TOP  <<#010 戻る #012>>



オレ… さっき殺すって言ったけどさ…
それは取り消しだ
こいつを「仲間」にしよう


#011 THE ハッスル その②





●今回のトビラ絵は、『ノーヴェンバー・レイン』の雨の中で手を上げるポーズを取るジョディオ。やっぱ漫画的表現としての「雨」ってのは、効果線の役割も担ってくれて、絵自体になんか勢いとムードが生まれるのがカッコイイ。ウェザーが豪雨を降らせるシーンなんか激アツでしたし、ブラックモア戦も最高に盛り上がりましたしね。
ところで、最近はあんまりジョディオの目が隠れてないのが少し残念(笑)。第1話みたく、ちょいちょいメカクレしてくれると私個人は嬉しいです。「溶岩」という具体的な形として「メカニズム」を手に入れたから、それに伴って、ジョディオの視界がパッと大きく拓けた……みたいな意味合いがあるのかもだけど。


●「飼い主」からナイフで首を貫かれたドラゴナ。かつてない生命の大ピンチですが、『スムース・オペレイターズ』で傷をスライドさせ、辛くも生還ッ!ワインの瓶にスライドさせたってのが「さすが荒木先生」ってところで、前回、ウサギ先輩とワインを飲んでたから唐突感が無い上、硬い瓶が切断される事でダメージのヤバさをも実感させてくれます。
ドラゴナの無事を泣いて喜ぶウサギ先輩。しかも、愛の告白まで!そんな先輩の好意を、ドラゴナはジョディオと同じくクールに拒否(笑)。なんつーか、ジョースター兄弟はある意味「ニコイチ」というか、お互いが居ればそれだけで良い感じがありますね。想像以上に固い絆なのかも。でも、それは「冷たさ」にも感じられますし、何より「世界の狭さ」になってしまっていそう。「メカニズム」を支配して高みに上り、大富豪を目指す過程の中で、家族以外の人にも信頼や愛情を抱けるように成長してほしいな。
ちなみに……、前から思ってたけど、ドラゴナが男性である事実をウサギ先輩は知らないんでしょうね。ジョディオがドラゴナのことを「兄さん」と呼ぶ時は、兄弟2人きりの時か、男だと知ってる相手(変態ポリスメンとか母:バーバラ・アンとか)と話す時のみ。チームで行動する時にいつも「ドラゴナ」呼びなのは、(パコはどっちなのかグレーだけど)ウサギ先輩がドラゴナを女性だと思ってるから。本人的に隠しておきたい事なのかどうかは分かりませんが、ジョディオはそのように呼び方を意図して変えているものと思われます。まぁ、他人にいちいち説明するのもめんどいだろうし、ドラゴナはドラゴナだしね。ただ、男だと知った時、どんなリアクションするんだろ?ビックリするのか、「あっ、そうなの~」って感じなのか。


●「溶岩」を奪って消えた「飼い主」を、このまま逃がすワケにはいかない。『THE MATTEKUDASAI (ザ・マッテクダサイ)』を金属探知機に変身させ、ヤツのデカいナイフを追跡しようとアイディアを出すウサギ先輩。何も手掛かりがないのなら悪くはない案ですが、先ほどの「雨」で右足を負傷させた「飼い主」の血痕を発見しました。ところで、『THE MATTEKUDASAI』のデザインがだんだん丸っこくて可愛くなってきてますよね。癒し系スタンドだ。
血痕は、駐車中のクルマの方に続いています。なんか、まんまとおびき寄せられてる気がして怖いなぁ。クルマから降りてきたドライバーの首をいきなり掴み、その皮膚の手触りから「飼い主」ではないと判断するパコ。でも、ドライバーがガチで警察に通報しやしないか心配です。さっきのフードコートでの乱闘騒ぎといい、ホントに無事に飛行機に乗れる?……それはさておき、血痕が付着するクルマにやって来たのは、あのレオ君と彼女!彼女がレオ君のオケツに日焼け止めクリームを塗ってくれたりと、まだワイワイイチャイチャしてる。すかさずパコはハンドサインで皆に指示。レオ君のクルマ周辺を入念にチェックです。絡んできたレオ君の首を掴んでみても、皮膚はクリームでベタベタ、ヒゲも生えまくりでジョリジョリなので判断付かず。
仕方なく2人の右足首を出させて、負傷の有無を確認する事に。彼女の足首を見ようと、ジョディオがクルマのドアを開けると……、手にザラザラした砂のような物が。「飼い主」はドアに溶け込んでいたのです!再びナイフで襲って来る!すかさずジョディオは、攻撃に巻き込まれぬよう、助手席に座る彼女を蹴り飛ばします。おお、優しいじゃん。ジョディオもナイフを交わし、『ノーヴェンバー・レイン』で反撃を試みますが、気付けばまた「飼い主」は姿を隠してしまった。地味に厄介な能力。


