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ジャイロ…… 迷ったなら『撃つな』… …………だ!
だが もう『迷い』はない


#35 追憶の館C





●2ヶ月振りの「SBR」は表紙&巻頭カラーの「SBR」祭りッ!表紙を飾るのは1年振り。巻頭カラーに至っては、ウルジャン移籍直後以来ですね。それだけで2ヶ月もの間、待ち続けた甲斐があったというものです。
その待望のカラーイラスト、やはり素晴らしかった!表紙イラストもトビラ絵も似たような絵で、それぞれ3パターン描かれています。表紙では、寝そべるジャイロと眼光鋭いジョニィ。トビラ絵は「回転」の穴に飲み込まれながら、心持ち微笑を浮かべている逆さまジョニィ。そして、見開きトビラ絵ではジャイロ・ルーシー・ウェカピポ・大統領・ディエゴの豪華メンバー揃い踏み!こいつは興奮せざるを得ません。咲き誇るバラが巻き付いた石柱やバックの紫とも相まって、荘厳かつ静謐な空気が感じられる絵ですね。美しさの中に神聖さがあります。荒木先生のカラーイラストはやっぱスゲーや!
本編に行く前にもう1ページ、カラーが楽しめます。ジョニィが亡霊共に手足を引きちぎられる凄惨なシーンですが、赤と黒と黄のみで塗り尽くされてインパクト大ッ!コマ割りっつーか、コマの形にしてもデザイン的で実験的。このページ全体で1枚の絵として描かれている感じがします。


●自分を撃ち抜いたジョニィは生きていました。更なる進化を遂げて!「黄金の回転」とは無限への軌跡。その「回転」を持つ『タスク』の「弾痕」の中へ自分自身を巻き込む事により、肉体は無限に続く螺旋の究極の地点・最後の場所へと到達。効果は『タスク』の回転持続時間の十数秒間だけですが、それはツェペリ一族も考えなかった新しい世界
「弾痕」に自分の腕を潜り込ませ、切り離した状態のまま自由自在に動かしています。より正確でトリッキーな狙撃が可能になりました。イメージ的には、ジッパーや糸で腕を伸ばした『スティッキィ・フィンガーズ』や『ストーン・フリー』が近いかな。肉体を分離する『クリーム・スターター』とも似てますね。そして、「弾痕」と「弾痕」が空間を超えて繋がり、ワームホールみたいな存在になっているようにも見えます。無限の最終地点とはある種の「特異点」であり、「特異点」と「特異点」は互いに繋がっているって事なんでしょうか?だとすれば、6部とも通じますね。
なんか分かるような分からんような理屈ですが、これが恐らくジョニィの最後の能力。守護精霊ことチュミーちゃんにもついに脚が生え、人型に成長しました。『エコーズ』もそうでしたが、人型になると「これで終わりかな」って思えますよね。モンスターチックなデザインなクセに、つぶらな瞳はそのまま。かわいいけど不気味です。


●『シビル・ウォー』の本体の名はアクセル・RO(ロー)!ガンズ・アンド・ローゼスのボーカリストであるアクセル・ローズが元ネタでしょう。そんなアクセルさん、生長したジョニィにあっさり殺られちゃいました。弱ッ!……と思わせといて、華麗に復活!今の彼はジョニィの「罪」によって生まれた存在。だから、ジョニィが「罪」を背負っている限り、彼は決して殺される事はないのです。こっちは分かりやすい理屈ですな。「罪」に護られているというのが、皮肉で面白い発想だと思いました。
ジョニィの「遺体」もアクセルが全部奪っちゃいました。「両脚部」も「脊椎の一部」さえも。本来ならこの時点でジョニィのスタンド能力も消滅してしまうはずなんですが、普通に爪弾をブッ放してますね。今回の生長によって、「遺体」に依存した能力ではなく、紛れもない自分の「新しい能力」として再発現したのかもしれません。え……?荒木先生がまた設定を忘れただけじゃないかって?まあ、それはそれとして。
ドグサレ野郎のアクセルでも、「遺体」はしっかり体内へと宿ろうとしてくれてる様子。スタンド使い(素質ある者も含む)ならホントに誰でも「遺体」を宿せるみたいですね。人格の善悪も力の強弱もあんまり関係なさそう。平等と言えば平等だけど……、もうちょっと選んだ方いいよ、イエス様。


