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第2部 ジョセフ・ジョースター
― その誇り高き血統 ―


「戦闘潮流」





「週刊少年ジャンプ」1987年47号〜1989年15号にて連載されました。
ジョナサンの孫:ジョセフ・ジョースターが主人公となる第2部。1938年のニューヨークから幕を開けます。血筋こそ同じですが、主人公も舞台も時代も、すべて変わってしまうというのが画期的でした。エリナやスピードワゴンなど、1部でのキャラクター達も年を取った姿で登場。この驚き、是非ともリアルタイムで味わってみたかったものです。
1部をゴシック・ホラーとするならば、2部はアクション・アドベンチャー。イギリスだけで展開されていた物語も、一気にワールド・ワイドに。アメリカ、メキシコ、イタリア、スイスと、あちこちに飛び回ってます。どこか重く暗かった空気も一変、軽く明るいムードになっております。その原因は何と言っても、主人公・ジョセフでしょう。紳士と呼ぶには程遠い、ズル賢くてお気楽な性格。もし彼が1部の主人公だったら、1部もまるで違う作品になったでしょうね。主人公が作品を左右するという事を実感させられます。
私が初めて出会った「ジョジョ」という事もありますし、個人的にこの2部はお気に入り。「友情・努力・勝利」と、ジャンプ漫画の基本も押さえられており、世間での人気も高そうです。




<ストーリー>

1部の頃とは違い、2部からは割と行き当たりばったりで描かれているようです。シーザーの存在自体が、すでにそれを如実に証明している訳ですが……。しかし、あらかじめ決められたレールの上をなぞる物語より、作者の勢いや熱が直接注ぎ込まれている感じがするので、私は行き当たりばったり大歓迎。その分、矛盾や強引な点も増えるけど、それをねじ伏せるパワーが荒木作品にはあります。
吸血鬼を超える生物「柱の男」に、波紋と頭脳で立ち向かうジョセフが実にカッコイイです。そして、出会った頃はいがみ合っていたシーザーと、戦闘や修行を通じて友情を深めていく所も良かった。シーザーの死は号泣モノですよ。ケンカしたままもう会えなかったってのが切ないですが、それでも互いに信頼し合っていた2人でした。彼ら以上のコンビは、今後もそうそう現れないだろうと思っています。
2部は他の部とは少々異質で、敵も「悪」の一言で片付けられるものではありません。1部では吸血鬼や屍生人が敵だったとは言え、彼らも元々は人間でした。ところが、「柱の男」達はそもそも人間とは根本的に別種の生物なので、人間の善悪観に当てはめる事自体がナンセンス。むしろ「地球での生存権」を巡る種の争いといった方が正しいのでしょう。しかし、ジョセフは皆の想いのために命を懸けて戦い、カーズは自分の野望のために仲間の想いすら裏切った。最終的には「正義」と「悪」の戦いへと収束させた辺りは、いかにも荒木先生らしいですね。


1部からの因縁を引き継ぎ、物語は「石仮面」のさらなる謎に迫ります。「柱の男」カーズが「石仮面」を生み出した事実や、古代の波紋使いとの戦いの歴史も明かされました。「柱の男」と波紋使いの苛烈な戦いは、「エイジャの赤石」に焦点が絞られます。進化の秘宝であり、波紋増幅器でもある(誰も知らなかったけど)、どちらにとっても超重要アイテム!この「赤石」を利用した駆け引きも多く見られ、実にスリリングでした。
そして、とうとう「赤石」をゲットし、念願の「究極の生命体(アルティミット・シイング)」と化したカーズ。ここら辺は、いかにも最終回が迫っているって雰囲気バリバリでしたね。シュトロハイムやスピードワゴン、ついでにスモーキーまで再登場。いきなり皆さん大集合で、ちょっと展開を急がせすぎだと感じました。しかし、生命を育んだ地球そのものの力を借りての大スケールな最終決戦は、他ではなかなか見られません。あの絶望の中で「運」で勝利を拾ってしまうのもジョセフらしいし、地球を追放されたカーズの末路も印象強かったです。最終回のドタバタコメディー調のとぼけた感じは、2部だからこそ出せる味わい。




<キャラクター>

個性派揃いっつーか、濃い連中ばっかです。陽気で頭も切れるけど、自分の命が懸かっているのに「努力はしたくない」という、主人公にあるまじき性格のジョセフ。キザな女ったらしだけど、仲間や一族を想う気持ちは誰よりも強いシーザー。愛国心のかたまりで「ナチスの科学力は世界一イィィィィイイ!」なシュトロハイム。50歳なのにイケてる姉ちゃんなリサリサ先生。第2次世界大戦直前の揺れる世界情勢の中、同盟国・敵対国の垣根を超え、「人間」として強く結ばれた仲間達です。
敵陣も負けてはいません。一部の婦女子を熱狂せしめたスト様に、ダジャレ好きのサンタナ。腕を切られて泣きじゃくるエシディシ。戦いに誇りと己の存在意義を見出す真の戦士、ワムウ。目的のためならば手段は選ばない外道、カーズ。「肉体の究極」・「進化の究極」をテーマにしている2部だけあって、どいつもこいつも無茶苦茶かましてくれてます。人間の常識など通用しない、恐るべき生物達でした。


