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本当に廻り道だった
本当に本当に
なんて遠い廻り道………


#60 LESSON5





●トビラ絵は、草原を馬で駆けるジャイロとジョニィの姿。レース中での何気ない日常の風景。そして、もう二度と見る事は出来ないかもしれない光景。ジャイロが倒れた今、こんなごく普通の1コマだからこそ、余計に我々を悲しくさせますね。

二人で刻んだ足跡はすべて この瞬間のために――。

このアオリもまた、しんみりさせてくれます。なんとか「2人で」勝利を掴んでほしいなあ。


●海水の中から銃を取り出す大統領。隠し持っていたのか、はたまた、殺された「隣り」の大統領達が持っていた銃でも拾ったのか?そして、その銃をジャイロに向けて連射!すでに倒され、海に沈むジャイロに最後のダメ押しです。ジャイロの胸は6発もの弾丸に貫かれ、ジョニィをさらに絶望の底の底へと突き落とします。正直、私も前回よりショック受けました。ここまでやられて、生きてる道理もないわなあ……。
穏やかな表情で眠るジャイロ。彼を浸していく海水は、真っ赤に染まっていく。ジョニィはガタガタ震え、悲痛な叫びを上げます。そんなジョニィの元へ、大統領が猛烈な勢いで走って迫るッ!「騎兵の回転」により、ボロボロになった肉体と『D4C』。しかし、それすらもまるで意に介さぬような堂々たる立ち居振る舞い!こりゃ怖い!
涙と絶叫の中、ジョニィはそれでも爪弾を発射ッ!しかし、「騎兵の回転」でなくては「次元の壁」を超える事は出来ません。爪弾は「空間のスキ間」で弾かれ、その害悪なるエネルギーは「不幸」となり、この地球上のどこかの誰かへ吹っ飛んでいく!どこかの部族の黒人男性が、狩りの最中、仲間が誤って放った矢に首を刺され、死んでしまいました。当然、大統領は無傷。馬を走らせなくては勝ち目はない!


●ジョニィの次なる一手!今度は地面に爪弾を撃ち込み、その「弾痕」を操作。実際、「穴」には『D4C』の次元移動能力も効果がないと、先の一騎打ちで証明されています。うまくやれば「空間のスキ間」さえ無効化できるかもしれない、とでも考えたのでしょうか?地面を伝い、大統領の肉体へと移動する「弾痕」!……行けるかッ!?
ところが、それは甘い考えでした。地球のどこかの人々が線路に落ち、そのまま機関車に轢き殺されてしまったのです。やはり、どうあれ馬を走らせて「騎兵の回転」に達しなくては、攻撃は一切通用しない!
大統領は、ジョニィのすぐ近くまで迫り来る。しかし、この期に及んで、大統領はなおも慎重でした。海水を浴び、「隣りの世界」へと消えていきます!無敵の能力を得たとは言え、油断して近付けば、ジャイロの時のように痛い目に遭うかもしれない。そう思ったのでしょうか?圧倒的優位に立ちながら、それでも警戒を怠らず、持てる力と知恵の限りを尽くす。なんて手強い男なのか。
ジョニィの放った爪弾は、またもや大統領には届かず。今度は、どこかの檻のカギが破壊されました。動物園の飼育係と見られる男性2人が、檻から出たライオンに食い殺されちゃいましたよ。ジョニィが攻撃を仕掛けるたびに、誰かが不幸な死を遂げる。改めて思うけど、めっさ自己中でひどい能力ですよね……。でも、普通なら攻撃も躊躇いそうなところをガンガン攻めていけるジョニィは、さすが「漆黒の意志」持ちだな(笑)。犠牲者の立場からすりゃ、まったくもって笑えませんけど。


●「隣りの世界」に移動したかに見えた大統領、実はそうではありませんでした。なんと海水と地面の間、波の下に潜り込んでいたのです。てっきり「隣り」の自分と入れ替わってくるかと思いきや、最後まで老体に鞭打ってくれるようですね。フィラデルフィアにて、大統領はディエゴの肉体と一体化するように、向こう側に突き抜けるという能力を使ってました。恐らく今回も、海水と一体化するように溶け込み、波の下へと突き抜けたのでしょう。これでは、どの波に乗って近付いて来るのか読めません。
ジョニィが気付いた時には、もはや大統領はジョニィの間近ッ!2人がすれ違う一瞬が勝負の分かれ目でした。上を行ったのは……、大統領!!スロー・ダンサーの首が切られ、ジョニィも思いっきし落馬。ここまで露骨に馬を攻撃し、傷付けた敵も大統領が初めてです。ある種、「SBR」におけるタブーとさえ言える馬への攻撃をも豪快に決めてくれちゃいました。生命への敬意など、微塵も持ち合わせちゃいないようです。幸い馬は死んではいないものの、地面に倒れ、もはや走るどころではありません。「騎兵の回転」は完全に封じられた!
再び姿を現す大統領。演説の時間です。彼が大統領に就任した2年前、生まれ故郷で祝賀の晩餐会が開かれ、殺されたばかりの子羊の生肉がふるまわれたとの事。新たな時代が幕を開ける時、必ず「試練」が訪れる。そして、「試練」には必ず「戦い」があり、「流される血」がある。「試練」は強敵であるほど良い。「試練」は供え物であり、立派であるほど良い。このレースに関わった者はみな、大統領にとっての子羊の生肉に過ぎなかったのです。
……で、そんな演説をしつつ、大統領がジョニィに土をパラパラ振り掛けてるんですけど、どーゆー意味なんですかね?地面に這いつくばるジョニィに、さらに土を掛けてやる事で、彼を屈辱を味わわせてやりたかったんかな?それとも、供え物をする際の儀式的な行動とか?あるいは、今後の攻撃への布石なのか?よく分からんな。


