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『ツェペリ家の息子』…… ジャイロ・ツェペリ やはり知ってたか……………
この わたしと……………… この わたしの技術……………
「砕けゆく鉄球(レッキング・ボール)」の事を……


#28 氷の世界





●トビラ絵はぶつかり合う2つの鉄球と、2つのチームの図。ウェカピポの服の柄と同じデザインになっています。4者4様の顔触れ、それぞれが抱える過去の重さと未来への決意を感じさせますね。ヘタすりゃ主人公チームよりカッコイイぞ、ウェカピポ&マジェント。


●冒頭はまたもや医者としてのジャイロの過去。グレゴリオ父上がフィレンツェへ出張中に起きた出来事。事故で大ケガをした、目の不自由な若い女性の手術のシーンです。父上が留守のため、ジャイロと母上が担当しています。よもや母上まで登場するとは思いも寄りませんでした。ツェペリ家に嫁いだだけあって、さすがに一族の掟は心得ているようですね。鉄球の振動波を利用し、水面に体内の様子を浮かび上がらせて、目の治療をしようとするジャイロ。ケガの手当てより優先し、余計な領域へ踏み込もうとする、そんな息子を厳しくたしなめております。
ケガ人の女性に身寄りはなく、元護衛官の兄も決闘で死亡しているとか……。そう、彼女はウェカピポの妹だったのです!うかつにもここまで気付かなかったんで驚きました。誰にも面倒を見る事はタブーとされている、あまりに孤独な彼女。ジャイロの優しさと甘さが、1つの行動に走らせます。闇に漂い続ける「彼女」のボールを落としてあげるために、目の手術を決行ッ!しかしその時、ジャイロの手に蒸気が!
恐らく鉄球の「回転」は不完全となり、手術も失敗。取り返しの付かない結果に終わったと思われます。彼女の死の一因に、ジャイロの医療ミスが関わっていたのでしょうか?そうだとすれば、ジャイロはウェカピポに「罪」の意識を背負ったまま戦わねばならないという事。自分の「罪」と向き合い、乗り超えなくては勝てないはず。それにしてもジャイロ、死刑執行人と医者の両面で散々な目に遭って大変な人生ですねえ。私ならとっくに廃人か世捨て人と化してますよ。


●場面は現在へと戻り、荒涼とした氷原が広がる海峡。半身が消えてナイス・リアクションで慌てまくるジョニィに、ジャイロから解説が。やはりウェカピポの「鉄球」は王族護衛の戦闘のための技術であるらしく、「WRECKING・BALL(レッキング・ボール)」「砕けゆく鉄球」と名付けられているとの事。鉄球を食らえば死ぬし、避けても衝撃波の影響で左半身失調になってしまうようです(左限定?)。『ジェイル・ハウス・ロック』を掛けられた時の徐倫と同じく、左側は目で見えていても手で触っていても脳が認識しない状態だから、消滅したかのように感じるだけなのです。
ちなみに、ジャイロの消えてる半身が左だったり右だったりするのは、作中の描写がジョニィ視点だからなんでしょう。ジョニィから見て、ジャイロの左側が消えてると。山と同様に、ウェカピポやマジェントの左側も見えなくなるのかと思いきや、別にそんな事もなかったのは謎ですが。
左半身失調それ自体は何らダメージもないものの、ここでコンビを組んだ意味が分かります。マジェントは死角の左側から回り込んで近付き、ジャイロ達をアタック!グル〜ッと周囲を見回してマジェントの位置を掴んだとしても、感覚のない左半身ではマトモに攻撃を避け切れません。衝撃波の影響は十数秒で消えますが、いつの間にか左側にキズを負っているのです。地味に効果的で、恐ろしいコンビネーション。王族護衛官っていうカッコイイ役職の割に、戦法はなんかセコいです。


●マジェント・マジェントはスタンド使いでした。メカニカルな鎧のようなデザインのスタンドで、本体:マジェントが身に纏って能力が発動。能力は絶対防御能力とでも言うべきか、マジェントが食らったエネルギーを別の場所へと伝導・拡散させる能力みたい。めんどくさがりで動き回るのが好きじゃなさそうな感じの彼には合ってます。
ただ、わざわざ地面に座り込んでガードしている事から、マジェントが触れている面積の大きい場所へ優先的にエネルギーが逃げていくのかもしれませんね。攻略法は、どこにも触れていない状態(ジャンプ中など)の時に攻撃するとか。それこそ氷を割って湖に落としてしまっても勝てそう。もしくは、能力発動中は動く事自体できないルール?移動するエネルギーってのは『サイレント・ウェイ』や『タスク(黄金回転)』を彷彿させますが、きっと思わぬ使い方をして読者のド肝を抜いてくれると思います。ウェカピポがあえてマジェントに鉄球をブチ込んで、その衝撃波を地面から伝わらせたりとかはありそう。
スタンド名もSOUL'd OUTの曲名から取られるのでしょうか?だとすれば、何でしょうね?『キャット・ウォーク』かな?目もネコっぽいし、ネコの足みたいなのがいっぱいあるし、しゃがみ込んでいるマジェントの姿がネコに見えなくもないし(強引)。まあ、ネコよりはウサギに似てるけど。


