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理解したぞッ!! これは「遺体」が発現している能力だッ!!
つまり わたしの『味方』だッ!


#52 追い付く看板





●トビラ絵は、前回からすっかりお馴染みの「クマに注意!」看板です。振り向くと近付いている不気味な看板。何でもないかのように佇みながら、不穏な空気を発しています。この看板の示すものとは一体、何なのでしょうか?


●大統領を描くページはパラパラとめくれていき、物語を一旦、過去へと遡らせます。ディエゴに十字の傷を付けられ、瀕死に陥った時点まで。列車の車輪のスキ間から、「隣りの世界」へと弾き出されて現れた大統領。
……およ?パラパラとページがめくれていたのは作中の時間を巻き戻す演出かと思ったけど、もしかすると、どの世界へ移動するか選んでいるシーンでもあったのかな?1枚1枚がそれぞれ別の「隣りの世界」で、何かに挟まれた瞬間、大統領は無数の世界の中から移動したい世界を選択しているのかも。物事が起こるタイミングが、「基本の世界」より微妙に早い世界もあれば、遅い世界もある。細かな設定が違う世界だってあるでしょうからね。それら全ての世界を知覚し、そのうちの1つを決定する一瞬が描かれているコマである、とも考えられます。
ともかく、大統領は命からがら「隣りの世界」へと逃げて来ました。しかし、もはや彼の命は限界。意識が薄れていきます。……と、そこに登場したのは「隣り」の大統領!こちらの世界でもディエゴに追い詰められたらしく、窓を突き破って、列車の外に飛び出して来たのです。「隣り」の大統領が、息絶える直前の自分自身の姿を発見したその瞬間!「基本」の大統領から現れた『D4C』が、「隣り」の大統領へと移動ッ!なんと、これだけで「隣り」の大統領は「基本の存在」に移り変わってしまったのです。なるほど、『D4C』の真の所有権を有する大統領が「基本」という事のようですね。
まあ、スタンドとはその本体の精神の具現であり、魂の一部でもあります。『D4C』は、歴代の「基本」の大統領達そのものと言っても良いのでしょう。そうやって『D4C』を、自らの魂と意志を、もう1人の自分に受け渡しながら大統領は存在し続けてきたのですね。『D4C』を受け取った時点で、先代達の記憶や心も引き継ぐものと思われます。つまり、先代達とまったく同一の存在となるワケです。そう考えれば納得かな。そうして、ザ・ニュー大統領はどジャアァぁぁぁ〜〜〜ン「基本の世界」へ消えて行ったのでした。


●場面は変わって、ジャイロ&ジョニィ!大統領とディエゴがブチ破った窓を見て、ルーシー達はきっとその車両にいるはずと推測。軽快に列車へと近付いて行きます。脇に立つ看板を見れば、それはこの地がすでに「ニュージャージー」に入っている事を示していました。ニュージャージー、つまり8th.STAGEのゴール地点のある州です。彼らの視界にはいよいよ大西洋が見えてくるッ!太平洋を背にサンディエゴ・ビーチをスタートして、果てしなき北米大陸を横断し、ついにその向こう側の海へと辿り着いたのです!長かった今までの旅路が思い出されますね。
しかし、そんな感傷にふけっている場合じゃありません。ジャイロ達の背後には依然、クマの看板が追って来ていたのです。そんなストーカー行為に業を煮やしたジョニィが、看板に爪弾をブチ込む!看板はたやすく破壊できたものの、2人の間に緊張が走ります。何か分からないが、何かがおかしい。やはりこれは新しい敵?列車の機関士さんのスタンド能力なのか!?続け様に、破壊された看板が落ちた水溜まりから、川魚がバンバン飛び出して襲って来るッ!難なく撃退するも、ジャイロは魚に指を噛まれてしまいました。「大丈夫だ」と言うジャイロですが……、なんか不吉な予感。これがジャイロの命運を左右しちゃったりするんかな?
ワケが分からないが、とにかく列車に向かって機関士を叩く!そう決意し、再び走り出す2人。しかし、後ろを振り向けば、破壊された看板が静かに追って来ていたのでした。


