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「STEEL BALL RUN」 コミックス感想
16〜20巻






●第20巻● (ラブトレイン-世界はひとつ)



<カバーイラスト>
なんと18巻・19巻に続いて、20巻までも同じようなデザイン・構図のイラストとなっています!18巻のジャイロ、19巻のジョニィの次に登場したのは、もちろんルーシー!この3人こそが「SBR」の主人公達ッ!
さて、そんなワケで「ジョジョ」シリーズ通巻100巻目に当たる今巻。表紙を飾ったのはルーシーでした。100巻をお祝いしてか、彼女もちょっとおめかし。いつもと違うヘアースタイルに、可愛いリボンまで結んでらっしゃいます。ワンピースや脚のアクセもオシャレで、14歳とは思えぬ気品と色気を醸し出してますね。そんなセクシー&キュートなルーシーをいやらしい目で見つめるのは、我らが大統領!背景に溶け込み、記念すべき巻にちゃっかり紛れ込んでやがります。その図々しさ堂々たる立ち居振る舞い、見習いたいものです。しかし、大統領のクルクルヘアーはキモいな。穴の中に吸い込まれそうで、妙な存在感があります。この髪も「円」「球」「回転」を意識したデザインなんでしょうか?「SBR」のボス的存在には相応しい髪型なのかも。
カラーリングもまた、ルーシーに合わせてポップな仕上がりになってます。ピンクとオレンジという、実に女の子らしいカラー!18巻や19巻とも、まったく異なる印象。やれやれ、荒木先生は色の魔術師だぜ。
背表紙は「隣りの世界」から連れて来られたジャイロ!ポーズまで2巻と鏡写しですよ。2巻と20巻を並べて見比べてみると、絵柄の変化もよ〜く分かって面白いですね。目や鼻の描き方なんか顕著ですが、全体的により写実的になってるのが理解できるでしょう。……で、ジョニィにジャイロと来れば、順番的に次は2個目の鉄球かな?21巻が最終巻になりそうな予感。そう思うと、なんか寂しいなあ〜……。

<作者コメント>
「ジョジョ」シリーズ通巻100巻という節目の巻ではありますが、荒木先生はいつもの荒木先生でした。100巻までの道のりを振り返り、しみじみと物思いに耽るってのも良いけど、そーゆー感慨など全部ブッ飛ばしてくれる荒木先生が大好きです。
家の中に落っこちているツケマツ毛に恐怖する先生。こういうホラー的感覚というか発想が、「いかにも」って感じですよね。しかし、大統領のクルクルヘアーに埋め尽くされた不気味な裏表紙を見れば、その気持ちも実感できようというもの。そして、そんなホラーよりよっぽど怖いのは、ツケマツ毛の持ち主ってオチ。奥様であるチャミ様か、はたまた娘さんか?それは謎ですが、一番恐ろしいのはやはり人間なのかもしれません(笑)。

<内容>
「JOJO VOL.100!」で始まる今巻は、いよいよジャイロとジョニィの最終決戦が描かれます。ルーシーの身に起こる異常、「女神」となったルーシーが起こす奇跡、そして男達の戦い。リアルタイムではちょいと物足りなさも感じたものですけど、こうしてまとめて読むと盛り上がりますね。21巻で描かれるクライマックスへの繋ぎ的な部分もあるものの、大ゴマ連発で大迫力ッ!引き込まれます。
サブタイトルにもなっている「ラブトレイン」ですが、これは「遺体」(=「女神」ルーシー)が発現させた、世界を引き寄せる能力のスタンド名なんでしょうかね?呼び方にも困るから、このサイト内では当面、『ラブトレイン』と仮称する事にします。「Love Train」は、フィリー・ソウルを代表するグループ「O'Jays」の曲名であるらしく、世界の平和と愛を歌った名曲であるようです。う〜む、これ以上ないくらいにピッタリだな。「涙の乗車券」から「ラブトレイン」って流れも巧いよなあ。さんざん無限の世界を描いといて、「世界はひとつ」ってのもシャレが効いてる。
ラフ画は、ジャイロとヴァルキリーのエンブレム。それ1つだけでした。あとは、#80のトビラでも描かれている大統領とジョニィのエンブレム。なんでジャイロのだけラフ画で描き下ろされたんだろ?でも、カッコ良かった。

