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ブリザードと氷の海峡を越えて来たのはジャイロ・ツェペリだッ!!
一着でゴォォォォオオオ―――ルッ!!


#31 6度目のゴール





●今回のトビラ絵は、腕を天に向けて伸ばしたジャイロ&ジョニィ。2人とも勇ましい表情で、特にジャイロは微笑みを浮かべたような希望と自信に満ちた顔付きです。「トップはオレだぜ!」と言わんばかり。


ジョニィのモノローグから幕を開けます。このSBRレースでの長き道のりを振り返っての叙情的な独白。これまではバトルばっかに焦点が当てられがちで、彼らのレース中の日常があまり描かれていませんでした。彼らが一体、どんな旅をしてきたのか。その一端が窺い知れます。これがまた興味深く、味わい深い。
話はスタート直後のアリゾナ砂漠横断の頃まで遡ります。気温が50℃を超える午前11時から夕方までは日陰でひたすら寝た事、夜は月が出ていれば進み、闇夜なら即刻キャンプをした事、キャンプ時には数時間かけて馬の毛並みのブラッシングをしてやる事、危険な地形は注意して進んだ事……。そして、砂漠を越えた後では、河を渡る時が最大の難所であったという話。そんな厳しい旅の中での格別の楽しみが、ジャイロ特製イタリアン・コーヒーであるという話。今いる極寒の地では、吹雪が前方から吹き付けてくる時は、じっと暖をとって風向きが変わるのを待ち続けているという話。……解説王ジョニィの語りは止まる所を知りません。
こうやって描写されると、今までとはまた違った視点でレース・シーンを読み返せそうです。ダイナミックでスピード感たっぷりの華麗な走りの裏には、こんな地味な苦労ささやかな喜びが秘められていたんですね〜。ジョニィの表現通り、このレースはいかに地形と天候を読み、いかに自分と馬の心身のエネルギーを温存するか、そしていかに温存したエネルギーを爆発させるかという、「繊細」と「大胆」をギリギリのラインで見極める自分自身との戦いなんでしょう。的確な観察力と決断力と行動力、それらを兼ね備えた者だけが生き残れる過酷なレース。


●いよいよ6th.STAGEのゴールも目前!ブリザードが吹き荒ぶ中、トップを走るジャイロ達にポコロコ達が迫るッ!ゴール前のデッドヒートを描いて盛り上げるためという作品的・作者的理由も、ここまで堂々と「不思議」「偶然」で片付けられてしまうと、もはや納得する以外にありません。それが強者同士の引力なのだから。
ジョニィはポコロコの乗馬テクニックのみを見て三流と評しますが、ジャイロは総合1位という事実から最大の強敵と考えます。ジャイロの警戒は正しく、ポコロコは絶対の「幸運」に守られているのです。1st.STAGE以来、初めてポコロコのスタンド「幻覚さん」登場ッ!ポコロコもやっと喋った!ポコロコはちょっとシリアスでシブくなっちゃってますが、幻覚さんは相変わらずのお気楽っぷり。いや〜、随分と待たされましたねえ。まさかこんなにも長い間、スポットが当たらなくなるとは、当時は思いも寄りませんでしたよ。
ポコロコ達に追われるこの状況で、ジャイロ達は意外と冷静。ゴールまでの距離の予測で読者の笑いも取れるくらいの余裕も見せております。ブリザードが晴れた瞬間、クレバスが大きな口を開いて待ち構えていても、まるで動じず!『タスク』の「穴」で鉄球を削って長〜く伸ばし、そのワイヤーで橋を作ってしまいました。道が無いなら自分で作る!正に開拓者のフロンティア・スピリッツ!見事なコンビネーションでした。2人の信頼は「雪の中の乾杯」以降、ますます揺るぎないものになっていますね。しかも、やはりレースになるとジョニィが主導権を握っている感じがするのが、2人の関係の面白さです。