●ジョニィの「漆黒の殺意」再び。弾痕ワームホールを通じて、アクセルから「遺体」を奪い返そうとするジョニィ。いや……、奪い返すのではなく、敵に奪われるくらいなら「遺体」を破壊しようとしています。弾痕ワームホールはジョニィ以外の物質が侵入すると、その「回転」のパワーで削られてしまうようです。ジョニィは命よりも大切な「遺体」をも捨て去ろうというのか?
その眼差しに灯るは、まさしく漆黒の炎。かつてリンゴォが見抜き、ジョニィを高く評価していたものこそ、この「漆黒の心」。真に追い詰められた時には、冷徹に人を殺せるという暗黒面です。ジャイロはそれを見て、ジョニィに「お前は間違ってる!やめろ!」と説得してますが、ならばジャイロの言葉は果たして正しいのでしょうか?負ける事を受け入れ、「遺体」をおとなしく敵に渡す事さえ考えているジャイロの言葉は……?友が悪に堕ちるのを止めたいのだとしても、同時にローマ法王庁を気にしたりもしてるし、やっぱりジャイロの心の根底は受け身の対応者なのかも。
間違った道、正しい道、新しい道……。進むべき道とは、一体何なんでしょうね?難しい問いです。


●ブチ切れたアクセルは、強引に弾痕ワームホールに腕を突っ込み、そのままナイフでジョニィの首を一突き。罵詈雑言を吐き、必死に抵抗しまくるアクセルの姿は、ちょびっとカッコ良く見えました。本気で戦うヤツはどんなに無様でも美しいもんです。
首を刺されて、なんとジョニィはマジ死亡!ところが次の瞬間、アクセルと同じく『シビル・ウォー』の能力によって復活!先程の「漆黒の意志」は「遺体」を捨てる覚悟などではなく、あえて一度死ぬ覚悟を決めたからこそのものだったのでしょう。殺してもらうために、わざと「遺体」を破壊しようとしたのです。おっかぶった「罪」も全てアクセルに戻りました。敵の能力を逆に利用し、文字通り命を懸ける。う〜ん、「ジョジョ」ですねえ!
死と再生。ジョニィとイエス・キリストが重なります。しかし、こんな事になった以上、復活したアクセルもジョニィもちゃんとした肉体を持った存在って事なんでしょうね。『シビル・ウォー』の本体であるアクセルと、アクセル自身の手で捨てた(殺した)ものだけは受肉される、とでも都合良く解釈しとくべきか。そうじゃないと、能力が解除されたらジョニィも消えちゃうし。


●なんとまさかの大統領登場!なんてアクティブな大統領だ。斧でジョニィに襲い掛かるアクセルに銃を発砲!これはジョニィを助けるための正当なる防衛であり、「罪」にはならないとの事。死んでも蘇る敵を倒す方法が、まさか第3者の正当防衛とは驚き。あっけに取られつつも納得できます。
でも『シビル・ウォー』って、そーゆーもんなの?ただ捨てただけの本やらトロフィーやらも出現してたんだし、法的に「罪」に当たるかどうかは関係ないような……。いや、アクセルが死んで復活した時点で『シビル・ウォー』の能力は完成し、それがキッカケで発動条件も変化したのかもしれませんね。アクセルは過去の「罪」への罪悪感にさいなまれた末、「罪」=何かを捨てる事であり、それは同時に、前へ進むための「通過儀礼」でもあると考えるようになり、自分を正当化してきたのでしょう。しかし、自分の「罪」をおっかぶせて清めてしまえば、もうそんな事はどうでもいい。単純に「罪」=法を犯す事という認識に変わり、法さえ守っていれば何を捨てようと影響なくなった、と。まあ、こじつけです。(この辺は後に『スタンド私評』の方で再解釈してみました。)
大統領が「もうちょい頑張ってね」と言った直後に息絶えるアクセルには笑っちゃいましたが、状況はかなりヤバイです。「両眼部」と「頭部」以外の全パーツが一気に大統領の元へ集まりました。H・Pもジャイロも「右眼」を持っていなかった事から、謎の敵はH・P以外にも存在し、そいつこそが「右眼」を持っていると推理もしてしまうし。今回の大統領はいつになくステキ。「遺体」総取りでパワーアップも期待できます。敵が強くなればなるほど、主人公がピンチになればなるほど、物語は盛り上がりますからね!


★今月は61ページ!カラーも最高、ページ数も大ボリュームで内容も濃厚でした。二転三転する展開や奇妙な荒木理論に、圧倒されたり唖然としたり。その一方で、各キャラクターの内面や心理もキッチリ描いてみせるトコが燃えます。これぞ「SBR」。
レースも終了まで残り約5日。それでも次の展開が読めません。次のエピソードはルーシー側になるのかな?ウェカピポとマジェントの激突か?ディエゴもそろそろ出張って来てほしいし、無事に元に戻ったH・Pが今後どうするのかも気掛かりな所です。ゴール間近とは言え、まだまだ物語が激動する要素はたっぷり。もっともっと面白くなりそうですし、もう1年は連載が続いてほしいなあ。




(2008年3月18日)




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