(2010年3月5日)




●第19巻● (お金持ちにはなれない)



<カバーイラスト>
「SBR」の表紙は実験的なイラストが多いですが、今巻も御多分に漏れず。なんと18巻の表紙と対になっているではありませんか!18巻ではジャイロだけがポージングを決めてくれましたけど、今回はジョニィが表紙を飾ります。いつもより星の数が多めのファッションと、いつもはやらない前髪垂らし。今、ジョニィこそがSEXY!今巻の表紙に懸ける意気込みが伝わってきますよ。そのためか、ちゃっかりチュミーちゃんACT2まで出現しとります!つーかジョニィ、当たり前にように立ってるし!最近のトビラ絵とかでも普通に立ってるけど、どうせなら「立ち上がったジョニィ」は作中で劇的に描いてほしかったもんですな。ありがたみが薄れちゃうよ。
赤と紫を基調とした、ややサイケデリックで毒々しささえ感じる18巻。カラーリングもまた、これとは対象的になっています。水色とシルバーという、見る者を落ち着かせる爽やかな彩り。背景や構図は同じようなもんなのに、まったく違う絵にしてしまうのが、さすがは荒木先生です。20巻も同じような感じでルーシーかH・Pが描かれたりするかも?
背表紙は『D4C』の胴体と、なんとジョニィ!ってオイ!なんでジョニィがまた現れるんだよ?しかも、すぐ隣にはジャイロまで見えてるじゃん!これは「ドラゴンボール」で言うところのヤジロベー現象?……と、一瞬思ってしまいそうですが、まあ、『D4C』のそばに描かれているのだから、彼らは「隣り」のジョニィとジャイロなんでしょう。ニヤリ、なかなか味なマネを……。

<作者コメント>
「木登りなんてしちゃダメだよ」というありがたい忠告をしてくれている、木登り中の荒木先生。職質や通報をされたり、降りられなくなったり、股関節を痛めたり、すりムイたり、死んだり、人格疑われたり……ってのも、もしや先生の実体験談?ただのギャグで言ってんのかと思いきや、自然との一体化を図る哲学的な試みである様子。
自然と闘い、自然から学ぶ。それこそが「SBR」の骨子。そう考えると、先生が自然と一体となるために木登りするくらい、至極当然な気がしてきます。先生がいろんな犠牲を払いながら木登りをして学んだ事が、ストーリーにどう反映されていくんでしょうか?