●彼女を蹴られたレオ君は激怒。しかし、パコも彼らを気遣っているようで、「今度はケガするぞッ!」「邪魔だ 消えろッ!!」と忠告。クズ共の集まりではあっても、無関係の人を巻き込むのはさすがに気乗りしないようです。「飼い主」は、今度はもう血痕すら残していない。風景と区別できない。どうやって見付け出す!?
すると、さっきの騒動で彼女の手首から高級腕時計が落っこちてしまったらしく、それをついついレオ君が蹴飛ばしてしまいました。どんどん転がり滑っていく腕時計。これは即ち、腕時計が「溶岩」の元に引き寄せられているという事。腕時計が向かう先に、「飼い主」もいるはず!ドラゴナがダイヤを取り出すと、やっぱりダイヤも同じ方向に転がっていく。こんな追跡方法があるとはねぇ。なお、今回も腕時計が「8万ドル」って言われてますけど、「10万ドル」が正しいですよね。コミックスでは値段を統一してほしいところ。
カネ目の物が向かう先は、すぐそばにある海岸。多くの人が泳ぎやヨットを楽しんでいます。この広い場所で「飼い主」がどこに隠れているのか見付け出す事は出来なくても、追跡する方法があるのだから、追い込む事は出来る。ヤツの方から攻撃して来るようにすれば良い。「溶岩」を持っている以上、追って来られたら攻撃せざるを得ない。カネ目の物を引き寄せる力も、こうなってしまうと逆に「縛り」と化しちゃってますね。「メカニズム」は恩恵だけではない、という事か。深いぜ……。


●パコは、この海岸のどこかから「飼い主」が得意気にこちらを覗いているであろう事にムカついてる様子。「クソ野郎 ブチ殺す」と、反撃の狼煙を上げます。まずは、ジョディオの『ノーヴェンバー・レイン』の「雨 (レイン)」について確認。射程距離は半径3m、高さは4mから。ただし、「雨」が降るのは海上だけで、水中にまでは届かない。……という事のようです。なるほど~。「雨」は水の中じゃ降らないもんね。感覚的にも納得しやすい弱点。それらを踏まえた上で、ダイヤが引かれる方向にあったゴムボートを調べる事に。パコのリーダーっぷりもなかなか板についてきたな。
一方、ウサギ先輩はドラゴナに弱音を吐いております。パコは「マフィアじゃない」と言ってたものの、何者なのかも分からず、残忍で行動に躊躇がない「飼い主」。ヤバすぎて、自分達の手に負える相手じゃない、と。先輩は無邪気でクレバーで視野が広いからこそ、敵の強さや自分の弱さも冷静に客観的に見えてしまい、臆病になってしまうのかもしれません。あんまり何でも過去の部と重ねて考えるのは好きじゃないんだけど、ウサギ先輩はナランチャとフーゴを合わせたようなキャラにも見えますね。
そんなウサギ先輩に、ドラゴナは語ります。自分達は泥棒で、世間から見れば「負け犬」。でも、最も肝心なのは今のこの時点。敵の方もきっと必死なこの時点。それでも必ず勝つ。もし最後の最後でビビッて全てを失ったら、たとえオアフの家に無事に帰れたとしても、「あーすれば良かった」とずっと引きずって後悔し続ける。ヤバイのはそっちの方だと。ウサギ先輩の主張も理解できますが、ドラゴナの言葉もごもっとも。より高い場所へ上っていこうと野心を燃やす事こそが生きる事、と言えるかもしれませんからね。身も心も底辺に堕ちて負けながら安全に生きるより、危険を冒してでも「誇り」を持って「望み」に向かって生きる方が幸福のはず。さすがはドラゴナ・ジョースター!