●大統領のご高説を聞かされながら、ジョニィは思考を巡らせます。それは、「LESSON5」の意味。ジャイロはなぜ、いきなりあんな事を言い出したのか?あの言葉は何を意味しているのか?
ジョニィの爪弾は残り1発。それをあえて先に撃たせてやろうとする大統領。ジョニィは「生贄」であり、「試練」は「流される血」で終わる!大統領は悠然とジョニィのとどめを刺しに向かって来る!……すると、大統領の視線は鉄球を捉えました。それは、ジョニィが回転させた鉄球。そばに横たわるスロー・ダンサーへと鉄球が放たれます!一体、ジョニィは何をすると言うんでしょうか!?
ジョニィは「LESSON5」の意味に気付いたのです。その答えは……、鉄球で馬の肉体を反応させ、脚を動かす事。その脚にモロに蹴られたジョニィ。これが、馬の力を利用した「黄金長方形」。ジャイロは自分の敗北を悟り、ジョニィの馬が攻撃される事を見越して、打開策を「LESSON5」として伝えていたのです!ジャイロに渡せなかった鉄球と、ジャイロとの出会いのキッカケとなった脚の反応。本当に本当に、遠い廻り道。彼らの縁が今、となって繋がったのです。
馬が生まれてきた事を感謝して走った時に「黄金長方形」の走行形(フォーム)になるって話はどこへ?そんな疑問もありますが、「黄金の回転」をする鉄球によって起こされた脚の反応ですから、そこにも「黄金長方形」のエネルギーが宿っても不思議じゃないか。そう受け取る事にしましょう。とにかく、空中にブッ飛ばされながらも、ついにジョニィは完全なる「黄金の回転」エネルギーに到ったのです!そのジョニィの姿には、生命の脈動を感じさせる、華麗で力強い美しさがありますね。そして、とうとうチュミーちゃんも完全体に進化ッ!ゴーレムかモビルスーツみたいなゴッツい姿になっちゃいました。可愛げのカケラもなくなっとるけど、これはこれでカッコいいぜ!「次元の壁」くらい造作もなくブチ割っちゃいそうだな。
さあ!ジョニィの反撃の狼煙は上がった!いよいよ最終決戦も真のクライマックスへ!


★今月は51ページ!盛り上がってます。盛り上がってはいるんですが、正直、ちょっと物足りない気持ちも。ジョニィの心理描写がもっと欲しかったな。ジャイロの死(?)に直面した絶望を、どうやって乗り越え、大統領に立ち向かう決意・覚悟を固めるのかと期待してたもので。なんか普通にバトルに突入しちゃったからね。
まあ、もともとジャイロもジョニィも「大統領を倒す事」を目的としてるワケじゃありません。本来、特に因縁もないし。それこそ大統領なんて、目的を果たすための「試練」の1つでしかないんです。だから、「目的」でない事に対して心理描写は不要と判断されたのかもしれません。むしろ、大統領を倒した後にこそ、私の期待する展開が待っていそう。ジョニィが「遺体」に選ばれたとしたら、彼はどんな想いを示してくれるのか?ジャイロ達の生死は?レースの行方は?もしジャイロが生還したなら、己の使命とどう向き合って生きていくのか?――長かった6,000kmの旅路の果てにある、いろいろな「答え」。それを大いに楽しみにしています。
作者コメントは「最近本当、「絵画展」と「ゾンビ映画」を観てます。どちらもずっと浸っていたい。」との事。荒木先生らしいぜ。絵画とゾンビ……、まるで正反対に思えるそれらに、共通の「何か」を見出たりしてるんでしょうかね?