<内容>
まさにディエゴのディエゴによるディエゴのための巻ッ!ディエゴは毎度毎度、盛り上げてくれますなあ。ジャイロ、ジョニィ、ルーシーに次ぐ、4人目の主人公としてもイイくらい!それだけに、ここで死ぬのは惜しすぎます。なんとかうまい事やって、切り抜けてほしいけど。
さて、今巻のタイトルでもある「お金持ちにはなれない」ですが、こりゃどういう意味なんでしょか?えらい唐突で浮いて見えるタイトルです。でも、『D4C』のスタンド解説や本編での紙幣の使い方等も鑑みるに、なんとなく分かるような気が。『D4C』を利用して「隣り」からお金をいっぱい集めても、結局、パラレルな存在同士がくっ付いて全部消滅してしまい、何も残らない。転じて、「欲をかいたヤツは全てを失う」という事?「あえて全てを差し出した者は最後には真の全てを得る」に近い言葉。また逆に、どんなものも1つの世界に1つしか存在し得ないのだから、全てのものに大きな意味と価値があるって前向きな意味合いだったりもするのかな?う〜ん、変に深読みしてしまいそうです。
もっと単純に考えると、ディエゴの事を意味してるっぽい。所詮、ディエゴでさえも唯一の例外である大統領の前には成す術もない、「お金持ちにはなれない」その他大勢のうちの1人に過ぎないのです。カネも力も何も掴めぬまま敗れ去ってしまったディエゴを暗示した言葉なのかもしれません。別の世界同士の存在2つが出会って、1つに重なって消滅していくのに対し、1つの肉体を真っ二つに切断されて倒されたディエゴ。なんとも皮肉なもんです。
ちなみに、今更ではありますが、「隣り」のディエゴが足を滑らせた理由が改めて分かりました。いや、今まではちょっとぼんやりとした感じだったもんで。ハッキリした答えというか、流れが把握できました。要するに、別世界の同一物質との間に働く引力を巧みに利用したと。「隣り」のディエゴは右ポケットに紙幣を入れていたため、右足ごと引っ張られ、バランスを崩して滑ってしまったんです。「基本」のディエゴはその辺を予測した上で、前もって足場を滑りやすくしていたんでしょう。増してや、カネを利用するって所も自分自身をよ〜く理解してますね。自分なら落ちてるカネを拾おうと近付くはず、と確信を持って罠を張ったんです。さすがディエゴ。考えてみれば単純ですが、これで私もスッキリ。
さて、今巻もセリフや擬音の追加・修正等がいっぱい。『D4C』とのバトルはややこしいからか、説明的なセリフが増えた印象。そんな中、とりわけインパクトが強かったのは、大統領の「どジャアア〜〜〜ン!」と、ジョニィの「……違ったらジョジョじゃなくなるだろ」ですかね。「チラリ」だけでは飽き足らず、「どジャァア〜〜ン!」まで自分の持ちネタにしてしまうオチャメな大統領。そして、メタ発言で笑いを取るジョニィ。いや、単に「ジョジョ」って渾名になるワケないだろ、って事か?みんなしてギャグばっか言って……。ジャイロのキャラが感染してる?
ラフ画はディエゴとH・Pの2点。H・Pの描き方がなんか面白いですね。やたら線がカクカクしてて、顔もテキトー(笑)。でも、なんか味のある絵だ。

(2009年11月5日)




●第18巻● (涙の乗車券(チケット・ゥ・ライド))



<カバーイラスト>
今巻ではほとんど出番がないにも関わらず、ジャイロがちゃっかり表紙を飾っています。「主役はオレだぜ!」とでも言わんばかりに、難易度の高いポージングで決めてくれてます。マントに至っては重力すらシカトする始末。
やはり目を引くのは、そのカラーリングでしょう。15巻・16巻と同様に、大胆かつシンプルで力強い色使い。空間を切り取ったかのような画面と、赤と紫のミステリアスな組み合わせが、奇妙な世界を生み出していますね。裏表紙を見ても分かる通り、ジャイロのファッションは「円」・「球」・「丸」がモチーフとなっています。その対比の如き、やたら鋭角的なポーズのジャイロ。そして、四角い背景。「円」と「角」のコントラスト。これまた妖しげで魅力的なイラストでした。
背表紙は『D4C』!今巻のメインを張るだけあって、キッチリ目立ってくれてます。背景には橋と船も見えますね。

<作者コメント>
「SBR」の登場人物達の共通点について。それは、自分の「帰る場所」「帰る意味」を探し求めている点。
なるほど、確かにその通りかも。ジャイロも、ジョニィも、ディエゴも、ルーシーも、スティールも、H・Pも、ポコロコも、大統領も、誰もが必死に追い求めています。ただの故郷だとか家だとかではなく、「幸福に生きられる道」「己の生に納得できる理由」を。そのために必要なのがレース優勝の栄光であり、60億ものカネであり、「遺体」であるのです。「SBR」レースは「幸福」と「納得」を得るための旅路なのです。
荒木先生のおっしゃるように、イケメンだけはそれを見い出せていました。ルーシーに恋し、ルーシーのために戦う事により、彼の心の孤独は満たされました。自分の「幸福」と「納得」とは一体、何なのか?想いは受け入れられず、命をも散らせてしまっても、その「答え」を自覚できていた彼の人生は救われていた事でしょう。「願い」に向かって行けたのだから。同じく、今巻でもウェカピポがその「答え」を見付けたが故、物語から退場してしまいました。「道」を誤ってしまったサンドマンも、死の間際でやっとそれを見付けつつあったように思います。
さて、ジャイロの場合はどうなるんでしょう?ツェペリという名を持つために不安要素はいっぱいですが、私はジャイロは死なないと読んでます。彼にとって最も重要な事柄は、人の命とどう向き合うかに尽きます。死刑執行人として、医者として、どう生きていくべきか?レースに優勝しようが、「遺体」を揃えようが、この「答え」を出せるのはジャイロ自身の心だけ。そして、その「答え」をどこまで貫いて生きていけるのか?つまり、ジャイロにとっては日常に生きる事こそが最大の戦いなのです。だからレースの途中、祖国に帰る事もなく死んでしまうなんてのは、ある意味、楽な道への「逃げ」に等しい。ジャイロにはジョニィと笑顔で別れて、自分の信じる「道」を歩み、生き抜いていってほしいですね。
……で、荒木先生にとっても、「SBR」は過酷な旅であるようで。「六壁坂」の時のインタビューでも言ってましたが、故郷に帰る事を願っている様子。でも、それぞれの人物の「答え」を描き切るまで、もうちょっとアメリカを旅していただきましょう(笑)。

