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『Dirty deeds done dirt cheap』
いともたやすく行われる えげつない行為”


#44 大統領が来る!A





●トビラ絵は、橋の上に佇む大統領のスタンド!禍々しくも美しい、実に絶妙なデザインですね。このまま彫刻にでもしてしまいたいくらいカッコイイです。
橋の上っていうシチュエーションも、後述する彼の能力を暗示しているかにも見えます。まさしく、別の世界へ橋を架けるスタンド。


鉄球=意志!!6部を彷彿とさせるアオリで幕を開ける今回。明確な敵意・殺意を持って、とうとう大統領へ鉄球をブチ当ててしまったウェカピポ。これで自分の居場所はどこにも無くなったのです。しかし、彼の心には絶望などなく、清らかな希望さえ芽生えていました。
ウェカピポはいつも誰かを護るために生きていました。妹、国王、大統領、そしてルーシー。何か意味のある「大きなもの」のために護衛し、戦う。居場所など無くても、それだけで充分。それしか出来ない性質。一度も会った事もないちっぽけな女の子のために、一国を敵に回してしまっても、後悔は微塵もありません。戦場には似つかわしくないくらい、彼の心は穏やかに安らいでいます。
どこかでルーシーを妹と重ねているのか、ちっぽけな少女だからこそ護る意味があるからか、大統領=「悪」に立ち向かえた事でやっと「正しい道」を歩めるという誇りが生まれたからか。損得を超えて、迷いを断ち切ったウェカピポ!複雑な男が今、シンプルにッ!わずか2ページの中に不思議な感動がありました。ウェカピポ、カッコイイよ。でも、なんかこれで彼の人生が救われ、完成してしまったかにも思え、死亡フラグっぽくも感じられたり……。どうにか生き抜いてほしいもんです。


●命中したはずの鉄球が、大統領の顔面をすり抜けてしまった!ポッカリと穴が開いた大統領の顔には、無数の幾何学模様が浮かび、どことなく神秘的でSFチック。想像を超えた謎の能力に、ディエゴも思わずたじろぎます。襲い来る大統領の攻撃を恐竜化で交わしたディエゴは、そのまま逆襲!首をヘシ折り、壁に叩き付けてやった……かに見えたはずが、なんとまたもや大統領は消えていました。しかし、ウェカピポは目撃します。ディエゴの肉体と同化するようにすり抜けて来る大統領の姿をッ!『TATOO YOU!』を思い出させる絵ですね。
再度、大統領の攻撃!それを「レッキング・ボール」衛星弾の左半身失調で回避。王国護衛官の本領発揮です。左半身失調は効果覿面のようで、投げた石コロも頭の左側に直撃。ちょっぴりマヌケな図だけど、それもまた大統領らしい(笑)。ウェカピポに感謝しつつ、大統領へ襲い掛かるディエゴ!この辺は、ディエゴとウェカピポがナイスコンビになった感じで、見てて面白いです。
大統領は国旗にくるまったかと思うと、またまた姿を消してしまいました。でも、大統領の匂いは感じる!大統領は国旗の下にいるはず!この能力の正体を掴めるのは、左半身失調の効果が切れる前の「今」しかない!覚悟を決めて、国旗をめくるディエゴ。……そこには、やはり大統領の姿。国旗に溶け込むように「平面」になっていました。吸血鬼の如く「URYYYYYY」と雄叫びを上げて、ディエゴは手刀を繰り出します。ところが、逆に大統領に捕まり、ディエゴの肉体まで国旗の中へと引きずり込まれていく!


●その先でディエゴが見たもの、それはあり得ない光景でした。そこにいたのは、ウェカピポともう1人の自分、そして2人の大統領だったのです!向こう側のディエゴとウェカピポも、国旗から突然現れたもう1人のディエゴと大統領に驚愕!大統領のスタンドは『マン・イン・ザ・ミラー』に似た部分もあり、許可したモノだけ・許可した部分だけを引きずり込める様子。上半身のみ許可されたディエゴは、マトモに身動きが取れません。いともたやすく「左眼球」を奪われてしまいました!これで恐竜化能力も消滅!?
全ての「遺体」を手にした大統領。余裕かまして、能力説明をしてくれてます。結論を言うと、どうやらパラレル・ワールド説が正解のよう。隣り合った世界=パラレル・ワールドへ自由に行き来できるのです。そして、それは本体である大統領だけの特権。もしも大統領以外の者が、パラレル・ワールドに存在するもう1人の自分と出会ってしまったなら……?その状況に陥った2人のディエゴの肉体が、どんどん崩れていく!幾何学模様のブロックと化した体の一部が、次々と吹き飛んでいき、ディエゴは血まみれに!本来、決して出会うはずのなかった「自分」同士が出会った事で、タイム・パラドックスならぬスペース・パラドックス(?)というかディメンション・パラドックス(?)というか、そんなイメージの現象が起こり、存在そのものが崩壊しつつあるのかもしれません。
出会わせるだけで勝てるなんて、なんつー恐ろしい能力でしょうか。ディエゴですら歯が立たないとは。いいようにやられまくってますよ。ディエゴもこんな所で死んでほしくないので、このピンチを切り抜けてくれる事を期待!