●さらに場面は変わり、列車内のH・P!彼女の目に映るもの、それは「遺体」化したルーシーでした。まだ呼吸はしている様子。しかし、その姿は更なる変貌を遂げ、関節部はまるで人形のよう。なんとなくピノキオっぽいな〜、と思いました。その上、全身に鏡のような、パネルのような、奇妙な物体が貼り付いていますよ。一体、どういう状態なんでしょうか?H・P曰く、「9部位」揃ったとの事なので、完全な姿へと変わっている途中と思われますが……。
……と、ここでH・Pにも不思議な違和感。ふと気付けば、この部屋が狭くなっているような……。よく見れば、ワインボトルとコップが重なり合っています。一体化しているかのような、あり得ない重なり方。それはハエやクモまでも。家具もドアも自分の方へ寄って来ている!?そのドアからこちらを覗く大統領の姿に気付いたH・Pは、すかさずスプレーを構えようとするも、そこにあるはずのないワインボトルに手が当たってしまいます。ますます寄っている!そして、そのぶつけた手にも異変が生じています。ハエやクモが手と重なり合い、さらに自分の爪までもが、どんどん体の中心部へと移動していく。突然の『D4C』の攻撃を交わしても、ぶつかるはずのない窓にブチ当たってしまいます。しまいには、その窓ワク自体が狭まり、彼女の肉体に重なって侵入してくるではありませんか!
ジョニィもついにこの現象の正体に気付きます。追って来るのは看板じゃない。「土地」そのものが追って来ているッ!H・Pの肉体に侵入した窓ワクの木片は、もはや肉スプレーでも取り出せないほどの力で迫るッ!次の瞬間、ブチンッ!とイヤな音を立て、彼女の中の「何か」が切れてしまいました。鼻から口から血を流し、彼女は倒れてしまったのでした……。まさか、H・P死亡……!?


●大統領はこの謎の能力を理解した模様。そうです。機関士さんの存在はフェイクだったのです。まんまとミスリードさせられちゃいました。この能力は大統領も初めて体験するもので、そして、それは「遺体」が発現させた能力であると言うのです!
全てのものが「遺体」を中心にして集まって、寄って来ている。それがこの現象の答え。つまり、何もかもがルーシーの元へと引き寄せられている状態。それは空間レベルで。とんでもない「引力」ですよ、これは。「脊椎」が他の部位と出会おうとして、空間移動を引き起こしていましたが、それもこの「引力」の一端だった可能性がありますね。本来は2日程の日程と予想されていたニュージャージーへの道のり(ゴール地点はニューアーク?ジャージーシティ?)も、「遺体」に引き寄せられたせいで短くなっていくはず。どんどん空間が狭くなっていく。やがては「距離」という概念さえ無くなっていく。とすると、「遺体」のゴタゴタが終わるまでは事実上、ひとまずレース展開はお預けって事になりそうです。勝手に「遺体」に引き寄せられる以上、どこにいようと同じですから。
この現象がトコトンまで進んでいったら、地球さえも、ヘタすりゃ宇宙そのものでさえも、「遺体」の中へと飲み込まれてしまうかもしれませんね。言い換えれば、全てのものが「遺体」を通じて1つになる。「遺体」の内部に世界が、宇宙が存在するって事になりますから。その「遺体」のパワーを手に入れた者は、まさにこの世を包み込む「神」と言えるでしょう。宇宙はおろか、全ての「時間」も、全ての「パラレル・ワールド」も引き寄せて、全てが1つに統治されるとしたなら……、それは想像も絶する力ですね。これからどんな滅茶苦茶な事が起こるのか、目が離せませんよ!


★今月は47ページ!正直、内容的に物足りなかったです。奇妙な現象がひたすら描かれていたので、大きな進展はなかったなと。クマの看板が「遺体」の能力である事も分かったし、大統領の入れ替わりの真相も暴かれたし、H・Pの危機も描かれていて面白かったけど、まだ足りないという読者のワガママさ。しかし、ディエゴに続いてH・Pもか……。2人とも生きてるなんて都合のいい事は、あんま期待しない方がいいのかな〜。「SBR」はメイン・キャラもあっさり逝っちゃったりするから油断なりません。ジョニィと一緒に救われてほしいと願っていますが、もし死んじゃったら「遺体」の能力で殺された事になるワケで。命を捧げる覚悟までしていたのに、その相手に殺されるなんて皮肉すぎる話。
とは言え、どうやら噂の機関士さんも実際は無関係っぽい気配なので、残る敵はホントに大統領のみって感じです。ここで変に間を置くより、一気に最終決戦へと畳み掛けてくれる方が燃えますね!ただ、じゃあ誰が機関士をやってるんだろう?「隣り」の大統領がせっせと列車を走らせてるんかな?それとも、フェイクと思わせる事すらフェイクで、実はここぞという時に現れて大統領の危機を救ったりして?
作者コメントは「夏、蝉が怖くて。「死んでる?」と近づくと『ギ!』ってゾンビみたいに甦るところ。」との事。うん、分かる。