●ブリザードを超えて、ゴールゲートを最初にくぐったのは……、我らがジャイロ・ツェペリ!!とうとう、とうとう念願の1位がジャイロの手にッ!!今度こそ文句のつけようもない完全勝利!!歓喜よりも安堵の表情を浮かべ、むしろ2位のジョニィの方が大喜びしてます。
さて、ここらでちょいと順位をまとめてみます。6th.STAGEの順位は恐らく、1位・ジャイロ、2位・ジョニィ、3位・ポコロコ、4位・ノリスケさん、5位・バーバ・ヤーガって所でしょう。そうすると、現在の総合順位は、273Pでポコロコが1位。246Pのジャイロが2位。245Pでジョニィが3位。4位は223Pでノリスケさん。……といった具合になるはず。1着ゴールのおかげで、ジャイロが総合6位から一気に2位へと躍り出ました。たった1P差でジョニィも続きます。「優勝」の2文字もおぼろげながら、視界に見えてきましたね!
この敗北でポコロコも自身の「幸運」への疑念を抱くのかもしれません。「幸運」に頼って守られているだけでは、真の勝利と栄光は掴めない。自分の目的を見つめ直し、道を切り開いていかなくては。ライバルであるポコロコの生長も描いてくれると、レースも一層白熱&緊迫すると思います。


●ゴールの歓声鳴り止まぬマッキーノ・シティ。そこよりやや離れた場所に、血まみれの靴で歩く男が。男は血を吐き、雪の上に倒れ込んでしまいます。その男はなんとマジェント・マジェント!そう、マジェントはまだ生きていたのです!あっけなく死んだな〜などと思っていたら、しぶとく生き残っていました。「もっと早く飛行機が発明されてりゃなあ」なんて毒づきながらも、裏切ったウェカピポに対して憎悪と殺意を燃やしまくっています。正直、かなり意表をつかれ、ビックリな展開。
ウェカピポがルーシーの護衛に就いた事も聞いていて、大統領サイドからすれば超有益な情報です。復讐に燃えるマジェントが何者かとコンビを組んで、ウェカピポとルーシーに襲い掛かったりするんでしょうか?手を組んでいた者同士が、敵として向き合うってのも新鮮だし。防御スタンドがもっともっと有効に驚異的に応用されると嬉しいですね。いくら復讐を誓ったとは言え、あの変な性格も残ってくれていると更に嬉しい。惜しい敵キャラが次々と葬り去られていった「SBR」では異例の扱いです。物語をメチャメチャに引っ掻き回してくれる事を期待します。
7th.STAGE「フィラデルフィア・トライアングル」。ウェカピポとマジェントの因縁さえ巻き込んで、バトルもレースも遺体探しも大波乱の予感ッ!ウェカピポもマジェントも好きだから興奮を禁じ得ません。次回も楽しみすぎる!


★今月はたったの37ページ。久々のレース・シーンはスゴい面白かった。やっぱ馬が疾走する絵は迫力満点で美しいですよ。でも、あっと言う間に読み終わり、なんだか物足りない気分。コミックス14巻が12月4日発売らしいですが、きっと14巻は今回の分までの収録なのでしょう。減ページの月が続いた分、コミックスはいつもより厚くなりそうです。今回はそのページ数合わせのための調整でもあったと思われます。荒木先生自身、まだまだ色々と忙しいようですからね。本編が短くなるのは不満がありますけど、まあ、こんな事が続くのも「ジョジョ」20周年の今年いっぱいってトコでしょうし。
そして、サプライズがもう1つ。乙一氏の「ジョジョ」4部小説が、ついに刊行決定!「読むジャンプ」にプロローグが掲載されたのが、もうかれこれ5年も前の話。予想以上の出来だったので発売を楽しみに待っていたのに、それからというもの一切音沙汰無し。すでに存在すら無かった事にされたかと思っていたのですが、こいつは嬉しい誤算でした。
連載20周年記念ジョジョ祭りは、まだまだ終わりそうにありません。




(2007年10月18日)




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