●さて、ここで再び時間は巻き戻ります。8分前―― 16:10 PM―― 庁舎前付近にて――
いよいよ大統領視点のスタート!この期に及んで、もうザッピングはないだろうと思いきや、驚きの展開です。馬から降り、ディエゴと通り過ぎるディスコさん。馬のビジュアルからしても、どうやら謎の追跡者はディスコで確定って事で良さそうですね。仮にもディエゴを追跡してた風なのに、気付かずに通り過ぎちゃうとはオマヌケもいいトコですけど。まあ、それもディスコさんのダンディズムなのです。
ディエゴの尾行を確認すると、大統領は国旗の中へと消えていきました。そして、パラレル・ワールドを経由し、再び現れたのはヴァルキリーの中から。ディスコと共に背後より迫るもう1人の大統領、それに気付かないジャイロ、大声で叫んで隙だらけのジョニィ。何の苦労もなく、ジョニィを狙撃完了です。目撃したのは絵描きのジイさん。そうして、大統領は能力をフル活用し、ディエゴとウェカピポにもジョニィを撃つ役を演じさせたのでした。これで全ての点が1本の線に繋がりましたね。
同じ場所に隣の世界を同時に存在させられる。それこそが大統領のスタンド『Dirty deeds done dirt cheap』(いともたやすく行われる えげつない行為)!略して『D・D・D・D・C(ディー・4・シィー)』!「Dirty deeds done dirt cheap(ダーティー・ディーズ・ダン・ダート・チープ)」はAC/DCの曲名ですね。まさか16巻のタイトルがスタンド名だったとは!たぶん全スタンド中、最も長い名前のスタンドでしょう。その長い名に見合う、凄まじいスケールの能力みたいで興奮必至です。
まあ、名前はともかく、能力それ自体は割と直球でしたけどね。大体、予想していたものに近いようです。あらゆる物質をパラレル・ワールドへの「扉」に出来、溶け込んで「異世界」へ移動。顔面に穴が開いたのも、鉄球を「扉」にして、命中した部分だけを「異世界」へ移動させていた。「扉」として利用しなければ、「異世界」に行く事なく、その物質自体に潜行・透過も可能。ディエゴやパラレル大統領の肉体と同化した時がそれに当たる。そして、ただ単に「異世界」へ移動するだけではなく、この世界と「異世界」を重ね合わせる事まで出来る、と。こんな感じ?応用が利くっつーか何つーか、能力の範囲がデカすぎて、かえって扱いが難しそう。大統領と荒木先生はどのように魅せてくれるのでしょうかね?


★今月も47ページ。ついに大統領の能力が明かされ、大盛り上がり!視点が変わり、徐々に全貌が浮かび上がる!この一連のバトルはコミックスで通して読みまくりたいですね!早く続きが読みたくて仕方ない!……なのに、なんと来月号は休載との事!何故ッ!?また2ヶ月も待つのか……。「男の世界」とは、かくも厳しいものなのです。
でも、ウルジャンは今月号から巻末にて作者コメントを載せるようになりました。これは嬉しい。私も含め、希望する人はきっと多かったでしょうしね。荒木先生のコメントは「コメント、本当久しぶりでマジ緊張します。UJ、これからもよろしく。」との事。1ヶ月に1回とは言え、荒木先生をはじめ、他の作家陣の近況やら人柄やらが伝わってくるでしょうから、コメントも楽しみの1つになりますね。では皆さん、お互い頑張って2ヶ月間、耐え忍ぼうじゃありませんか。



