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自分が思っているよりも お互いの距離は実際は
ずっと近いみたいだぜ


#41 真の力(パワー)D





●今回はとっても珍しく、トビラ絵は無し。1ページ目からいきなり本編開始です。
躊躇も容赦もない敵の猛攻に、追い詰められてしまったジャイロ。ここに来て、ようやくダンディが重い口を開いてくれました。彼が話したのは、自分のスタンド名。ただそれだけ。無駄口を叩いている暇があるならさっさと攻撃するという、彼のプロフェッショナル魂を感じますね。見た目といい、立ち居振舞いといい、実に洗練されていてダンディ過ぎます。
……で、そんな彼のスタンド名とは『チョコレイト・ディスコ』。なんと、今をときめく女性3人組テクノポップアイドルユニット、Perfume(パフューム)の曲名が元ネタでした!ウェカピポ&マジェントに続いて、またも邦楽から!記念すべき、初の邦楽スタンド!こいつはマジにビックリです。一体、どんな理由と接点があったのでしょうかね?Perfumeかプロデューサーの中田ヤスタカ氏と、何らかの接触があったとか?あるいは、奥様か娘さんに勧められて聞いてみたら、荒木先生も意外と気に入っちゃったとか?まあ、人名・スタンド名の1つや2つで大騒ぎするのもどうかと思いますが、「邦楽聞くとムカつく」とまで言ってた昔に比べ、つくづく荒木先生も変わったなあ〜と。そういう微妙な変化に伴って、表現や思想の幅も広がってくれるなら嬉しいですね。
それに、このスタンド名、能力ともピッタリとマッチしてますよね。無数のマス目は、まるで板チョコ。能力に翻弄され、必死に逃げ惑う標的の姿は、あたかも踊っているかのよう。街中がダンスフロアです。まさしく『チョコレイト・ディスコ』です。キュートなネーミングとは裏腹に、厄介極まりない恐ろしいスタンド!


●ダンディが毒薬を投げ捨てると、ジャイロはすかさず鉄球を投擲!しかし、それがダンディに届くよりも先に、ダンディはスタンドのキーを押し、毒薬も鉄球も全てジャイロに降り注いでしまいました。どうやら『チョコレイト・ディスコ』、複数のキーの同時押しも可能な様子。
早くも絶体絶命!……かと思いきや、不思議な事にジャイロはほとんど無傷。直撃したはずの毒薬と鉄球も、ジャイロの後方に外れています。何度攻撃を繰り返しても、どういうワケか一向にジャイロに当たらない。ジャイロはどんどん近付いて来る。COOLなダンディもさすがに焦り始めます。
ここでジャイロのタネ明かし。さっき2発同時に投擲した鉄球の「回転」によって、周囲の空気を集めて、その密度で光線を屈折させていると!つまり、ダンディとジャイロの間には空気のレンズが出来ており、実際の位置と視認している位置とでは大きなズレが生じているのだそう。水で鏡を作った、ケンゾー戦でのF・Fっぽい戦法ですね。鉄球は何でもアリだな!とは今さら思いません。むしろ「ジャイロってかっけーなー!」と思いました。
この辺りのズレている絵が、奇妙な空間を創り出していてステキ。見てるだけでも距離感が狂いそうな絵です。前号の、ヒビ割れを境にズレたジョニィのトビラ絵、密かに今回の展開をも暗示していたのかも?


●いよいよ窮地に立たされ、ダンディは苦し紛れに銃を向けます。しかし、あんなに息を荒げ、冷や汗ダラダラ、スマートさを失った今では、もはやダンディズムのカケラもありません。負け犬ムードがプンプンです。対するジャイロは、小粋なセリフも挟みつつ余裕綽々。最後の一騎打ちもあっさり勝っちゃいました。すっかり情けない感じになってしまったダンディですが、それでも命乞いもせず、一切の情報も漏らさず、攻撃を諦めなかったのは御立派。自分の体ごとマス目攻撃でジャイロを貫いて、命を散らせたりすれば最高だったんですけどね。
……あ、ちなみにダンディの本名はディスコらしいです。スタンド名に比べ、なんてテキトーで安直なネーミング。
そんなワケで、ディスコさんを再起不能にしたジャイロ。彼の生長と、不要な殺しはしないというスタンスが現れた戦いでした。あっさり風味なのも、ラストバトルに向けての前哨戦って意味もあるのでしょう。もともと「SBR」はこれまでのシリーズと比較すれば、バトルの内容そのもの以上に、それぞれの人間の生きる姿勢や思想を濃く描こうとしているようですしね。


