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「生きる」とか「死ぬ」とか 誰が「正義」で 誰が「悪」だなんてどうでもいいッ!!
「遺体」が聖人だなんて事も ぼくにはどうだっていいんだッ!!


#47 デラウェア河(リバー)へ@





●トビラ絵はジョニィとスロー・ダンサー。6,000kmもの長い長い道のりを共に旅してきたパートナー!優しげな瞳をたたえるスロー・ダンサー、そんな愛馬に体を預けるジョニィ。彼らの信頼がよく表れているイラストですね。ジョニィの相棒はジャイロだけではないのです。ジョニィはもう決して孤独ではないのです。
しかし、前号のトビラに続いて、今回もさりげな〜く立ってポーズを決めてるジョニィでした。


16:30 PM フィラデルフィア市街にて。庁舎内でルーシーが目醒める9分程前まで、時間は遡ります。
スロー・ダンサーを連れ、ジョニィの捜索をするジャイロ。鉄球の「回転」の振動の波を使って、レーダーのようにジョニィを発見!下水溝から無事に救出されました。意外とあっさり再会しちゃった。ただ、「回転」と「ゾンビ馬」で応急処置はしたものの、もう旅は続けられない程の大ダメージである事に変わりありません。
つーか先生!「ゾンビ馬」の事、まだ憶えてたんですね!せっかくだし、「ゾンビ馬」の正体もついでに明かしちゃってくれないですかねえ?誰かのスタンドでも、「回転」のエネルギーが編み込まれた糸でも、聖骸布の糸でも、イエス様のヘソの緒でも、何でもいいから。謎アイテムのまんまじゃスッキリしないっス。
傷だらけのジョニィは、それでも自分の目撃した大統領の能力についてジャイロに説明。多少疑問を抱く部分はあるものの、かなり的確です。よく分かったな!解説王の異名は伊達じゃあないぜッ!そして、そんな突拍子もないジョニィの言葉をまったく疑う事もなく、全てを信じるジャイロのカッコ良さもハンパじゃあないぜッ!しかし、彼らが狙っていたディエゴの「左眼球」はもはや大統領の手に……。もう全ては決定的に終わり。諦める事も勇気だ、とジャイロはジョニィを諭します。


●さっき脚が動いたんだ。移動できたんだ。ジャイロの服を掴んで、必死に訴えかけるジョニィ。「…見てくれよォォォ〜〜〜ッ!!」と、ジョニィは震える脚で立ち上がろうとします!すげえッ!ここまで動くようになっていたとは!ちょっと感動しました。しかし、もう少しという所で倒れてしまう。ジョニィは叫びます。

どうしても遺体を手に入れたいッ!
「生きる」とか「死ぬ」とか 誰が「正義」で 誰が「悪」だなんてどうでもいいッ!!
「遺体」が聖人だなんて事も ぼくにはどうだっていいんだッ!!


――これだよ……。この言葉が聞きたかったんだよ……ッ!本当に本当の、ジョニィの心の底からの叫び。
そして、主人公の口からこんな言葉が出て来るという事実。「SBR」がこれまでの「ジョジョ」とは一線を画すものである事の証明でもあります。

ぼくはまだ「マイナス」なんだッ!「ゼロ」に向かって行きたいッ!
「遺体」を手に入れて 自分の「マイナス」を「ゼロ」に戻したいだけだッ!!


ジョニィが求めるものは、ごくごく単純なもの。ただ、自分で自分を認めたいだけ。自分を誇れるようになりたいだけ。自分を嫌いなままでいたくないだけ。でも、ジョニィにとっては果てしなく遠いものなんです。6,000kmより、もっと遠くの光。でも、あとほんの少しで辿り着けるかもしれない。ここまで来たのに。そんなジョニィの飢えた心がビンビン伝わってくる最高の感動シーンでした。個人的にこのシーンは「SBR」の名場面の1つにランク・インしましたよ!