(追記)
●大統領のスタンド『D・4・C』についての考察と予想を箇条書きでまとめてみました。今までと重複する部分もありますけど。


(1)そもそも「隣の世界」とは何か?
荒木ワールドにおいて、「運命」は絶対。起こると決まっている「結果」は、どういう「過程」を辿ろうと必ず起こる。逆に言えば、「過程」は変える事が出来る。「隣の世界」とは、「本来の世界」と同じ「結果」が起こるが、異なった「過程」を辿っていくパラレル・ワールドである。
途中の「過程」はどうあれ、どの世界でも「ジョニィが銃撃される」という同じ「結果」に向かって行った事から、このように推測した。

(2)「隣の世界」は元々どこかに存在している世界なのか?
当面は、『D・4・C』の能力がパラレル・ワールドを創り出すものと予想しておく。「遺体」を全て揃えてしまう程の男のスタンドなのだから、それぐらい強力なパワーを持ってても不思議じゃない。
根拠としては、ジャイロが聞いた3者3様の目撃証言。複数のパラレル・ワールドが元から存在し、大統領がそこを行き来するだけならば、同じ世界内で証言がズレたりはしないはず。能力が解除されると同時にパラレル・ワールドが消滅し、世界が元の1つに戻った影響での現象と考える方が妥当だろう。能力の持続時間は数分程度
ちなみに、「隣の世界」という表現から、同時に創り出せるパラレル・ワールドは2つまで(「両隣」って意味で)って制限・限界があったりするのかも。

(3)ルーシーに刺された首の傷が消えた時はどうやったのか?
「隣の世界」のパラレル大統領と交代したなどといった見方もあるが、今月号を読んで、パラレル大統領と融合したという可能性も出て来た。ディエゴやヴァルキリーの肉体と同化するように溶け込んでいたし、現にパラレル大統領の肉体とも重なり合っていた。その応用として、大統領は「隣の世界」の自分自身とだけは(全体でも部分的でも)本当に融合・合体する事が出来ると予想。無傷なパラレル大統領との融合により、意識はそのままに、致命傷さえも消え去ったのだ。
そこで問題となるのは、何故「隣の世界」のパラレル大統領は無傷なのか?という事。同じ「結果」が起こるのなら、パラレル大統領も致命傷を負うはず。もしかすると、「隣の世界」は「本来の世界」とのタイムラグがあるのかもしれない。数秒〜数十秒程度、時間が遅れている世界なのかもしれない。今月号ラストでも、大統領が「本来の世界」でジョニィを狙撃し、ジョニィが排水口へ逃げた後に「隣の世界」が描かれているが、そこではまだジョニィが地面に倒れている時点だった。時差が生じている事を表す描写に見えなくもない。「本来の世界」で起こった「結果」が、「隣の世界」に反映されるまでに処理時間のようなものが必要なのだろう。
つまり「隣の世界」は、ほんのちょっぴり過去の世界でもあるという事。ラスボスのスタンドは時間系じゃなきゃヤダ!という、ワガママな読者も一安心である(笑)。

(4)ルーシーのブーツの時はどうやったのか?
『D・4・C』は許可したものだけを「隣の世界」へ引きずり込む事が出来る。逆に、引っ張り出す事も出来るのだろう。そして、あらゆる物質が「隣の世界」への「扉」となり、その物質同士でトンネルのように繋がっている。「本来の世界」の国旗を「扉」にすれば「隣の世界」の国旗へ出て行くし、「隣の世界」のヴァルキリーを「扉」にすれば「本来の世界」のヴァルキリーから出て来るという事。
以上を踏まえると、「本来の世界」のブーツを「扉」にし、「隣の世界」のルーシーの足だけを引っ張り出して来たと考えられる。「本来の世界」ではすでにルーシーが脱いだ後だったが、ライムラグのある「隣の世界」ではまだルーシーがブーツを履いていたのだろう。引っ張り出されたパラレルルーシーの足は、彼女が逃げようとしていた方向へと動いていく。

(5)ジョニィ銃撃の時はどうやったのか?
ディエゴの追跡を確認  『D・4・C』発動!!
 「隣の世界」からパラレル大統領に来てもらい、ディスコと一緒にジャイロを挟み撃ちしてもらう
 その間、大統領は国旗から「隣の世界」を経由し、ヴァルキリーから再び出て来る
 大統領、ジョニィ銃撃!  パラレル大統領、木の陰に隠れ、その木を「扉」にして「隣の世界」へ消える
 「隣の世界A」と「隣の世界B」にて、トリオ・ザ・大統領の暗躍により、ウェカピポとディエゴもジョニィ銃撃!
 『D・4・C』解除!!
 ジャイロ、ディスコ撃破!  ジャイロ、公園での聞き込み調査で複数の異なる証言GET!
 ウェカピポとディエゴ、大統領に襲われ、コンビ結成!  現在に至る

