」も「右腕」もジョニィの物になるという条件が提示されて。泉でどちらを落としたか選んだように、最後は「友」か「遺体」かの究極の選択を迫られるのです。
樹になっても死ぬワケではないし、そのうち順番も回って来るだろうから……なんて誘惑も鎌首をもたげてきて、自問自答を繰り返すジョニィ。お約束としては、「友」を選んだ事で「遺体」に認められてハッピー・エンドってなオチでしょうが、それもちょっと安易。やはり気高く飢える者としては、「友」も「遺体」も両方選んで、樹から奪い取ってほしい所です。具体策は思い付かないけど、そういう展開は燃えるかも。




(2007年2月17日)
(2007年2月20日:追記)




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