実にバラエティーに富んだ登場人物です。その中でも特に好きなのが、ジョセフにシーザー、ワムウかな。普通に正統派ですが。
ジョセフはいい加減で自己中心的。誤解もされやすい男ですが、弱者を放っておく事は出来ない優しさも持っています。それは仲間達と出会い、その波乱に満ちた人生と秘めた想いを知る事で、さらに強く表に出て来ました。そして親友・シーザーの死によって、ジョセフは自分自身のためではなく、皆の想いのために戦おうと「仁」を燃やし始めます。カーズとの最終決戦では、ジョナサンのように自分の命を犠牲にして、皆を救おうとさえしています。そんな精神の成長が感動的。どんな状況でもユーモアを忘れない明るさと、敵にまで敬意を表する気高さを合わせ持っているのが、カッコ良くて大好きです。
シーザーは祖先からの「因縁」と真っ向から向き合っていました。一見、イヤミなプレイボーイの彼は、実は「石仮面」に狂わされたツェペリ一族の非業なる運命を背負っているのです。父親への誤解が解けた事で目醒めた一族に対する誇りこそ、シーザーを突き動かすエネルギー。それを侮辱する者は、たとえジョセフであろうとも容赦しないほど激昂します。一族を背負い、一族のために戦い、ツェペリ魂を見せ付け、若くして散っていったシーザー。ワムウにも言われていた通り、シャボン玉のように華麗で儚き男。彼の命の閃光は、鮮烈に心に焼き付きました。
ワムウは敵ながら、天晴れな漢。まさしく武神でした。あの飽くなき戦いへの執念、誇り高き信念、種族を超えた強者への尊敬の念。敵ではあっても、決して悪ではありませんでした。だからこそ、ジョセフとも最期は奇妙な友情で結ばれたのです。
あ、さりげに鋼線の(ワイアード)ベックもSEXYで好きズラ。




<バトル>

2部のバトルは、ジョセフの戦法ゆえにトリッキーで痛快です。敵のみならず、読者の裏をもかいてくれるので、我々もハラハラさせられます。「負けたと思っていたら、実はすでに勝っていた」という逆転の構図は、この頃に確立されたものです。図解入りで説明されるタネ明かしシーンは新鮮でした。ちっぽけな人間が勇気と知恵と技術で、無敵の生命体に果敢に挑む姿。人間讃歌が高らかに謳われています。
また、波紋の応用にしても、個人によって様々。ジョセフはアメリカン・クラッカーやロープ、シーザーはシャボン玉、リサリサ先生はマフラーと、技にも個性が出ています。敵側にも「流法(モード)」という、それぞれ異なる能力を持たせています。カーズは、ワムウは、エシディシは。みんな戦い方が違うから、バトルが単調になる事なく、どれもが独自の盛り上がりを見せてくれました。これが3部以降でのスタンド・バトルにも繋がっていったのかもしれません。


そんな名勝負目白押しの2部の中でも、やはりワムウとの戦いはどれも忘れられませんね。シーザーVSワムウは、「今」を「未来」に繋いでいく人間の素晴らしさが、シーザーの生き様を通して見事に描かれていました。ジョセフとワムウの戦車戦は、逆転に次ぐ逆転。この勝負にジョセフのすべてが詰まっていると言っても良いでしょう。最後の決め手がシーザーのバンダナだったというのも、本当に目頭が熱くなってきます。シーザーと共に掴んだ勝利でした。
カーズとのラストバトルも、怒涛のジェット・コースター展開に目が離せません。この2部では敵達の戦闘へのこだわりが顕著に見受けられます。ワムウは正々堂々たる決闘を至上の喜びとし、エシディシは仲間のために誇りをも捨てて戦い抜き、そしてカーズは楽して目的を達する事こそ「真の戦闘」と下劣な持論を語っていました。利用できる全ての「駒」を利用し尽くし、「究極生命体」へと進化を遂げたカーズ。太陽を背に立つ姿は、あらゆる恐怖を克服・超越した神々しい美しささえ感じます。太陽でも溶岩でも倒せない。凄まじい波紋を練る事まで出来る。この最悪の絶望的状況には、「こんなヤツ、絶対に勝てねーよ!」って戦慄を覚えました!それだけに、あのまさかの逆転劇は最高に爽快ッ!




(2004年2月10日)
(2006年10月2日:少し改訂)




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