●再びダイヤが転がり、そちらを見ると、なんと波しぶきに溶け込む「飼い主」の姿ッ!パコの足を切り付けて転倒させ、首にナイフの切っ先をあてがいます。しかし、ギリギリのところでジョディオが押さえ付ける。「飼い主」は、自分の周囲に漂う「破片」でジョディオに目潰しを喰らわすと、隙を突いて形勢逆転。ジョディオはまたも首を切られそうになりますが、すかさず『ノーヴェンバー・レイン』発動ッ!「雨」でナイフをヘシ折り、「飼い主」もろとも海中へと沈んでいくのでした。
それでもなお「飼い主」は、折れたナイフでジョディオを執拗に殺そうとしてきます。このままでは、ナイフで刺されるのが先か、溺れるのが先か。ところが、ジョディオはすでに勝っていたのです。重たい「雨」は、海上に浮かぶゴムボートを破って海中に沈め、ジョディオの元へと運んでくれました。1部のブラフォード戦でのジョナサンよろしく、ゴムボートに残った空気によってジョディオだけは呼吸を確保!追い詰められたのは、窒息するのは、「飼い主」の方ッ!お見事かつスマートな勝利ッ!とりあえずここまでのところ、「ジョジョリオン」よりもバトルのテンポも速くて読みやすさがありますな。
……で、個人的に気になってたのは、クルマのドアの所で現れた「飼い主」の描写ですよ。何故か、顔が2つ描かれてたんですよね。他のシーンでは特にそんな事もなかったし、どーゆーワケなんだろうか?実は2人の人間が「融合」したりしてるのか、それとも奇形の生物なのか。まぁ、恐らくは、「キュビスム」の如き複数の視点で溶け込んでいる事を暗に示しているだけなんでしょう。誰の位置から、どんな角度から見ても、完全に風景と同化できている能力なのだと思います。


●降り続ける「雨」。つまり、ジョディオは無事。「飼い主」は今まさに溺れかけている。そんな状況の中、パコが唐突に思いも寄らぬ提案!

「下のコイツ」……
オレ… さっき殺すって言ったけどさ…
それは取り消しだ
こいつを「仲間」にしよう

なんとなんと、殺し合いをしていたはずの「飼い主」と手を組むというのです!え――――ッ!?これにはドラゴナもウサギ先輩も私もビックリ(笑)。パコさん曰く、「飼い主」はけっこういいヤツな気がする、と。余計に意味不明になっちまいますが……、どうやらパコ、猫ちゃんズの切断した頭部が入った紙袋をさっき改めて覗いてみたらしい。そしたら、実はこれまたヤツのトリックで、ジャガイモが3つ入っていただけだったようなのです。要するに、違うモノに見せるスタンド能力によって、ジャガイモを猫ちゃんズの頭部に見せかけ、ジョディオを騙して驚かせただけって事。猫ちゃんズは「飼い主」が可愛がってるペットで、本物は今もちゃんと生きている。……ってオイオイ、マジかよ。
露伴よりも「溶岩」の特性について詳しそうだし、お互い「WIN・WIN」の関係になれる。パコはそう確信しているようで。う~ん、パコってば意外と柔軟なヤツだな。血の気の多い単細胞っぽく見えて、けっこう頼れる兄貴分だよね。福本伸行氏の名作ギャンブル漫画「銀と金」にも、こんなセリフがあったっけ。「オレたちは世界を広げてなんぼの人間だ」「殺す人間の世界は広がらない」「必ず閉じていく」、って。その意味で、パコは世界を広げる選択をしたワケです。世界が広がりゃ、もっとハッスルできるってワケです。いやはや、感服いたしました。「飼い主」が「岩人間」だと仮定して、ずっと相容れず敵対していた「ジョジョリオン」とはまるで異なる展開と見せ方になってきましたね!ビジネス・パートナーになるってか。チームの一員になるワケじゃないでしょうけど、こいつは燃えるぜッ!