●ジョニィの魂の雄叫びを聞き、ジャイロは何かを思案。ゆっくりと言葉を紡ぎます。馬の「鐙」が発明されたのは11世紀、などと脈絡のない事を言い出しました。オイッ!……しかし、それこそが久々のジャイロ先生の回転講座だったのです!LESSON5……?いいえ、これは先生がいる場所の「先」へと巣立つための卒業試験なんです!さっき「諦めろ」と言ったのも、ジョニィの意志を確かめるためであり、ジャイロも初めから諦めてなどいなかったのでしょう。
人類は何千年も馬と付き合って来たにも関わらず、紀元1000年以上も経ってからやっとこ「鐙」が発明された。それまで人類は「鞍」だけで馬に乗り、足を乗せるという発想すら誰もしなかった。――何故か?「鐙」とは、単なるケツずれ防止のためにあるワケじゃない。馬のパワーを下半身から吸収して、騎乗で戦う「技術」のためにある!馬のパワーが乗り手の足腰から背中・肩へと螺旋で伝わり、腕へと抜け、武器を使う「中世の騎士」の技術
同時に、鉄球もまた、手首だけで「回転」させるものではない。自然から「無限のスケール」を学び、下半身から腰・肩・ヒジ・手首・指……とエネルギーを伝わらせて、体全体で回すからこそ無敵の回転パワーが得られる。そうです。ジョニィの卒業試験は、「鐙」から馬のパワーを加えた「回転」ッ!ジョニィがもし「鐙」に両脚をふんばっていられるなら、その「騎兵の回転」が起こせるはず!これはツェペリ一族の遠い伝承に過ぎず、ジャイロ自身もグレゴリオ父上さえも使えない技術であるようです。ツェペリ一族は死刑執行人であって、騎兵ではないのだから。しかしッ!ジョースター家は馬乗りの家系!ジョニィになら回せるかもしれない!ジョニィなら呼吸も力も意志も、愛馬と1つになれるかもしれない!だからジャイロは説明したのです。
うおおおお――ッ!なんて燃える展開なんだ!ここに来て、いよいよ色々なものが1つに収束してきていますね。ジョニィの脚が動き出した事と、ジョニィだけの「回転」を生み出す事がイコールとなり、それが戦いの勝利や大人への成長にも繋がっています。ジョニィが騎手であった過去も、SBRレースが馬のレースである意味も、ツェペリがジョースターを導いていく運命も……、全ての歯車がガッチリ噛み合って、滑らかに回り始めています。
飢えた心と、受け継いだ馬乗りの血肉。この2つが必要なのだとしたら、ジョニィは今度こそ父と兄に真っ向から向き合い、因縁に決着を付けなければなりません。それを乗り超え、自分に流れるジョースターの血に誇りを抱けた時こそ、ジョニィが気高く歩き出す瞬間!14巻の作者コメントでも触れていた「人馬一体」を文字通り体現し、ジョニィとスロー・ダンサーは相棒ではなく互いの半身となれるのでしょう。そして、彼らは真に美しいものになり、その美しさの中に秘めた力を引き出せるのでしょう。かつてジャイロも見た「光輝く道」の先へと、ジョニィも向かって行けるはずです。


●ジャイロの言葉に新たな希望を見出したジョニィ。ジャイロに「ありがとう」と感謝を述べます。敬意を払えるのは良い事です。漆黒の炎をメラメラ燃え滾らせてたジョニィも、ジャイロのおかげで「正しい道」に向かいつつあるのかもしれません。
大統領の追跡も「遺体」の捜索も不可能になったが、まだルーシーがいる!ルーシーを救出して、情報をもらわなくては!
――そんな切り札のルーシーへと場面は移行。涙を脱ぎ捨てたルーシーは、すっかり覚悟も決まった様子。涙のカッターを手に、馬車を奪って逃走です。もちろん愛しのスティールも一緒。今回は、馬車の見張りの兵に能力発動です。どんなにあがこうとも、必ず馬車の運転席に戻って来てしまう兵のおっちゃん。やはり、切り付けた者の「運命」を固定するような能力である事は間違いなさそう。「運命」に逆らおうとしても苦しむだけ。蜂に刺されまくるおっちゃんがホントに痛そう。
そこにまた謎の声がルーシーに届きます。その声はルーシーをデラウェア河へと導いていく!そして、船を探せと。……そんなルーシーの姿を見つめる者がいました。それは、どこか暗い場所に潜むヴァレンタイン大統領!なんと「遺体」の「両眼」から発せられる光が、ルーシーの映像を写し出していたのです。しかも、なんとルーシーに聞こえていた謎の声の主は大統領だったのです!まさかのどんでん返し!ビックリしたぜ、大統領!
「頭部」を妊娠した時、「遺体」も丸ごとルーシーの中へと入っていたようです。そのために発動した、「遺体」の新たなスタンド能力。それも、全ての「遺体」を揃えた大統領の味方をしている様子!「遺体」が1つになり、「新たな存在」として産まれてくるために、大統領とルーシーを引き会わせようとしているのでしょうか。何たる事ッ!


