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「無事なジャイロ」を もう一度 ここに戻したい…
………………
みんなをここに 戻したい
僕に あんたを 信じさせてくれ


#63 LESSON5C





●トビラ絵は血まみれのジョニィ。物憂げな表情を浮かべながら、両膝立ちしてます。サイドに「JOJO」と書かれまくった黒いパンツを装備し、普段とは一風異なる雰囲気も醸しておりますな。これより行われるジョニィの決断は、彼が真の意味での「JOJO」となれるかどうかの岐路なのかもしれません。我々読者に、ジョニィこそ「ジョジョ」の名を継ぐに値する男だと認められるか否か、その瀬戸際に立っていると言えましょう。
そして、そんなジョニィの傍らに、背を向けて立つジャイロの魂。たとえ死しても、ジョニィをそっと見守り、「進むべき道」へと導いてくれているかのようです。


●トビラ絵から延長するかのように、ジョニィの背後に佇むジャイロの姿。気配を感じ、ジョニィが振り向くが、そこには誰もいない。それはジャイロの魂なのか、それともただの幻影……?何かをジョニィに伝えようとしている……?。
「回転」を止めてくれれば、「隣りの世界」からジャイロを連れて来てやる。予想外の取り引きを持ち掛ける大統領。しかしジョニィは、瞳に漆黒の炎を同時に浮かべ、大統領を撃ち殺そうとします。ジャイロの死を受け入れ、彼への圧倒的感謝によって心を満たしたはずのジョニィですが、この最後の局面で気持ちが大きく乱されてしまっています。そんな自分の心の揺らぎが許せないかのように、大統領の言葉を遮るジョニィ。大統領はなおも交渉に臨み、ジョニィへと語り続けます。
――わたしの目的は「遺体」を手に入れる事であって、ジョニィ達の命を奪う事ではない。この世界のジャイロは海に消え、肉体も朽ち果てていく。だから、「隣り」のジャイロを連れて来ても消滅する事はない。ここへ連れて来るジャイロは今までの彼とは同一人物ではないが、ジャイロ・ツェペリはジャイロ・ツェペリの道を行く。重要なのは、この世界で生きている事なのだ。わたしの行動は「私利私欲」のためにやった事ではなく、この国のために絶対必要と判断したからやった事。「遺体」の能力が示したように、あらゆる人間が幸せになる事など出来ない。「美しさ」の陰には「酷さ」がある。だからこそ、「遺体」を自分の欲望しか考えないゲスの手に渡してはならないのだ。わたしの大統領としての絶対的使命は、我が国民の「安全を保障する」という事!このSBRレースはそのために行われた。人間の世界では、劇的変化のある時、必ず戦闘が行われる。このレースに関わって死んでいった者は、大切なものを手に入れるために必要な犠牲であり、必然の結果だった。戦争ではなく、SBRレースであったからこそ最少の犠牲で済んだのだ。決して報復などしないし、全てを終わりにすると誓う。だから、さっきと逆方向の「回転」を撃ち込んでくれ。そうすれば、この「回転」も止まるはず。――
……う〜む、スゴイな。さすがは大統領にまで登りつめた男。話術や人心掌握にも長けてますね。完璧に決着はついていたのに、一気にほぼ対当の立場に持っていってしまった。しかも、どこまで信じていいのか分からないけど、真に迫ったものを感じました。感情を高ぶらせていたはずのジョニィも、いつの間にやら大統領の空気に飲まれてしまってます。『ACT4』もいつの間にか『ACT2』状態に戻ってるし。


