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チャーミングマン
21さいだ


#012 その名も”チャーミングマン”





●今回のトビラ絵は、空港のロビーと思われる場所で飛行機の出発を待つチーム4人。……いや、5人ッ!なんと、すでに「飼い主」もちゃっかりチームに混ざってるじゃないのよ。てっきり、あくまで協力者ポジだとばかり思ってたんですが、これはガチでチーム入りもあり得るなぁ。
とは言え、さすがにまだまだ打ち解けてる感じでもなく、仲良く肩を組むジョースター兄弟や一緒に座ってるパコ&ウサギ先輩の後ろで、なんだか所在なげにしております。果たして、どんな人物なのか、ジョディオ達とどんな関係を築いていくのか、大いに気になるキャラです。


●ハワイ島の道路を、1台の車が走ります。フロント部分が大破しているので、ジョディオ一行のレンタカーですね。空港に向かっているところかな?
そんな彼らの背景には、フアラライ山らしき山が見えます。私はまったく知りませんでしたが……、ハワイ島は海洋底基部から測ると、最高地点が10,203mと地球上で最も高い、との事。地上からの高さだけならエベレストが最高峰ですけど、海底から見ればハワイ島こそが最も高いようです。そんなハワイ島においてフアラライ山は、マウナケア山(4,205m)、マウナロア山(4,169m)に続く、3番目に高い山(2,521m)。1801年に噴火して以来、静かにしてはいるものの活火山であり、この土地を流れる川は1本もないそうです。「土地」や「地形」に多大なる関心を寄せる荒木先生が舞台に選んだ場所だけあって、非常に特徴的で意味深な情報ばっかり。
そのフアラライ山を、自転車でアクロバット走行する2人の若者。どうやら兄弟みたいで、弟の名前は「マウカ」。マウカと一緒に走る兄の顔をよく見ると……、なんと「飼い主」じゃありませんか!これから始まるエピソードは、彼の過去という事ですね。


●フアラライ山を望むカイルア・コナは、アイアンマン世界選手権大会の会場でもあります。スポーツが盛んな土地柄だからなのか、この兄弟も自転車や水泳で競争して楽しんでるっぽい。走りも言動も荒っぽい兄:「飼い主」に比べ、弟:マウカは朗らかで明るい性格みたいですね。
ところが……、軽快に倒木を交わして走行していた「飼い主」がふと横を見ると、マウカが乗っているはずの自転車が何故か無人に。そのまま自転車は倒れてしまいましたが、肝心のマウカの姿がどこにも無い。まるでいきなり神隠しに遭ったかのようでもあり、ポーク・パイ・ハット小僧にジャイロが襲われて消えちゃった時のようでもあります。慌ててマウカを捜す「飼い主」。その時、山の斜面に流れて固まっていた溶岩がヒビ割れ、そこからチョロチョロと水が流れてきました。そして、その溶岩の内部の空洞から、マウカの声と脚がッ!「飼い主」が手を伸ばすも、マウカは水に流され消えてしまったのでした。
これだけでは何のこっちゃサッパリなエピソードですが、大丈夫。後でちゃんと続きがあります。何にせよ、最初は残忍・冷酷な印象だった「飼い主」にも、趣味があって、大切な家族があって、日常の生活が感じられて、パコが言ってた通り「結構いいヤツ」に見えてきました(笑)。