(追記)
●ジャイロに噛み付いてきた川魚。あれはただの魚ではなく、古代魚なのではないかとの見方が強いようですね。具体的に言うと、古生代デボン紀に生息していた板皮類。頭部から肩部にかけて、硬い骨板に覆われていた魚。特にコッコステウスという魚に、かなり形状が似ているらしい。なるほど。確かに、ジャイロを襲った魚は独特のフォルムを持っています。荒木マンガだから逆にあんまし気にも止めなかったのですが、言われてみれば、あんな魚がそこら辺の水溜まりにいるはずがない。
これをディエゴ復活の布石と受け取る人もけっこういるみたいですね。恐竜化能力で古代魚まで生み出した、と。とは言え、デボン紀は「恐竜の時代」と呼ばれる中生代よりも遥かに古い時代であり、そもそも古代魚は恐竜じゃありません。ですが、そんな真っ当な反論に意味がないのも事実。荒木先生ならやりかねん。仮にそうだとすると、噛まれたジャイロはどうなるのでしょうか?ジャイロまで恐竜化させられ、重傷を負ったディエゴの忠実なる部下として利用される?僅かな傷と痛みのため、いざという時に「回転」が不完全になって失敗してしまう?
第一、胴体真っ二つにされたディエゴがどうやって助かるのか?私は、大統領に変身した際に全身に浴びた肉スプレーがまだ残っていて、それで胴体をくっ付けると予想しました。でも、他にも面白い予想があるようで。今回、発現した「遺体」の能力。全てが「遺体」に引き寄せられる現象。これによって、切断された上半身と下半身も引き寄せられ、重なってくっ付いちゃった、というものです。意外と、あるかもなあ……。荒木マンガに「あり得ない」などという言葉はないのです。


●実にもっともらしく、興味を惹かれる予想ですが、ならば私はそれとはまた違った予想もしてみたいと思います。
あの古代魚の出現さえも「遺体」の能力の一部なのです。全てが「遺体」に引き寄せられる。それは物質や空間のみならず、時間でさえも例外ではありません。地球誕生(ヘタすりゃ宇宙開闢?)から西暦1890年12月28日までの全ての時間が、「遺体」の元に集まって来ているのです。あの古代魚も、「遺体」に引き寄せられた「デボン紀」の時間の中にいたという事。このまま進めば、きっと恐竜やらアンモナイトやら原人やらダ・ヴィンチやら土方歳三やらも現れて、時空が歪みまくりの超カオス状態になるでしょう。
やがて、全ての時空は「遺体」(=ルーシー)の中に吸い込まれ、1つになります。ルーシーはこの世界・宇宙そのものを胎内に宿す聖母となるのです。そんな中で、人々は一体どうなるのか?あらゆる時間と空間が溶け合い、交わり合った混沌の世界。それ故、自分と「縁」のある時と場所に引き付けられていきます。ジョニィなら、ニコラスが落馬して死んだあの日に。ディエゴなら、父親が自分と母を見殺しにしたあの日に。H・Pなら、弟の肉を熊に差し出してしまったあの日に。……そうです。全ての時空が混ざり合った世界では、もはや「過去」と「今」の境界も、「生」と「死」の境界さえもあって無いようなもの。まだ生きていた頃の時間に存在するイケメンも、もちろん再登場。そして、誰もが等しく自らの心に縛られ、囚われてしまうのです。
ただし、ジャイロは例の魚に噛み付かれてしまいました。あの時、ジャイロと古代魚との間に「縁」が生まれてしまったのです。そのせいでジャイロはたった1人、古生代に飛ばされ、取り残されてしまうのです。この危機を救うのが、過去を乗り越え、今の自分自身を認めたジョニィが生み出す「騎兵の回転」!?
唯一、「遺体」を全て揃えた大統領には、聖母からの加護と祝福が与えられます。それにより、『D4C』もパワーアップ!「隣りの世界」の行き来どころか、なんと全ての「時間」と「空間」を自在に行き来できるようになっちゃうのです!そして、時空の流れを選び取り、自分の願う方向へと組み立てていけるのです。これぞナプキン。心を縛られ、歩みを止めてしまう人々を、自分が先頭となって「進むべき道」へと導いていけるってワケですね。
……で、色々あって、最終的には全て元に戻る。ルーシーも元の体を取り戻す。そこで「遺体」は永遠に消滅してしまうでしょう。全てが終わり、全てが始まる。その場所こそ、「世界」が新たに生まれた場所であり、地図の「最終地点」なのです。つまり、そこまでが「遺体」の意志であったと。そして、「遺体」やら何やらのゴタゴタから解放され、ジャイロやジョニィはレースに戻ります。ここからはもう、他の誰でもない自分の意志が道を決めていく。「SBR」最終STAGEは、こうして幕を開くんです。




(2009年10月17日)
(2009年11月11日:追記)




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