●ジャイロは謎の敵に撃たれたジョニィの行方を捜し出します。ディスコと共に現れた大統領らしき人物が隠れた木の影には、すでに誰の姿も無し。手掛かりを掴むべく、公園で遊んでいた子ども達に聞き込み調査をスタートです。どこで撮ったんだか分からない写真を見せると、子ども達は「ディエゴが犯人だ」と証言。ところが、双子の女の子(母親じゃなかったんだ…)は「ウェカピポが犯人だ」と証言。冷静に問いただしてみても、証言は真っ向から食い違い。男の子達と女の子達のやり取りが笑えます。
子ども達がウソをついているワケではない。ディエゴの変装でもない。スタンドによる幻覚でもない。ジャイロはあれこれ推測するものの、「答え」には辿り着けません。それどころか、今度は絵描きのじいさんが大統領そっくりの犯人の似顔絵を見せてくる始末。大統領が犯人?3者3様の目撃証言に、ジャイロは完璧に混乱。このあまりに不可解な状況自体が、すでにスタンド能力なのか?ジャイロはどうにか今の良い面だけを考え、ポジティブに立ち向かおうとしてますが、読者からしてもホントに何が何やらさっぱり分からねー!
ここのシーンの、色を失ったジャイロの描写が美しいです。線も細く引かれてるし。これも新しい表現ですよね。なんか、1人だけこの状況に取り残された孤立感・喪失感・焦燥感が滲み出ている、印象的な絵でした。


●場面は一変。描かれているのは、ディエゴとウェカピポ!彼らの会話から、なんと2人が裏で手を結んでいたっぽい事が明らかにッ!?ウェカピポの野郎、裏切りやがったな!……と激怒したい所ですが、お茶でも飲んで、落ち着いて考えてみましょう。
マジェント戦でのウェカピポは、間違いなくルーシーの救出のために命を張っていたし、ディエゴにルーシーの情報が渡った事に危機感を抱いていました。だから、彼の目的はあくまでルーシーの護衛。これに揺らぎはないと信じます。では、この場において、ディエゴの目的とは何か?言わずもがな、「遺体」の独占です。そして、ルーシーは「右眼球」を所持している(と認識されているはず)。つまり、「ルーシーの確保」はある意味、2人にとって同一の目的なのです。
どちらが先にルーシーを発見しても、ルーシーは生かしたままウェカピポに、「右眼球」はディエゴに渡す。ルーシーさえ救出できれば、ウェカピポもディエゴの邪魔は一切しない。だが、せめてジャイロとジョニィは殺さない程度にしてやってくれ。こういう取り引きを、2人は密かにしていたものと推理します。
バカ正直でクソ真面目なウェカピポは、「これでルーシー発見の可能性も倍増だ!」と喜んだ事でしょう。しかしディエゴは、ウェカピポがスティール氏の近辺を調査しようとしてる事を、こっそりマジェントにも教えてやります。ウェカピポを憎んでいるマジェントをぶつけ、情報収集と時間稼ぎ、あわよくば相討ちまでも狙ったのです。
マジェントが生きていた上、ディエゴの恐竜が一緒にいた所を見て、ウェカピポはやっと自分が利用されていた事に気付いたのでしょう。ディエゴは信用できない。このままでは、ディエゴは自分を出し抜いて、ルーシーを殺してでも「遺体」を奪い取るに違いない。ディエゴを問い詰め、場合によっては始末する必要もある。そうして彼を追い、今に至るというワケです。これがたぶん一番しっくり来るんじゃないかな〜?ウェカピポVSディエゴ、開戦!?