●ルーシーの乗る馬車と併走する船。そこから姿を現したのは大統領!そんな所にいたのか!あまりのショックに、ルーシーの両目にも捨て去ったはずの涙が浮かんでしまいます。大統領、抜かりなさすぎ。ラスボスの風格たっぷりでカッコイイよ。初登場時と同一人物だなんて信じられないよ。
そして、大統領が言います。船に乗れ。最後の土地へ向かおう。「地図」の最終地点へ。……そうです。さりげに疑問に思ってました。「ヨセフの地図」には何故、印が9つもあるのかと。「両耳部」と「右腕部」が同じ場所にあったのだから、本来は8つのはずなんです。ただの荒木先生の凡ミスというか、あまり深く考えずに9つにしたんだろうな〜程度に思ってたんですが。ルーシーの胎内から「新たな存在」が産まれるポイントだったとは!
サブタイトル通り、ルーシーもスティールも大統領も、デラウェア河へ集っています。そして、奇しくもジャイロとジョニィも。無論、ディエゴも来るに違いないし、ホット・パンツも現れるかもしれません。役者が揃いつつあります。本当の最終決戦に向け、盛り上がって来てますね!8th.STAGEゴール地点のニュージャージーが最終地点なのかな?


★今月は47ページ!前号並みのページ数も覚悟はしてましたが、これだけのボリュームで読めて良かったです。本当は63ページ連載が理想だけど。
でも、マジで面白かったです!誰かが自分の感情を、恥も外聞もなく吐露したり爆発させたりすると燃えるんです。今回はジョニィが最高でした。ジャイロが「騎兵の回転」を語るシーンも、サンディエゴでのスタートシーンを思い出させるものがあって、グッと来ました。ジョニィが「回転」を成功させる瞬間は、ヤバいくらい感動しそうだ……。その「騎兵の回転」はどんな力を秘めているんでしょうね?時空を歪めてしまう程の力がありそう。『D4C』にも対抗できるかも。今月号でますますクライマックスへの期待感が高まりました!
今月の作者コメントは「今春は、花見を3回しました。「花鳥風月」全部しみじみ楽しめる良い季節ですなあ。」との事。荒木先生は人生を謳歌してますな。
今月号は「SBR」の下敷きが付録でした。シブいジャイロ&ジョニィと、ワイルドでロックなルーシーの2つのイラスト。どちらもキレイでカッコイイです。「SBR」が完結したら、また画集を発売してくれないかなあ……。



(追記)
●このタイミングで「ゾンビ馬」「騎兵の回転」が同時に出て来たのは、偶然ではないのかもしれません。
「ゾンビ馬」とは、かつてツェペリ一族の祖先が「騎兵の回転」を編み出した時に乗っていた馬の毛で編まれた糸という可能性もあるのでは!?「騎兵の回転」による凄まじいエネルギーが満ち満ちた馬の肉体は、生命力美しさに溢れ、常識ではあり得ない程の長寿と健康をGETします。何十年経っても、死ぬ事なく若々しいままの馬。それ故に「ゾンビ馬」と呼ばれるのです。その馬の毛から編まれた糸にも、まだ回転エネルギーと生命力が宿っており、糸を使った者のキズや疲労を癒してくれるのです。(糸が馬の壁画やシルエットを自ずと形作るのも、その馬の生命力ゆえ。)
しかし、それらの事実も、長い時の流れの中に埋もれていきます。祖先のような馬乗りの才能も薄まり、「騎兵の回転」はただの遠い伝承となってしまいました。「ゾンビ馬」の糸も、その由来は記録からも記憶からも失われていき、不思議な力を持つ「癒しの糸」としか認識されなくなったのでしょう。ジョニィが「騎兵の回転」を成功させた時、スロー・ダンサーにも何らかの変化が起こるはず。そこで初めて、「ゾンビ馬」と「騎兵の回転」の関連性も明かされるのです。




(2009年4月17日)
(2009年4月26日:追記)




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