●コナ国際空港に到着し、帰りの便を待つ5人。大破したレンタカーはどう処理したのか謎ですけど、まぁ、ウサギ先輩がうまくごまかしたんですかねぇ?ともあれ、そんなウサギ先輩は、ドラゴナのお土産探しを手伝い中。母:バーバラ・アンにハワイ島のお土産を買いたいらしい。
ロビーのイスに腰掛ける「飼い主」。メインキャラ入りを果たしたからか、オーバーオールのサスペンダーや胸元のデザインが微妙にオシャレになりました(笑)。彼も、向かいに座るジョディオも、ずっと無言のまま。そりゃあな~、ついさっきまで殺し合いしてたワケだからなぁ~。お互い気マズイだろうし、警戒も解けないだろうし、難しいよなぁ。そこへジョディオが、真剣な面持ちで沈黙を破る質問。おおっ、さっそく核心に迫るつもりか!さすがは主人公だぜ。
「最近どんな音楽聴いてるの?」……。メチャメチャ雑談!フーゴもビックリです。まぁ、いきなり重い話を切り出すよか、まずは軽いジャブを打って空気を和ませるべきかもしれないけど……、そんなどうでもいい質問に答えてくれるとは到底思えない。「うーん」 「SIA(シーア) H.E.R.(ハー) SZA(シザ)」 「かな」。フレンドリー!「おっ!」 「全部アルファベット大文字の3文字!」とジョディオが返すと、なんか「飼い主」もノッてきて、「どーもオレには名前の区別は全くつかないんだけどさ」 「それぞれ全員名盤があるんだよ」なんて盛り上げてくれます。ジョディオも楽しげに「シッシッシッ」 「ケケケッ」と大笑い。あっさり打ち解けとる!


●音楽トークでキャッキャしてる2人に、パコが「他に質問する事あるだろ!」と至極真っ当なツッコミ。ようやく名前と年齢を質問してくれました。
「飼い主」の名前はチャーミングマン。年齢は21歳。歳はいいとして、名前のクセが強すぎる!チャーミングマンて。元ネタは「ザ・スミス」の曲名「This Charming Man」でしょう。パコも「それ名前か」と言ってるけど、荒木先生もよくそれを人名にしようと考えたもんですよね(笑)。ちなみに、弟の名前:マウカはハワイ語で「山側」という意味らしく、逆に「海側」という意味を持つ言葉は「マカイ」。ひょっとすると、フルネームは「マカイ・チャーミングマン」とかだったりするのかも?
チャーミングマンは、自分がハワイ島生まれである事、フアラライ山には水源が無い事、そんなフアラライ山に水が湧いた事……などを語り始めました。「溶岩」の破片は、そのフアラライ山の「溶岩チューブ」から流れ出たものらしい。「溶岩チューブ」とは、溶岩が流れる事によって形成される洞窟の事。地球上で最も高い土地であるハワイ島に生まれた洞窟となると、なんだかとんでもない場所と繋がっていそうですよね。それこそ、この星の深層っつーか、第2部の「闇の一族」が暮らしていた地底みたいな場所があって、そこに多くの「岩人間」が住んでいたりして?
チャーミングマンは、露伴を敵とは思っていないものの、彼が調べている「溶岩」の特性に興味があって見張っていたようです。露伴には危害を加えずに盗み出すつもりが、そこにクソガキのジョディオ達が割り込んできたもんで、敵と見なして殺しに掛かったってワケか。


●お土産探し中のドラゴナ達に、いかにも怪しげな男が馴れ馴れしく声を掛けてきました。着ているコートの内側には、腕時計やらバッグやらがズラリ。本人は「一級品の正真正銘本物」などとぬかしてますが、どーせロクなもんじゃないでしょう。パチモンや故障品なんかに違いない。
男が勧めてくる腕時計は、「なんと」と言うか「やっぱり」と言うか、例のあの腕時計。本来8万ドルのところ、ドラゴナが美人だから800ドルに。さらに、針が止まっている事や、魚臭いから海に落ちたんじゃねーか疑惑を指摘すると、値段はどんどん下がっていく。とうとう30ドルにまでなっちゃって、安く買い戻す事に成功。でも、そんな壊れて汚れてる状態で、ドラゴナ的には満足なんですかねぇ?そもそも、それじゃあ普通に「価値」自体が落ちちゃってない?「溶岩」の特性にせよ、「価値」の定義にせよ、謎はまだまだ多いですね。
荷物チェックも無事に通過したようですが、ダイヤをあんな剥き出しにしちゃって大丈夫?まぁ、別に国を渡るワケじゃないから税関は関係ないだろうし、大した問題にはならんのかな?もしかしたら、裏でメリル・メイが手を回しているのかも。