男には「地図」が必要だ
荒野を渡り切る 心の中の「地図」がな



<内容>
明かされる『D4C』の能力、ウェカピポの消滅、ルーシーを通じて発動する能力、側近ズのあっけない死、ジャイロがジョニィに語る「騎兵の回転」!ページ数はちと少なくて薄いけど、内容は圧倒的濃さ!「遺体」を巡る真の最終決戦へ向け、全ての運命が激しく動いています。これは盛り上がらざるを得ませんッ!
今巻のタイトル「涙の乗車券(チケット・ゥ・ライド)」は、かの「ビートルズ」の曲名が元ネタ。これはもしや、ルーシーの「涙のカッター」のスタンド名だったりするんでしょか?『チケット・ゥ・ライド』(仮)の能力を改めてまとめてみます。運命を固定する能力。「涙」で切り付けたものの運命をルーシーの望む方向へと導き、それ以上、先に進めなくしてしまう。抗おうとすればするほど、より大きな反動となって、固定された運命に強引に引き戻されてしまう。最悪の場合、死ぬ事さえあり得る。同時に複数人を切り付けた場合、そのうちの誰かが死んでも、固定された運命が残された者へと移動するらしい。(だから、残った方の側近は、滑った上に左眼にダメージを食らって死んだ。)……ってなトコかな。考えるほどにスゲー能力。大統領も倒せそうだけど、逆に大統領の味方になったらヤバすぎですね。
ラフ画はディエゴとジョニィとルーシー!いつもより丁寧に描かれてる気がしました。ルーシーなんて、本編の1コマにそのまま使っても、さほど違和感なさそうなくらい。めっさ美しいんですが、個人的にはもっとサラサラ〜ッと描いてる感じの方が好みかも?でも、『D4C』の能力紹介とかがなかったおかげで、ラフ画を3点も拝めて嬉しかったです。

(2009年7月4日)




●第17巻● (D4C)



<カバーイラスト>
「物事は円」―――  「回転したならば」――――
絵の中心に、無数の鉄球と大統領が「軸」のように描かれています。そんな大統領に運命の歯車を回されていく者達。ジャイロ、ジョニィ、ディエゴ、ルーシー、ウェカピポの5人の姿。そして、彼らを包み込むかのように大きく描かれた『D4C』!時空を自由に漂う優雅さが感じられます。まさにこの巻を象徴するイラストとなっていますね。イメージ的には7巻のイラストっぽいかな。背景の山とロープも面白い組み合わせだと思いました。
全体としてグリーンや紫の濃いカラーで統一されている中、『D4C』の白く淡い色合いは印象的。儚げでもあり、力強くもあり、神々しくもあり、禍々しくもあるその姿は、あまりにも美しい。15巻や16巻みたいな超シンプルなカラーリングもインパクト大ですが、やはりこういう正統派なカラーも最高です。見とれちゃうぜ。
背表紙には、大統領『D4C』の頭部。『D4C』のツノの先っちょ、さりげに16巻に描かれてあったんですね(笑)。そんで、その奥にはディスコ改めディ・ス・コさん。今巻でのディ・ス・コの扱いは破格で、カバー裏でもカバーを外しても分身して踊ってる彼がいて吹きました。あっけなく倒されはしたものの、愛されてますね。