★今月は43ページと、またまた減ページ。でも、内容がギッシリ詰め込まれ、物足りなさはあまり感じませんでした。つーか、状況が混乱しまくってて理解が追い付かないせいか……。目的も思惑も違うヤツらが終結してるから、かなりカオスと化しちゃってます。その分、想像の余地がいっぱいあって面白くもありますが。
ジョニィを撃った敵、あれは大統領ってのもアリなのかもなあ。L.A.であってほしい気持ちもあるけど、能力が謎すぎて。目撃証言がバラバラなのは、大統領の能力で周囲の時間がズレていたから?男の子達の位置から見た時と、女の子達の位置から見た時とでは、謎の敵がいた地点の時間経過が異なっていて、ちょっと前にあそこをウロついていたディエゴやウェカピポの姿が映っていたとか?絵描きのじいさんの位置は能力射程外だったため、普通に犯人の大統領が見えていたとか?ここまでデカい流れを生み出してしまった以上、ラスボス級の能力の片鱗に感じられます。この謎が明かされる時はいつなのか?
次号は「SBR」が表紙を飾るとの事。どんな美麗イラストが拝めるのか、今からワクワクです。



(追記)
大統領の能力予想。ジョニィを撃った謎の敵の正体が大統領で、一連の不可解な現象が彼のスタンド能力によるものだったと仮定しての予想です。ちょっと長くなりますが。
大統領のスタンド、それは時間を戻す能力。『バイツァ・ダスト』や『マンダム』とはまた違ったアプローチで描かれているのです。能力を発動させると、大統領から半径数m〜十数m程の射程内にいる者は数秒の間、「過去」に戻ってしまいます。ただし、本当に時間が巻き戻っているワケではなく、「過去の映像」を見せられているような感じ。これは能力発動時、大統領からの距離が近かった者ほど、遠い過去を見せられます。
ディスコと共に現れた際、大統領はスタンドを発現させていましたが、能力はすでに発動していたのです。大統領からの距離が近かったジャイロは(例えば)「3分前の世界」を感じ、遠い位置にいたジョニィは(例えば)「30秒前の世界」を感じたと。そのため、「3分前の世界」にいるジャイロには大統領もジョニィも見えず、ジョニィからの声も届かなかったのです。他の者達が「過去の世界」を感じている中、本体の大統領だけが「今の世界」を動き回る事が出来、一気にジョニィへ接近したという事です。
今回の複数の異なる目撃証言も、前述の通り、それぞれの証言者の「体感している時間」が異なっていたため。恐らく、ジョニィが撃たれる直前に一度、能力は解除されたものと思われます。ジョニィが間近に迫っていた敵の存在と正体に気付いたワケですからね。『スタープラチナ』や『マンダム』と同様に、この能力も数秒のインターバルを置かなくては再発動は出来ないのでしょう。銃撃後、改めて発動された能力によって、公園内の人々も射程内に入ってしまいました。あの公園周辺をディエゴやウェカピポもウロついていたのは前もって描かれていたので、「体感している時間」の違いで公園内の人々が偶然にもディエゴを見たりウェカピポを見たりしたという事。絵描きのじいさんは射程外か射程スレスレの位置にいたため、大統領の姿が見えたのでしょう。じいさんの言葉通り、子ども達はハッキリと犯人がジョニィを銃撃した場面を見てはおらず、銃声や残された血痕、ジャイロの質問などから「あの男が銃で撃ったんだ!」と思い込んだのかも。
さらに、直に大統領が触れたモノならば、その「影」を媒介にして、より自在に「過去の映像」を映し出す事が可能。ルーシーのブーツの影から、ルーシーの脚の「過去」を再現し、大統領自身がそれを見て彼女を追跡していました。その応用として、(ただ「過去の映像」を見せるだけではなく)実際に時間を戻す事も出来ます。作中では、大統領自身が影に潜って、自分の肉体を「過去」の状態にまで戻していました。
こんな感じで、大統領の能力を「過去」というキーワードで括れば、全ての謎の事象にも説明が付くのです。……たぶん。




(2008年9月18日)
(2008年9月28日:追記)




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