●「遺体」を正しく理解しているのはわたしだけだ。死ぬ事に恐れはないが、今は死ねない。この「回転」を止めてくれ。――淡々と、しかし粛々と、そう語り掛ける大統領。なんとジョニィも、「大統領を信じたい」と言い出します。しかし、保証がない。「回転」を止めた途端、騙し討ちをするかもしれないし、殺し屋を送り込んでくるかもしれない。そこでジョニィは、自分が「正しい道」を行く人間である事を信じさせてみろ、と条件を提示。説得できたら、喜んで「回転」を止めてやる、と。
驚きのリアクションですが、それにはジョニィの切なる願いが込められていたのです。大統領がいい人だと信じられたら、どんなに素晴らしいだろう。死んだジャイロを、そしてみんなを、ここに戻したい。ジョニィはジャイロだけでなく、イケメンにもウェカピポにも、自身が殺したサンドマンにさえも、会いたいと願っているのです。これって、さりげに感動的ですよね。誰も信じられず、孤独に荒んでいただけだったジョニィが、多くの人達との繋がりを大切に想えるように成長したワケですから。大統領さえも信じたいし、信じさせてほしいと願える程に。
でも実際問題、いくら『D4C』と言えど、そこまで出来るのかなあ?出来事の内容やタイミングに多少のズレはあっても、基本的な歴史は「基本の世界」に準じているのが「隣りの世界」と解釈してるんで。ジャイロやH・Pはついさっき死んだばかりだから、時間的にまだ猶予があるってだけで、何時間も何日も何ヶ月も過ぎてしまっては取り戻せないんじゃなかろうか?とは言え、本当にジョニィの願い通りみんなが生きて勢揃いできたら、複雑な気持ちだけど、それはそれでステキです。しかし、ジョニィの事だから「ただしDio、てめーはダメだ」とか言い出しかねないな(笑)。


●どういうワケか、ルーシーの中から「遺体」が抜け出ようとしている様子。彼女の肉体をバリバリ引き裂き、分離しようとしております。それにより、彼女も血だらけ&意識朦朧に。大統領が言うには、「遺体」が完全に分離した時、ルーシーは死ぬそうです。で、そんな時のために、大統領は「隣り」のH・Pから肉スプレーを奪っていたとの事!つまり、ルーシーには「遺体」化ルート「遺体」分離ルートの2つが可能性として存在していたって事なのかな?前者で死ぬのはいいけど、後者で彼女が死ぬのは忍びないのか。たとえ「遺体」そのものにならなくても、「遺体」を顕現させた「女神」として敬っているから、後者なら生きていてほしいと思うのかも。なんとも歪んだ愛情だなあ。
「遺体」分離ルートになったのは、「騎兵の回転」によって、『ラブトレイン』を発動させる意味が失われたから?それとも、大統領が敗者となったため、「遺体」も別の誰か(ジョニィやジャイロ、スティールとか)の元へ移動しようとしている?ジョニィと大統領の戦いの結末ももちろんですが、「遺体」の動向も気になるところです。
ともあれ、肉スプレーがあれば、ルーシーは死なずに済みそうな気配。切られた左手も修復できるしね。そして、スロー・ダンサーも肉スプレーで治療!無事に息を吹き返しました。これでレースにも復帰できますね!よかったよかった。
それにしても、肉スプレーは万能ですね。H・P本体が気絶してても使用できる事は分かってたけど、本体が死んでも、他人が勝手に能力を使えちゃうなんて。しかも、次元を超えても効果は持続。ある意味、肉スプレーという不思議アイテムを創り出すのが『クリーム・スターター』の能力と言えたりして?


