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倒す方法は何もないッ!
あいつが「正義」で! ぼくらの方が『邪悪』なものなんだッ!!


#54 正義と邪悪





●トビラ絵は『D4C』のスタンド解説。それによると、『D4C』の射程距離は約2m。能力の方にエネルギーを使い過ぎているせいなのか、スタンド自体の攻撃力はそれほどではなさそうな気がしますが、括りとしては近距離パワー型のようです。
そして驚きなのが、『D4C』は無限の世界の中でもたった1体しか存在しないとの事。ええ〜?ディエゴと戦ってる時は、3人の大統領がそれぞれの『D4C』で攻撃してるかのように描かれていたのにな〜。あれは高速で動いたために見えた残像って事?でも、「隣り」の大統領がスタンドも持っていない一般人というのは違和感ありまくり。なにせ「隣り」のディエゴが警戒し、5mという距離を保たなければ負けるとさえ言っていたんですからね!何の能力もないヤツが大勢のスタンド使いの上に立ち、まとめられるとも考えにくいし。そもそもジョニィ銃撃事件の時を思い返しても、ジャイロの背後から近付く大統領とウェカピポを襲った大統領が『D4C』を使っています。あれはほぼ同時刻の出来事のはずなので、「基本」の大統領1人の仕業とするにはちと無理がある。
私個人としては、「隣り」の大統領もスタンド使いと思っておきます。そのスタンドは『D4C』そっくりの見た目だけど、たぶん名前が違うんですよ。『D1C』・『D2C』・『D3C』…とかそんな名前なので、『D4C』は1体のみって設定も見事に守られるのです(笑)。自由に次元移動できるのは本当の『D4C』だけで、「隣り」の『D4C』モドキ達はパラメータ的にも能力的にもだいぶ劣るんでしょう。その分、射程距離は長く、およそ5mだったりするのかも。


●魚に噛まれた傷が登って来て、首から血を噴き出すジャイロ。あのまま戦線離脱かと心配しましたが、そこまでのダメージではない様子。倒れはしたものの、まだしっかり意識はあります。そんなジャイロの視線の先には……、ジョニィと大統領の姿がッ!この見開きページ、素晴らしく神々しいぜッ!宗教画の如き美しさ!「空間のスキ間」から現れる大統領と、それを迎え撃つジョニィ!
拳を繰り出してくる『D4C』へ、ジョニィは爪弾を発射。しかし、集まる「吉良」の中にいる大統領にはやっぱり効かず、爪弾はどこか遠くの街(エッフェル塔らしき塔が見えるので恐らくパリ)の工事現場まで吹っ飛ばされちゃいました。おかげで現場は悲惨な大事故に。その不可解な現象と大統領の行動を見たジョニィは、それだけでおおよその事は理解した模様です。相変わらず察しがいいな。大統領から距離を置こうとするも、背後からは森が迫って来ていて、このままでは逃げ場も無くなります。疾駆するジョニィの後方より大統領がぐんぐん近付き、鋭い手刀が振り下ろされるッ!ヤバイ!
……と、そこに駆け付けたのは我らがジャイロ。相棒の危機を放ってはおけずと、『D4C』の手刀に鉄球をブチかましてくれました!大統領がジャイロに気を取られた一瞬の隙を、ジョニィは見逃しません。すかさず爪弾発射!しかし、それでも爪弾という「害悪」は遥か彼方へと飛ばされちゃうのでした。その遠くの地(「SAIGON」の文字が見えるので恐らくベトナム)では、爪弾のせいなのか、今度は子どもが殺されちゃいました。どこまでもえげつない能力です!