<作者コメント>
半年振りの新刊という事で、どんなコメントなのか楽しみでした。3部の修正やらルーブル美術館の展示やら、色々とありましたしね〜。でも、荒木先生ならそーゆー事には一切触れず、どうでもいいような事を書いてくれるんだろうと期待してたんですが、その通りで一安心。このマイペースっぷりが先生らしい。
今回は心の琴線に触れまくる風景のお話。バックネットがあるカーブした坂道を見ると、泣きながら写メるらしいです(笑)。よっぽど好きなんでしょう。ご丁寧にスケッチまで載せてくれてます。でも確かに、先生のスケッチを見ても、何かが心に触れる感覚がありますね。懐かしいような、切ないような……?ちなみに、写メってるくらいなので、ケータイ嫌いだった先生も今は持ってるようです。「ユリイカ」での対談を読んだ時から気にはなってたけど。

<内容>
8th.STAGEスタート直後!フィラデルフィアでの最終決戦!そこで巻き起こる不可解の連鎖!複数の視点で同じ時間を描く、「バンテージ・ポイント」的なサスペンス描写!今巻はひたすら、大統領のスタンド『D4C』の謎を提示する内容となっております。コミックス派の人は18巻まで解答はお預けの上、『D4C』の言葉の意味さえ分からぬままという現実。
やっぱこういう展開は、コミックスでまとめて読むと一層面白いですね!何かわからんがヤバイッ!という緊迫感と疾走感がたまりません。また、今巻はいつにも増して、セリフや擬音等の修正・追加が多く見受けられます。状況がより理解しやすくなった反面、ウルジャンで読んだ時と微妙に印象が変わっちゃってるシーンもありますね。「非国民めッ!」には笑いましたが。個人的にデカかったのは、ジャイロに大統領が接近する際の「(なぜ気付かない!?)」ってトコ。わざわざセリフを追加するくらいなので、意味があるんでしょう。ジャイロが大統領に気付けなかったのは、『ベイビィ・フェイス』戦の時のナランチャみたく大ボケかましてたワケじゃなく、大統領の能力の影響である事が改めて示唆されました。世界が重なり合っている時は、観測する位置や角度等で体感する世界が変わるのか……、『D4C』発動の瞬間、大統領周辺の時空に歪みが生じ、ジャイロにジョニィの声が届かなかったのか……。まだ謎は多い。
残念だったのは、『チョコレイト・ディスコ』が『チョコレート・ディスコ』に改名しちゃった事。発音上、正確ではないのは分かりますが、「レト」の方が良かったなあ。元ネタ的にも。ジョニとかエルメスとかマックイーンとかみたいな、荒木イズムなネーミングに通じる部分もあって好きだったのになあ。ディスコもディ・ス・コになりました。こちらは元ネタの歌い方にも合っててイイかも。
ラフ画はジャイロ、ウェカピポ、ディエゴ。うむ、良い!今巻は5話収録なので、『チョコレート・ディスコ』のスタンド紹介があっても、3点も拝めましたよ。やったね!

(2009年3月7日)




●第16巻● (いともたやすく行われる えげつない行為)



<カバーイラスト>
鮮烈なカラーリングが目を引いた15巻のカバーイラスト。それと対を成すかのような、淡い色合いで落ち着いた雰囲気のイラストです。愛馬に跨るジャイロとジョニィ、彼らの眼前に立ち塞がる大統領、生き物はほとんどグレーで塗られています。空間は水色で埋め尽くされ、木々はに。遠くの山々などに使われているピンクが印象的です。この絵を引き立てる額縁みたいなカラフルな線と模様があるものの、カラーリングはこれまたシンプル!実にエレガントでシブいイラストです。
この大胆な色の使い方と組み合わせ、最近の荒木先生のブームなんでしょうか?2006年6月に名古屋で催された荒木先生の講演会で、先生はバーネット・ニューマンという人物の超単純だけど個性的な絵を紹介されていました。また、2007年12月に「ジャンプSQ」に掲載された「岸辺露伴は動かない 〜六壁坂〜」では、破産した露伴先生の唯一の財産がド・スタールという画家の画集でした。簡単な絵なのに光と奥行きと哀愁があって泣ける、との露伴先生のコメント付きで。これら偉大な先人達の「シンプルで心に残る絵」に影響を受け、自分の作品にも取り込んでみたのが15巻と16巻のカバーイラストなのかもしれません。リアルで写実的になっていっている絵柄と、めっちゃシンプルな色使い。奇妙なバランスで成り立っている、面白い絵だと思います。不思議な世界観がありますね。
背表紙には、ついに大統領の御登場ッ!ちょっぴり物憂げな表情がまたセクシーです。