恐らく、流れとしてはこんな感じ。ただ、問題は3者3様の目撃証言である。3者それぞれが別の世界で目撃していた事が、同一の世界で証言されている。世界が3つに分かれた後、1つに戻ったと見るべきだろう。
正確に言うなら、『D・4・C』が発動し、パラレル・ワールドが創り出された時点で、世界中(あるいは射程内)の人々は、複数の世界のうちのどれか1つの世界に属する事となる。誰がどの世界に属するかは、大統領が決定でき、どうでもいい人々はランダムに振り分けられる。そして、能力が解除されると世界も1つに戻り、人々は「本来の世界」へと帰って来る。だが、発動中の出来事については、属していた世界での記憶しか残っていない。
目撃証言がズレているのも、ウェカピポやディエゴがジョニィを撃った記憶しかないのも、そのため。他の2つの世界で体験した出来事は、全てパラレル(あり得たかもしれない可能性)に過ぎず、世界が1つに戻った瞬間に「体験しなかった事」になってしまうのだ。

(6)ウェカピポとディエゴにどうやってジョニィを撃たせたのか?
「隣の世界」は(スタンド能力によって発生した世界だからか)不安定な空間でもあり、「本来の世界」で起こった「結果」(特に破壊やダメージ)に向かって、強引に引っ張られてしまう。「本来の世界」にて大統領がジョニィを銃撃した瞬間、その「結果」は「隣の世界」にも反映。たとえ「隣の世界」でウェカピポが大統領を、ディエゴがウェカピポを撃ったとしても、「本来の世界」の「結果」が優先される。途中経過も無視して、「撃たれたのはジョニィ」という「結果」に捻じ曲げられてしまうのだ。不可解な現象や多少の矛盾も、そのため。
トリオ・ザ・大統領は「本来の世界」でジョニィを撃ち抜く銃(のパラレル銃)を、「隣の世界」のウェカピポとディエゴにも持たせるように仕向けたのである。ウェカピポに対しては、自分が襲撃する事で銃を掴ませた。ディエゴに対しては、パラレルウェカピポに銃を掴ませた後、屋根の上から見られている事を何らかの形で気付かせ、互いに戦わせる事で銃を握らせたのだろう。こうして銃を持つ者が、「隣の世界」でジョニィを撃つ事になってしまった。

(7)ウェカピポの鉄球がすり抜けた時はどうやったのか?
これは前述の通り、鉄球それ自体を「扉」にし、顔面の命中した部分のみをどんどん「隣の世界」へと移動させたのだろう。そのため、大統領の顔にポッカリと穴が開いたように見えたのだ。物理的な穴ではなく、空間の歪みみたいなもの。解除すれば当然、「隣の世界」も消え、顔面も元の状態に戻る。

(8)ディエゴが「隣の世界」の自分自身の出会った時に起こった現象は何なのか?
これまた前述の通り、出会うはずのない「自分」同士が出会ってしまった事で、スペース・パラドックスあるいはディメンション・パラドックスとでも言うような現象が起こり、存在自体が崩壊していっているのかもしれない。宇宙の法則を破る異物として、世界から排除されるという事。
なお、この崩壊していくディエゴの肉体が、大統領の顔面に開いた穴と同じ幾何学模様になっている。これはどうやらフラクタル構造の一種で、メンジャースポンジと呼ばれるものらしい。理数系は得意じゃないんで詳しくは語れないけど、要するに自己相似性を持ち、無限に連続している図形……って事?「黄金比」や「黄金長方形」とも無関係ではなさそうだ。ジョニィの爪弾が生み出す「無限の渦」「究極の地点」が、『D・4・C』の恐るべき能力を打ち破る鍵となるのだろうか?


――と、まあ、こんなトコです。考えれば考える程、トンデモで無茶苦茶な能力です。倒せるのか、これ?
壁でも地面でも潜り込んで「隣の世界」に行けちゃうんだから、宙に浮かんでいる状態でもない限り、いつでも能力は使えるワケですしね。不意打ちかまして即死でもさせなきゃ無理っぽいぞ。能力の連続使用が出来なければ、そのインターバルが狙い目?
今までで一番、大統領を窮地に追い込んだのはルーシーという事実。ディエゴも変にカッコ付けないで、左半身失調の大統領に石を投げた時、全力でぶつけてやれば良かったのに……(笑)。




(2008年12月18日)
(2008年12月20日:追記)




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