●「溶岩」が必要なチャーミングマンは、ジョディオ達と行動を共にし、一緒にオアフ島へ行く事に。しかし、「金持ちになる事」が目的のジョディオ達に、「無理だね」とそっけない言葉。「それがわかるのは」 「それぞれが脱落する時だろうがね」、と。うわ~、意味深!やっぱチャーミングマン、「溶岩」についての理解がジョディオ達よりもよっぽど深そう。あの「溶岩」は元々、「儲ける」ための物ではないって事なのかな。それとも、「儲ける」ための代償があまりにデカくて危険すぎる賭けだって事なのか。
今は何も分からぬまま、ようやっと故郷オアフへの飛行機が飛び立ったのでありました。いや~、思えば随分と長いミッションになっちゃいましたね!
さて……、ここからはそんなチャーミングマンと「溶岩」との出逢いが描かれる事になります。消えた弟:マウカを捜してもらうため、警察やレスキュー隊を呼んだらしい。ところが、彼らはマウカを見付けるでもなく、早々に帰ろうとしています。医師らしき男は、チャーミングマンの通報の内容自体を疑っている様子。水なんてどこにも流れておらず、むしろ乾いている。しかも、チャーミングマンとマウカが昨日、兄弟ゲンカしてるのを通報されていたらしい。さらに、チャーミングマンには逮捕歴もある。もし本当に弟が消えたとするなら、調べるのはお前の方になる……と医師は言います。虚偽の通報どころか、弟殺害の疑いまで掛けられている始末。
ここの会話で、チャーミングマンは農場を持っているっぽい事が判明。なるほど、そう見ればオーバーオールもそれっぽく見えますね。そして、彼のザラついた肌についても、生まれ付きの体質であると本人が語っていました。「岩人間」なのか何なのか?「岩人間」にしては弟がいるってのが奇妙だけど、本当の弟かどうかも分かりませんからねぇ。結局は謎だらけ。


●マウカはついに戻って来る事はなかったようです。そして、この場所で水を見掛ける事も。……そんなある日、チャーミングマンはフアラライ山で不審な行動を取る観光客らしき男を発見。紙幣をバラまいては拾い直し、またバラまいている。何故か紙幣は一ヶ所に集まり、その下から溶岩石のような物を拾い上げている。そして、それらを写真に撮りまくっている。
そう、男の正体はご存知 岸辺露伴!紙幣を利用して、「溶岩」の在り処を探っているようにも見えます。だとしたら、所有者がいようがいまいが、「溶岩」は価値ある物を引き寄せるパワーがあるって事なのか?そして、容器の中身からして、パワーを持つ「溶岩」は複数個存在していたって事にもなりますね。別荘での実験で、金庫内の2個以外は全部砕いちゃったのかも。しかし、そんな事は知る由もないチャーミングマン。露伴がいた場所の上方は、マウカが落ちた「溶岩チューブ」がある。露伴が持つ「溶岩」と、消えた弟。何か関係があるのかもしれない。そう直感したのか、藁にもすがる想いなのか、とにかく彼は「溶岩」について調べるようになったのです。金儲けなんてまったく眼中になく、行方不明の弟を見付け出す手掛かりとして必死に求めていたんですね。露伴よりも、ジョディオ達よりも、遥かに好感が持てる動機だわ。カネを求めていたとしても、フアラライ山の土地を買い占めて、自分で納得できるまでマウカを捜すためなんでしょうし。
そもそも、マウカが消えてしまったのって、いつの出来事なんでしょうね?せいぜい1~2週間ほど前の事で、露伴を見掛けたのが2~3日ほど前って感じ?でも、あのダイヤが「溶岩」を通じて手に入った物であるなら、ダイヤを日本から持って来ている以上、もっと前の出来事になりますね。数ヶ月前とかなのか?