●肉スプレーを渡す事で、ジョニィの信用ポイントはアップ!大統領はさらに説得を試みます。次なるテーマは、スティール氏の処遇についてです。本来なら始末して当然のスティールを生かしているのは、ルーシーにそう誓ったからです。大統領は一度口にして誓った事は、必ず実行する。「報復しない」と誓ったなら、決してしない。「本当か〜?」と疑問に思い、大統領のこれまでの言動を読み返してみたところ、なんかマジっぽいです。作中で確認できる限りでは、確かにウソをついた事はないんですよ。えげつない事を言ったりやったりしてはいるけど、決してウソを言ったり騙したりはしていないんです。良くも悪くも事実しか言わないっていうか。何故か、いつも調子のいい事ばっか言って、ウソばっかついてるイメージがあったな〜。ごめんね、大統領。
そして、ジョニィ説得のとどめとばかりに、今度は父親のハンカチ話。それは大統領の心の支え。大切な時はいつも持ち歩いている。そのかけがえのない大切なハンカチにかけて、大統領は「決して報復はしない」と固く誓いました。このハンカチから「父の愛」「愛国心」を学んだと、大統領は言います。まさに、大統領の原点。その上、父が生きている世界を探し、何度も異次元へ行っていた事も判明!ジョニィがジャイロやみんなに会いたいと願うのと同じように、大統領も父に会いたいと願っていたのです。たとえ厳密には別人であったとしても、それでも大切な人に会いたいと願う事は、決しておかしい事ではありません。
大統領の父親への想いに、ジョニィの心は一際強く揺さぶられたようです。自分と同じ部分と、自分とまったく違う部分の、両方を同時に見たのでしょう。大切な人に会いたい気持ちは同じ。でも、「父親」に対する気持ちは、まるで正反対。ジョニィはただの一度も、自分の父親をそんな風に思った事はなかったのです。仮に自分が大統領と同じ立場であっても、自分は父親を捜しになんて決して行ったりしないだろう……。
そして、ジョニィは認めます。「あんたの方が… 「正しい道」なのかもしれない…………」と。「少なくとも ここにいる僕よりは……… 人として「正しい道」を歩いている」と。このジョニィの哀しげな顔ったらないね。ジョニィも大統領も「飢えた者」ですが、大統領は父から「受け継いだ者」でもあったのです。もちろんジョニィも、ジョースターの血筋から乗馬の才能を受け継いではいるものの、もっと大切な「心」を父から受け取っていないのです。その差が、この土壇場での大統領の強さに、ジョニィの弱さに繋がってしまった。皮肉なものです。


★今月は33ページ!ページ数の割に、内容は濃密でした!ディ・モールト面白かったです。派手なバトルもいいけど、こういう会話オンリーの回も見応えがあるなあ。ジョニィと大統領、2人の個性がよく現れてましたね。まさか最終決戦で、こんな展開が読めるとは。かつてのインタビューで語られた「最後は銃で撃つのが速いヤツが勝つってのはおかしい。それに代わるものは、聖なるものの存在かも。」という言葉が、いよいよ形となってきた感じ!
ジョニィの選択は、果たしてどちらなのか?いや、今の時点では「回転」を止める気満々っぽい。でも、きっと最後の最後の瞬間に、ジョニィは気付いてくれるはず!別のジャイロを受け入れた時点で、「おまえがいたから「正しい道」を歩んで来れた」と言ってくれたジャイロを裏切ってしまう事に!未だにサブタイトルが「LESSON5」なのも、あの時のジャイロの言葉が大きな意味を持ってくるからに違いありません。「騎兵の回転」のヒントであるだけじゃなく、これからのジョニィの「心の中の地図」となり、「聖なるもの」となってくれると信じていますよ。
それと……、今回のフキダシ内の絵は何だったんだろう?いつもスゴイけど、さすがに今回は常軌を逸してたぞ(笑)。ここまで来ると、もはやネタすら通り越して芸術的に見えてくるな。特に「保障OK」に吹きました。
作者コメントは「今年の夏、一番多く使った「ワード」は「暑い」ですね。一日何回?まさか何十回かも。」との事。割と普通のコメント。いかに荒木先生と言えども、今年の猛暑はしんどかった模様です。やっと過ごしやすくなってきましたね。
あと、恐らく今月分で22巻収録分も溜まったっぽいです。発売は11月かな?この分なら、残り4〜5話くらいか。少なくとも、今年いっぱいは「SBR」を楽しめそうです。




(2010年9月17日)




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