●さてさて、滑りまくってた腕時計ですが、いつの間にやらが飲み込んでいたみたいです。釣り人がその魚を釣り上げ、ゲットしちゃいました。たぶん、釣り人にも色々起こって、腕時計は「溶岩」の元に辿り着くはず。
そして、海の中で腕時計を必死に探すレオ君。でも、当然ながら見付からず、彼女からも愛想を尽かされてしまいました。お金も丸損した上、彼女も失って、もう散々でしたね(笑)。ジョディオ達と相対しておいて、スタンドを使ったりもしていなかったので、彼はやっぱ常秀ではなさそう。残念だけど、常秀が関わってきてもカオスになっちゃいそうだしな。仕方ない。


★今月は51ページ!「飼い主」とのバトルもまさかの決着!読み味も爽やかで面白かった!このエピソードはチーム4人それぞれの個性が深掘りされた事もあって、読んでて楽しかったですよ。下っ端の立場を弁えつつも、覚悟を決めて野望に突き進むジョディオ。割かしアホだけど、グイグイ攻めるドラゴナ。知的で機転も効くけど、「飢え」が足りないウサギ先輩。粗野だけど卑劣ではない、意外と頼りになるリーダー:パコ。彼ら4人と仲間になる「飼い主」は、実際はどんな出自のどんな性格のヤツなんだろう?名前やスタンド名も早く知りたい。猫ちゃんズも一緒に仲間入りするかな?今後の展開が読めませんね。
作者コメントは「新年明けましておめでとうございます。皆様のご健康とご多幸を心からお祈り致します、今年もよろしくお願いいたします。」との事。連載陣の中で「健やかなるときも賭けるときも」の野口氏以外、誰も元日の能登半島地震に触れていないという事は、年末進行で昨年のうちにほとんどの作品の入稿が終わっていたんでしょうね。あの東日本大震災と比べれば被害は少ないとは言っても、1人1人の命や人生の重みは変わりません。様々なニュースを目にするたび、心が痛みます。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 2月号(2024年)
198・199ページ


今月は、チーム4人が佇む海辺の景色です。せっかくのワイハーなのに、海が明確に舞台になったのは今回が初めて。なんか、開放感のある空気が好き。
のんきに海で遊んでる一般人達と、緊迫する命懸けの4人とのギャップが良いですね。まさしく光と影が同時に描かれています。この美しいハワイ島の海、カラー版でも見たいなぁ。……っていうか、実際に行って見てみたいもんですわ。




(追記)
●果たして「飼い主」がどこまで知っているのかは謎ですが、あの「溶岩」のルーツについて考えてみました。
そうは言っても、「ロカカカ」のルーツさえ未だ明らかになっておらず、よく分からんけどとにかくニューギニア島に生えてたってだけでしたからね。「溶岩」のルーツもどこまで語られるものなのか怪しいけれど、まぁ、それはそれとして。

やはり「SBR」以降の「新世界」では、イエス様と思われる「聖なる遺体」が物語に大きな影響を及ぼしていますから、そこを起点としたいと思います。イエス様と言えば、「SBR」コミックス17巻収録の第67話冒頭で語られていたように、磔刑後に復活を果たし、東へ東へと旅を続けたとされています。東の果ての地(恐らく日本)に来ると、船を作り、さらに東へ向かったとの事。そうして広い海を渡り切り、現在のアメリカ大陸にまで辿り着いたってワケですね。……で、その長い船旅の中間地点、日本とアメリカの間に位置するのがハワイ諸島なんですよ。
実は、イエス様はハワイ島に立ち寄っていた、と推測します。もっとも、ハワイ諸島に人類が移住するようになったのは4~8世紀頃らしいんで、2000年前は人っ子1人いない無人島だったでしょうけど。そんなハワイ島に上陸したイエス様は、長旅で疲れ、休養物資の補給をしたかったはずです。そこで使われたのが、ハワイ島で最大のエネルギーを持つ「火山」。自分の聖なるパワーを与えると、火山は噴火。その大地の動きや溶岩の流れは、イエス様が望む形に地形を変え、イエス様が求める物を自ずと運んでくれたのです。
こうして疲れを癒し、必要な物を補給したイエス様は、再び東へと船出。そして、イエス様が与えた聖なるパワーは「火山」に残り続けました。しかし、時が経つにつれて徐々に薄れていき、今ではもはや露伴が持っていたあの「溶岩」のカケラにのみ宿っている状態です。あの「溶岩」は、大地からの「恵み」そのもの。それゆえ、所有する者に「恵み」を与え、価値ある物を引き寄せる。同時に、大地からの恵みこそ真の利益とする「岩人間」も、「溶岩」を求めて狙って来る。……そういったルーツと力を秘めた「溶岩」なのだと予想しています。




(2024年1月19日)
(2024年1月20日:追記)




TOP  <<#010 戻る #012>>

inserted by FC2 system