●オアフに帰って来た一行、メリル・メイの元へ。第1話以来、久々の登場です。ジョディオ達は意外にも、盗んだ物を全てメリル・メイに提出したみたい。ダイヤモンドだけじゃなく、生原稿にワインに腕時計。まぁ、いくら隠したところで、ジョディオ達が「溶岩」を所有している限り、絶対にメリル・メイも巻き込んだ大騒動になる事は必至。最初から差し出しておいた方が無難そうではあります。4人の取り分もキッチリ配られ、みんな大喜び!ウサギ先輩に至っては、初めて自分でお金を稼いだ事に感動して泣いてますよ(笑)。
しかし……、さすがは闇のスーパーウーマン。メリル・メイには、ホテルや新聞社、税関に警察と、いろんな場所にお偉方の「知り合い」が多いようで、情報も筒抜けなワケです。にも関わらず、ダイヤが盗まれて6時間以上経っているのに、ハワイ島で盗難事件の通報がまったく無い。それが逆におかしい。ジョディオ達が重大な何かを隠していると、鋭く見抜いていました。怖ぇ~……。マジで敵に回したらヤバい相手ですよ。この人こそが、まさしく「メカニズム」の上位だよな。とは言え、ジョディオ達も別に秘密にするつもりはなかったらしく、ただ説明が難しいし長くなるというだけ。
現に、さっき金庫に仕舞ったはずのダイヤは、すでにメリル・メイの手元にまで戻ってしまっていました。この現象に驚きを隠せぬメリル・メイ。しかし、ドラゴナの説明も遮って考えを巡らすと、「面白いかもしれない」とつぶやくのでした。他言無用という露伴との約束は初っ端から破られっぱなしですが、果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。きっとジョディオ達には想像も出来ない、ドデカくて邪悪な商売のアイディアが閃くんだろうなぁ~。でも、ポルポを殺したジョルノとは反対に、ジョディオにはそんなメリル・メイをも利用して上って行くぐらいの気概を見せてほしいものです。
なお、外ではチャーミングマンが1人寂しく待ちぼうけ。暇そうにスマホを見つめてる風ですけど、弟からの連絡でもずっと待っているんでしょうか?


★今月は37ページ!面白かったです。チャーミングマンの印象がこの1話でガラッと変わりましたね。一気に好きになってしまいました。いかにもすぐに倒される雑魚的みたいなビジュアルだったくせに、一番感情移入できそうなキャラにまでイメージアップです。そして、メリル・メイの油断ならない「只者じゃなさ」もイイんですよね。もちろんチーム4人も生き生きと描かれているし、ホントにキャラクターが魅力的!誰にも死んでほしくないな。
作者コメントは「大阪に行ってきました。東京もいいけど大阪のうどんって何かが違うよね。うまいよね。」との事。大阪ッ!?こないだ大阪京都旅行の話をされていましたが、また大阪に行かれたんでしょうかね?何かしらのイベントがあるんだろうか? (初代担当編集者である椛島良介氏の、大阪の書店でのイベントにゲスト出演されたみたいですね。) 個人的にはあんまり大阪にうどんってイメージはなかったけど、次に行く時があれば、ぜひうどんを食べようッ!





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 3月号(2024年)
39ページ


今月は、オアフ行きの飛行機に向かう5人のバックショット。まさか、この5人が並んで同じ方向に歩く姿が描かれるとは、思いも寄らなかった。ちょっとした感動さえありますね(笑)。
やっぱし背中で物語る男っつーのはカッコイイです。ちょいちょい使用されるホワイトトーンで、5人の姿が薄くボヤけた風味になっているのも、雰囲気があって好き。「SBR」や「ジョジョリオン」は、行動を共にする仲間が少なかっただけに、いかにも「仲間!」って感じのこのコマはグッと来るものがありました。




(2024年2月19日)




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