<作者コメント>
ホラー映画大好き野郎・荒木先生の、決して譲れないこだわり。ホラー映画はただ「怖い」「グロい」ってだけじゃなく、殺し方ひとつ取ってみても、アイディアやセンスに溢れているから面白いと熱弁してたくらいなので、先生なりのルールみたいなものもあるようです。主人公達を無理矢理にでもピンチに追い込もうという「作り手の意思」が見えちゃうと萎えるって事でしょうか?窮地に陥る理由にしても、観客を恐怖させる演出にしても、必然性が欲しいんでしょうね。確かに、意味のない事を思わせぶりにやられても困りますし。
それはホラー映画に限らず、モノを創作する上できっと重要な事なんだろうと思います。荒木先生がそこら辺をキッチリ分かっているからこそ、(強引な部分も多いとは言え)物語や人物の動きが自然に感じられるんでしょうね。滝に打たれるのがイヤならば、創作者は物語に説得力を持たせなければいけません。

<内容>
大統領の巻と言っても過言ではない今巻。いいトシした一国の主の、いたいけな少女を孕ませようとひたむきに頑張る姿が堪能できます。後ろ側の表紙折り返し部分では、チラリとこちらを覗き見るシャイな一面も。同時に、荒木作品としては「ゴージャス☆アイリン」以来、「ジョジョ」シリーズでは恐らく初めて、女性のナマ乳がモロに描かれた上にトーンまで貼られた、記念すべきおっぱいの巻とも言えましょう。トリッシュの胸チラや6部の全裸よりレアです。まさに「大統領 起つ!」です。
ラフ画はスカーレットとルーシーとウェカピポの3点。個人的にはルーシーのラフ画が美しくて好き。ウェカピポはやっぱヒゲがあった方がいいなあ。
今巻は私の予想に反し、マジェントが考えるのをやめた所までの収録でした。てっきりもう1話入れて、コミックス派の人もウルジャン派の人と一緒に謎を考えられるようにするつもりだと思ってたんですが。セリフや絵の修正も、今までに比べると少なめです。しかし、なんと驚きの5ページ描き下ろしが収録されていました!「#63 7日で一週間」がそれです。世界のイロツェペの新作ギャグ、初披露!最初に読んだ時は、私もジョニィと同じように冷めた視線を送っていましたが、引いた状態で改めて見た際、不覚にも吹いてしまいました。テンションの落差激しすぎ。ジャイロの顔ヤバすぎ。ジョニィのそっけなさといい、あまりにも空気微妙すぎ。こんなんで笑ってしまった私の負けです。負けだ…。完全 敗北だ…
それにしても、このタイミングでわざわざこんな話を描き下ろしたのは何故でしょうか?そう……、時間の概念がないギャグによって、ジャイロが大統領の時間系能力を無効化してしまうという展開のための布石に違いありません。嘘です。まず考えられるのは、今巻ではジャイロとジョニィの出番がほとんど無かったから。大統領とルーシーがメインを張り、マジェントが最後においしい所を持って行っちゃったので、主人公の存在感と格の違いってヤツを見せ付ける必要があったのでしょう。もう1つに、最近はシリアスな状況が続いていて息が詰まりそうだったので、ここらで読者の気持ちも休ませようという意図もあると思われます。何事もメリハリや緩急を付ける事は大切ですよ。そして、物語もクライマックスが近付き、今後はもうギャグを挟める余裕がなくなってしまうからって理由もあるかもしれません。
「SBR」が完結した時、このバカ話が悲しく切なく感じられるような残酷な結末になっていない事を切に願います。

(2008年9月5日)







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