●「スキ間」からの『D4C』の攻撃により、ジャイロは腕にカスリ傷を付けられる!本来ならなんて事のない傷なのに、この状況下ではそれすら致命的ッ!傷はすぐに移動を始め、再びジャイロの命を奪おうとしてきます。ジャイロがやられている間、大統領はジョニィを攻撃!とっさにジョニィが取った行動は、逃げる事でした。攻撃がまったく効かないのなら、逃げる事しか出来ない。機関車の車両と車両の連結部に爪弾を撃ち込み、「遺体」のある客車を切り離したのです。どうやらこの「空間のスキ間」、「遺体」であるルーシーからそう遠くまでには及んでいない様子。無敵である代わりに、射程はごくごく短いんでしょうね。
しかし、大統領からちょっと離れる事が出来たといっても、事態は好転などしません。ジャイロもカスリ傷が心臓に達し、血を吐いて倒れてしまいました。そんな光景を見ながら、追い詰められていくジョニィの心。……全ての「遺体」を集め、更なる能力を得た大統領。どんなに攻撃しても、当たりさえしない。むしろ無関係な人々が犠牲になるだけ。こっちはどんな些細な傷でも致命傷になる。もう何をしたって無駄。絶望の記憶と死への足音に取り囲まれ、ガタガタと震え出すジョニィ。「聖なる遺体」に弾かれる自分達は「邪悪」なものなんだと、すっかり心が弱り果ててしまっています。もはや自分の道が正しいのかどうかも分からない。
誰が「正義」だろうが「悪」だろうがどうでもいい、と言い切ったジョニィはどこへやら。でも、この「正義」と「悪」の揺らぎは「SBR」の大きな特徴です。ギャング組織という「悪」の中での激闘が描かれた5部や、犯罪者と聖職者の戦いで「正義」と「悪」を謳った6部でもそれは感じ取れました。そして「SBR」ではますます色濃くなり、「社会的な価値観」と「男の価値」の相違が語られています。巨大な「歪んだ正義」(=大統領)と、それに立ち向かうちっぽけな「気高い悪」(=ジャイロ達)の対決は興味をそそられるものがありましたが、大統領が「遺体」の聖なる力を手に入れたとなれば、こいつはさらに面白くなります。たとえ世界に「邪悪」と断じられても、自分の正しいと信じるものを最後まで貫き通せる強さをジョニィが宿せた時こそ、彼が真に歩き出す時なんでしょう。


●弱り切ったジョニィに、ジャイロが話し掛けます。ジャイロはさっき鉄球を投げた際、「騎兵の回転」を試してみたそうなのです。でも、それがどんな力の「回転」だろうが、今の大統領には何の意味もない。ジョニィは弱気発言連発ですが、どうやらそうとも限らないようですよ。ジャイロが鉄球を拾い上げると、大統領のクルクルヘアーが数本へばり付いているではありませんか!
頭部に命中はしていないはず。だが、「騎兵の回転」は甲冑や盾を身に付けた敵と戦うために編み出された技術のはず。となれば、頑強な防御すらも突き抜ける「回転」であるはず!さっきの「回転」がどんな効果を及ぼしたのか、それはジャイロにも分かりません。ただ、「スキ間」にいる大統領の髪の毛を抜いたという「結果」「事実」だけがある。そして、その事実はジョニィの暗闇に小さな希望の火を灯してくれたようです。こーゆー時の2人はたまらなく人間臭くてカッコイイです。やっぱりジョニィの希望を繋いでくれるのはジャイロしかいませんね。あんなに負け犬ムードだったジョニィも、迷いのない眼差しに!2人は大統領とルーシーの待つ客車へと向かって行く!いざ最後の決戦へッ!
それにしても、「騎兵の回転」はどんな回転なのかな?凄まじい回転によって、全てを引き寄せる力を生み出すとか?ある種、ブラックホール的な?何をしようと「回転」に巻き込まれ、鉄球へと勝手に引き付けられてしまうのなら、どんなに防御しても意味を失うでしょう。髪の毛もそうやって引っ張られたのです。今、起こっている「遺体」の能力とも通じるし、引力と引力の戦いってのも想像付かなくて楽しそう。


★今月は47ページ!ストーリー的な進展はそんなにありませんでしたが、今回はとにかく絵に魅せられました。大迫力の大ゴマ連発で、荒木先生のラストバトルに懸ける熱が伝わって来るかのようです。それに、いよいよ「騎兵の回転」の重要性が明確にされ、またまた盛り上がってきましたよ。ただ、心配なのはジャイロですね。ジャイロもジョニィも死なないと信じていますが、首と心臓に傷を負い、これ以上は本気で命に関わるダメージになるって厳しい状況。怖いです。今回を読んで、ジャイロとジョニィのコンビがもっと好きになったので、何としても2人は生きて別れてほしい!
あと、ちょびっと気になったのがタイトルです。前回は「現象と女神」。今回は「正義と邪悪」。次回も「○○と□□」ってなるんかなあ?
作者コメントは「近所にうまいピザ屋が出来て、超幸せです。良い打合わせ場所としても。」との事。荒木先生も今、「吉良」の中にいるようです。




(2009年12月18日)




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