●爪の補充のためにハーブを食らいながら、ジョニィはある疑問を口にします。まだ「遺体」を発見してもいないのに、どうしてヤツらは襲って来たのか?ジャイロは、すでにヤツらは「遺体」の在り処を掴んだのではないかと推測。ジョニィは反論するものの、実の所はその通りでした。あの11人の男達の生き残りの証言と大統領の助言、そして、密かに昨夜から行われていたジョニィ達の観察から、すでに「両脚部」の位置に気付いていたのです!まさか11人の男達が再登場するとは……。やっぱ過去のエピソードが結び付いて来ると面白い。でも、本当は「右腕」なのに「左腕」と間違えてるよ!
ウェカピポが確信した「遺体」の位置とは、ジョニィが餌をあげたというあの子狼ッ!子狼の中に「両脚部」が眠っているという事なんでしょうか?それとも、子狼は「遺体」の守護精霊の役目を与えられていて、何らかの条件を満たした時に「両脚部」が現れる?同情したりせず、あえて殺す事が出来ればとか…、襲って来るのを避けず、あえて咬まれればとか…、そんなんかな?子狼は早く「遺体」をあげたくてウズウズしている御様子。やたらジョニィにつきまとっていたのも、実は「遺体」を持っているからだったワケですね。こういう形で子狼が関わって来るなんて、まったく予想外です。


●ようやく爪が生え揃ったジョニィ。しかし、ここでまたジョニィのビックリ発言。彼は今まで爪を回す時、自然物の中の「黄金長方形」を見ながら「回転」させていたと言うのです。馬も逃げて、動植物もいない。この氷の世界では「黄金長方形」が見付からず、「回転」が不完全になってしまう。じゃあ、ミルウォーキーのカジノではどうしてたんだよ?ってな疑問も浮かんで来ますが、とにかく大ピンチ!その上、ジョニィのみならず、ジャイロまで鉄球を弾き落とされる始末。本当にスケールがないと「黄金回転」できないのか!?
確かに今回の回想のジャイロも、手術室の窓から見える木々や葉っぱを見てました。でも、自然物の存在しない室内や馬が逃げた夜の砂漠でだって平気で「回転」出来ていたんだから、大丈夫なんじゃねーのって気もします。ただ、このエピソードでは子狼を「黄金のスケール」にして「回転」させるってオチになるのかも。氷原という舞台、同じ鉄球使いという強敵、これらの設定を巧く利用した「黄金回転」の弱点でした。普通の敵ならともかく、ウェカピポが相手となると、不完全な「回転」では遅れを取ってしまうのです。
とは言え、いくら「黄金長方形」を見てても不意の出来事で失敗する事もあるんだし、逆にスケール無しで「黄金回転」させる方法くらいツェペリ一族は編み出してるのでは…とも思うんですけどね。ジャイロが競り負けたのも、ウェカピポへの「罪」の意識に伴う「漆黒の意志」の弱さ故とかで。


★今月は45ページと、残念ながらいつもより少なめ。荒木先生は現在、週に15ページ執筆されているようなので、1週間の休息を取られていたのかもしれませんね。ちょっぴり早い盆休み?でも、内容も濃く、読み応えはなかなかのものでした。しかも少なかった分、コミックスでは加筆される可能性もあるし。
ウェカピポは相変わらずのカッコ良さではありますが、たまに口ヒゲの描き忘れがあるのが気になりました。あれがあるのと無いのとでは、イメージが全然違ってしまうので、コミックス時は修正されてるといいな。次号こそウェカピポの「回転」の原理が明らかになる事を願って、再び1ヶ月を楽しみに待とうと思います。



(追記)
●先日、良忠さんという方から#28の感想に関するメールをいただきました。興味深い内容だったので、それを参考にしながら追記を書かせていただきます。(ご本人の了承済みです。)
視神経や脳に影響を与える鉄球を操るウェカピポ、視神経を繋げる手術をすべく鉄球を操る冒頭でのジャイロ、この両者の描写は実に対照的。命を奪う事を目的とする「レッキング・ボール」と、命の尊厳を守る事を目的とする「黄金の回転」。この2つの鉄球技術の違いを端的に表したシーンですね。
更に……、破壊に特化している点、衛星を降らせる点、「砕けゆく」というイメージ等から、「レッキング・ボール」は大気圏に突入する流星か彗星をモチーフにしているとも考えられます。本体が当たれば即死、当たらなくても凄まじいスピードのカケラが襲い、それを避けても視界をしばらくの間奪う。なるほど、隕石の衝突と酷似しています。直撃すれば圧倒的な破壊と衝撃を生み、それを免れたとしても地表には灰や塵が舞い上がって、暗闇と氷の世界が待つ。まさしく、全ての生命を奪う「流星の回転」です。
「黄金の回転」VS「流星の回転」!これはフレーズ的にもカッコ良くて、何か燃えますねッ!自然界に秘められた力が、自然や地球そのものを滅ぼしかねない程の力にどう立ち向かっていくのか?必見です。




(2007年7月18日)
(2007年8月14日:追記)




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