(追記)
今後の予想をしてみたいと思います。「SBR」の予想を楽しめるチャンスも、あとほんの数回でしょうしね。
ジョニィの放った最後の爪弾は、「騎兵の回転」によって「次元の壁」を突破する力を得ました!完全体チュミーちゃん……いや、チュミーさんが大統領に襲い掛かる!ところが、老いて干からびたはずの大統領の肌が、なんとプリプリツヤツヤの瑞々しい肌になっちゃうのです。むしろ以前より若々しくパワフルな姿になっちゃいます。大統領もジョニィ自身も唖然呆然。「冷や汗をかいたが、わたしを倒すどころか逆にパワーを与えてくれるとはな!」と大統領は得意顔。
ジョニィにとどめの一撃を食らわせようとする大統領。しかし、その手刀は空振り!突然、現れた白ネズミの方を振り向いたら、偶然にも攻撃をかわしてた……とかで。さらに大統領は、空振りしたまま滑って大コケし、顔面を強打するとかね。どんなに攻撃しても、大統領の攻撃は当たらない。そればかりか、くだらないアンラッキーで大統領は地味にダメージを負っていくワケです。明らかに異常な事態。ここで両者はハッキリと悟るのです。ジョニィの「騎兵の回転」は、「逆転」「反転」の能力なのだと。
「逆転」の力により、大統領の肉体は若々しくなりました。しかし、大統領の能力すらも「逆転」させてしまったのです。「吉良」を集め、「害悪」を弾くはずが……、逆に「害悪」を集め「吉良」を弾くようになってしまったのです。次々に襲って来る不幸・不運に、大統領はボロボロに。なんとか「空間のスキ間」から逃れようとするが、どういうワケか脱出不可能!見ると、意識を取り戻したルーシーがヴァルキリーを駆り、大統領との距離を必死に保ってくれていたのです。やはりルーシーはジョニィの勝利の女神だったッ!
大統領は「遺体」に、イエス様に、大声で呼び掛けます。「わたしを選んだのではなかったのですか!?」と。その呼び声に応えるかのように、ルーシーの肉体から「遺体」だけが離れ、大統領の前に姿を現す!イエス様は「人々の代わりに罪や不幸を背負えるのは、わたしが選んだ君しかいないよ」などと言い出します。そして、「さあ。ここでわたしと共に、永遠に人々を救っていこうよ」と、サラリと爆弾発言。「な、何を言っているゥゥゥゥゥウウウウ―――ッ!」――大統領の叫びも虚しく、「空間のスキ間」は永遠に閉じられます。大統領は、イエス様と共に永遠を生き、人々の身代わりとなって苦しみを味わい続けてくれる事になりました。
「遺体」と大統領が消え去り、世界は元の落ち着きを取り戻します。大統領には勝ったものの、ジャイロはもう……。悲しみに暮れるジョニィ。その時、ジャイロの死体からかすかなうめき声が聞こえる!ジャイロは生きている?なんと、「逆転」した大統領の力によって、ジャイロの傷は大統領へと引き寄せられていたのです。ジャイロだけでなく、スロー・ダンサーもH・Pもスティール氏もみんな無事ッ!ジョニィのダメージもいつの間にか無くなっていました。そしてジョニィは、今こそ自分の脚で立ち上がり、倒れるジャイロの元へと歩いていくのです。
という、ジョニィの逆転勝利の予想でした。都合良すぎであっても、ジャイロとジョニィにはなんとしても生きていてほしいのですよ。


「LESSON5」では、これまでの旅が円環を成す素晴らしき「答え」が示されました。
2人の出会いでの……、鉄球による脚の反応、死因のトップ入れ替え話。1st.STAGEでの……、馬のクセ爆発。そして2nd.STAGEでの……、チュミーちゃんの「Movere crus(脚を動かせ)」という言葉。始まりの時点で、すでにヒントはちりばめられていたんです。
しかし、「騎兵の回転」とはそもそも鐙で脚を踏ん張り、馬の力を乗り手にまで伝えるという技術。脚を動かせなかったジョニィが、脚を踏ん張るからこそ感動できる設定です。なのに実際は、馬に蹴られてブッ飛んだら出来ましたってオチ。馬乗りにしか出来ないと言われていたにも関わらず、ジャイロも意外とあっさり使えていましたし。まあ、予想を超えた発想を生み出す荒木先生らしいっちゃらしいけど、その点がどうにも引っ掛かります。
これは、レースの中で回収・解消していく設定なのかもしれません。やはりこの物語はレースの物語なんです。きっと最終レースの最中、ついにジョニィが脚を踏ん張り、ジョースターの血統を受け継ぐからこそ可能な走りを見せてくれる事と思います。そして、ニコラスへの罪の意識や親父さんとの確執には、どのような形で終止符が打たれるのか?ゴール間近とは言え、まだまだ楽しみが残されていますよ。




(2010年6月18日)
(2010年6月25日:追記)




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